元巫女てくてく小噺 ⑤【巫女って何者?】
巫女って何者?
話が戻りますが、そもそも何故面談や履歴書が不要だったかと申しますと、当時は他の神社さんもお正月の助勤巫女(アルバイト)以外は大体そうだったかと思いますが、巫女で奉職するのは「氏子さんの関係者」「神社で奉職してる人の紹介」「昔から神社と繋がりが深い学校の学生が奉職しており、後輩を紹介していく」いわゆる紹介制なのです。
ですので、紹介する側も「向いていそうだな」という方に声掛けして、ずっとその流れで来ていても何の問題もなかった為、怖いくらいの信頼度で受け入れていたのです。
私も、当日式場に行きその場で顔を合わせた神主に「〇〇さん?これからよろしくね」と即決?でした。
たまに「巫女に資格は?」と聞かれるのですが、資格は有りません。
中には大学の神道学部で学ばれて神主の資格を保有している巫女はおります。
条件としては、黒髪必須・未婚女性です。
正確に言うと処女でなければいけません。
医者の診断が必要だった時代も有るそうですが、このご時世そこまで調べられませんからね・・・。
ですから、大きな神社では高卒しか正規の巫女は採らないです。
高卒=穢れなきと判断も出来ませんけれど・・・。
そして結婚と同時に退職して行く方が殆どです。
中には指導者として高齢になっても巫女として奉職されてる方もいらっしゃいますが少ないと思います。
私が始めたのが20代半ばなので、その時代では
そろそろ辞める年齢に差し掛かってましたね。
当時は余所の神社さんも30歳手前までの雰囲気でした。
現在の巫女のように神主の手伝い、神社の雑務的な立場になったのは明治以降で、それまでは巫女と言えば祈祷をしたり、占いをしたり、神からのお告げを伝えたりと今の巫女のように物静かな楚々とした雰囲気ではなく容易に近づけない存在だったはずです。
今のお若い方は御存知ないかもしれませんが、恐山のイタコも巫女の一種です。(イタコ→青森県恐山などで、依頼された霊を自分に降ろして、依頼者に言葉をつたえる方々)
それとは別に「歩き巫女」というのも存在しておりました。
これは全国各地の個人宅を廻り、やはり祈祷やお告げを伝えたりしていました。それプラス自身の身体も売っていた(つまり遊女も兼ねていた)
先程の穢れなき身体の話がどこかへ行ってしまいましたけど、そのような巫女もいたのです。
歩き巫女は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で大竹しのぶさんが見事に演じられていたので機会が有りましたらご覧頂くと分かりやすいです。
あと古い映画ですが黒澤明監督の映画「羅生門」にも昔の巫女が出てきます。こちらは霊を降ろして言葉を伝える、口寄せ巫女です。
ご興味湧きましたら是非ご覧になってみて下さい。
で、現代の巫女です。
私も巫女に資格も修行もないのは不思議に思ったので奉職していた神社の宮司にお聞きしたところ「人間はみんな神様の子だからです。あなたも大事な人ですから、これからもよろしくお願いしますよ」と仰ってくださいました。この一言がストンと胸に落ち何の疑問も湧かなくなりました。
そうか!みんな神様の子かぁーと。
それからも新年になると必ず「あなたも大事な人ですから、これからも御奉仕頼みますよ」と毎年言ってくださいました。
「大事な人ですから」という言葉をかけて頂くのは、人生の中でも中々無いことですので毎年気が引き締まる思いでした。
奉職していた私からすると、神官のように特別な存在でもなく、昔の巫女のように特殊能力が有るわけでもないのですが、皆さん敬うように接して下さるので「隙を見せてはいけないな」「巫女というイメージを壊してはいけないな」と心掛けておりました。
私自身ではないのですが、お手洗いに行った巫女が「巫女さんもトイレに行くんですね!」と驚かれた事も有ります。
ですので、式場では装束を着てからのお手洗いは基本行かないように心掛けておりました。
式数が多い時は無理ですけれど・・・
奉職して、私に神がかり的な事は何一つ身につきませんでしたが、神がかり的な経験は沢山しました。
例えば式次第の中に「代表玉串拝礼」という両家の代表者がお榊を神前にお納めし、一同揃って拝礼するという儀式が有るのですが、その際の拍手が寸分たがわず大きな塊として式場内に響き渡る事が多々有ります。
このような時は「あー、いい御縁なんだなぁ」と涙が出そうになります。
では、揃わないと駄目なのか?と言うと、そんな事はなく短い時間の中で合わないけど皆が合わせようと頑張ってるのが感じられたりして、いいなぁと微笑ましく感じます。
あと、何度か経験しましたが指輪の交換が終わった瞬間に幼いお子さまが「やったね!」「おめでとう!」とお祝いの言葉を掛けたりするのも良い空気が流れてとても温かい式になります。
私達斎員は(式を執り行う側)失敗できませんけれど、挙げる方達のちょっとしたエピソードは式が温かくなるので本当に素敵です。
多いのは、指が浮腫んでしまい指輪が入らないとか左手にはめるのに、右手を差し出してしまうこと。
緊張でガチガチだったのが、その瞬間に素敵な人柄が垣間見えて式場内に温かい笑いが広がり和やかなお式になります。
これも、神様の贈り物なんだろうなぁと感じていました。
神社内でのご奉仕は、相談事等は神主が対応しますし、信者さん以外の方達とそこまでお話することはないのですけれど、一般のお店等と大きく違うのは「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」「お釣りです」を言わない事でしょうか?
いらっしゃいませ→おはようございます・こんにちはの挨拶
ありがとうございました→ようこそのお参りです
お釣りです→お戻しです
とお伝えします。
やはり売買というのではなく、あくまで御守や御札をお授けしている。お金は授かった方が神様にお納めした物を私達が一時的にお預かりしている物だからです。
ですので、形は売買ですがあくまで神様と参拝人の間を繋ぐお手伝いを巫女や神職がしていると思って頂ければ幸いです。
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