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自社製品が売れない!もうサジ投げた!って時に知るべき「インサイト」の話

とにかく、モノもサービスも売れない時代となりました。

競合と差別化を図っても、消費者は「違いがさっぱり分からない」「別にこの商品じゃなくても、こっち買えば良い」と感じています。

氏曰く「ロイヤリティを高めよ」と言えども、ファンが増えたところで焼け石に水。「もうどうしたらいいかわからーん!」と匙を投げたくなるマーケターは多いでしょう。

そこで今回は、自社製品が無くっても顧客がなーんにも困らない時代にこそ重要な「インサイト」の話です。


今回も、僕が勤めている株式会社デコムでの仕事の話をします。内容自体は以下の「「欲しい」の本質」に書かれた内容と重複する点も多いため、既に目を通された方は復習がてら、ご一読いただければ幸いです。


「だいたい良いんじゃないですか?時代」に、消費者に欲しいものを聞いても商品開発はたぶん成功しない

その昔…と言っても、バブル崩壊前後なので今から30年ほど前までは、お客様に聞いた内容で商品開発すれば良いとされた時代でした。

消費者に「何かお困りのことはありませんか?」と聞けば「外は暑いから涼しいところに居たい!」「服の汚れを落としたい!」「喉が渇いたから何か飲みたい!」という明確な課題、ニーズを発見できました。

したがって、涼しい部屋で過ごすためにクーラーを、服の汚れを落とすために石鹸・洗剤を、渇きを潤すために喉越し爽やかな炭酸水を開発すれば、そこそこ売れました。

ニーズを見つけ、応えることが「商品開発」だったとも言えます。

お客様の抱えている課題は、街中にたくさん転がっていました。「顧客のクレームには価値がある」「顧客の声を大事にしろ!」と言われているのは、こうした昔の名残でしょう。

ただ、いつの間にか、そうした目に見える課題は回収し尽くしたのではないでしょうか。その殆どは解決も済んだと思います。

本当に、いつの間にか…これはマーケティングの専門家が研究済みかもしれませんが、それは日本が成熟市場に突入した時期でしょうか? デコムでは1980年代後半だと見立てています。

消費者に「何かお困りのことはありませんか?」と聞いても「だいたい、ないです」という返事が帰ってくるはずです。商品開発に活かせない声しか拾えないようになったのです。

つまり商品開発において、ひいては広義の意味のマーケティングにおいて"御用聞き"の時代は終わったのです。デコムではこうした状況を踏まえて、現代を「だいたい良いんじゃないですか?時代」と命名しています。

代表するような事例を1つ紹介します。

2008年に日本にiPhoneが上陸して10年が経とうとしています。今やスマホは私たちの日常に無くてはならない存在となりました。今では小学生、幼稚園ですらスマホでタップしています。

その一方で、iPhone上陸前は私たちが愛して止まなかったガラケーは古くて不便な前近代的製品の象徴になりました。

どこへ行った、携帯ストラップ。どこへ消えた、着うた・着メロ。

未だにガラケーを使っている人たちは、よほどの機械オンチか、個人情報を抜かれたく無いという信条の持ち主か、とにかく何らか特別な事情があると思われます。

しかしスマホ登場前は、ガラケーを「なんて便利な最新機械だ!」と感動していたはずです。メールも扱えて、iモードとか言ってPCとは違うけどちょっとしたインターネットもできて、電話がかかってくれば自分の好きな着信音で知らせてくれました。

そんな状況下で「ガラケーにお困りごとはありませんか?」と聞かれても「いや、特には…」という答えが大半で、せいぜい「カメラの精度をあげてほしい」「文字を打ちやすくしてほしい」といった、ガラケーを起点にした目に見えてわかるニーズしか出なかったはずです。

「もちろん電話は使えるべきだけど、ウォークマンのように音楽も聞けて、ゲームもできて、ネットに接続できてPCのように操作できて、でもマウスのような煩わしい操作が不要になれば…そう指が使えれば最高だよね!」

という回答が返って来れば…それはおそらくスティーブ・ジョブズ氏だ!

スマホという新しいものが出てきて、始めてガラケーの不便さに気付くのです。言い換えれば、スマホがなければ大勢の人はガラケーの不便さに気付けなかった。「だいたい良いんじゃないですか?」と答えたはずです。

だから、ドコモなりauなりsoftbankが消費者に「携帯について、お困りのことはありませんか?」と聞いても、何も出ません。商品開発はたぶん成功しないのです。

顧客に聞く限り、ブレイクスルーは絶対に起きません。

もちろん、軽微な、日々の小さな改善においては顧客に聞くべきではありますが。


朝起きてから夜寝るまで、「これはやばい!」と困ったことはありますか?

すごく重要な点なので、もう少し掘り下げて説明します。

例えば、朝起きてから夜寝るまで、「これはやばい!」と困ったことはありますか? 痴漢に間違われたとか、実際に痴漢して逮捕されそうになったとか、そういう非日常的状況を除けば、おそらく無いと思います。

でも、それは普段から"日常"を「当たり前」と受け入れているからです。日常に潜む不便に気付いていないだけとも言えます。

例えば私の場合、普段の買い物は、電子マネーが使える店は電子マネーを必ず使っています。財布から小銭をジャラジャラと1円10円…と数えるのは面倒だし、何より電子マネーならカードでピッと一発で済むので、時間は大幅に短縮されます。

電子マネーを使うと、お金を数えるという行為に時間を取られることがバカバカしく思えてくるのです。これが「不満」です。

未だに財布を取り出して、小銭を数えている人を見ると「なんて面倒なことをしているんだろう!」と思いますが、当人はそれが当たり前なので、何とも思っていないはずです。コンビニにいると、そういう人は大勢います。

もう1つ例を紹介します。

デコム代表の大松は「スマートロック」を自宅に導入しました。そこで始めて「鍵を取り出してガチャと開ける煩わしさ」に気付いたそうです。

スマートロックを導入していない私からすれば「ポケットから鍵を開けるのは普通」ですが、既にスマートロックを導入し、その煩わしさから解消された大松から見れば「めっちゃ不便でしょうに!」と思われています。

大事なのは「何かお困りごとはありますか?」と聞いて「小銭を財布からチマチマ出すのが面倒」「鍵をいちいち取り出すのが面倒」と答える人はいないということです。

"消費者に聞いても出ない"とは、まさにこういう内容を指します。しかし、こういう内容こそ、目に見えなくなった課題です。

ただ、ここで紹介したスマホも、電子マネーも、スマートロックも、完成した商品から照らし合わせて、以前の状態の不満を聞いています。実際の商品開発の場合は完成しておらず、姿・形すらありません。

どうやって課題を見つければいいのでしょうか? これは体系だったルールが無ければ非常に苦しい知的肉体労働となるでしょう。

マーケティング近視眼

目先の便益にばかり囚われず、物事を俯瞰し、目に見えない不満や充足されない感情を解決することは非常に難しいでしょう。どうしても、今ある物事の延長で考えてしまうからです。

1960年、セオドア・レビット教授はハーバード・ビジネス・レビューに「マーケティング近視眼」という論文を発表し、大きな話題を呼びました。

企業が商品を販売する際、その商品の機能のみに着眼してしまうと、自らの使命を狭く定義することになってしまい、結果的に、そのような方法では競合や環境変化が起これば対応しきれないという問題が発生することを解きました。

例えば、鉄道会社は「人や物を目的地に運ぶことと捉えず、車両を動かすことを自らの使命と定義した」ために自動車や航空機との競争に敗れたと提示しています。

他にも映画業界は「自らをエンタティメント産業と捉えず、映画製作会社と捉えてしまった」など、近視眼的なマーケティングの実例をあげています。

いずれも、今やっていることを「当然」と受け止めて、今やっていることを真っ当にやり続ければ顧客が付いてくるとすら考えていました。

レビット教授は「顧客は商品を買うのではない。その商品が提供するベネフィットを購入しているのだ」と主張し、顧客志向の重要性を広く知らしめました。

その一方で「商品の機能のみに着眼してしまうと、自らの使命を狭く定義する」という本来の教訓は、そこまで重要性が広まらなかったのではないでしょうか。

家電量販店に行ってクーラーコーナーに行ってみて下さい。めっちゃ涼しくなる、AIで涼しくなる、適温が保たれる…クーラーの「温度をコントロールする」という機能的価値にのみ着眼した商品ばかりです。

その結果、家電量販店の棚には同じような色と形の面構えのクーラーが大量に陳列され、値段でしか勝負できないような状況が生まれてしまいました。消費者の欲しいモノが無くて、製品だけ進化し続けているのがよくわかります。

クーラーに違う機能価値、情緒価値があれば、こんなことにはならなかったのです。ちなみに機能価値、情緒価値とは何ぞや?という人は以下をご参照ください。

このクーラーじゃなきゃダメ!という人はいないでしょう。どれもだいたい同じ。涼しくなりさえすれば良い。そういう人が大半のはずです。これが、だいたい良いんじゃないですか?時代です。

「だいたい良いんじゃないですか?」とは、レッドオーシャンとも言いますが、こちらの言葉の方が柔らかく聞こえるのでお気に入りです。デコム代表の大松が名付け親なのですが、本当にこういうセンスが天才だと思います。


インサイトが打破する「だいたい良いんじゃないですか?」

「だいたい良いんじゃないですか?」時代は、どうすれば打破できるでしょう。デコムでは「インサイト」の活用を提案しています。

世の中に「インサイト」の定義は各種ありますが、我々は「人を動かす隠れた心理」と定義しています。

色んな人が色んな定義を述べられているのですが、2年前に高広伯彦氏がブログで書かれたまとめが網羅していると思います。
http://www.mediologic.com/entry/2016/11/04/133947

ポイントが2つあります。1つは「隠れている」。もう1つは「動かす」。

隠れていなければ、つまり露出していれば、それは「ニーズ」です。露出しているけどまだ汲み取れていないニーズは、まだ技術的に実現できていないだけです。

人が動かなければ、ビジネスに使えません。最終的には商品を買って貰うためにインサイトを用いるので、動かさない心理をつついても仕方がないでしょう。単なる「良く当たる占い」に留まるべきではありません。

インサイトとは「今までに見た機会が無いけれど、ほらコレが欲しかっただろ?と差し出されると思わず”そう!それが欲しかった!今すぐ買おう!”と言ってしまう価値」だと私は考えています。

課題は、そうしたインサイトの発見がクソほど難しい点です。天才マーケターの気合と根性で、トリュフのように稀に発見する偶然に頼らざる得ない場合が大半です。

ですが、僕の勤めるデコムでは体系立てた方法論で、運や偶然に頼らず高確率で探し出すことに成功しています。


価値からインサイトを見つけ出す方法

インサイトには3つの種類があると考えています。

・なんか良いなぁ(価値)
・なんか嫌やなぁ(不満)
・なんか足りひんなぁ(未充足)

デコムでは「不満」に焦点を当てることが多いです。

例えば、あなたがアイスを販売するマーケターだとして、「買ってくれない」「選んでくれない」「足を運んでくれない」理由を探すとしましょう。要はアイスに対する不満を見つけて、解決できるアイディアを考えるのです。

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でも出だしに説明した通り、不満は聞いても出てこないし、表面的です。先ほどの電子マネーやスマートロックが良い例で、食べなくても別に困りません。アイスを食べなくても死にはしない。

でも、選択肢の俎上にすらあがらないのは何かしら理由があるはずです。

そこで、消費者が見出した「価値」を探し出し、その「価値」から対比して不満を探し出すことにします。

先ほど「電子マネーも、スマートロックも、完成した商品から照らし合わせて、以前の状態の不満を聞いています」と述べました。完成した商品を「価値」に置き換えて考えれば良いのです。

具現化した商品であればよりイメージし易いですが、その人だけが気に入っている価値と照らし合わせることで、よりその人に特化した不満を引き出せるでしょう。

例えば、「自分の中のエネルギーがゼロになったと感じたら、確かな食感のある牛肉を人目も気にせず猛犬のようにがっついて気力・体力を回復している女性」がいたとします。

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その女性から見たアイスは「アイスは、サラサラ・シャキシャキですぐ溶けてしまい、確かな食感がなく、がっついて食べられるわけでもないので自分のエネルギーが回復したように感じない」。これが不満のインサイトです。

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でも、もし「アイスに対する不満は何かありますか?」と聞かれたら、聞かれた当人も「うーん、なんでしょ…。食べた気がしないのかなぁ?」という的外れな回答が出るかもしれません。

なぜ「確かな食感がなく、がっついて食べられない」と答えられないか。本人も分かっていないからです。言語化できていない、という表現が適切かもしれません。自分が抱いている価値から照らして不満を聞いて、初めて出てくる言葉なのです。

つまり、価値という基準が無い不満を聞くだけでは、絶対に出てきません。通常の調査ではまず見つからないでしょう。

不満にたどり着いたら、アイディアにたどり着くのは簡単です。バリュープロポジションと呼ばれる、インサイトを満たしてくれる価値提案を行いましょう。

例えば今回の場合は「確からしい食感がしばらく続く、がっつけるアイス」がバリュープロポジションではないでしょうか。

あとは、それをアイディアにするだけです。例えば「硬いナッツとチョコミントが入って食感が楽しめる小型のボウルに入ったアイス」なんかどうでしょうか?

悲惨なのは「食べた気がしないらしいので、女性でもお腹いっぱいになるように"ちょっと増量"でもしますか?」とインサイトに基づかないトンチンカンなアイディアを出すことです。

単なる感情や気持ちだけでアイディアを求めても、まず成功しません。


どうやったら価値を見つけられるのか?

では、インサイトをどうやって見つければいいでしょうか。

デコムでは、インサイトは人の"行動"の中に隠れていると考えています。その行動を「価値事象」と読んでいます。価値事象を見つけることが、インサイトの発見の入り口です。

価値事象とは、本人だけが価値を感じている行動を指します。簡単に言うと周囲から見れば面白い行動をしている人です。

ただし、面白いとはFunnyではなくUniqueを意味しています。マイブーム、こだわり、企業から見れば間違った使い方、目的とは違う使い方をしている人を探すのです。

例えば、「心身のエネルギーチャージ」に関する価値事象行動を集めたとします。

栄養ドリンクをカクテルのようにブレンドして一気に飲み干す人、分厚いステーキを百貨店の肉屋で買って家で焼いて犬のように食べるという人もいれば、ケンタッキーの3〜4用バーレルを購入して1人で全て食べるという人もいるでしょう。

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食ではなく場所…神社の境内で1日何の飲み食いもせず過ごす人や、京都の鞍馬にある竹林で瞑想する人もいるかもしれません。

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この人たちは、どういう背景・キッカケがあって、そうした行動を始めたのかを分析することで、抱いている「価値」に辿り着きます。その価値から照らして、「アイス」に抱いている不満を聞くのです。

だから「アイスは、サラサラ・シャキシャキですぐ溶けてしまい、確かな食感がなく、がっついて食べられるわけでもないので自分のエネルギーが回復したように感じない」なんて不満に巡り合えるのです。


どういう聞き方をすれば、そんな面白い価値事象に巡り会えるのか?

どうすれば、こんな面白い行動に出会えるでしょう。どういう聞き方をすれば、「分厚いステーキを百貨店の肉屋で買って家で焼いて犬のように食べる」なんて回答を得られるでしょう。

こういう新しい行動を起こす人は、独自に抱えている問題があります。それを解決するために、面白い行動を取っているのです。言い換えれば、新しい問題を掲げて「こういう問題を解決するために、あなたは何をやっていますか?」と聞いているのです。

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この"新しい問題"を、デコムでは「オポチュニティ」と呼んでいます。消費者が潜在的に感じている新しい問題とも言えます。

ただし、「問題」とはProblemではなく、DesireやOppotunity(そのまま)と捉えても良いかもしれません。ブランドやサービスで提供していない価値、というような意味合いがあります

例えば「ヘナヘナにくたびれた自分にがっつり喝を入れてエネルギーチャージをしたい」というオポチュニティがあったとします。

この価値自体は実際に満たす方法は山のようにあると思います。栄養ドリンクとか、まさにそうでしょう。けど、アイスでこの価値を提供したかと言えば、おそらくしていないはずです。

で、ここで既存価値年表が活きてくるわけです。提供していない価値を探すためには、提供してきた価値を知る必要があります。

アイスは休息であり安らぎであり、どちらかと言えばONからOFFに切り替えるための食べ物です。ONからさらにONする、ギアを上げるというのはアイスの提供する価値から外れるかもしれません。だからオポチュニティになるのです。

あとは、今までブランドと当該カテゴリー(アイス業界)が提供してこなかったオポチュニティを調査すれば、1%に満たない可能性で「肉がっつき価値事象を持った女性」に出会えるのです。


どうやってオポチュニティを作るのか?

消費者にいきなり「アイス」の不満を聞きても意味は無い…その理由は、なんとなく伝わったかと重ます。

不満を聞くために、まずその人が抱いている「価値」を探します。言い換えると、アイスに囚われないようにします。アイスの価値なんか聞いても仕方が無いし、むしろアイスから少し離れます。近過ぎれば、自然とバイアスがかかってしまうからです。

例えばアイスの不満を聞くなら、飲食に抱いている価値から少し離れて、買い物や家事・家族ケアなどまで着眼点を広げます。

もちろん、この時点では顧客のことも忘れます。消費者を見るのです。デコムでは「人間を見にいく」と表現しています。

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人間を幅広く見て、ごく少数の人しか行っていないと思われる行動を収集します。デコムでは「新奇事象」と呼んでいます。

例えば、「晩ご飯を食べた後、締めのフルグラで健康不安を解消」している60代男性。「砂糖を何個も入れた極甘コーヒーで味覚アンテナを研ぎ澄ま」している10代女性。

この人だけがしているんじゃない?と思える新奇な行動を俯瞰すると、その裏に存在する潜在的な問題を見つけることができます。例えば、こうした行動から「ヘナヘナにくたびれた自分にがっつり喝を入れてエネルギーチャージをしたいんじゃないか?」というオポチュニティを発見できるようになります。

順番を遡っていきましたが、要は、

①人間を広く見に行き、この人だけがやっているんじゃない?と思える新奇事象を発見する。
②新奇事象を俯瞰して、その裏に存在する潜在的な問題=オポチュニティを作成する。
③オポチュニティを掲げて、独自に解決している人を探し、解決方法(価値事象)を発見する。
④解決している人から見た価値から照らして、自社商品・サービスに対する不満を聞き出す。
⑤価値・不満からインサイトを生み出す、アイディアに活かす。

こういうことでございます。

「インサイトに俺は当てはまらないから、このインサイトはクソ」問題

こうした作り上げたインサイトが、「私には当てはまらない」「そんな人いないでしょ?」と矮小化して考える人が中にはいます。要は消費者のセグメントをMECEに分類したがる人たちです。

本件については個人的には解決済みで、過去のnoteにもその理由を掲載しています。コトラー自身が「インサイトに基づく分類」を言い出していて、当てはまる人、そうじゃない人という分類で良いのです。

要はデモグラによるセグメントはもう相当古い。

「私がアイスを食べない理由はそれじゃない!」と思うのであれば「お前はそうなんだろう、お前はな」と言えば良いでしょう。

加えて大企業であれば、アイディアを具現化すれば、いくらでも商品化テストを行っているはずです。

商品化テストだけは過度に発達しているのが大企業ですので、あとはノーム値を超えるか超えないかを見れば良いだけではないでしょうか。


こんな苦労しなくてもソーシャルリスニングすれば早いし一発なんじゃない?問題

twitterなりinstagramを使ってソーシャルリスニングをすれば、新奇事象、価値事象に巡り会えるんじゃない? だから、こんな面倒なことしなくていいんじゃない? と考える人も中にはいるでしょう。

僕自身も何回かやってみたのですが、どうも悪手です。理由は2つ。

1つは新奇事象・価値事象をやっている人間のデモグラフィックが分かりません。例えば「仕事の働き方改革」は既存ですが「幼稚園児の働き方改革」は新奇っぽく見えます。つまり同じ事象でも、デモグラフィックによって既存か新奇は異なるので、個人は特定できないどこかの誰なのかはすごく重要です。しかしソーシャルではそれがわからないので微妙に使えない。

もう1つは、文字数の兼ね合いもあって情報量がめちゃくちゃ少ない。行動の背景、要因まで書いていない人が多い。

たぶん「ソーシャル分析でなんとかなるでしょ?」とか言っている人は、ソーシャル分析ちゃんとやったことが無い人です。ソーシャルの海に溺れて死んじゃうパターンですね。

海からインサイトという魚を得るには、価値から照らした不満に辿り着くには。まず価値を探さなければいけません。ですが、どうやって…??


まとめ

もちろん、ここで紹介したインサイトの発見方法が全てではありません。独自の手法を持っている人もいるでしょう。

ひとりひとりが、自身の信念に基づいてやれば良いですし、デコムの場合はこうしたら結構な高い打率で優れたインサイトを大量にザクザク発見できますよ、という話でした。

共通認識と言いますか、せめて皆さんと合意できたら良いなと思うのは「インサイトは重要である」「インサイトに基づくものづくりは必要だ」この2つです。

ご静聴ありがとうございました。


蛇足

こんなに膨大な長文を、全編無償で公開して良いの? と疑問に思われた方は、できればコーヒ−1杯分ぐらいサポートして頂ければなぁと思っております。セブンカフェか、スタバのコーヒーかは知らんけど。

あとは、出版社から声かかんねーかなぁとも思っております。noteってそういうところだってオラ聞いたんだ。

以上、お手数ですがよろしくお願いします。


というわけで完成しました

今回の話を、もりもり盛りだくさん詰め込んだ書籍が光文社新書から刊行されました。こちらもご笑覧頂ければ幸いです。

以上、お手数ですがよろしくお願いいたします。


1本書くのに、だいたい3〜5営業日くらいかかっています。良かったら缶コーヒー1本のサポートをお願いします。