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「青くて痛くて脆い」感想

映画感想文とも言えない雑文。
個人的にはとても好きな作品だったが、メンタルにきた。

人との距離をつめられる人間が羨ましくも、自分に向けられたらひいてしまうしやめてくれと願ってしまう。一度期待して、その後裏切られたと感じる心の様子を描いている作品だ。

※ネタバレ含みます。自衛お願いします。

青くて痛くて脆い

あらすじ
人づきあいが苦手な大学生・田端楓とポジティブで明るいが周囲から浮いている秋好寿乃。
ひょんなことから出会い、知り合う2人はモアイというサークルを立ち上げる。慈善活動などを行うサークルはいつしか大切な居場所になっていく。
しかし秋好は“この世界”から、いなくなってしまう。
モアイは就職活動などを支援する「意識高い系」サークルに成り下がる。
変わり果てた世界を壊したいと願う田端はモアイを潰す計画を始める。

ざっとこれがネタバレなしのあらすじだ。
このあらすじだけだと、サスペンス要素満載で殺人事件が起きたのか!?と思うだろう。
だがこの作品、まったく人は死なない。グロを心配する人は安心していいだろう。


個人的感想
人間の観点、感じ方は全く違うのだということを改めて感じる作品だった。
吉沢亮の顔の綺麗さでメンタルを保てていたが、そうじゃなかったら発狂するくらい尾をひく作品だった。
先にネタバレすると、秋好は死んでおらず、田端の世界の中で「いなくなった」と表現されている。それは、田端から見て「自分を要らなくなったから捨てた」「ひたむきな秋好はいなくて、みんなの輪の中で大衆化してしまった」ように映っていることからそう言っているのだと思う。
自分の中でもうまくまとまっていないので箇条書きにする。
主に田端(吉沢亮)に感情移入をして見ていた。

・吉沢亮の演技が上手い
・秋好→陽キャと田端→陰キャの描き方が絶妙(この言い方だと語弊があるが、わかりやすく言うとこういうかんじ)
・人の心に土足で入ってきて、平和を乱して、同調したくせにあっさり離れていく、という表現に共感
・視点の違い、観点の違いがあまりに明確に描かれていてキツかった
・小さな言葉に傷ついているのに、秋好はそれに気づかない
・陽キャは陽キャで大変なんだろうけど、ハードルの差がある
・田端の被害妄想、と一言片付けてしまえばそれで済む話なのかもしれないが、自分はそうは思わない。言葉の重さ、関係の変容の仕方は人によって全く異なるということを改めて感じた。
・田端に感情移入したので、違う価値観の人間(秋好)はそういう風に感じて、接しているのかと思った。
・特別でありたかったし特別であると思っていた田端だが、秋好は意見を言わない田端を大切に思っているとはいえ距離のつかみ方がわからなかったんだろう。それで、離れていった(と感じた)秋好は追うこともしなかった。(多分何度かしたんだろうけど田端には「追ってこなかった」と映った)
・人間はありあわせで生きている。
・走馬灯のように、IFを想像してしまうシーン。こうしたらよかっただろうな、こうすべきだったんだろうな、と過去を後悔するのは身に覚えがある。

キツかったセリフ
田端のような経験がある自分としては、かなりきついセリフがいくつかあった。ピックアップしていく。

「隣いい?」
出会いのセリフ。ただ目があったから、というだけで近づいてきて、平和で目立たない生活に土足で入ってくる。その上自分も好奇な目で見られる苦痛→だんだん、受け入れられてしまう状況も同意。
ただ、人と距離を詰める方法があまり好きじゃなかった。自分の常識が全部通じていると思っているのがキツかった。

「誰とも近づきすぎず、適度な距離をもって、傷つけず傷つかないように生きる」
田端のモットー。近すぎると嫉妬したり、嫌なところが見えたりするのを知っているからこそ言える言葉なのだろう。自分もこの考えの人間だ。

「何か言いたいことがあるなら言って」
意見を求める秋好。そう言われて、言えない。なぜなら発案はあなただし、そんな上から言われたら、きっと聞いてもらえないだろうと思う。却下されて傷つくくらいなら言わない方がマシだ。

右要曲折あって...

「気持ち悪いよ」
女だから、男だから、というのもあって気持ち悪いんだろうけど、ここがしんどかった。
全部無にするような。


ネタバレ結末
結局仲直りはせずにそのまま卒業したが、たまたまきた大学見学で秋好らしき姿を見かける。何かが変わるかもしれないと、彼女の前に飛び出る田端。暗転。エンドロール。
受け入れられたかどうか明確にしてなかったのはよかった。ここでハッピーエンドだったら発狂してた。本当だったら「人違いでした」が1番理想的だ。なぜなら、現実はそんなにうまくいかないから。

まとめ
住野よる原作ということもあって、人間の些細な心理描写が実に巧妙だった。学園サスペンスものと言われたらいささか疑問は残るが、どろどろした精神にくる作品だった。
妙にリアルで誰もが一度は経験したことのある状況があったんじゃないだろうか。田端に感情移入するか、秋好に感情移入するかで自分の属性がわかるような気がする。
吉沢亮は最高っていうのがはっきりわかる作品でした!

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鬼堂廻
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