【小説】プロットのつくりかた
今回は、小説のプロットをつくるときに役立つ考え方を紹介します。プロットをつくるには小説のストーリーの全体像を考える必要がありますが、その全体像を把握する簡単な方法があります。
主人公の幸福度とストーリーの進行度の関係
以下のグラフをご覧ください。
こちらのグラフは、小説の作中における主人公の幸福度の変化を表したものです。縦軸は主人公が幸せか不幸か。横軸はストーリーの進行度、物語の進み具合を示しています。
①はストーリーの冒頭です。グラフを見ると主人公の幸福度は半分よりは下、少し不幸のところにあります。
②はストーリーが少し進行した部分です。主人公の幸福度は冒頭から上がっていって幸せな状態に入っていきます。
③はストーリーの中盤以降、クライマックスシーンの手前です。ここで主人公の幸福度は作中で最低に落ちます。主人公は作中で初めての絶望を味わいます。
④はストーリーのラスト。グラフを見ると③から④で幸福度は急上昇して、作中で最高にまで上がります。
まとめると、主人公が特に幸せでも不幸でもないところからスタートして、そのあとは小さな幸せを手に入れる。しかしその後にすべてを失って絶望。もうダメかと思われたところから盛り返して、最終的にはハッピーエンド。という流れです。
幸福と不幸を行ったり来たりさせる
ポイントは、③と④の部分で作中において主人公の絶望と最大の幸福がくるようにすることです。
①や②のところに絶望や最大の幸福を持ってくると、感情の起伏が大きいところが序盤で終わってしまうので、そのあとのストーリーが物足りないものになってしまいます。
「最初が幸せな状態からスタートして、そこから落ちて、また盛り返して…」など別のパターンもいくつかあります。パターンすべてに共通するのは、幸福と不幸を行ったり来たりするような、感情の大きな起伏をつくることがポイントだということです。
主人公の幸福度をあげたら、落とす。落としたら、あげる。主人公が幸せを感じているシーンが書けたのなら、そのまえやあとは不幸になるシーンを書く。
例えば、男女のキャラが結ばれる過程を描く恋愛作品。最後に2人は結ばれてハッピーエンドになるとしても、ストーリーのどこかですれ違いが起きて2人の関係が危機的な状況になります。この危機的状況が「不幸」を描くパートになります。主人公を不幸に落とすところですね。
物語のラストが2人が結ばれるハッピーエンドであれば、その前に「もしかしたら2人は別れてしまうかもしれない」と読者が思ってしまうほどの危機的状況を持ってくるのです。
作者が主人公に甘いと、おもしろい小説にならない
大事なのは、落とすときは徹底的に落とすこと。主人公をしっかり絶望に追い込むこと。作者が主人公に甘いとおもしろい小説になりません。アマチュアの小説を見ると、長編小説なのに主人公が絶望を味わっているパートが5ページで終わってしまっているような作品が多いですね。それですと単純に文字数が少ないです。
絶望パートの文字数が少ないとどうなるかというと、読者が主人公の絶望を感じながら読んでいる時間が短くなります。読者の絶望の体感時間が短いと、次に幸福度を上げていくための溜めが作れません。読んでいるほうとしては、絶望パートがやけにあっさり終わってしまったような感覚になります。絶望パートがあっさりだと、主人公が物語のなかで苦労した感じがなく、主人公がハッピーエンドにたどり着いた感動は小さくなってしまいます。
ですので主人公に与える試練の内容も大事ですが、しっかりと文字数を使って長めに描写をすること。主人公と、そして読者に充分な絶望の時間を与えること。そうすることで次のシーンの盛り上がりを読者は大きく感じてくれるようになります。小説のなかで読者が感動するシーンを書くには、該当するシーンの描写だけではなく、その前にどのようなシーンを描くのか?が重要なのです。
まとめ
主人公の幸福度に着目したプロットのつくりかたをご紹介しました。
今回ご紹介した話は、プロットづくりの段階でも参考になりますが、書きあがった小説を推敲する際にも使える考え方だと思います。
「自分の小説は主人公の感情の起伏をつくれているか?」をぜひ確認してみてください。