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声の記憶

人は、一番最初に記憶が薄れていくものは、顔ではなくて声だと聞いたことがある。

そうなのだろうか。

子どものときに、天国に行った父方のおばあちゃんの声…ちょっとハスキーがかった声だったな。

一緒にうちの近くに来たお相撲さんに会いに行ったなぁ…

わたしはお相撲さんに興味がわかなくて、

あまりうれしくなかったけど、

おばあちゃんは嬉しそうで、

お相撲さんの隣に立つように言われて、はにかみながら写真を撮った。

「リコちゃんっ。こっち向いて~!!」

あの元気な声、たしかに声というより、言葉の記憶になってきた気がする。

ハスキーな元気な声。ハッキリは思い出せない。

わたしが20代前半の頃に天国に行った、

母方のおばあちゃんとおじいちゃんとおばさんはどうだろう。

おばあちゃんは、優しい声だったなぁ。

「たまげたたまげた」

「めんこいねぇ」

優しいニコニコしたような声、ちゃんと覚えてる。でも、なんだかすこし記憶が遠いところにあるような気がする…。

おじいちゃんは、

「リコ、リコ〈←リコはあだ名。本名で〉」

「孫はみーんなかわいいんだ」

その言葉が頭に残ってる。

声は…少し記憶の遠いところに行ってる気がする。

おばさんも。

優しい言葉はハッキリ覚えてるのに、声の記憶が少しずつ薄れているような気がする。

それがすごくせつなくて。


30歳過ぎて大切な友人にも、会えなくなった。

彼女の声も、忘れたくないから。

わたしは、あれから必ず毎日頭の中で、優しい声や言ってくれた言葉を思い出して、忘れないようにしている。

だから いつも隣にいる気がする。

わたしが何歳になっても。

優しい優しい声を わすれたくない。

声の記憶。大切にしたい。




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