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彼岸の話

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実体験も創作もごちゃまぜの怖い話を投稿します。出版した短編集の中から厳選した話を載せることもあります。信じるか信じないかはあなた次第
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2019年7月の記事一覧

職場に出る幽霊が最近一寸愛おしい

会社に勤めてから数か月が経った。

霊感があるわけではないと思っている。しかし僕は他の人の見ている風景というものを知らない。だから霊感があるかないかというのは主観的な感想だ。

無いと思っている。

職場に、きっと幽霊なんだろうな、というものがいる。

何度も繰り返すが、霊感は無いと思う。だからこれは、霊感ではなく、直感で感じたことだ。

初めて出勤したその時からなんとなく、「いそうだな」とは思っ

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あね

姉の名前は一体何だったろうか。

目が覚めたばかりではっきりとしない意識のまま僕は「典くん典くん」と呼ぶ声のほうへ歩いて行った。

姉。

名前はやはり思い出せない。名前など、どうでも良いのかもしれない。姉と弟、というこの関係こそが僕にとって至上の喜びだったのだ。

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けものみち

*「憂虞」に掲載したお話です。

白無垢じゃん、あれ。

白無垢くらい、知っている。なんだっけな。昔に見た、ドラマだっけな。それで、結婚式のシーンがあって、それで、母ちゃんが、しろむく、って言ってた。母ちゃんも父ちゃんと結婚するとき着たんだって。写真見たけど、ぼやけててよくわからなかった。でも、白無垢は白くって、なんか綺麗だな、って思った。母ちゃんは綺麗じゃなかったけど。

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