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定性的に発見した「買う理由」をブランディングの科学「独自指標」で定量的に評価する
ひとり行動が「ぼっち」と話題になったのはもはや過去のこと。今や飲食店やホテルなど街中には「おひとりさま」を対象にしたサービスがあふれ、「ソロ活」なる言葉も飛び出した。シングルが増えるなか、今の日本社会は老若男女、誰もがひとりでも過ごしやすい仕組みになっているのだろうか。
2022年マイブームは「焼肉ライク」です。注文して直ぐ肉が運ばれるので、サッと焼いてパッと食べたら、もうお会計です。この前は、入店から退店まで14分でした。1人飯にちょうど良い量と空間が店内には広がっています。
実際、メディアでは「焼肉ライク」が「おひとり様向け焼肉店」「ひとり客が気兼ねなく楽しめる焼肉店」と紹介されています。確かに、いつ行ってもカウンター席は満席です。
しかし、おひとり様ばかりかと言えば、そうではありません。そもそも私自身が妻さんと2人でよく行きますし、サラリーマン連れや学生さん団体が入店する光景はよく目にします。それなら近くの牛角でよくない?と思わなくもないのですが、なぜか「焼肉ライク」に足を運ぶのです。
すなわち「焼肉ライク」には、「美味しいお肉」「おひとり様」以外に、私自身も気付いていない「行きたくなる理由」があるのだと睨んでいます。
そこで超勝手ではありますが、「焼肉ライクに行きたくなる理由」を定性的に調べてみました。このnoteを読み終えたら、まずは感謝の気持ちを込めて「焼肉ライク」に行きましょう。お近くの店はこちらから。
メンタルアベイラビリティの構築
私は年柄年中、焼肉のことを考えているわけでは無いのですが、ふとした瞬間に「美味しい肉をサクッと食べたいな」と考え、複数ある選択肢の中から「焼肉ライク」を選びます。私の中で「サクッと」と「焼肉ライク」が紐付いているのです。これをブランディングの科学2では「メンタルアベイラビリティ」と表現します。
ブランドのメンタルアベイラビリティとは、そのカテゴリーの購買客が遭遇するさまざまな状況やニーズの中でブランドがどれほど想起されやすいかということである。買ってもらうためには、まず想起されなくてはならない。ブランドと"きっかけ"のリンクの幅(どの程度の多さか)と強さ(どの程度の強度か)が、その実現の可能性を決定する。
メンタルアベイラビリティについては、自分の頭の中に無数の引き出しがあるタンスが構築されている、と考えると良いでしょう。
私の場合、「お肉をサクッと食べたい」引き出しには「焼肉ライク」が一番手前に格納されています。「お肉を腹一杯食べたい」引き出しには「焼肉きんぐ」が、「良いお肉を少しずつ食べて多幸感に包まれたい」引き出しには「叙々苑」が一番手前に格納されています。
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引き出しに付けられたネームを、ブランディングの科学ではブランドとつながっている道の入り口として「カテゴリーエントリーポイント」(CEP)と紹介しています。
消費者は、よほどの中毒でも無い限り、すぐさまブランドを思い浮かべるわけではありません。CEPを介してブランドを想起します。すなわち、より多くの引き出しに自社ブランドがなるべく手前に(第一想起されるよう)格納されることが重要です。
いわゆる「引き出し理論」自体は、某マーケターの方が繰り返し述べられていることであり、以降の説明は割愛します。
ブランディングの科学2では「CEPを利用して魅力的なブランド連想をつくる」「広告を上手に使えばブランドとCEPのリンク構築は加速する」と紹介していますが、長いので、私は意訳して「買う理由を作るマーケティング」と表現しています。
何であれ、ネームの付いた引き出しを開ける作業が売上に繋がります。消費者が自ら作業をしたくなるように仕掛けるのがマーケティングなのかもしれないな、と私は考えます。「これを買って下さい」は単なる押し売りです。
余談ですが、その意味で凄いなぁ…と感じている嚆矢がファミリーマートです。性別・年代問わず「理由の花火」大連発です。秋田の大曲花火大会か。
具体的な声を抽象的な概念にまとめる
では、私も「焼肉ライク」のCEPを考えてみます。(作成はデコム時代の同僚であるOさんにも支援いただきました)
が、単に「私はこう思う」だと何も説得力が無いので、SNSの声を覗いてみましょう。ツールとしてはJX通信社のKAIZODEを使います。
「焼肉ライクに行く理由」というテーマでリスニングすると、こんな具体的な声を見つけました。ちなみに、投稿文自体はざっくり要約しています。
焼肉ライクはひとりでも入りやすい。今日も女性ひとりってお客さん多かった。ひとりだと人に迷惑かけなくて済む。
焼肉ライク、潰れないで欲しい。やもめで焼肉食いたいとき、重宝してる人多いよ。
焼肉ライクにサブスクが出来ようが、この町にやつはいない。あるのはせいぜい焼肉キング。田舎ではお一人様は歓迎されないのである。
なるほど。では、これら自体がCEPになるでしょうか? 答えはNOです。あまりに具体的過ぎて「そうそう!私も当てはまる!」という声は、少ないでしょう。なるべく似通った意見を集約し、抽象化して「そうそう!」という声を増やすべきです。
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