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女装小説「めざめ」第6話・大山の元に
しばらくは、女子高生サトミになって、大山先生にペニクリを揉みしだかれてしまったり、メイド・サトミとしてご主人様・大山に業務命令的にいかされたり、そんなファンタジーで楽しんでいたが、一週間もすれば、いずれの衣装にも、自慰のファンタジーにも慣れて、最初に感じたほどの興奮は得られなくなってきた。
そして、いつも思い出すのは、大山が「サトミのペニクリ」と言いながら、彼の大事なところに手を触れた刹那、電撃のように体を駆け抜けたあの興奮だった。サトシは、服やランジェリーをマイナーチェンジして目をそらそうとし続けてきたが、自分の望むことが何なのかやっと分かり始めていた。女装ももちろん楽しく、興奮できるファンタジーである。ただ、彼にとっての女装は、それだけでは完成形ではなかったのだ。セーラー服を着たサトミをみて、「サトミちゃん可愛いね」と言って、ペニクリをそっと握ってくれる大山要蔵のような生身の人間が必要なのだ。
もちろん、大山でなくても良いのかもしれない。ただ、大山以外の誰がそんな異常な願いを叶えてくれるのだろうか?女装者専門のチャットで写真を投稿して募集すれば、何人かの男が手を上げてくれるのかもしれない。ただ、どんな人が来るのかわからない。自分のことを棚に上げては言えないが、こんな「男の娘」の秘めた望みに応えようとする男など、どんなろくでなしが来ても不思議はないではないか?
その点、大山には不思議な安心感があった。
もちろん普通の人ではない。サトミを女装へと誘い、セーラー服を着せて、自らの手でさらっと射精までさせてしまっているのだ。ただ、ああした店を構えて商売をしている以上、無軌道に乱暴なことはできないだろう。前回も、強引なところはあったが、サトシの嫌がることを無理強いしたわけではない。あくまでも大山のペースに乗せられて、自分の潜在的な欲望を気づいたら引き出されてという印象が強かった。
セーラー服を買い取らなきゃという口実もあったし、大山は仕事上のクライアントであるともいえる。
(とにかく会いに行ってみよう。)
一大決心をして、ヴィクトリアに電話してみることにした。
「もしもし、第七生命と申しますが、大山さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「ああ、こんにちわ、大山ですよ。」たしかに聞き覚えのある大山の声だ。声を聞くだけで、あの時の興奮が全身にひたひたと戻ってくるような気がした。
「先日はいろいろ失礼致しました。」
「こちらこそ。いろいろとね…」大山の、そんな少し含みのある言い方に、サトシはとぎまぎしながらも、用件を伝えた。
「失礼してしまった服なんですが、買い取らせてもらった方がいいかもしれないと思っておりまして…」
「無理しなくてもいいですよ。クリーニング出してもらえれば、こっちでまたレンタル用で使えるから。」
「あ、いえ、でも、クリーニング店に出しにいくのも恥ずかしくて、それに…」言い淀んでいると、大山の方が言葉を継いだ。
「あれを何度か着ちゃった?」
「・・・。」全身が火照る。一瞬の沈黙がおそろしく長い時間のように感じられた。正直に応えてしまえば良いのだが、そうするととてつもなく深い奈落の底に落ちて行ってしまうような予感がしていた。「…キマシタ。」消え入るような声で、それでも最大の勇気をふりしぼって答えた。
また、少しなのに長く感じる沈黙をへて、大山が言った。「今日お店に来る?閉店の時間くらいに来てくれれば、時間がとれるよ。」
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