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「出がらし」2021年1月13日の日記

空がよく見えるこの屋上は嫌いじゃない。
薄く色づいた地平線を見ながらぼんやりそんなことを思った。

遠くから工事の音が聞こえて、冷えた空気の中、ふわりと煙草をふかせばなんだか全てがどうでもよくなる気がする。職場の休憩時間をこうして完全に無として過ごすようになったのは1年前くらいからだろうか。

いつのまにかアレもしたいコレもしたいという若さからくるアクティブな感情はどこかへ行き、平穏に淡々と日々を過ごしたいと願ってしまう。
冬はずいぶんと空が澄んでみえる。風のない冬の空は好きだ。

ぼんやりと、小説を出したいなあという気になった。
アイディアだけは豊作なくせに筆が遅いせいでいつも途中で断念してしまう。話を聞いてくれる人が居たらいいのだが、中途半端なものを誰かに見せる気にもならず、しかし急に誰かに見せたくもなるもので困る。
ギムナジウムの小説と、妖怪の小説を今2本かき続けているのだが、それも終わりが見えない。
頑張って書いたものが誰かの手に渡り、感想を貰える嬉しさを知っているので頑張れるモチベーションにはなるはずだというのに、どうにもうまくいかないのだ。

まあ、ごちゃごちゃ言う前に手を動かせという話なのだが…

久しぶりにハマる漫画を見つけたのでそちらで養分は補給しているのだが、やはり小説畑の人間は小説で栄養を補給したいと思ってしまう。
何か読みたい、と思い本棚と向き合うがいまいちピンとくるものが無い。処方薬がないという表現の方がわかりやすいだろう。

試しにホラー小説を読んでみたが、どうにも、一度読んだ本では満足できない欲求らしい。新鮮な驚きと感銘が欲しいのだと自覚した。
しかしそうは言っても、新しい本を読む気にはなれず、堂々巡りだ。
ほんと、何も考えずに行動できるタイプだったらよかった。

そんなことを考えているうちに、いつの間にか日が暮れて随分室内の気温も下がってしまった。ポットの中に残った白湯を出がらしの茶葉に注ぎながら明日もまたこんな感じなのかもしれないと想像する。

奇怪な毎日を望むわけではないが、もう少し何か刺激的なことが欲しい。もう少し何かに意欲的になりたい。そんなことを思いながら、薄くしか色づかない茶を飲んだ。

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鬼堂廻
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