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元巫女てくてく小噺 ④ 【天から降ってきた・・・?】

「巫女やらない?」と突如知人に声を掛けられた20代半ば。
「巫女やらない?」とは何ぞや・・・

話を聞いてみると、そちらの神社の神様が祀られている結婚式場で結婚式の奉仕をする巫女との事。

所謂、神社でお守りをお授けしたり舞を舞ったりと1日神社で奉職するのではなく、あくまで結婚式の御奉仕のみとの事でした。

えっ??「巫女やらない?」ってそんな気軽に声掛けられるものなの?資格は??と頭が混乱。
しかも面接も履歴書も要らないと・・・
えーーー!!!何その怖いくらいの信頼感!!

とにかく式場で一度見学して、次からは奉仕をして貰いたいという話でした・・・。

昔から神社は好きだし、幼い頃日本舞踊をやっていたり、何の知識もない頃、舞妓さんになりたいと思っていた私。(踊りのお稽古して、踊るだけが仕事の方達と思ってました)巫女装束に興味ないわけがない。


そして、初めての見学。
巫女装束を着て感動!!と言いたいところですが、元々着物を着る機会がそこそこ有った為、何とも思いませんでした。

どちらかと言うと白衣に袴なので弓道や剣道の人達みたいだなぁと。

ただ結婚式やご祈祷の際には「千早(ちはや)」という衣装を上から羽織ります。

これを着た時には身が引き締まりました。
「巫女なんだ私」と一気に緊張が高まりました。

実際の御奉仕の内容といえば、ご新郎ご新婦様お二方のご案内、式内での典儀を伝える、三三九度、玉串拝礼の際お榊をお渡しする・・・と、斎主(神主)とお二方の補助的な内容なので難しい事はない。

が!お二方にとっては一生に一度の晴れ舞台
失敗するわけにはまいりません。

それと、使用してはいけない言葉も有るので気をつけなければなりません。


胡床(こしょう)にお掛け下さい→欠けるを連想させるので「ご着席下さいませ」
(胡床は椅子です)

式前の練習終了後、一度退席して頂くのですが、
その時にお声がけする時も「再入場になります」は、再婚等「ふたたび、2度」という意味を持ってしまうので使えません。

自席までお戻り下さい→今は使いませんが出戻りという離婚に繋がる言葉を連想させるので「自席にお進み下さい」とお伝えします。
など他にも色々ございます。

言葉の方は気をつければ良いのですが、行動の方は長くやっていると色々有ります。

例えば、三三九度でお酒を注いだら、そのまま背中から後ろに下がるのですが、絨毯に足を取られて草履が脱げてしまったり・・・これは何度か有りましてしれっと履き直します。

あと、お酒を注ぐ調度品の注ぎ口に付いている調節部品を逆側に付けてしまい、お酒を注いだら勢い良くご新郎様にかかってしまったとか・・・それでも式は止めずに滞りなく納めなければならないので冷汗かきながら何事も無かったかのように終わらせ式後に謝罪をするということも有りました。

とにかく基本失敗は許されないので毎回緊張し、慣れることなど無かったです。

そんな感じで始めたのですが、本当に面接も研修もなかったので調度品の名前すら一切分からず

折敷(おしき)加銚子・長柄銚子(くわえちょうし・ながえちょうし/お酒を注ぐ調度品)土器(かわらけ/盃の事)八足案(はっそくあん/木の机)胡床(こしょう/椅子)等も自分で調べて覚えていきました。
今ならスマホですぐ調べられるのですが・・・。

加銚子・長柄銚子(くわえちょうし・ながえちょうし/お酒を注ぐ調度品)
八足案(はっそくあん/木の机)

そもそも、奉職した神社は普段参拝人が少なかったため常時巫女が必要なく、宮司と神主と信者さんのお手伝いで日々まわしておりました。(宮司=神主と思ってる方がいらっしゃいますが、宮司は各神社に1人しかおりません。つまりトップです。)

ところが、私が奉仕を始めて数年後、神主が神官役で2時間ドラマに出たり、情報番組で神社が紹介される機会が増えたりし注目を浴び始めたのです。その結果、神社にも巫女を常駐させなければならなくなりました。ここで、初めて研修を受けました。

御奉仕を始めてから5年は経過していたかも。それまでも式の時に神主から色々と話を聞いたり、神社に行って本を読ませて頂いたりしていましたが、奉職した神社の成り立ちや歴代の宮司のお話をお聞きしたのは初めてでした。それと、前に進む時は(正中に対して)外側から、下がる時は正中側からと知ったのもこの時でした。

神様は1つのお名前ではなく様々な呼び名をお持ちになられているので本当に複雑です。そして関係性も複雑です。一生勉強しても追い付かないレベルです。奉職した神社の事も詳しく書きたいのですが、どこの神社か分かってしまうので差し控えます。



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