アスリートの食事
研究 vs 食の迷信
インターネット、新聞、雑誌、さらにテレビ上でも、”食べるべきでない物”の情報が溢れかえっています。特に炭水化物とグルテンが、最近では最もメディアのバッシングを受けていて、肥満にはじまり心臓病や糖尿病などの原因だと言われています。
ひきしまったアスリートであり、フィットネス専門家である私は、炭水化物をエネルギーと体重維持のために摂取しています。オートミール、無農薬果物や、ホールグレイン(無精白)のパンやパスタといった炭水化物が私の”アスリート食”の主。これらは私たちの強い味方であり、敵ではありません。ある日男性が私がベーグルを食べているのを見て、首を横に振り、(冗談ではなく)”尊敬の念が無くなったよ”、と言ったのです。”こんなにスタイルが良いのに、そんな物を食べるだなんて思わなかったよ。”私は運動や競争する際のエネルギーやグリコーゲン蓄積にあたって、炭水化物がどれほどアスリートの食事に重要なのかを彼に説明しました。残念ながら彼は”炭水化物は悪だ”という考えに洗脳されていて、私の説明は入ってこないようでした。落胆した私は、アスリートにとって特別必要な栄養に関するわかりやすい記事を書き、蔓延する食に対する”迷信”をかき消すことを心に誓ったのです。追記で、あまり語られることの無い、新鮮な無農薬食品を食べることの利点についても特筆します。
不健康な食事がもたらすこと
一部のアスリートや徹底した運動者は、トレーニングするだけで健康になり、不十分な食事からくる有害な影響に対して自分は無敵だと考えています。アスリート友達と食事をする際に、たくさんの人が油まみれのミートボールや手羽先を注文することにとてもびっくりしますよ。アスレチックトレーニングには健康に対する利点がもちろんあります。しかし、引き締まったアスリートでも先天性の心臓病に苦しんだり、不健康的な食生活やトレーニングのしすぎで心臓病を患ったりします。
栄養満点の食事が回復や健康をサポートし、様々な生活習慣病の発症を防ぐでしょう。体に良い、栄養バランスを考えた食事をするようにクライアントに催促してください。栄養に関してきちんとクライエントを教育することによって、彼らのより良い健康状態、QOL、そして運動パフォーマンスに一役買うことができます。
アスリートの食事にはより多くのカロリーと炭水化物が必要
多くのアスリートやフィットネスのプロフェッショナルは毎日何千ものカロリーをトレーニングや指導で消費しています。マラソン走者は一時間につき1000calも消費することも。私を含めた多くのアスリートが、質を犠牲にせずに必要なカロリーを摂取することに苦労します。手早くカロリーを摂取したい時私は、ナッツと野菜/果物スムージーに頼っています。
運動栄養学者であるナンシー・クラークは、健康的な食生活を確立することへの努力は、より多くのエネルギー、よりよいパフォーマンス、そしてよりよい健康状態のためであれば小さな代償にすぎない、と信じています。クライアントや受講者をこのように説得することがフィットネスプロフェッショナルにとっての最大の試練です。炭水化物は悪ではない、太る元ではない、と理解してもらうためにはかなりの説得力が必要になります。
アスリートを含むたくさんの人々が炭水化物は太る、と思っています。大学の女性アスリート425人のうち43%が”体重増加を恐れている”とアンケートに回答。しかし、この”恐怖”を根拠づける証拠は少ししかありません。クラークのクライエントのうち何人かは、食事の中に炭水化物の割合を増やしたあとで体重が減ったのです。
”炭水化物は筋肉にエネルギーを与えるために重要”と、クラークは言う。炭水化物は肝臓内と筋内でグリコーゲンに変換された末に組織に貯蓄され、次の活動に必要なエネルギーになるのです。(低炭水化物ダイエット下でのトレーニングの結果)グリコーゲンの貯蓄が枯渇すると、アスリート達は疲労し、自分の力を出しきれ無いと感じるでしょう。
もしクライエントが炭水化物を増やすことに抵抗を示したら、トレーナーは2週間だけやってみましょう、と提案するのがいいかもしれません。利点がはっきりし、体重が増えないことが分かったらアスリート達はその食事方法を続けるでしょう。グルテンフリーの食事をしているアスリート達であれば、芋類、トウモロコシ、豆、麦、バナナや他の果物、餅、ナッツ類、Hammer Gel®, Honey Stinger® Waffles, GU™ Chomps and LÄRABARs®などから炭水化物を摂取することができます。
注)Hammer Gel®, Honey Stinger® Waffles, GU™ Chomps and LÄRABARs®は商品名
一日の前半に一日の摂取カロリーの大半を摂取すると、それが運動中に消費され、よりよいパフォーマンスと体重コントロールに繋がります。朝ごはんを食べることがダイエットの総合的な質をあげ、完食欲を抑え、パフォーマンスを増幅させてくれると、クラークは観察しています。
よりよいパフォーマンスのためのコツ
健全なスポーツ食にはバランスの良い炭水化物、タンパク質、そして脂質が含まれています。同程度のカロリーの食事を一日に4回とるべきだとクラークは言います。
また、たくさんの果物と野菜を、と提唱しています。
炭水化物はトレーニングの前後に摂取すると特によくアルゴジェニック(補助的な)働きをします。パン、米、芋類や果物を含む、血糖指数の高い炭水化物は消化吸収が容易で、簡単に血糖値をあげてくれます。血糖値の上下には個人差があり、一個人内でもその日によって43%まで変化することも。この理由によりクラークは、アスリート達は自分に合う炭水化物食を模索し、確立するべきだと示唆している。
RDA(Recommended Dietary Allowance)のガイドラインによると、よい健康状態を保つために普通の人であれば体重1ポンドにつき0.4gのタンパク質が毎日必要だという。運動量の多い人だと、体重1ポンドにつき0.5-0.75gのタンパク質が必要。さらに筋肉を増やすためとなると、1ポンドにつき1gは必要になるだろう。タンパク質とミネラルはアスリートびとって必要不可欠。2010年のACSMの研究では、18ー22歳の女性アスリートのうち50%以上が鉄欠乏症に苦しんでいる。鉄欠乏は衰弱に繋がる。牛肉などの赤肉や、濃縮シリアルがタンパク質と鉄分のよい補給源です。その他のタンパク源だと、卵、ヨーグルト、低脂肪牛乳、フムス、豆腐、鶏肉や魚類があります。乳製品にはカルシウムも含まれているので骨にも良いですね。その他のカルシウム源だと、ブロッコリー、ケール、緑色野菜、濃縮オレンジジュース、鮭や鰯などの骨つき魚、豆乳や豆腐が挙げられます。
脂質はアスリートの食事にとってとても重要なものですが、炭水化物同様恐れを抱く人が多いですね。適量の質のいい脂質の摂取はビタミンA, D, E, Kの吸収を良くし、ランナーの持久力を高めます。
無農薬に関する議論
トゥーソン出身の神経専門家であるティモシー・マーシャル氏は言いました。食は質が全てだ、と。彼は世界でも有数の栄養学者で、低リチウム治療法を率先している人物でもあります。
マーシャル医師は栄養失調は運動のパフォーマンスを下げるだけでなく、炎症、病気、慢性の症状に関係していると支持しています。”最適な健康と運動パフォーマンスのためには、無加工・無農薬の自然食品に注目するべきだ。なぜならそれらは、他のものに比べてより多くの抗酸化剤、ビタミン、そしてミネラルを含んでいるから。”
マーシャル医師によると、多くの高炭水化物食は加工されているか、殺虫剤が撒かれていて、殺虫剤はグリホセイト中毒の原因になることもある。この強化された除草剤は積極的にマグネシウムやその他重要なミネラルに結びつく。要約すると、薬品を浴びた食物は、食べられる前からその栄養分が奪われているのです。
Environmental Working Group (www.ewg.org) は、無農薬育ちのりんご、ピーマン、セロリ、さくらんぼ、輸入葡萄、ケール、レタス、ズバイモモ、 桃、洋ナシやイチゴを購入することを推奨しています。なぜならこれらは特に農薬処理の対象になるものだからです。アボカド、とうもろこし、玉ねぎやパイナップルは最も殺虫剤処理の軽いものです。
少量の殺虫剤にさらされることの有毒性は急性のものから長期のものまで様々。慢性的な農薬処理済みの食物内の重金属摂取は、腸の不快感や、脳、腎臓や神経への損傷、また癌と関連付けられています。自然食品を一週間食べ続けた大人では、体内の殺虫剤量が約90%下がりました。
新鮮な自然食材はそうでないものと比べてより多くの栄養を含んでいます。実際に様々な抗酸化剤の濃度が自然食材の方が高いのです。マーシャル医師は言いました。”栄養や抗酸化剤の濃縮された果物やでんぷん質の野菜を摂取している方が回復も早く、体の調子も良いだろう。新鮮または冷凍された果物や野菜は抗酸化剤を多く含んでいて、それらは抗炎症作用を持っていて、筋肉痛を和らげ回復を早めるだろう。”
アメリカでされた研究では、オーガニックの牛乳は一般的な牛乳に比べてオメガー3脂肪酸を62%多く含んでいました。有機飼育された乳牛は他に比べ新鮮な餌を摂取できるということが、脂肪酸の違いの理由かもしれません。
100%オーガニック、または非有機5%未満の食材を証明する、USDAオーガニックシールを探してみてください。金銭的に厳しいアスリート達は、CSAプログラムを通じて自然食品を購入することが出来ます。
最悪の脂質は、加工食品に含まれているものや、とうもろこし、大豆、キャノーラなどの脱酸油だと、マーシャル医師は言う。”対して最も良い脂質とは、生のナッツ類、ナッツバター、種子類、アボカド、卵、高脂肪乳製品や有機バターに含まれる、加工・加熱のされていない脂質だ。中でもエクストラバージンオリーブオイルやココナッツオイルはエネルギーや心血管系の機能に一番良い。”
“早食い” の改善方法
アスリートもそうでない人も、しばしば忙しいスケジュールのために食事を飛ばすことがあります。運動前の補給をしないと、乏しいパフォーマンスやエネルギー不足のリスクに。そんな人たちは果物、ナッツ類、トレイルミックス、ヨーグルトやコッテージチーズを選んでみてください。どれも栄養満点で素早く食べれるものですから。
レース前後の補給
適切な水分補給も、燃料補給の重要な一部分。しかし、多くのスポーツドリンクは有害な材料を含んでいます。アスリート達はアスパルテームとスクラロースが含まれているものは避けましょう。二つとも体に非常に有害と確定されたものです。
私が激しいエクササイズをするときに選ぶ飲み物は、水に混ぜたOxylentです。この商品はクエン酸、ビタミンとミネラルが豊富に含まれています。タルトチェリージュースもパフォーマンスを向上させると証明されたスポーツドリンクの良い互換ですね。ジュースを飲みながら109分走ったサイクリストは、飲まなかったサイクリストに比べてVO2の数値が4%低かったのです。また、炎症反応の減少も見られました。
最近の研究では硝酸塩を多く含む食品を食べることで酸素の利用とパフォーマンスを良くすることができると示唆しています。ある研究では、ビートジュースを活動の前6日間飲んだロウアー(漕ぎ手)はより良いパフォーマンス結果を残したそう。
活動前にカフェインの入った飲み物を飲むことで利益を得られるアスリート も。カフェインは痛みに対する耐久力を上げるといわれています。ただし、胃の不快感を催した場合は避けるべきですね。
トレーニングや大会の前に食事をすることでパフォーマンスは向上します。1985年の研究では、ワークアウトの四時間前に朝食をとり、活動前にキャンディーバーを与えられたサイクリストは食事制限をしているアスリートに比べて、15分のスプリントインターバルと45分の中度負荷サイクリング活動において、20%多く活動を示しました。朝の5時にエクササイズしているあなたも、絶望する必要はありません。エクササイズ前におやつを食べて、最中に水やスポーツドリンクを飲んだサイクリストは食事制限をしているサイクリストに比べて、スプリントインターバルにおいて12%の改善を示したのです。
バナナ、グミ、ジェル、 葡萄、そしてパイナップルのスポーツドリンクが、ほとんどの人々が消化しやすい高炭水化物食品・飲料の例です。エクササイズ中はインスリン反応が鈍いため、たとえ高血糖の食べ物や飲み物を運動前・中・後に摂取したとしても、非糖尿病のアスリートは高血糖症を恐れる必要はありません。
りんご、バナナ、レモンやオレンジを含む多くの果物が、素早くエネルギーをくれるクエン酸とリンゴ酸を含んでいます。抗酸化剤要素に加え、これらの化合物は体内のエネルギー生成に関係する主要のサイクル(クエン酸回路やクレブス回路)に直接入っていき、筋肉が必要とするエネルギー源である細胞エネルギー、ATPを生成します。
クラークはアスリート達は自分達の消化器官を鍛えて、活動前に食事が出来るようにし、加えて相性のいい食べ物を探ぐるべきであると提案しています。
消化器官が食べものに慣れていないことで、浮腫み、ゲップ、痙攣、胸焼け、逆流、胃痛、嘔吐や突然の排便欲が起こることがあります。
エクササイズ後の回復では、炭水化物はグリコーゲン貯蓄を補充し、タンパク質は筋肉を補修します。”チョコレートミルクがとても優秀な仕事をしてくれるんだ。”とクラークは言います。研究によると回復を早めてくれるそう。その他でいうと、甘味剤入りのヨーグルト、ソースを絡めたパスタや牛乳をかけたCheeriosなど。
持久性のアスリート達への考慮
一度に一時間以上運動をするアスリートは、エネルギーを保つために、運動中にカロリーを摂取する必要があります。1~2.5時間運動する人であれば、1時間につき120~240kcalを摂取するべきです。2.5時間以上運動した場合それ以降アスリートは、血糖値の暴落を防ぐため1時間につき240~360kcal摂取するべきです。
生命の燃料
伝えたいことはシンプルです。クライアントのアスリート達は、十分に質の良い、栄養豊富な食事をとり、ワークアウトや大会のために正しくエネルギー補給をし、数え切れないほどの利益を勝ち取ってください。
マーシャル医師は言いました。”体に入れるものがそのまま成果になるものだと、私は固く信じている。””より質の良い燃料を入れれば、間違いなくより良いパフォーマンスを得ることが出来るだろう。人は毎日最低な質の燃料(加工食品や放送食品)を体内に入れ、どうしてこんなに疲れているのだろうか、気分が落ち込むのだろうか、考えがまとまらないのだろうか、身体中が痛いのだろうか、と悩むのだ。つまりまとめると、体内に入れるものが直接結果に関係しているということだよ。”