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先進国は?、超低出生の国は? 世界各国の将来人口を考察してみた?

 趣味で作成した、世界各国の1950年~2100年の過去から将来の人口まで可視化できるダッシュボードを用いて、素人ながらデータ分析による考察をしてみました。
 前回までは世界全体と地域を取り上げたので、今回は各国の地域の将来人口、特に先進国と超低出生率の国の考察をしてみます。
 なお、前回のnote前々回のnote はこちらです。

 ちなみに、趣味で誰もが無料で利用できる、世界の将来人口推計ダッシュボード(2024年版)はこちらです。ダッシュボードには国連のWorld Population Prospects 2024のデータを利用しています※1。


1.先進国では将来にわたり人口増加するの?

 国連の将来人口推計から人口増加していく先進国※1として、米国とカナダ、さらに、人口が均衡する北ヨーロッパの国を見ていきます。
 考察の中心となる予測は、国連の標準的な推計値である中位推計で、凄く一般的な予測と思ってください。

 米国ですが、2023年に3億4千万人の人口が2050年に3億8千万人、2100年には4億2千万と今世紀中は人口が増加する推計になっています。この傾向はカナダも同様です。先進国で2100年まで人口増加って、凄いですね。
 この両国ですが、出生数から死亡数を差し引いた自然増減をみると、米国は2042年に、カナダは2032年には自然減になると推計され、他国との人口移動がないと仮定した封鎖人口※3で見ると人口減少が進むように見えます。

図1.米国の出生数と死亡数および自然増減の将来推計 ・中位推計 ダッシュボードより

 なぜ、人口増になりえるのか? 答えは他国からの移住(移民)になります。移住人口として入国超過数(net number of migants)で見た場合、他国からの流入と自国からの流出を差し引いた入国超過は、2022年には米国は+130万人でカナダは+46万人が、2100年に米国は+130万人でカナダは+28万人と、今世紀中は自然減を上回る移住が見込めるようです。米国とカナダは世界の競争力を持ち、魅力的であり続けると言えそうです。
 ちなみに、米国とカナダの5歳別人口のピラミッド(図2)で見ると、20歳から40歳の人口が減少しないで、ピラミッド形状が崩れることなく継続しています。移民の受け入れによって人口が維持されると見て取れます。

 さらに、米国では合計特殊出生率(以下、「出生率」と言う)が1.6付近を維持できると推計されています。
 データから分かることは、出生率が人口置換水準※4である2.10を大きく下回る国が人口増していくには、移民の受け入れが重要と言うことです。

図2.米国とカナダの人口ピラミッド 2000-2100年 ・中位推計 ダッシュボードより

 話を北ヨーロッパに移します。英国は2023年に6800万人の人口が2060年に7600万人をピークに、2100年には7400万人まで緩やかに減少していく推計です。また、スウェーデンは2023年に1050万人だった人口が2080年付近の1140万人強をピークに、英国と同じく緩やかな減少で2100年には1140万人弱の推計になっています。
 人口が自然減に向かうのが英国は2027年、スウェーデンが2026年と推計され、緩やかな人口減に留まるのは自然減を補う移住があると想定されます。

図3.英国の総人口の将来推計  ・中位推計 ダッシュボードより

 なお、北欧の国々は一度低下した出生率が回復をしたため北欧モデルという成功モデルとして取り上げられています。実際、スウェーデンは1999年の出生率1.5から2010年には1.97、デンマークは1983年の1.38から2008年の1.88、フィンランドは1987年の1.59が2010年には1.86まで回復していますが、その後、2023年まで徐々に低下をしています。やはり、先進国において出生率の継続的な回復は難しそうです。

図4.スウェーデンの合計特殊出生率 1963-2023年 ・ダッシュボードより

 なお、移民の話題を取り上げたので、西ヨーロッパで近年移民の受け入れが多いドイツを見てみます。ドイツは東西統一前の1972年には人口の自然減が始まり、出生率は1994年に1.25と最低値になった後、2016年には1.59まで回復しますが、自然減であることには変わりませんでした。その間も、人口は増加傾向をとり、2024年がピークとなる推計です。

図5.ドイツの出生数と死亡数および自然増減 1963-2023年 ・中位推計 ダッシュボードより

 これは、例えば2015年に+115万人、2022年に+98万人の移民を受け入れてきた、移住大国であることが理由と思われます(2015年はシリアなど西アジアから、2022年はウクライナなどからの難民が中心※5)。もし、移民が多い状況が維持されるのであれば、今後も人口が平衡を取る可能性はありそうです。国内世論により、移民政策がどこまで変わるかが鍵でしょうか。

図6.ドイツの入国超過数推移 1950年から2023年


 では、先進国の将来ですが、移民が人口増加を支える状況が、今後も続くのでしょうか? 特に多くの国際移民の出身地であった地域が人口減少していく中で、この傾向は維持できるのか疑問です。
 ここで、国連の世界の人口推計の仕組みを紐解く必要がありそうです。

 国連の推計は、各国の人口移動が±ゼロ、つまり世界全体でバランスが取れるように作られています。そのため、国ごとの将来人口を予測する場合、国連の推計よりも、各国の推計の方が精度が高いと聞いたことがあります。そこで、精度高く各国の将来人口を把握するには、各国の公式な推計を確認したほうがよさそうです。

 私は将来人口の計算手法がどうなっているかなど※6はわからないので、出されているデータを見比べることしかできません。そこで、米国センサスで2023年11月に発表された将来人口推計※7より考察をしてみます。
 米国センサスの4つの予測シナリオのうち将来予測の可能性が高いmain series(中位推計相当)で見ると、2080年に3億7千万人でピーク、2100年には3億6600万まで減少する予測となっており、国連の中位推計よりピークの総人口が少なくなる予測を出しています。
 また、純移民数も米国センサスでは2023年以降は85万~98万人の中で推移すると推計しており、国連の中位推計より少なそうです。そのため、米国では国連の推計を下回る人口になるほうが可能性が高そうです。
 米国の考察により、先進国では国連の推計よりも将来人口は少なくなり、ピークが早まる可能性があることを示唆できるかもしれません。

 余談ですが、米国では移民が将来人口に与える影響が大きいことから、他の予測シナリオは移民高位、移民低位、移民ゼロのシナリオになっています。米国らしいですね。ちなみに、移民高位推計は2100年でも人口増加が続く想定なので、国連の中位推計はこちらに近いのかもしれません。
 余談ついでに、米国が2100年までの推計を行ったのは、今回のセンサスからになります。それだけに難しく、数十年先の推計を出すのは、神の所業なのかもしれません。

2.合計特殊出生率が1.4以下の「超低出生」の国について

 出生率が1.4を下回るのは2022年で41、2023年で44の国と地域であり、国連では現在は世界の国の約1/5を占めていると言われています。このうち、人口100万人を超える国と地域で出生率下位から10ヵ国の推移を表1に示します。

表1.合計特殊出生率の下位10ヵ国の推移  ・中位推計

 2022年の1.4以下の出生率の国は東アジアが6の国と地域、南ヨーロッパが7の国を占めており、将来にわたり東アジアはこの傾向が続くと中位推計では見られています。ちなみに、超低出生の地域は1990年代は東ヨーロッパと南ヨーロッパ中心でしたが、2010年以降は南ヨーロッパと東アジア中心に変わってきました。
 そこで、南ヨーロッパと東アジアの国を取り上げてみます。

 南ヨーロッパはイタリアとスペインの人口が多い2ヵ国の出生率が低く、スペインは1998年に1.13となったのち2008年には1.44まで回復しましたが、その後、低下して現在に至っています。また、イタリアは2014年より人口減が始まっており、出生率は1995年に1.19まで下がったのち2008-2012年に一度1.4以上まで回復の後、再度、低下をしています。

図7.イタリアの合計特殊出生率 1983年から2023年 ・ダッシュボードより

 イタリアは人口の自然減が1993年よりすでに開始し、人口ピラミッドも逆ピラミッド型に近い形になっているため、将来の出生数の上昇は見込みにくいと想定できます。
 ヨーロッパの国々に言える傾向ですが、出生率が一度低下し、回復したのち、再度低下しています。各国が様々な政策を取り、出生率が回復したのち、再度低下してきていることは、そもそもの成熟した国々の社会構造が変わってきているとも言えそうです。

 そして、人口減少がさらに深刻なのが東アジアになります。東アジアは前回note記載のとおり2021年には人口減少が始まっています。特に大韓民国、台湾、中国など人口の多い国々の出生率が1.0以下となっており、今後、急速な人口減少が起こる地域になっています(表2参照)。

表2.東アジア各国の合計特殊出生率 2018年-2023年

 さらに、国連の2024年度版の将来人口推計と2022年度版の将来人口推計において、2022年、2023年の出生率を表3にて比較して見ます。

表3.国連将来人口推計2024年版と2022年版の合計特殊出生率の比較

 中国、大韓民国ともに2024年版の2023年の出生率が、2022年版の80%の予測値の下限値(lower 80 pi)を下回っており、台湾は95%の予測値の下限値(lower 95 pi)さえも下回り、2022年当時よりかなり低い値となりました。
 国連では今後、出生率が継続的に回復する推計になっていますが、この傾向を見る限り、今後も東アジアの国々は中位推計より低い出生率になるのではと想定できます。

 また、各国の5歳別人口のピラミッドを見ると、若年層の人口が極端に少ないため、もし将来的に出生率が高くなったとしても、人口増になることはなく、人口が継続的に減少することは間違いないです。
 図8に韓国の将来における5歳別ピラミッド記載しました。ちなみに、韓国は「少子化問題を解決しなければ、地球上から消える最初の国になる」とメッセージを出している国ですね。

図8.大韓民国の2000-2100年の5歳別人口ピラミッド ・中位推計 ダッシュボードより

 つまり、東アジアの国は推計値よりも人口減少がさらに進み、合わせて高齢化が進むシナリオが現実的と考察できます。東アジアは労働力を確保し、国際競争力を維持するための大きな課題になりそうです。
 そして、東アジアの国が他の地域に比べて出生数が少なく、出生率が低いのは、東アジア共通の理由があると思ったほうがよさそうです。

 ただし、実際には人口減少に対して様々な政策が取られてきており、課題も年月を重ねるにつれ明確化されていくことと思います。人口減少が進む国々の政策が実るといいと、切に思います。

 余談ですが、子育てをしている自分から見ると、子供持つと楽しいですし、人生豊かになると思うのですが。でも、東アジア各国の受験戦争を勝ち抜かなくてはならない親の立場に置かれたら、くじけそうです。子供を持つことで幸せな将来像が描けにくいかもです。

3.最後に

 データをダッシュボードで見える化すると、素人ながらでもこんな考察が語れます。

文章が多くなったので、以下の内容はその4に続きます。
・世界と比較した日本の将来人口について
・将来の人口減少を前提とした個人的な考え
・データの整備とデータ提供について

長文にも関わらず読破いただき、ありがとうございました。

※1 国連のデータ
United Nations "World Population Prospects 2024" : Demographic indicators by region, subregion and country, annually for 1950-2100
Copyright © 2024 by United Nations CC BY 3.0​

United Nations https://population.un.org/wpp/

※2 先進国 ここではOECD加盟国のうち、1人あたりGDP1万ドル以上の国とした。
※3 封鎖人口 人口の流入・流出の移動がなく、出生死亡の差で成り立つ人口増減
※4 人口置換水準 出生率が長期的に人口を一定規模を維持するのに必要な水準。日本では概ね2.07、世界では概ね2.1。
※5 国際移住機関(IOM)2024年版世界移住報告書 第3、4章を参照
   https://worldmigrationreport.iom.int/
※6 人口問題研究2021.12 国際的視点から見た公的将来人口推計の科学的基礎と推計手法  
   https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/21770404.pdf
※7 United States Census:Population Projections 
   https://www.census.gov/programs-surveys/popproj.html

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