人生、綴ってみた 【結婚・後編】 #26
息子の主治医に、事の顛末を話した
「旦那さん、反抗期がなかったのなら
これから手がつけられなくなるな。
感情のぶつけ方を知らない人間だよ。
しっかり見ておくといい」
それはすぐに現実となった
弁護士を通しての、債務整理
オカネが自由に使えなくなった旦那は
私の手には負えない存在になっていた
反抗期のない人間は
感情の抑え方を知らず
怒りの矛先をどこに向けたらいいのか
自分自身のコントロールもままならず
悲しくも、その姿は
気の狂った父そのものだった
切っても切っても
私の人生にまとわりつく父の姿
もう、限界だ
この人は父のように
殴ったり蹴ったりはしない
それなのに
虐待されていた時より
身も心もボロボロになっている私がいた
「死んで」と、旦那に言った
「は?お前、何言ってんの?」
軽蔑されて、電話を切られた
約束は覚えていなかったようだ
旦那とは最悪の仲になった
運命は皮肉だった
子会社から親会社に出向する話がきた
「年収一千万になるぞ」と、言われて
旦那はその足で銀行に行き
自分の給料の振り込み先を
私の知らない、違う銀行へと変えた
俺が一生懸命稼いだ給料を
嫁に管理されたくない、と
いつも言っていたそうだ
オカネには魔物が住む、というが
どうやらそれは本当のようだ
結婚して、十七年
年収一千万になった途端
私と息子を捨てた
私にとっては二度目の家族崩壊
故郷から
こんなに遠く離れた所までついてきて
縁もゆかりもないこの土地で
まさか放り出されようとは
思ってもみなかった
息子の受験は
これらの時期と重なり
受験どころではなくなった
弟に話した
「二度と電話してくんな」
そう言って、電話を切られた
オカネのことで
私が頼るとでも思ったのだろうか
義父と義母には責めたてられた
「嫁の管理不足だ」
「あの子は嘘なんかつかねえ!
絶対に、嘘なんかつく子ではねえ!」
私を全否定してまで
我が子を必死で守ろうとする義親
旦那には帰る家があって
何をしても
こんなに守ってくれる親がいる
なんて羨ましい
恵まれた家庭の中で育ったことを
当たり前だと思っている旦那
私の味方は一人もいなかった