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海外ロマンス温故知新5 凍える夜に読みたい! 貧困を真正面から扱った心温まる名作①『ふたたび、恋が訪れて』

『ふたたび、恋が訪れて』
カーラ・ケリー
松本都 訳
幻冬舎 ラベンダーブックス
2009年7月25日発行

ストーリー★★★★☆
ヒーロー ★★★☆☆
ヒロイン ★★★★☆
胸キュン ★☆☆☆☆
切ない  ★★★★☆
ハラハラ ★★★★☆
笑える  ★☆☆☆☆
ホット  ★☆☆☆☆
【萌えポイント】生活が苦しくて、先が見えないときに読みたい名作。全国のシングルマザーに希望の光を注ぐ珠玉のロマンス。でもちょっと退屈かな
……。

ヒロインのロクサーナは、自分の境遇をトランプのゲームになぞらえ、つらいことが起きても「配られたこの手(カード)で勝負する」と困難に立ち向かっていく強い女性。牧師の夫に先立たれ、6歳と4歳の娘を抱えて苦境に立たされます。そこへ義兄のホイットコム卿が母子の面倒をみると申し出ますが、それは愛人契約を意味していました。「あんたはここ数年、弟から夫婦としての慰めを得られておらんだろう。わたしならその特別な慰めを与えてやれる」と言われ、たじろくロクサーナ。
地主で治安判事でもあるホイットコム卿は、かなり執拗に、時には暴力を使ってでもロクサーナをものにしようと迫ります。ロクサーナは、たしかに人恋しい夜もあるけれど、義兄だけはイヤ! ということで義兄の申し出に屈するより貧しい暮らしを選ぶことにします。
牧師館を追い出された一家は、戦争のために家を空けているウィン卿が持っている小さな離れに住まわせてもらうことに。そしてある日の早朝、ウィン卿がやってきました。ウィン卿はナポレオン戦争から帰ってきた、心に傷を負った裕福な侯爵です。自分の所有する離れに住まわせているのは年老いた未亡人とその娘たちと思いこんでいたので、若く美しいロクサーナに一目で惹かれます。

ウィン卿には離婚歴があり、戦争で仲間たちが次々と命を落としていくのを目の当たりにしたせいで心を病み、性格が歪んでしまったということですが、あまりそういう感じでもなく、普通の優しいおじさん……。ロクサーナとすぐに打ち解け、ロクサーナの娘ヘレンとフェリシティにもなつかれて、穏やかな日々が続きます。

何かと親切にしてくれるウィン卿に心惹かれながらも、亡き夫を忘れていきそうな自分が許せないロクサーナ。二人は惹かれあいながらも、勝手に片思いだと思い込んでいるので、関係がまったく進展しません。

ところが年の瀬が迫ったある日、ホイットコム卿が、ロクサーナが精神を病んでいるので子供たちを養育できないと言いがかりをつけ、親権剥奪令状を送りつけてきました。狡猾なやり口のために、異議申し立てもできず泣き崩れるロクサーナに、ウィン卿の土地管理人がある解決策を思いつき…。

この後ふたりは旅をするのですが、もう本当に過酷すぎて、寒くて、こっちまで手がしもやけになりそうでした。全体として心温まる名作ではあるのですが、地に足がつきすぎているというか、生活感がありすぎて地味なのと、二人の仲がちっとも進展しないので、読んでいてあまりにじれったく、正直ちょっと退屈でした。でもまあ、シングルマザーだし喪中なので、そんなに軽やかに次の恋に進めないロクサーナの気持ちもわかります。そして読後感はとても良いです。この物語を通して、どれほど絶望的に見える状況でも、必ず希望の光が差すはずだから、今できることをがんばって精一杯生きよう、という力強いメッセージをもらえました。
(文責:岡田ウェンディ)


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