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長谷川と山下と藤野が出場! シティのオーストラリアでのPSMの雑感 :: WSL Watch #102

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"WSL Watch #083"と"WSL Watch #098"で紹介したマンチェスター・シティとレスター・シティとウェスト・ハム・ユナイテッドとパリ・サン・ジェルマン(PSG)の4チームがオーストラリアのパースに集まってミニ・トーナメントを行うプレ・シーズン・マッチ(PSM)、パース・インターナショナル・フットボール・カップ(Perth International Football Cup)を全試合観たんで、観てて感じたことをメモ的に残しておこうかな、と。すぐ忘れちゃうんで。まずはマンチェスター・シティの2試合、レスター・シティ戦とPSG戦を(レスター・シティとウェスト・ハム・ユナイテッドについては別の記事で)。


マンチェスター・シティの注目ポイント

まず、基本的なスタンスとして今回のツアーは中3日で2試合って日程で、オリンピックに出てた選手は合流のタイミングがバラバラって状況だから、レスター・シティ戦よりはPSG戦のほうがより1stチョイスに近い人選になるのかな、と。

その前提で、同じポジションの選手のプレイ時間を調整しつつ、新加入選手に一定以上のプレイ時間を与えつつ、アカデミー所属の若手も試す感じだったって印象かな。つまり、いかにもPSMって感じってことなんだけど。

8月28日 レスター・シティ戦

この試合はDAZNで配信されてたから上記リンク先でフルマッチを見逃し視聴可能。スタメンは以下の通りで、やっぱりオリンピックに出場してた選手はスタメンでは使わないらしい。

で、試合前のタイミングで個人的に注目してたポイントは以下の通り。

長谷川唯の代わりは?
最注目ポイントはやっぱり長谷川唯の代役は誰? って点。'代役'って言っちゃうとちょっと表現が直接的すぎるかもしれないけど、2シーズン連続でリーグ戦フルタイムに近い出場時間だった選手だから基本的には絶対的なレギュラーだったって言えると思うんで、長谷川唯が出れない(or 休ませる)ときに誰がCMFでプレイするのか、並びの変更はあるのか、いろいろチェックしとくべきポイントなのかな、と。しかも、昨シーズンまでカップ戦なんかで長谷川唯が出ないときにCMFで使われることが何度かあったルビー・メイス(Ruby Mace)は奇しくもこの日の対戦相手のレスター・シティにこの夏に移籍してて、さっそくこの試合に出てたりして、今までは「長谷川唯の代役候補はメイスなんだな」って感じだったけど、その部分がわからなくなってるんで。

シティのミデマー
マンチェスター・シティのこの夏の最大の補強は言うまでもなくWSLの歴代最多得点記録を持つオランダ代表FWのフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)だから、単純に「シティのミデマー」が観れるってだけで大きな注目ポイントになる。もちろん、どのポジションで? カディジャ・ショウ(Khadija Shaw)との同時起用は? とかも含めて。

藤野あおばと山下杏也加の出場は?
この夏に新たにマンチェスター・シティに加入した藤野あおばと山下杏也加が出るのか、出るならどのくらい使われるのか、どんなプレイを見せるのかも大きな注目ポイント。2人ともオリンピックに出てたからこのオーストラリア・ツアーで本格合流って感じだったっぽいんで、チームでのトレーニングはそれほど多くはできてなかったと思うけど。もちろん、他の新加入選手も含めてだけど。ちなみに、オリンピックで負傷した清水梨沙はツアー不参加なのでもちろん出場はしてない。残念だけど。

サシャ・ルイスは観れる?
これは完全に個人的な興味っていうか、ぶっちゃけ、新シーズンのマンチェスター・シティ云々にはそれほど大きく影響する話ではないと思うんだけど、サシャ・ルイス(Sacha Lewis)が今回のツアーの参加メンバーに選ばれたことを知ってから、ちょっと楽しみにしてて。サシャ・ルイスはアカデミーに所属してる16歳の右SBの選手なんだけど、マンチェスター・シティのメンズ・チームで大活躍してて最近はイングランド代表にも呼ばれたりしてる19歳のリコ・ルイス(Rico Lewis)の実妹で。リコ・ルイスについてはここで詳しく書くと長くなっちゃうから止めとくけど、とりあえず、ペップ・グアルディオラ(Pep Guardiola)監督が「小さなフィリップ・ラーム」って称したようなアカデミー出身の逸材で、2023年1月に『ジ・アスレティック(The Athletic)』に載ったリコ・ルイスに関する記事で妹もアカデミーでプレイしてるってことが触れられてたのを読んでたから、「リコの妹、早く出てこないかな」「でも、リコの妹ってことはまだまだ若いんだろうな」なんて思ってたんで。もちろん、まだプロにもなってない年齢の選手だし、過剰に「●●●の妹」みたいに注目するのもどうかとは思うけど、でも、とりあえず今回のツアーのメンバーに入ったってことは期待されてるんだろうし、この試合のベンチに入ったってことは出るのかも? ってやっぱり注目しちゃった。

で、試合自体の展開は以下のような感じ。

CMFはブリンドキルデ・ブラウンが担当
レスター・シティについては別の記事で細かく触れるつもりなんでここでは最低限にしとくけど、レスター・シティの4-4-2の非保持に対して基本的にはマンチェスター・シティが保持する展開で前半は進んだかな。注目のCMFには1月に加入した20歳のローラ・ブリンドキルデ・ブラウン(Laura Blindkilde Brown)が入って、あまり観たことがない若手選手が2人、右CBにグレイシー・プライア(Gracie Prior)と右インサイドMFにイヴ・オキャロル(Eve O'Carroll)も使われてた。ちなみに、グレイシー・プライアは19歳でトップ・チームをメインに活動するのは24/25シーズンが初めて、イヴ・オキャロルは17歳のアカデミー所属選手とのこと。蛇足だけど、マンチェスター・シティのサイトに「オーストラリア・ツアーに参加してるアカデミーの選手は?」なんて記事があって、すごくありがたい。あと、CFWに入ったポピー・プリチャード(Poppy Pritchard)も1月の移籍ウィンドウで入った選手だけど、今まではそれほど出てない若手って言っていいのかな。

マンチェスター・シティが保持する前半に
レスター・シティの非保持は4-4-2でミドル・ゾーンで構えてて、ハイプレスで積極的にボールを奪うって感じじゃなかったから、基本的には保持するマンチェスター・シティがレスター・シティの4-4-2の守備をどう攻略するか、逆にレスター・シティは4-4-2で我慢強く守りながらカウンターを打てるかって展開だったかな、前半は。キックオフ直後に押し込んだシーンがあったけど、次にレスター・シティが攻めれたのは13分過ぎ、マンチェスター・シティのCKからレスター・シティがカウンターを打って宝田沙織の惜しいシュートで終わったシーンだったんで。ちなみに、レスター・シティは17分過ぎにもノエミー・ムション(Noémie Mouchon)のキープからの展開でユッタ・ランタラ(Jutta Rantala)のクロスのシーンを作れてたけど基本的にはわりと散発的で、マンチェスター・シティが慌てるシーンは少なかった感じ。マンチェスター・シティはGKのキアラ・キーティング(Khiara Keating)がCBの間に入ったり、SBが中のレーンに絞ってCMFの脇に立ったりしつつ、丁寧な保持で試合をコントロールしながら攻めてたけど、ゴールに迫るようなチャンスはそれほど多くは作れなかった印象だったかな。

山下の見事な連続シュート・ストップ
マンチェスター・シティは後半の頭からCBのコンビとGKを交代させて、アレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)とグレイシー・プライアに代わってオーストラリア代表のアラナ・ケネディ(Alanna Kennedy)と新加入のナオミ・レイゼル(Naomi Layzell)、キアラ・キーティングに代わって山下杏也加が入ったんだけど、後半の立ち上がりに攻め込まれる展開になって、後半開始から10分の間に山下杏也加が3本連続でシュートを止めるシーンがあって。特に50分過ぎのユッタ・ランタラとの1v1は試合の流れを左右するビッグ・セーブって言っていいんじゃないかな。改めて確認してみると別に攻められ続けてたわけじゃないけど、CBコンビの交代でマンチェスター・シティのビルドアップが不安定になったのか、レスター・シティも選手交代をしてたからそれで攻撃の迫力が出たのか、たぶんどっちもそれなりに当たってると思うけど、後半の15分くらいまでは拮抗してた、もしくはややレスター・シティ優勢って展開になってたかな。レスター・シティ側の要因としては、随所に効果的なプレイを見せてた籾木結花の起用も大きかったと思うけど。詳しくはレスター・シティのことを振り返る記事で書くつもりけど。

60分過ぎから別のユニットに
徐々にマンチェスター・シティの保持が落ちついてきた60分過ぎにさらに6人交代、CMFでプレイしてたローラ・ブリンドキルデ・ブラウンがジェス・パーク(Jess Park)と並んでインサイドMFに入ったんだけど、インサイドMFの2人以外のスタメンは全員交代して別のユニットになった感じ。ケガで昨シーズンの終盤は欠場してたカディジャ・ショウが復帰してCFW、スタジアムから大きな声援が送られてたオーストラリア代表のメアリー・ファウラー(Mary Fowler)と藤野あおばがWG、長谷川唯がCMF、右SBにサシャ・ルイス、左SBに17歳でアカデミー所属のコーディ・トーマス(Codie Thomas)が入るカタチに。清水梨沙が参加できたらこのタイミングで出てきたのかな...とか思いつつ。

ゴールを脅かし続けるマンチェスター・シティ
交代出場直後の64分過ぎに浮き球のミドル・パスで藤野あおばを走らせてCKを獲得したり、82分過ぎにも浮き球で藤野あおばをラインの裏に走らせてクロスからチャンスを作る起点になったり、保持を安定させつつボールをスムーズに循環させて、自分より前にいるタレントの武器を発揮させるプレイを随所に見せた長谷川唯は相変わらずの存在感と安定感だったかな。後半の立ち上がりはバタバタしてたCBコンビもだいぶ安定して、ボックス近辺まで踏み込めるシーンも増えて、60分以降は基本的にマンチェスター・シティが押し込む展開に。

ミデマーとショウの同時起用
70分過ぎにローラ・ブリンドキルデ・ブラウンと交代でフィフィアネ・ミデマーが登場。つまり、カディジャ・ショウと同時起用でインサイドMFに入るってことになるんで、見どころ満載の約20分に。メアリー・ファウラーの左足のミドル・シュートがあったり、藤野あおばのクロスにメアリー・ファウラーが詰めたり、藤野あおばのクロスからのフィフィアネ・ミデマーのヘディング・シュートがクロス・バーに直撃したり、藤野あおばのスルーボールからのカディジャ・ショウのシュート・シーンがあったり、メアリー・ファウラーのスルーボールに抜け出したフィフィアネ・ミデマーがGKと接触してあわやPK? ってシーンがあったり、藤野あおばのパスからのジェス・パークのシュート・シーンがあったり、基本的にはマンチェスター・シティが攻めたててたんだけど最後まで決められずにスコアレスのまま試合終了。一応、トーナメント形式になってるから、延長戦はやらずにPK戦ってことになったんだけど、山下杏也加が籾木結花とソフィー・ハワード(Sophie Howard)のシュートを見事に止めて、長谷川唯は失敗したけど4-3でマンチェスター・シティが勝ち上がることに。この時点では対戦相手は判ってなかったけど、結果的にPSGと対戦することになったのはUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグを控えてるマンチェスター・シティにとっては良かったんじゃないかな。

で、試合終了後にざっくりと総括すると以下のような感じに。

ブリンドキルデ・ブラウンのCMF起用
結局約70分出場して、CMFとして約60分、残り約10分はインサイドMFとしてプレイしたローラ・ブリンドキルデ・ブラウンだったけど、個人的にはわりと好印象だったかな。CMFでのプレイは初めて観たけど、概ね問題なくタスクをこなしてた感じで。特に前半のレスター・シティは4-4-2でミドル・ゾーンで構えてハイプレスはほとんどなかったから低い位置からのビルドアップに関わるシーンはあまりなかったけど、あまり下りたりサイドに流れすぎずに相手の2トップの背後に立ってボールの循環に上手く関われてて。前向きになったときの攻撃への関与もできてたし。あえて課題を挙げるなら後半の最初の約15分のバタバタして保持が安定しなかった時間帯ってことになるんだろうけど、ローラ・ブリンドキルデ・ブラウンだけの責任って言える感じじゃなかったんで。もちろん、現段階で長谷川唯と比較するのは酷なんだけど、とりあえずオプションとして十分考えられるようなパフォーマンスは出せてた気がするかな。

ポジティヴなインパクトを残した藤野と山下
山下杏也加が45分+PK戦で見せたパフォーマンスは贔屓目抜きでもポジティヴだったはず。後半立ち上がりの連続シュート・ストップもPK戦での2本ストップも明確に試合結果に直結したプレイだったし、保持局面でのビルドアップへの関与も安定してたし。約30分の出場だった藤野あおばも、基本的に保持が安定して押し込んでる時間帯のプレイがメインだったけど、決定機って言っていいチャンスを複数回作ったのはインパクト十分だったし、簡単にボールを失わない部分も含めて、持ってるポテンシャルは見せたんじゃないかな。あと、個人的にわりと大事だと思ったのが藤野あおばとメアリー・ファウラーの両WGが自然に右でも左でもプレイしてたこと。マンチェスター・シティのWGは左右どっちでもプレイできることが求められてると思うんで、それほど長い時間の起用じゃなかったこの試合でも左右でプレイして、どっちでもチャンスを作れてたのはポイントが高いな、と。それから、新加入選手だともう1人、ブリストル・シティから加入したナオミ・レイゼルが後半45分、左CBでプレイしたんだけど、立ち上がりはちょっとバタついてたかな、正直なところ。落ちついてから保持でもカウンター対応でも問題なくできてたと思うけど。CBでもSBでもプレイできる選手だから、シーズンが始まってもわりと出場機会は多そう。

前半に特に光ったパークの存在感
別に後半が悪かったって意味じゃないけど、あまり主力が出てなかった前半のジェス・パークの存在感は際立ってたかな。最終ラインの3人と両WGは主力だったけど、CFWとインサイドMFの相棒とCMFが若手ってメンバーの中でプレイすると、やっぱり全然存在感が違うっていうか、ワンランク上の選手って感じを出してて。基本的には昨シーズンの後半以降にグイグイ成長した選手だけど、決して一時的なモノじゃなくて、もう昨シーズンの後半のパフォーマンスがベースになった感じっつうか。この試合で唯一のフル出場っていうのも、期待と信頼の表れだと思うし。他には、もちろんカディジャ・ショウもフィフィアネ・ミデマーも短いプレイ時間でも存在感抜群だったし、メアリー・ファウラーはプレイだけじゃなく現地での人気も印象的だったし、新シーズンのマンチェスター・シティを考えるベースとしてはいろいろ興味深かったかな。あと、個人的に楽しみにしてたサシャ・ルイスだけど、カナダ代表のディアン・ローズ(Deanne Rose)にフェイントひとつで置き去りにされてたり、長谷川唯への横パスが大きくズレてピンチなりかけたりもあったけど、スピードも強さもけっこうありそうだし、深い位置からクロスを入れるシーンもあったりして、貴重な経験は積めたんじゃないかな。

9月1日 パリ・サン・ジェルマン戦

PSG戦もDAZNで配信されてたんさけど、実はPSGのオフィシャルYouTubeアカウントでも配信されてて。しかも、ありがたいことに英語実況で(選手の言い間違えがちょいちょいあったけど)。アーカイブも残ってるからその動画のクリップ機能も使いつつって感じで。

マンチェスター・シティのスタメンは以下の通り。よくよく考えてみたら、レスター・シティ戦は平日の夜のキックオフだったけど、実は現地は冬だから気候だけじゃなく入場者数なんかの面を考えてもそうだし、現地に着いてからの日数とか時差調整とかも含めて、週末の夕方のこの試合のほうがいろんな意味でコンディションは良さそうなのかな。もちろん、中3日って日程ではあるけど。

オーストラリア・ツアーだからオーストラリア代表の2人、アラナ・ケネディとメアリー・ファウラーはもちろんスタメン。基本的にはほぼ主力って人選だけど、山下杏也加がスタメンなのとフィフィアネ・ミデマーがメンバー外だったのはちょっとビックリしたかな。フィフィアネ・ミデマーに関しては、『ザ・ガーディアン(The Guardian)』の記事によるとケガではなくてプレイ時間とコンディションの調整らしいけど。

まずは前半の立ち上がり、マンチェスター・シティのスローインからの攻撃のシーン。保持自体というよりも鋭いネガティヴ・トランジションが見事で、最終的にジェス・パークの惜しいシュートで終わったんだけど、PSGが簡単に自陣から出れないような圧をかけれてるのが印象的。シュートはポーランド代表GKのカタジナ・キエドジネク(Katarzyna Kiedrzynek)の好セーブに防がれちゃったけど。ちなみに、PSGにはマンチェスター・ユナイテッドからイングランド代表GKのメアリー・アープス(Mary Earps)が加入してて、ウェスト・ハム・ユナイテッド戦には出場してたけどこの日はベンチで、でも、この試合ではカタジナ・キエドジネクが好セーブを連発してて、GKのレベルの高さもさすがPSGって感じ。

CKを跳ね返された後にセカンド・ボールを回収して、GKに戻してから再び前進してボックスに踏み込むシーン。CKの後だから選手の配置がバラバラで、最終ラインがカースティン・カスパライ(Kerstin Yasmijn Casparij)と長谷川唯になってたりするんだけど、それでもすぐにそれぞれの選手が適切な位置に立って、クリーンに前進していくのは見事だな、と。最終的にローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)のクロスをGKが触らなければカディジャ・ショウが押し込めてそうだったし。

この試合のPSGの非保持は5-2-3みたいな並びで立って中の3レーンの人数を増やしてからプレスをかけて、サイドに誘導してボールを奪いたいように見えたけど、SBが絞ったりしつつ上手くプレスを回避して前進できてたし、セカンド・ボールの回収も含めて立ち上がりの時間帯はほぼほぼマンチェスター・シティが制圧できてた感じ。裏抜けしたカディジャ・ショウがボックス内で倒れたシーンもけっこう際どかったし。

マンチェスター・シティがハイプレスでGKに長いボールを蹴らせたんだけど、セカンド・ボールへの反応がちょっと遅れて一気にボックス近辺まで運ばれたシーン。GKが蹴ったボールを競り合ってるタイミングで、セカンド・ボールを拾ったPSGの26番の選手の位置を見るとけっこう遠くて、それでも先にボールに到達しちゃってるのに驚いたり。ちょっと調べてみたら、セカンド・ボールを回収したのはアニイス・エバイロン(Anaïs Ebayilin)っていう16歳の選手らしくてさらにビックリしたりして。実はこの選手はこのちょっと後にケガで交代しちゃったんだけど。PSGにはシンプルだけどアスリート能力が高い選手が多くて、こういうシーンはやっぱりけっこう怖い。ちなみに、PSGがこの試合でアタッキング・サードまで前進できたのはこのシーンが初めて。

「シティの保持の中心にいる長谷川唯のマークを外しちゃうとこうなっちゃう」ってサンプルのようなマンチェスター・シティの攻撃のシーン。真ん中のレーンで縦パスを通して最短距離で前進してゴールに迫ってる。GKのカタジナ・キエドジネクの連続セーブに阻まれたけど。

逆に、マンチェスター・シティとしては一番避けたいパターンって言ってもいいと思うけど、PSGが長谷川唯からボールを奪ってショート・カウンターでクロスまでいけたシーン。こういうリスクとは常に隣り合わせでありながら、それでもあまりこういうミスをしないのがマンチェスター・シティでの長谷川唯なんだけど、このシーンはちょっとヒヤッとしたかな。

典型的なマンチェスター・シティのビルドアップのシーン。最終的にボックスに踏み込めたわけじゃないけど、山下杏也加からカディジャ・ショウまでスパッと入ったパスだったり、左CBのアレックス・グリーンウッドから右WGのメアリー・ファウラーへの対角のサイド・チェンジだったり、マンチェスター・シティの保持の特徴がいろいろ詰まってる感じ。山下杏也加はこの直後にもカディジャ・ショウにパスを通してたりして、保持局面でも積極的にビルドアップに関われてたんじゃないかな。

PSGのハイプレスを回避して前進したマンチェスター・シティがクロスまでいったシーン。あまりハイプレスをしてなかったPSGがネガティヴ・トランジションでハイプレスできて、かなり強い圧を受けながらも回避して前進に成功してるんだけど、やっぱりポイントになってるのは長谷川唯だったりして。今さら誉めるまでもないんだけど、こういうプレイは本当に上手いし、チームを助けてる。

もうひとつ、山下杏也加の見事なビルドアップがあったシーン。ちょっと鋭いアプローチでちょっと危ない局面も落ちついて回避して、ボールが戻ってきたときに1回右足のキックをキャンセルをして、中のレーンに絞ってる左SBの代わりに左CBと左WGの間にポジションを取ったローラ・ブリンドキルデ・ブラウンまで左足で正確にボールを届けてて。この後、ローラ・ブリンドキルデ・ブラウンからの展開でメアリー・ファウラーとカディジャ・ショウでボックスに侵入するシーンになるんだけど、起点になった山下杏也加のキックは見事だったな、と。

コレはある意味、この試合を象徴するようなシーンだと思うんだけど、マンチェスター・シティのポゼッションからフィニッシュまでいったけど決められずに、ネガティヴ・トランジションが効かなくて最終的にPSGにカウンターからクロスまでいかれてるシーン。マンチェスター・シティは安定した保持で揺さぶりながらチャンスをうかがいつつ、アレックス・グリーンウッドらしい見事なパスがカディジャ・ショウに入って、カディジャ・ショウからのスルーボールに抜け出したローラ・ブリンドキルデ・ブラウンの決定機で、残念ながらまたカタジナ・キエドジネクに止められちゃったけど、マンチェスター・シティらしい見事なポゼッションだったな、と。ただ、その後のこぼれ球からのトランジション局面で止めきれないと一気にアタッキング・サードまで持っていけちゃうのはさすがPSGっていうか、やっぱり前に出るときの迫力はすごかったかな。基本的にこの試合はこういう鬩ぎ合い、保持するマンチェスター・シティ対構えてカウンターを狙うPSGって構図だったと思うけど。

CKを除けば前半ではPSGの一番のチャンスだったと思うけど、マンチェスター・シティとしては一番やられたくないカタチで前進されちゃったシーンって言えそう。GKまでハイプレスして蹴らせて一度は回収しかけたんだけどデュエルで負けて奪われて、縦に入ったボールにCBが喰いついて入れ替わって抜け出されて。最終的にシュートを2本打たれてるんだけど、PSGの強さと速さが発揮されたシーン、PSGの武器が見事に発揮されたシーンだったかな、と。

中継で表示された前半のスタッツを見ても、ポゼッション率は68:32%、シュート数は5:3だけど枠内が3:0、パス数も倍以上の差があって、アタッキング・サードへの侵入数も29:12なんで、ほぼほぼマンチェスター・シティの試合だったって言っていい感じ。

ハーフタイム明けの交代は左CBがアレックス・グリーンウッドからナオミ・レイゼル、GKが山下杏也加からキアラ・キーティングの2人。山下杏也加とキアラ・キーティングはわかりやすく2試合で半分ずつプレイ時間をシェアする感じに。

後半の立ち上がりのマンチェスター・シティのビルドアップのシーン。右CBのアラナ・ケネディの持ち上がりからのカディジャ・ショウへのパスでスピード・アップして、最終的にはローレン・ヘンプのシュートで終わるんだけど、スムーズな前進でボックスまで侵入するマンチェスター・シティらしい攻撃だな、と。

マンチェスター・シティがトリックFKを失敗したところのPSGのロング・カウンターでボックスまで侵入するシーン。FKの後だからマンチェスター・シティの守備陣形が整ってないって側面もあるんだけど、やっぱりスピードにのったらなかなか止められないし、後ろからどんどん選手が追い越すし、こういう局面になるとPSGの良さとマンチェスター・シティの脆さがわかりやすく出ちゃう感じ。

マンチェスター・シティのゴールキックからのビルドアップのシーン。最終的にはフィニッシュまでは至らずに戻してるんだけど、後半から左CBとして出場したナオミ・レイゼルの持ち上がりからのパスと長谷川唯が右ハーフ・スペースのライン間に立ってるジェス・パークに通した見事なパスは見応え十分で、いかにもマンチェスター・シティって感じ。

コレもマンチェスター・シティのビルドアップのシーンなんだけど、GKから始まって、横幅を使いながら上手く前進して、最終的にフィニッシュで終われてる見事な攻撃。個人的には、クリップ冒頭でGKのキアラ・キーティングの足元にボールがあるときに左CBのナオミ・レイゼルが急いでポジションを取り直してるのがけっこう好きだったりして。カディジャ・ショウのシュートはカタジナ・キエドジネクに止められちゃったけど。

60分過ぎに4人選手交代があって、カディジャ・ショウと長谷川唯とメアリー・ファウラーとアラナ・ケネディが下がったんで、公式戦で1stチョイスになりそうなメンバー中心でやったのはここまでって言っていいと思うんだけど、基本的にはほぼほぼ保持して試合をコントロールしながら決定機を複数回作れてたんで、(PSGのメンバーが1stチョイスにどれくらい近かったのかはわかんないけど)PSMとしては概ね良好だったんじゃないかな。もちろん、点が取れてればもっと良かったし、カウンターを受けたシーンもあったけど、PSGくらいのチーム相手にまったくカウンターを受けずに試合を進めるのは簡単じゃないし、この時期のPSMとしてはいろいろ収穫はあった気がするかな。交代で入ったのがライア・アレクサンドリ(Laia Aleixandri)とクロエ・ケリー(Chloe Kelly)と藤野あおばとグレイシー・プライアで、クロエ・ケリーが左WG、藤野あおばが右WG、ライア・アレクサンドリがCMF、グレイシー・プライアが右CBに入ってローレン・ヘンプがCFWになったと思うんだけど、レスター・シティ戦のローラ・ブリンドキルデ・ブラウンに続いて長谷川唯がいないときのCMFにライア・アレクサンドリが入ったのはかなり興味深い感じ。

マンチェスター・シティがスローインからのビルドアップからチャンスを作ったシーン。CMFに入ったライア・アレクサンドリがPSGの選手から上手く離れてボールを受けてスムーズにボールを前進させて、最終的に藤野あおばのクロスで終わってるんだけど、ライア・アレクサンドリのCMFとしての振る舞いも足元にボールが入ってからの藤野あおばのプレイもなかなか良かったな、と。

マンチェスター・シティが珍しくGKからの長いボールを使ったシーン。セカンド・ボールを回収して保持に入って、最終的にクロエ・ケリーのシュートで終わるんだけど、左SBのレイラ・ウアハビ(Leila Ouahabi)に強いプレッシャーがかかった場面でナオミ・レイゼルとライア・アレクサンドリと上手く関わってプレスを回避してる場面とか、ものすごくマンチェスター・シティっぽい質の高さだし、ライア・アレクサンドリのCMFとしての振る舞いも見事だな、と。

試合終了間際に藤野あおばが上手く攻撃に絡んだシーン。グレイシー・プライアのロング・ボールを収めて時間を作ってアンダーラップを上手く使って最終的にボックスまで踏み込めてるんだけど、藤野あおばのランニングも良かったし、ボールを収めた後もスムーズにチームメイトのスピードに合わせてボールを出せてて、シンプルだけどプレイ選択もプレイの質も良かったかな、と。お互いにたくさん選手交代した試合の終盤はPSGの圧が高まってて、レスター・シティ戦に比べると藤野あおばが攻撃に関われるシーンはあまり多くなかったんだけど。

この後、試合終了間際にボックス内のファールで与えたPKを決められてそのまま0-1で試合は終わって、パース・インターナショナル・フットボール・カップはPSGの優勝で終わったんだけど、結果はともかく、個人的には見どころが多い試合だったかな。

オーストラリア・ツアーで見えたモノと新シーズンの展望

試合ごとじゃなく2試合から感じたことと新シーズンに向けた展望(っつうか、妄想?)を最後にまとめとくと、以下のような感じになるかな。

  • マンチェスター・シティはメンズ・チームならスペイン代表MFのロドリ(Rodri)が、ウィメンズ・チームなら日本代表MFの長谷川唯が不動のCMFで、戦術的にも欠かせないキー・プレイヤーなんだけど、当然、バックアップ的なプランは必要で、今回のツアーでローラ・ブリンドキルデ・ブラウンを約60分、ライア・アレクサンドリを約30分試せて、2人ともポジティヴな印象を残せたのは大きな収穫だったんじゃないかな。直近2シーズンのリーグ戦ではほとんど観たことがないくらい長谷川唯が出ずっぱりだったんで、こういうオプションが観れたのはちょっと新鮮だったし。

  • 昨シーズンは唯一のフルタイム出場だったキアラ・キーティングと新加入の山下杏也加の序列がどうなるのかがなかなか難しいところだけど、キアラ・キーティングはまだ若いし、昨シーズンはちょいちょい小さなケガを抱えながらフルタイム出場を達成したらしいんで、リーグ戦以外のコンペティションも含めて、普通にある程度出場時間をシェアする感じになるかも? って気もしてるかな。少なくとも、そうしても問題なさそうなくらいのインパクトが山下杏也加のパフォーマンスにはあったと思うんで。

  • 個人的にはフィフィアネ・ミデマーのプレイはもっと観たかったかな、やっぱり。カディジャ・ショウとの同時起用だけじゃなく、CFW起用とかも含めて。

  • 藤野あおばは基本的にはWG起用がベースになるのかな。全然問題なくプレイできてたっていうか、特にレスター・シティ戦は得点に直結するようなチャンスをたくさん作ってたし、いい意味で全然違和感なくプレイできてた感じで。前の選手はかなり充実してきたからいきなり1stチョイスにはなれないかもしれないけど、コンスタントに出場機会が得られても驚かないくらいのパフォーマンスだった気がする。

  • 前の選手の序列はいい意味でかなり難しい感じ。ケガで長期離脱してるオランダ代表MFのジル・ロード(Jill Roord)の復帰は10月くらいって言われてるけど、今回のツアーで重用されてた重宝されたジェス・パークとローラ・ブリンドキルデ・ブラウン、今回のツアーに参加してなかったっぽいローラ・クームス(Laura Combs)辺りがインサイドMF候補で、ジェス・パークはWGでもプレイ可能、逆にメアリー・ファウラーはWGでもインサイドMFでも、何ならCFWでもプレイ可能、WGはローレン・ヘンプは1stチョイスだろうけどもう1人は昨シーズンの終盤にスタメン出場を増やしたメアリー・ファウラーなのかクロエ・ケリーなのか、藤野あおばが割り込めるのかって感じになるのかな。CFWはカディジャ・ショウが軸だとは思うけど、フィフィアネ・ミデマーもCFWが本職でインサイドMFでも使えるし、組み合わせの妙も含めて、長谷川唯より前の5人の人選と使い方は大きな注目ポイントになりそう。

  • 新加入のナオミ・レイゼルがある程度目処がたった感じなんで、最終ラインの序列とかローテーションはけっこうポイントかも。CBに関しては右がアラナ・ケネディで左がアレックス・グリーンウッドが1stチョイスだと思うけど、2人とも若いわけじゃないし、CBもSBもどういう人戦でシーズンを闘っていくのかは注目かな、と。もちろん、清水梨沙の起用法とか序列も含めて。

  • 完全に個人的な意見でもうちょっと突っ込んだことを言っちゃうと、基本的に不動だと思ってるのは左CBのアレックス・グリーンウッド、CMFの長谷川唯、左WGのローレン・ヘンプ、(ケガから復帰したら)右インサイドMFのジル・ロード、CMFのカディジャ・ショウの5人だと思ってて、それ以外の6つのポジションに関しては、フタを開けてみないとわかんない(くらい競争が激しい状況になってる)のがいいんじゃないかな…なんて思ったりしてるけど。

とりあえず、今回のツアーでの2試合を観て、「新シーズンのマンチェスター・シティはどうなるんだろ?」って考えて思いついた注目ポイントはこんな感じ。考えてみれば、最後にマンチェスター・シティの試合を観たのが5月半ばのリーグ最終戦だったからかれこれ3ヶ月半とか経ってて、久しぶりに試合を観たらやっぱり新シーズンがものすごく楽しみになってきちゃったかな。

ちなみに、マンチェスター・シティの開幕戦はいきなりの大一番、アウェイでのアーセナル戦で、その後は10月末の代表ウィークまでに開幕戦を含めて5試合あるんだけど、ホームでのブライトン&ホーヴ・アルビオン戦、ホームでのウェスト・ハム・ユナイテッド戦、アウェイでのリヴァプール戦、ホームでのアストン・ヴィラ戦って感じ。とりあえず、やっぱりアーセナルとの開幕戦がものすごく大事なのかな。

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