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【小説】まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に あとがき

初めての小説 【まおとプラネタリウムーぼんやり見えるその先に】は、主人公・本田まおと同じ弱視であるわたしが、小学生のときの気持ちを思い出しながら書いた。

1996年当時わたしは10歳の小学校4年生だった。弱視でありながら、普通の小学校に通っていたわたしには、見える子と同じようにできないことも沢山あった。遠ざかっていく友達の後ろ姿を見ながら追いかけた動物園遠足、みんなのように上手く見えなくて戸惑った理科の実験や植物の観察、広い運動場で迷子になった運動会ー。胸がキュッとなる場面を経験した。それでも、授業に決して遅れないようにと、当時は当時なりに弱視学級に通ったり、自宅で家族と勉強をしたり、工夫をしたり、周りのフォローのおかげでわたしなりに頑張って学校に通っていた。

まおちゃんも同じように、社会科見学の前夜に不安になる。友達を見失わないようにしなきゃ、みんなと一緒に楽しめるのかなーまおちゃんにとっては、社会科見学だけではなく、日常ののあらゆる場面でこういった不安がある。

でもそれは、弱視の子どもだけではないはずだ。弱視というハンデがある子どもを主人公にしたけれど、子どもたちは皆それぞれの不安や戸惑いを感じながら、学校生活や日常を過ごしていると思う。

まおちゃんが、子ども科学館で感じたような気持ちは、種類は違えど色んな感情の形で感じている子どもたちがいるとわたしは思っている。

シャイな子も、元気な子も、みんなそれぞれに悩みがある。

そんな子どもたちにーそして、今を必死に生きている大人たちにー子どものときの「未来ってどうなっているんだろう?」「未来ってわくわくする世界なんだろうな」という未来への希望を感じてもらえる物語を書いてみたいと思ったことが、作品を書き始めるきっかけだった。

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この物語は、1996年と2022年と2032年の、【過去】と【現在】と【未来】の三つを感じながら、読んでもらいたい。

1996年【過去】は、令和の子どもたちからしたら、大昔に感じるだろう。

大人が読むなら、人によってさまざまだが、もしかするとこの物語を読んでくださった方のなかには、まだ生まれていなかったり、幼少期で記憶にない人も多いかもしれない。

当時が子ども時代だった人、大人になっていた人、それぞれに思い浮かべる1996年は違うと思う。

テレビはまだブラウン管、携帯電話は徐々に普及し始めている頃、パソコンは前年の1995年にMicrosoftのWindows95を搭載したパソコンが登場した頃。

「未来ってどうなるの!?」

「ドラえもんの時代にほんとになるのかな?」

「宇宙旅行って将来行けるのかな?」

本をよく読む子どもだったわたしは、未来を想像してはわくわくして、”未来”に想いを馳せていた。きっと、同じような人も多かったのではないだろうか。

2022年【現在】は、一人一台スマホを持っていて、子どもたちでさえキッズケータイやスマホを持っていたりする。テレビも迫力満点の4K映像だったり、動画配信サービスを使えば家にいながらにして好きな時間に好きなだけドラマも映画も見る事ができる。世界中の人々とネットを通じて、リアルタイムにつながることができる。家にいながらにして、お買い物ができる。お金持ちなら宇宙旅行も行けるようになった。あげたらキリがないが、1996年からの26年間で驚くほど世の中が変わっている。

2032年【未来】は、今から10年後だ。この物語に出てくるような便利なものがきっと当たり前のようにあるかもしれない。宇宙旅行ももっと気楽に行けるかもしれない。10年前を思い浮かべてみればわかると思うが、10年前と今とでは全然世界が違う。だから、10年後の未来は、また世の中が大きく変化しているはずだ。

過去と現在と未来を思い浮かべれば、未来は確実にすごい世界になっていることが想像できるのだ。

目の見えにくいまおちゃんと同じ弱視のわたしにとっては、いまの2022年だって昔より”見える”ようになった。

大人になって久しぶりに動物園に行ったとき感動した。初めて、動き回っているサルや鳥など、図鑑やテレビではなく、リアルタイムにスマホのカメラ越しに大きくすることで動物たちの様子がはっきりと見えたのだ。単眼鏡という弱視用の補助具を使わなくても、スマホのカメラで外の景色もレストランのメニューも書類もなんでも大きくして読めるようになったのだ。

いつでもどこでもスマホ一つで情報を手に入れられたり、人とつながれることで、見えにくさをすぐに補えるようになった。

これは弱視のわたしの視点だけれど、弱視だけでなく、様々な人にとって、便利になったことはすごく多いと思う。

だからー2032年、そしてもっと先の未来は、もっと便利になる。もっと、不可能が可能になるかもしれない。でも、ただ便利になるだけではなく、人々の心も豊かになるような世の中になってほしい。

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まおちゃんが、お兄さんと出会って、未来でわくわくをたくさん経験できたように、本当の未来がわくわくした世界であってほしい。

子どもたちにも、大人たちにも、そんな希望のある未来を見ていてほしい。

まおちゃんがいますぐにお兄さんのいる未来で勉強することはできないように、いますぐ希望通りの未来に行けなくてもー

ーその時その時を一生懸命楽しく過ごせば、きっと未来ももっと楽しくなるって信じてみてー

大変なこともあるけれど、楽しめないなって思うときもあるけれど、未来はきっと楽しい世界が広がっていると信じて、そのときそのときを過ごしたい。

いまの子どもたちにもそう思って過ごしてほしい。

誰にとっても、便利になるだけなく、心も豊かになるような未来が訪れますようにと願いをこめて。


リコ

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