人生、綴ってみた 【結婚・前編】 #15
原発が爆発したと聞き
旦那の実家、青森県に避難した
バタバタとした生活が続く
知り合いが津波で亡くなったと
連絡を受けた
海の近くに住む彼女を助けて
自分が流されたと聞いた
一生懸命生きていた人だった
東日本大震災は地獄だった
生きていても地獄
死んでも地獄
同じ地獄ならば、生きていくしかなかった
そんな中
旦那が仕事で一千万以上の赤字を出した
一千万は会社に報告
それ以上は報告できず
生命保険を勝手に解約
保険証書は私が握っているのに
紛失したと嘘をつき
解約金を手にした
それでも補えない分がまた借金となった
返しても返してもキリがない
どうして
赤字の全ての額を報告できなかったのか
「俺のプライドだ」と、言った
「もう二度としない、
今度借金したら、俺を殺してくれ」
「私は殺人者になりたくないの。
そう思うなら、自分で死ねば」
「そりゃ、そうだなあ。
今度借金したら、俺は死ぬよ。
約束する。
こりゃもう、怖くて借金はできないなあ」
何がおかしいのか、旦那は笑っていた
夫婦の会話ではないし、
まともな大人の会話でもない
私は悲しくなった
その頃になって
ようやく息子の病気が判明した
注意欠陥多動障害
通称、ADHD
診断が下るまで費やした期間、八年
その可能性すら疑われたことはなかった
頭の思考回路がつながっていないため
八才にもなるのに、言葉は一才半程度
思考回路をつなげるための
薬療法が始まった