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業務を止めるな!

作業が始まる15時まで、あと2時間。僕は焦っていた。

前日の夕方から調子は悪かったが、作業も終盤だったので、なんとか乗り切った。それが、今朝からはうんともすんとも言わない。システムの不具合。

以前も、同じようなことがあった、とのこと。「何とかなるさ」と楽観視していた。さすがに、夕方までには動き出すだろう。

「うーん、そちらに着くのが15時半くらいですね…」

たらい回しで、色々な会社、部署の担当者を紹介してもらうが、どこもダメ。13時の時点で、行き着いた担当者からの回答が上記の通りであった。

「あっ、ダメかも…」。ここにきて、そろそろ次の手を打たなければいけない事実に直面する。このまま動かなかった場合、迷惑をかけることになる顧客に現状を伝えるか、どうか。直る可能性が高いなら、放っておけばいい。「システムの調子が悪くて…」なんてこと自体、恥ずべきことだ。とはいえ、直らないなら、早い段階で報告をし、善後策を一緒に考えないといけない。タイミング的にも、そろそろ限界だ。

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先ずは社内から。私の前前任者で、顧客のことにも詳しい嘱託社員に相談した。

「今まで、システムの不具合だなんてことで、業務を止めたことは一度もない。業務は止めない。なんとしても、直す」

もう、アドバイスとか注意とか、そういうレベルではなく、何ていうか、「宣言」である。なんだろう、この懐かしい感覚。平成の時代にタイムスリップした感じだ。なんなら昭和なのかもしれない(私は、昭和の時代の社会人は知らないが)。

その後、一度ギブアップした会社の別のスタッフから連絡があり、彼女がスルスルスルッと解決してくれた。聞いたら彼女こそが、前回トラブったときに解決してくれた当人とのこと。当たり前だが、経験者は強い。きっと、嘱託社員からの直接の依頼だったのであろう。

結果的には何事もなくこの日も業務は終了し、余計な不安や不信感を顧客に植え付けることもなかった。

「業務を止めるな!」か…かえって、今の若い人はこういうパッションに突き動かされたような言葉を業務に持ち込むのって違和感があるかもしれないな。だからか、自身もハッとしたが、こういう熱い言葉って、昨今聞かれることもなくなってきたかもしれない。でも、パッションが結果を変えるってことはあるし、実際に、それを目の当たりにしたし、大事だよな、って思った。

ただ、一方で、その「宣言」後、しばらく私の脳内をリピートしていたのは、なんでかしらないが、

「業務を止めるな!カメラを止めるな!」

であったことは、不謹慎ではあるが、ここに告白する。


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