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厳しい上司(コストカッター)から決裁をもらうには?
「K(私)さ、お前ら『申請が通らない』って言ってたけど、俺の申請は全部通ってたし、通す自信はあったぜ。何でか分かるか?」
申請って、直属の上司である部長の承認をもらえたら、ほぼ実行してもいいものだと思っていた…ある時までは。
今から20年前くらいだろうか。社会人5年目くらいで、当時は営業として一本立ちしていて、担当エリアを任されていた。そんな時代の話。
人事異動があり、ハンパなく厳しい局長がやってきたことがあった。取引先の訪問スケジュールの組み立てから打ち合わせ内容に至るまで、細かいチェックが入る。普通、局長くらい立場になると、全体会議でも抽象的なフワッとした話が多いが、この人の場合、プレイヤー時代も一流だったらしく、良くも悪くも具体的だった。もう、我々が何を考えて行動しているかなんて、お見通しなんだろう。逃げ場も塞がれて、どんどん追い込まれていく感じ。それに抵抗があったの人は(ほぼ、皆だが)、今でも当時のことを「恐怖政治」や「暗黒時代」と揶揄するくらいだ。
行動の管理もそうだし、予算管理も厳しい。厳密には、我々一般社員が直接判子をもらうことはないわけで、部長を通して決裁をもらうことになる。部長は、局長室内で1対1で、1枚1枚の申請の説明をしながら、判子をもらうことになる。ひどいときは1時間以上、席に戻って来ない。「行ってらっしゃい!」。脇に部員の申請の束を抱え、局長室に向かう部長。その背中に向けて、よく部員で呟いたものだ。
しかし、まあ通らない申請が多い。が、疲れ果てて、席戻ってきてため息をついている部長を責めるのも気の毒。「申し訳ないが…」。自ら判子を押した申請を部員に差し戻すっていうのは、忸怩たる思いだろう。
「あぁ、直の上司が承認してても、その上でハネられることがあるんだ…」
その是非はともかく、今までにない体験であり、ちょっと当時はショックだった。
ひどいときには、全体の会議の中で、個人攻撃が始まる。「どこの地区(エリア担当性のため)でこんな申請が上がってきたが、論外だ」とか、「アタマがおかしんじゃないか」とか。今となってはありえない言動だが、それだけ業界もまだ勢いがあったし、そういう環境であっても、それでも離脱者は少なかった。
自然、こうなってくると、直属の上司の行動も変わってくる。当たり前だが、チェックが厳しくなる。そんなことは、当たり前なのだが、いきすぎて「自粛要請」みたいな感じになる。言われなくても、もう、そういう空気が漂い始める。そうなると、申請を提出すべき社員も空気を読んで、提出しない方向に動く。それなら、結果的に経費が削減できて、癪ではあるが、局長の目論見通りで、会社としては良かったじゃないか、ということになる。が、そう簡単な話ではない。確かに、「言われたらルーティンでやっていた」、「なくしても、思っていたほど悪影響はなかった」っていうような経費もあるが、中には取引先の経営的なバックアップ補助だとか、担当エリア内の販促の応援などもある。こういうのを自粛すると、販売網弱体化につながりかねないし、そもそも、取引先との信用関係がガタ落ちとなる。
冒頭の発言に戻る。まあ、その後、色々あってまた体制が変わるわけだが、その「暗黒時代」を振り返ったときに、ある尊敬する上司が私に問いかけたなぞなぞだ。「いやいや、そんなのあるなら、当時に教えてよ」とも思うのだが。
確か、こんなような内容だ。「お前らの申請が、あの人の過去の経験を越えていないんだ。たいていのことは、あの人のキャリアだから、既に経験済みなわけで、結果も見えるし、問題点も見える。だから、そこを突かれる」。「だから切り口を変えるんだ。あの人が未だ経験したことがない施策をひねり出したり、転換したりして、申請を作成する。これに関しては良し悪しがわからない。あの人も、やったことないから、頭ごなしに否定できない。否定する材料を持ち合わせていない。『もしかしたら、自分が知らないだけで、画期的な施策かもしれない』。そこまでバカじゃないから、そういう芽は自ら摘まない」。
まあ、「全部通った」というのも、正直眉唾ではあるが、これはこれで、新鮮だった。融通の効かない上司の異動を待つのではなく、先ず自らが変化し、チャレンジすること。申請金額を「費用」ではなく「投資」として見てもらうための工夫。厳しい環境下で腐るか、成長するかは本人次第。
逆に、申請を提出してもらう立場になってわかったことだが、判子を押す方も、いかに押さないで済ませるか?っていう姿勢で臨む人はいない。ワクワクするような申請に出会うと嬉しいし、「のってみるか」っていう気持ちになる。当時の局長だって、そこは同じだろう。そういう申請が皆無だっただけの話で。同じ100万円なら、ルーティンの施策よりも、よっぽどそっちの方がいい。もちろん、結果、やってみたけど効果がなかった、ということもあるだろう。もしかしたら、成功して、「新しいスタンダード」となるかもしれない。でも、どちらの結果も、やらないと手に入れることはできないのであるから。
最近、ワクワクするような申請書きましたか?承認しましたか?