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なんで、そっちに転んじゃったかな!?

馴染みの店

札幌での単身赴任時の、テイクアウトに関する考察の記事を以前もアップした。そこにも登場していた、もう一つの居酒屋の話。

単身赴任前は、すすきので散財しないように気をつけなきゃ、なんて思っていたけど、実際に住んでみると、わざわざ地下鉄乗ってすすきのまで行くようなことはなかった。もう、部屋着でもいける気軽さと、距離が優先である。仕事終えて、疲れてんだから。

この店は、結構赴任後まもなく偶然開拓したが、即レギュラー入りし、週一回の先発ローテーションに組み込まれることになる。毎回、水曜日か、木曜日。折り返し地点で利用し、前半戦のご褒美と、後半戦への励ましとなっていた。ご褒美と励まし…と自分に言い聞かせ、ちょっとそれ以外の日とは違い、日本酒を中心に贅沢をさせてもらった。

何度も通ううちに、さすがに顔馴染みとなった。だいたい予約で空き具合を確認してから行くので(歩いて3分)、名前も覚えてもらえるようになった。おそらく注文するものもいつも一緒なので、なんなら、「いつもの!」で、日本酒2杯(日高見→二世古)とおつまみ3種類(葉わさびの醤油漬け→ポテトサラダ→豚串<塩>2本*2回)が順番通りでてきたのではないかと思う(勇気がなかったのでやらなかったが)。

週末は結構混んでいるが、週の半ばでもあり、せいぜいカウンターには他一組、二組。店員からは話しかけられることもなく(コレ大事)、1時間程度、自分に向き合える貴重な時間であった。中にはタバコを吸う客もいたが、こちらも察知して、距離を空けて席を選んだり、余程の場合は早く切り上げたりと、対策を講じていた。禁煙のお店だったら、殿堂入りだっただろう。

どこ行った?

さて、まだコロナの影響はなかった去年の9月。しばらく閉店が続いていた。社員研修だったか、改装だったか、理由は忘れたが、ローテーション入りしていたピッチャーが怪我で一時離脱した感じ。その間、色々と浮気はしてみたが、やはり、あのお店以上のところは見当たらなかった。

そうこうするうちに、どうも、再オープンしたようで、さっそく予約。ん?なんか、電話越しの対応がいつもと違うな…。混んでるとのことだったが(やはり、皆心待ちしていたのか)カウンターが空いている、とのことで、久しぶりに暖簾をくぐった。確かに、びっしりとお客さんで埋まっていたが…あれ、店員が総入れ替え。メニューも若干違う。まあ、なんか大人の事情があったんだろう…。とりあえず、いつもの日高見と葉わさびの醤油漬けを注文。

いつもより騒がしかったり、真隣の人がタバコを吸ってるのはしょうがないが(混んでるため、両脇が固められている)、葉わさびの醤油漬けがいつまで経ってもこない。確認するとオーダーミスとのこと。こちらも大人気なくイライラしており、日高見を飲み終えて、そうそうにお店を出た。

結構ショックだった。まあ、よくよく考えると、以前の阿吽の呼吸を彼らに求めるのも酷な話である。その日、大勢いた客の一人に過ぎないのだから。こちらの想いが強すぎた。でも、残念ながらワンナウトチェンジだ。他のお店を探そう。

そして、どっちもいなくなった

なーんて、強がってみたものの、やはり、他のお店の選択肢はなく、とはいえ、コンビニも飽きた。なんて、薄っぺらな決意だ。数ヶ月後には、また暖簾をくぐってる自分がいた。

最初は、バツが悪いな、って思いながらも、スタッフの皆さんは、あの夜のことを知ってか、知らずか、優しく迎え入れてくれた。味だって、別に落ちているわけではない。週の半ばを選べば、タバコの煙と格闘することもない。接客だって、不快に思うこともない。放置しておいてくれる。向こうのメンバーは変わったが、いつの間にか、お店は週一回のローテーション入りを果たしていた。

ただ、スタッフが変わって、日に日にお客さんの数は減っていたのは確かだ。なぜ、当時、スタッフが総入れ替えになったのか、結局、こちらも聞けずじまいであった。金銭的な事故があったのか、労使関係のトラブルか。

ようやく、私的な日常を取り戻した一方で、世間は日常が崩れつつあった。そうである、新型コロナウイルスがじわりじわりとニュースになりつつあった。

さすがに、こちらも外食を控えるようになった。そうこうするうちに、お店にも長期閉店の案内が貼り出されるようになった(この後、例のテイクアウト事件が勃発…)。

その後、緊急事態宣言も解除されたある日。お店の前で、車で信号待ちをしているときに、再オープンを知った(何回再オープンしてんだ)。しばらく点いてなかった看板の明かりも確認できた。本当によかった。行く、行かない、ではなく、馴染みだったお店が、復活したことがわかるだけで嬉しかった。

ん?ここで、視界の隅に違和感を感じた。見慣れない看板が…

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うーん、そうきたか。そっち、いっちゃったか…さようなら…。

再オープンして数日後、お店は看板を変えてチェーン店として再々?オープン。

その数日後、私は何の心残りもなく、単身赴任生活を終え、札幌を離れた。

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