給特法改正の目的は残業代を出すことではなく行政に強制的に教育予算をつけさせること
教員の働き方改革が叫ばれて久しいが、その中で言われる一つが給特法の改正。
賛否両論あるが、表面的には「教員の残業代を出せ」という議論になりがちだ。
ただ、この議論はそういう目的でやるのは誤りだと思う。残業代を出すことが解決ではなく、残業代を出さないように真剣にマネジメントに取り組むこと、そしてその先の「教育行政に強制的に予算を取らせること」にある。
教育行政と大きく言ったが、文科省と都道府県教育委員会と市町村教育委員会がある。ただし、いずれも教育の分野は本当に本当に予算がつかない。理由はめちゃくちゃいっぱいあるが、簡単にかいつまむと「費用対効果が見えづらい」「選挙に結びつかない」ことにある。つまり、教員の働き方改革のために予算をつけても改善するかどうかハッキリ示すことができないし、そもそも効果をどうやって測るのかも不透明だ。子供の学力で測るとなると、たぶんちょっとやそっとでは効果は出ない。
また、教員の働き方改革を声高に言う議員も多くはない。教員の働き方改革を進めることは、家庭にお願いすることを増やすことに繋がる。だが、教員よりも保護者の方が投票母体が多い。
本当はもっともっと深い議論があるが、簡単に上げてもこれくらい、教育には予算がつかない。
逆に言うと、例えば建物の建て替えとか工事とか、目に見えるものや直接命を守るための名目のものは予算がつきやすい。
ただ、教員の働き方改革はもう限界だ。人は増やさないといけないしカリキュラムは減らさないといけない。清掃の委託なんかも進めた方がいいし、ツールも導入した方がいい。外部の講師に委託した方がいい授業もある。部活のコーチもお金がかかる。とにかくお金がかかってしょうがない。が、お金がつかないから、先生の部活遠征の交通費は全部自腹、紙で書いた書類にハンコを押す。何もなくならない。
働き方改革をしろ、けどお金はつけない。
これは教育行政の怠慢以外の何者でもないが、今の教育行政に財政と戦う力は残念ながらない。
だから、教育行政にお金をつけさせる構造的な力が必要だ。そこで、法改正という選択肢が出る。法改正すれば、強制的に法律に則らなければならない。
残業代満額出すのが難しくとも、そのために何かの対策をする名目でお金をとれる。そうすると教員の働き方改革を積極的にやらなければならないという行政側のプレッシャーにもなる。
長年蓄積された「残業代出ないからタイムカードは先に切るけど土日も使ってやるしかない」を強制的かつ構造的に動かす一歩目としては、多少破壊的なやり方ではあるが効果的ではあるだろう。