見出し画像

2024年の夏のWSLの補強を総括 :: WSL Watch #104

*有料設定になってるけど全文無料で読めます。

24/25シーズンに新たにWSLのチームに移籍してきた選手の情報は"WSL Watch #085"で随時更新してきたけど、正直なところ、思ってた以上の人数になってて、でも、基本的に発表されたタイミングの順番でまとめてたからリスト的にはなってるけど情報としてはちょっと見にくいんで、移籍ウィンドウが閉じたタイミングでちょっとまとめとこうかな、と。基本的には、"WSL Watch #085"の内容を抜粋・編集・分類して整理してみただけなんだけど。もともと知ってる選手だったり、プレ・シーズン・マッチでプレイを観れた選手がどうしても多めになっちゃうと思うけど、あくまでも現段階での個人的な期待値って感じで。

ちなみに、オフィシャルな情報に関してはWSLのオフィシャル・サイトにある'Transfer Watch'ってページで確認できる。


やっぱり期待せずにはいられない3人のビッグ・ネーム

まずはシンプルに大物選手の移籍に関して。WSL内での移籍もあったし、他国リーグからの移籍もあったし、いろいろ大きな動きがあったんで。

フィフィアネ・ミデマー(27)→ マンチェスター・シティ
やっぱり最大のニュースはアーセナルからマンチェスター・シティに完全移籍したオランダ代表FWのフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)ってことになるのかな。当たり前だけど、WSLの優勝を争うであろうライバル・チーム間の移籍だし、しかも、シーズン終了直前に契約満了でアーセナルを離れることが発表されてたからフリー移籍だし。"WSL Watch #071"でも書いたけど、言わずと知れたWSLの歴代最多得点記録保持者で、WSLはもちろん、世界のウィメンズ・フットボールを代表するスター選手の1人って言っていい存在だと思うんで。オーストラリアでのプレ・シーズン・マッチでちょっとだけ観れたけど、起用法とか同時にピッチに立つ選手との組み合わせとか、やっぱりワクワクしかないって言ってもいいくらい楽しみかな、フィフィアネ・ミデマーのマンチェスター・シティ加入は。

ルーシー・ブロンズ(32)→ チェルシー
WSLのチーム間の移籍で最大のニュースがフィフィアネ・ミデマーなら、WSLに復帰した選手ではやっぱりイングランド代表DFでバルセロナから完全移籍でチェルシーに加入したルーシー・ブロンズってことになる。バルセロナとリヨンっていう世界を代表する強豪チームでたくさんのタイトルを獲得してて、もちろんWSLでの実績も十分だし、イングランド代表としても輝かしいキャリアを誇ってるし。個人的には現代最高の右SBだと思ってる。"WSL Watch #099"でもちょっと言及したようにその片鱗はアメリカでのプレ・シーズン・マッチでも観れたけど、王者のチェルシーがますますパワー・アップするような、ちょっと恐ろしいレベルの補強な気がしてる。もちろん、ルーシー・ブロンズのプレイがまたWSLで観れるのは朗報でしかないんだけど。

マリオナ・カルデンテイ(28)→ アーセナル
他国のリーグから初めてWSLにチャレンジする選手で一番の大物っていえば、やっぱりバルセロナからアーセナルに完全移籍した28歳でスペイン代表MFのマリオナ・カルデンテイ(Mariona Caldentey)かな。ヨーロッパ王者のバルセロナとFIFAウィメンズ・ワールドカップ王者のスペイン代表でバリバリの主力として活躍してきた選手なんで。日本のファンにはパリ・オリンピックの日本戦で決勝ゴールを決めた選手って印象も強いと思うけど。アメリカでのプレ・シーズン・マッチでもUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグの予選ラウンドでもさっそく存在感抜群だったし。

別に狙って選んだわけじゃないんだけど、普通に選んだら昨シーズンの上位3チームだったのもちょっと面白いかも。それぞれ確実に、抜かりなくパワー・アップしてる感じで。

確実な実績を残してステップ・アップを果たしたケース

続いて、すでにWSLである程度の結果を残してて、年齢的にも比較的若い選手が多くなると思うけど、上位チームにステップ・アップしてリーグを代表するスター選手になることが期待できそうな選手を。

エリザベス・ターランド(23)→ マンチェスター・ユナイテッド
ステップ・アップ移籍で真っ先に頭に浮かぶのは、やっぱりブライトン&ホーヴ・アルビオンから完全移籍でマンチェスター・ユナイテッドに加入した23歳のノルウェー代表FWのエリザベス・ターランド(Elisabeth Terland)かな。詳しくは"WSL Watch #059"で書いた通りなんだけど、昨シーズンはリーグ戦で13点取って得点ランク2位タイだったし、いわゆる9番タイプのストライカーではリーグ屈指で、ステップ・アップしそうな年齢の選手の中ではナンバー1だと思ってたし、アレッシア・ルッソ(Alessia Russo)の抜けた穴が埋まってなかった印象のマンチェスター・ユナイテッドが移籍先って点も含めて、極めて真っ当っていうか、ものすごく納得感がある移籍って感じ。

セリン・ビゼー・イルドゥソイ(22)→ マンチェスター・ユナイテッド
トッテナム・ホットスパーから完全移籍でマンチェスター・ユナイテッドに加入した22歳のノルウェー代表FWのセリン・ビゼー・イルドゥソイ(Celin Bizet Ildhusøy)も典型的なステップ・アップ移籍って言えそう。9月に入ってからわりと唐突に出てきた話で、しかも、現地ジャーナリストのSNSの投稿を見てるとマンチェスター・ユナイテッド側がいわゆる契約解除金を満額支払って獲得した、つまり、トッテナム・ホットスパー側としてはどうにもできない移籍、サポーターなんかが'強奪'なんて言ったりもするタイプの移籍ってことらしいんだけど。23/24シーズンはリーグ戦20試合出場って数字を残してる22歳の選手ってことも含めて、けっこうビックリだったし、トッテナム・ホットスパーにとってもマンチェスター・ユナイテッドにとっても大きな移籍って言えそうな感じ。

ダフネ・ファン・ドムセラール(24)→ アーセナル
アストン・ヴィラから完全移籍でアーセナルに加入した24歳のオランダ代表GKのダフネ・ファン・ドムセラール(Daphne van Domselaar)も注目のステップ・アップ移籍かな。すでに行われたUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグの予選ラウンドの試合はベンチ入りはしてたけどまだ出場はしてなくて、基本的にはマヌエーラ・ツィンスベルガー(Manuela Zinsberger)とポジションを争う感じになりそうだけど、でも、アストン・ヴィラ加入時に設定してた契約解除金をアーセナルが満額支払って獲得したらしいって点も含めて、今後に注目しといたほうが良さそうな感じ。

清水梨沙(28)→ マンチェスター・シティ
年齢的には28歳だから若手って感じじゃないと思うけど、ウェスト・ハム・ユナイテッドからマンチェスター・シティに完全移籍した日本代表の清水梨沙も素晴らしいステップ・アップって言っていいはず。だからこそ、パリ・オリンピックでケガをしちゃったのは本当に残念だけど、とりあえず、コンディションだけ万全になればWSLでの実績も日本代表としての国際大会でのプレイ経験も十分だし、それこそ年齢的にもこれからがまさにキャリアのピークって言える年齢だと思うんで、旧知の仲の長谷川唯とチームメイトになることも含めて、楽しみしかない感じの移籍って言えるんじゃないかな。

ちなみに、9月12日にケガが前十字靭帯の負傷、いわゆるACLだってことが発表されたんで、一般的には短く見積もっても半年以上、10ヶ月くらいかかってもおかしくないと思うから、ケガをしたのが7月末だってことを考えると年内は絶望、順調に回復しても復帰は新シーズンの後半、春頃くらいってイメージになるのかな、復帰時期は。

ナオミ・レイゼル(20)→ マンチェスター・シティ
本人もビックリしたってコメントしてたけど、ブリストル・シティからマンチェスター・シティに完全移籍した20歳のU-23イングランド代表CBのナオミ・レイゼル(Naomi Layzell)もけっこうドラマチックなステップ・アップって言えるはず。まだ20歳の選手で、降格チームから優勝を争うチームへの移籍なんで。しかも、マンチェスター・シティのチーム事情というか、守備陣の編成を見ると実はけっこう出場機会がありそうな気がしてて。

ステップ・アップの移籍ってことなんで、基本的にはすでにWSLのチームでのプレイ経験がある程度あって、若手〜中堅くらいの年齢で、下位のチームから中位とか上位のチーム、中位のチームから上位のチームへの移籍ってイメージなんだけど、今後のWSLを代表するような選手になりそうって部分も含めてものすごく楽しみな選手ってことになるのかな。

フレッシュなタレントが続々とWSLに参戦

比較的年齢が若くて新たにWSLのチームに移籍してきた楽しみな若手ももちろん多くて、でも、必ずしもビッグ・クラブでプレイしてたり国際舞台で活躍してたりするってわけじゃないから、正直なところ、詳しくは知らない選手も多いんだけど、経歴だったり移籍の経緯だったりSNSとかでの反応だったり、いろいろ見てる中でかなり期待できそう? って思える選手はやっぱりたくさんいて。ある意味、このグループがいい意味で一番サプライズがありそうな気がしてるけど。

ローザ・カファジ(21)→ アーセナル
フレッシュなタレントでまず頭に浮かんだのはBKヘッケンからアーセナルに完全移籍した21歳でスウェーデン代表FWのローザ・カファジ(Rosa Kafaji)かな、やっぱり。アメリカでのプレ・シーズン・マッチでのプレイを観た印象だと、けっこうダイナミックなタイプ、純粋なCFWってわけじゃないけどちょっとエディソン・カヴァーニ(Edinson Cavani)を想起しちゃうようなワイルドでトリッキーな感じもあって。"WSL Watch #097"の中で紹介したトッテナム・ホットスパーのロバート・ヴィラハム(Robert Vilahamn)監督がインタビューの中で(スウェーデン人選手でよく知ってるからだろうけど、トッテナム・ホットスパーに入るわけでもないのに)わざわざ名前を挙げてたりしたし。まだ21歳ってことも含めて考えると、楽しみしかない選手かな、と。

ジュリア・バーテル(20)→ チェルシー
バルセロナからチェルシーに完全移籍した20歳でU-20スペイン代表MFのジュリア・バーテル(Júlia Bartel)もすごく楽しみなタレント。コロンビアで開催されてるFIFA U-20ウィメンズ・ワールドカップ(FIFAU20WWC)にもスペイン代表として出場してた選手で、選手層が厚いチェルシーでどれくらいのプレイ時間を得られるのかはわかんなけど、早くチェルシーでのプレイを観てみたい選手であることは間違いない感じ。

ノエミー・ムション(21)→ レスター・シティ
スタッド・ランスからレスター・シティに完全移籍した21歳のフランス人FWのノエミー・ムション(Noémie Mouchon)も期待の若手。スタッド・ランスを率いてたアマンディン・ミケル(Amandine Miquel)がレスター・シティの新監督だから、当たり前だけど「新監督の意向で獲得した」「新監督が連れてきた」ってタイプの補強だし、実際にオーストラリアでのプレ・シーズン・マッチでのプレイを観たらさっそく存在感抜群で、普通に主軸として活躍してくれそう。タイプとしてはいわゆる9番って感じよりはWGもCFWもできるアタッカーって感じに見えたけど、個人技もありつつ周りとのコンビネーションも作れて、引いてボールを受けるときの強さもあるけど裏抜けもできるし、守備の貢献度も高そう。年齢も若いことも含めて、今シーズンのレスター・シティで一番注目したい選手かも。

オリヴィア・スミス(19)→ リヴァプール
スポルティングCPからリヴァプールに完全移籍した19歳のカナダ代表FWのオリヴィア・スミス(Olivia Smith)も要チェック。ベスト16でスペインに負けちゃったけど、コロンビアで行われてるFIFAU20WWCにカナダ代表として出場してた選手で、本格的にリヴァプールに合流するのはこれからって感じだと思うけど、FIFAU20WWCでも全4試合に出場して2点取ってて、でも、実はもうすでにカナダ代表キャップもあったりするような選手で、しかも、リヴァプールがクラブ史上最高額の移籍金で獲得したなんて報道もあったりして。本格的にリヴァプールにフィットしたらどういうプレイを見せてくれるのか、シンプルにものすごく楽しみ。

シミ・アウージョ(20)→ マンチェスター・ユナイテッド
南カリフォルニア大学のUSCトロージャンズからマンチェスター・ユナイテッドに加入した20歳でカナダ代表MFのシミ・アウージョ(Simi Awujo)もフレッシュなタレント枠の典型例。運動量とパワーを併せ持つCMFって感じだと思うけど、パリ・オリンピックでのダイナミックなプレイも印象的だったし。

アイシャ・マサカ(20)→ ブライトン&ホーヴ・アルビオン
BKヘッケンからブライトン&ホーヴ・アルビオンに完全移籍した20歳でタンザニア代表FWのアイシャ・マサカ(Aisha Masaka)もちょっと気になる存在かな。UEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグも経験済みで、タンザニア代表としても15キャップで9得点なんだとか。エリザベス・ターランドが抜けた穴を埋めてほしい有力候補だと思うんで。

藤野あおば(20)→ マンチェスター・シティ
日テレ・東京ヴェルディベレーザからマンチェスター・シティに完全移籍した20歳で日本代表MFの藤野あおばももちろんフレッシュなタレント枠ってことになるかな。マンチェスター・シティは攻撃陣はけっこう充実してるから、まずはどれくらいのプレイ時間を得られるかが勝負だとは思うけど、オーストラリアでのプレ・シーズン・ツアーでの使われ方とかプレイぶりを観た感じとか、マンチェスターに戻った後にやったリヴァプールとの非公開のトレーニング・マッチの後にもガレス・テイラー(Gareth Taylor)監督がわざわざ名前を挙げて褒めてたことを考えると、移籍が発表された頃の期待値をけっこう上方修正しても良さそうだし。

チャシティ・グラント(23)→ アストン・ヴィラ
アヤックスからアストン・ヴィラに完全移籍した23歳でオランダ代表FWのチャシティ・グラント(Chasity Grant)もちょっと楽しみな存在。新シーズンからアストン・ヴィラの指揮を執るロバート・デ・パウ(Robert de Pauw)監督もオランダ人だから知ってたってことなんだと思うけど、早い時期から獲りたい選手としてアストン・ヴィラ側に名前を伝えてた選手とのこと。オランダ代表でも今後が期待されてる選手みたいだし、ちょっと覚えといたほうが良さそうな感じがしてる。

パウラ・トマス(22)→ アストン・ヴィラ
レヴァンテからアストン・ヴィラに完全移籍したスペイン代表DFのパウラ・トマス(Paula Tomás)もちょっと注目かも。SBでもCBでもプレイができて、身長が170cmあって、まだ22歳で。マンチェスター・シティのイングランド代表DFのアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)を取り上げた"WSL Watch #055"でも書いた通り、ボールの扱いに長けたDFの需要が増えるのは今後のウィメンズ・フットボール全体の傾向だと思ってるんで、そういう観点ですごく気になってる選手だったりする。

ブルーナ・ヴィラマラ(22)→ ブライトン&ホーヴ・アルビオン
バルセロナからのシーズン・ローンでブライトン&ホーヴ・アルビオンに加入した22歳のスペイン代表FWのブルーナ・ヴィラマラ(Bruna Vilamala)も楽しみな存在。12歳からバルセロナでプレイしてきた生え抜きの左利きのアタッカーで、スペイン代表デビューも果たしてるんだとか。とりあえず、シーズン・ローンってことだけど、どんなプレイを見せてくれるのか、シンプルにすごく楽しみ。

インディア・ペイジ・ライリー(22)→ クリスタル・パレス
PSVから完全移籍でクリスタル・パレスに加入した22歳でニュー・ジーランド代表FWのインディア・ペイジ・ライリー(Indiah-Paige Riley)もちょっと面白そう。ニュー・ジーランド代表として去年のFIFAウィメンズ・ワールドカップにも今年のパリ・オリンピックにも出てるし。現地の記者とか識者のSNSでの反応も良好っていうか、ポジティブな意見が多い感じだし、昇格チームのクリスタル・パレスって部分も含めて注目かな、と。

アナ・サンドバーグ(21)→ マンチェスター・ユナイテッド
BKヘッケンから完全移籍でマンチェスター・ユナイテッドに加入した21歳でスウェーデン代表DFのアナ・サンドバーグ(Anna Sandberg)もなかなか楽しみな左SB。理由はシンプルで、個人的に左SBはマンチェスター・ユナイテッドは左SBが補強ポイントだと思ってたから。まだ若いけどスウェーデン代表にも呼ばれてるし、ハマったらマンチェスター・ユナイテッドがけっこう面白くなるんじゃないかな、と。

インマ・ガバーロ(21)→ エヴァートン
セヴィージャからエヴァートンに完全移籍した21歳のスペイン代表MFのインマ・ガバーロ(Inma Gabarro)も楽しみなタレント。2022年のFIFA U-20ウィメンズ・ワールドカップで優勝したスペイン代表のメンバーで、8得点を決めて大会得点王に輝いたって経歴の持ち主で、まだ若いけどもうスペイン代表キャップもあったりするし。

レクシー・ポッター(18)→ クリスタル・パレス
チェルシーからシーズン・ローンでクリスタル・パレスに加入した18歳でU19イングランド代表MFのレクシー・ポッター(Lexi Potter)もフレッシュなタレント枠の選手なのかな。17歳だった2023年9月にウィメンズ・フットボール史上最年少でプロ契約を結んだイングランド人選手になったらしいチェルシーのアカデミーの生え抜きで、23/24シーズンもクリスタル・パレスにローン移籍してて、公式戦21試合に出場してチャンピオンシップ優勝とWSL昇格に貢献したらしいんで、本格的にWSLでプレイするのは初めてになると思うんで。

エラ・モリス(21)→ トッテナム・ホットスパー
サウザンプトンからトッテナム・ホットスパーに完全移籍した21歳でU23イングランド代表DFのエラ・モリス(Ella Morris)もちょっと気になってる選手。チャンピオンシップでのプレイ実績は十分だし、SBって個人的にはちょっと注目したいポジションだったりもするし。

若手選手に関しては挙げればキリがないくらいいて、でも、これまでの実績とかはあまり知らないから、誰を挙げるかちょっと難しいところだったけど、やっぱりWSLに楽しみなタレントが増えるのはものすごく楽しみ。

即戦力としての活躍が期待される選手

20代半ば〜30歳くらいでけっこう経験値が高い選手っていうのは、もちろん即戦力としてチームを支えてほしいってことなんだと思うけど、こういう選手がどれだけ早くフィットするかはチームの浮沈を左右するし、でも、特に他国のリーグから来た選手にとっては必ずしも簡単じゃなかったりもするし、実は一番注目しとかなきゃいけないのはこのグループの選手なのかも? とかちょっと思ったりもして。

キンガ・シェミク(27)→ ウェスト・ハム・ユナイテッド
スタッド・ランスからウェスト・ハム・ユナイテッドに完全移籍した27歳のポーランド代表GKのキンガ・シェミク(Kinga Szemik)はとりあえず注目かな。182cmあるらしいからサイズ的にはけっこう大型のGKって言えると思うんだけど、シンプルにオーストラリア代表GKでマッケンジー・アーノルド(Mackenzie Arnold)が抜けた穴を埋めることが期待されてると思うし、現状の予想ではウェスト・ハム・ユナイテッドはけっこう苦労すると思うんで、やっぱり最後の砦としてGKはものすごく大事だと思うし。

クレア・ハント(25)→ トッテナム・ホットスパー
パリ・サン・ジェルマンから完全移籍でトッテナム・ホットスパーに加入した25歳のオーストラリア代表CBのクレア・ハント(Clare Hunt)も個人的には楽しみにしてる選手。オーストラリア代表でのプレイの印象が強かったんだけど、正直なところ、「あ、まだ25歳なんだ」って思ったくらいなんで。トッテナム・ホットスパーにはオーストラリア代表のチームメイトもいるし、普通にすぐフィットして後ろからチームを支えてくれそうな感じ。

シャンテル・スワビー(25)→ レスター・シティ
FCフルーリー91から完全移籍でレスター・シティに加入した25歳のジャマイカ代表DFのシャンテル・スワビー(Chantelle Swaby)は、オーストラリアでのプレ・シーズン・マッチでプレイを観て期待値が大幅に上方修正された選手かな。基本的には強さと高さがあって、跳ね返す力があるCBだと思うけど、保持局面でも持ち運んだりパスを差し込んだり、いろいろなことができそうなんで。攻守両面でレスター・シティの最終ラインに安定をもたらしてくれそうな感じ。

林穂之香(26)→ エヴァートン
ウェスト・ハム・ユナイテッドからエヴァートンに完全移籍した26歳の日本代表MFの林穂之香も、基本的には即戦力として期待されてる選手って言えるのかな。残留争いをしてたチームから中位のチームへの移籍だからステップ・アップって言っていい気もするけど。とりあえず、WSLでの実績もしっかり積んでるし、年齢的にもすごくいい時期だし、個人的には全然心配してないっていうか、普通にこの移籍でもうワンランク上の選手になってくれそう。

コルネリア・キャコップス(24)→ リヴァプール
リンシェーピングFCから完全移籍でリヴァプールに加入した24歳のスウェーデン人FWのコルネリア・キャコップス(Cornelia Kapocs)も即戦力としてバリバリ活躍してほしいタイプの選手なのかな。リンシェーピングFCでのリーグ戦39試合で23ゴールって数字はなかなかインパクトが強いし。昨シーズンのリヴァプールは守備の安定をベースに躍進したから、攻撃をパワー・アップしてくれそうな選手にはつい期待しちゃう。

サンディ・ボルティモア(24)→ チェルシー
パリ・サン・ジェルマンからチェルシーに完全移籍した24歳でフランス代表FWのサンディ・ボルティモア(Sandy Baltimore)も楽しみな存在。下部組織からパリ・サン・ジェルマン育ちの生え抜きで、2016年に16歳でトップ・チーム・デビューを果たしたらしいんだけど、パリ・サン・ジェルマンではトータルでリーグ戦110試合出場・30得点って数字を残してるんで。しかも、チェルシーの新監督のソニア・ボンパストル(Sonia Bompastor)は当然フランスのリーグについてはよく知ってるだろうから、能力もキャラクターもわかった上での獲得ってことになる思うし。パリ・オリンピックでのプレイもアメリカでのプレ・シーズン・マッチでのプレイも観たけど、パワフルでテクニックもスピードもあるアタッカーって感じで、若手からベテランまで選手層の厚さが異常なチェルシーのアタッカー陣でもちょっと面白い存在になりそう。

山下杏也加(28)→ マンチェスター・シティ
INACレオネッサ神戸からマンチェスター・シティに完全移籍した28歳で日本代表GKの山下杏也加も即戦力として期待されてる枠の選手って言っていいはず。ただ、マンチェスター・シティの場合は、昨シーズンは若いキアラ・キーティング(Khiara Keating)がフルタイム出場を果たしたかくらいだからもちろんポジションが約束されてるわけじゃないし、GKってポジション自体がそもそも特殊だし、どういう感じの起用法になるのか、ちょっと読めない感じかな。ただ、オーストラリアでのプレ・シーズン・マッチでの使われ方とかプレイぶりを観る限りでは、すごくポジティヴにチームに入れてる感じはしてるけど。

そういえば、山下杏也加の移籍の経緯に関しては絶妙なタイミングで『リアルスポーツ(REAL SPORTS)』になかなか面白いインタビュー記事が載ってたんで、備忘も兼ねて貼っとこうかな。

トニ・ペイン(29)→ エヴァートン
セヴィージャからエヴァートンに完全移籍した29歳のナイジェリア代表FWのトニ・ペイン(Toni Payne)も即戦力としての活躍が期待できそうな選手。年齢的にはベテランって呼ぶか微妙なところだけど、WSL初参戦だからこの枠で。ナイジェリア代表として出場したパリ・オリンピックでのプレイも好印象だったし。

ヴェアトリキ・サッリ(26)→ エヴァートン
ブライトン&ホーヴ・アルビオンからエヴァートンに完全移籍した26歳のギリシャ代表MFのヴェアトリキ・サッリ(Veatriki Sarri)も即戦力になってほしい系の移籍って感じなのかな? 明確にステップ・アップって言えないと思うし、かといって、出場機会が減ってたって感じでもないし。バーミンガム・シティからブライトン&ホーヴ・アルビオンに移籍したタイミングでも実はエヴァートンのブライアン・ソレンセン(Brian Sørensen)監督は獲りたがってたって話だったりするんで、基本的にはすごくポジティヴな移籍だと思うし。

清家貴子(27)→ ブライトン&ホーヴ・アルビオン
三菱重工浦和レッズレディースからブライトン&ホーヴ・アルビオンに完全移籍した27歳の日本代表FWの清家貴子ももちろん即戦力としての活躍が期待されてる選手のはず。特に、ブライトン&ホーヴ・アルビオンは昨シーズンのチーム得点王のエリザベス・ターランドが移籍したし、清家貴子が国内リーグ得点王だったことも知ってるだろうし。もちろん、年齢的にも悠長なことは言ってられないと思うし。ブライトン&ホーヴ・アルビオンもけっこう積極的に補強をしてるからポジション争いは楽じゃなさそうだけど、監督が変わったことも含めて序列もわりとフラットだろうから全然チャンスはありそうな気はするかな。

マイテ・オロズ(26)→ トッテナム・ホットスパー
デッドライン・デイにレアル・マドリーからトッテナム・ホットスパーに完全移籍した26歳のスペイン人MFのマイテ・オロズ(Maite Oroz)も即戦力としての働きが楽しみな選手。実はすでに開幕してる24/25シーズンにも出場してたりして、ローン元のマンチェスター・ユナイテッドに戻ったグレイス・クリントンと前十字靭帯の負傷で長期離脱になったキット・グラハムの穴を埋める活躍が期待されてると思うんで。

ガビ・ヌニェス(27)→ アストン・ヴィラ
デッドライン・デイの移籍っていえば、レヴァンテからアストン・ヴィラに完全移籍した27歳のブラジル代表FWのガビ・ヌニェス(Gabi Nunes)も楽しみな存在になりそう。元イングランド代表FWのレイチェル・デイリー(Rachel Daly)並ぶ得点源になってくれそうなんで。契約解除金を満額で支払ったなんて報道もあるし。

考えれば考えるほど、この枠の選手っていうか、中堅って呼べるような年齢の選手の補強はやっぱりチームの浮沈にわりと直結すると思うんで、やっぱり注目せざるをえない感じかな。

ちょっと意外な移籍を決断した選手たち

ステップ・アップとか、出場機会が減ったからとかって理由の移籍なら理解しやすいけど、中には外から見てるとちょっと理由がわかりにくい移籍もあって。もちろん、個々の事情は人それぞれなんだろうけど。

ミッシー・ボー・カーンズ(23)→ アストン・ヴィラ
リヴァプールから完全移籍でアストン・ヴィラに加入した23歳でU23イングランド代表MFのミッシー・ボー・カーンズ(Missy Bo Kearns)が'ちょっと意外'の典型例かな。地元出身で8歳からリヴァプールに15年間所属してる生え抜きの選手をアストン・ヴィラが移籍金を支払って獲得したってケースなんだけど、23歳って年齢がなかなか微妙なタイミングだったのかな…とかちょっと思ったり。23/24シーズンのリーグ戦は20試合に出てるけどスタメンは9試合だけだったし。ともあれ、相当な覚悟を持って決めた移籍なんだろうから、新シーズンのプレイぶりには注目かな。

ルビー・メイス(20)→ レスター・シティ
マンチェスター・シティからレスター・シティに完全移籍した20歳のU-23イングランド代表MFのルビー・メイス(Ruby Mace)も個人的にはけっこうビックリしたかな。どうしても長谷川唯のバックアップ的な役割で、でも、今のマンチェスター・シティの長谷川唯への依存度はけっこう強いから、なかなか出番が回ってこない感じで。個人的には、年齢も若いしローンで出すのはありそう? くらいには思ってたけど、さすがに完全移籍だとは思わなかったから。レスター・シティのプレ・シーズン・マッチでのプレイを観たらやっぱりいい選手で、宝田沙織とのポジション争いになるのかもしれないけど、レスター・シティのルビー・メイスはシンプルにものすごく楽しみかな。

ケイティ・ロビンソン(21)→ アストン・ヴィラ
ブライトン&ホーヴ・アルビオンからアストン・ヴィラに完全移籍した21歳のイングランド代表FWのケイティ・ロビンソン(Katie Robinson)もちょっと意外だったかな。ブライトン&ホーヴ・アルビオンでは主力って言っていい活躍を見せた若手選手なんで。クラブの格っていうか、ブライトン&ホーヴ・アルビオンからアストン・ヴィラがステップ・アップ移籍って言えるのか、個人的にはあまりわからないんだけど。

真相に踏み込んだような本人のインタビューとかが観れたり読めたりするならともかく、ただ外から観てるだけだとちょっと理由がわかりにくいケースって、逆に言うと個々の移籍にそれぞれの事情があって、そこにはかなり大きな決断とか覚悟とかがありそうなんで、そういう選手に特に注目して観てみるのも面白いのかも? ってちょっと思ったりしてる。

まだまだ力を発揮してくれそうなベテランたち

選手としてのキャリアのピークは越えたかもしれないけど環境次第ではまだまだバリバリ活躍できて、WSLでの経験も豊富ってタイプのベテランの気になる移籍もいくつかあって、特に中位〜下位のチームに上位チームの主力だったベテランが加わるとチームがガラッと変わるなんてケースはちょいちょいあるから、そういう選手の仕事ぶりも新シーズンの楽しみのひとつだったりする。

フラン・カービー(31)→ ブライトン&ホーヴ・アルビオン
チェルシーから完全移籍でブライトン&ホーヴ・アルビオンに加入した31歳の元イングランド代表MFのフラン・カービー(Fran Kirby)は、まさに経験と実績を併せ持つベテランの典型例って感じ。長年にわたってチェルシーの主力として活躍してきた実力者で、チェルシーはもちろん、WSLを代表する選手の1人って呼べるような選手だと思うんで。ブライトン&ホーヴ・アルビオンみたいなチームでならまだまだ全然活躍するだろうし、ピッチ上でのプレイ以上のモノもチームにいろいろもたらしてくれそう。

イェレナ・チャンコビッチ(29)→ ブライトン&ホーヴ・アルビオン
フラン・カービーと同じくチェルシーから完全移籍でブライトン&ホーヴ・アルビオンに加入した29歳のセルビア代表MFのイェレナ・チャンコビッチ(Jelena Cankovic)も完全にチームに安定と経験をもたらすベテラン枠なのかな。この夏の移籍ウィンドウではかなり精力的に動いてる印象のブライトン&ホーヴ・アルビオンだけど、年齢を見てみるとベテランと中堅と若手のバランスは考えられてるっぽくて、フラン・カービーとイェレナ・チャンコビッチは完全にベテラン枠を担う存在って感じ。

ヘイリー・ラソ(29)→ トッテナム・ホットスパー
年齢的にベテランって呼ぶのか微妙なところだけど、レアル・マドリーから完全移籍でトッテナム・ホットスパーに加入した29歳のオーストラリア代表MFのヘイリー・ラソ(Hayley Raso)も豊富な経験を持ってる選手。マンチェスター・シティでのプレイの記憶もまだまだ鮮明だし、パリ・オリンピックでも健在っぷりを見せてたし。

カトリーヌ・ヴェジェ(33)→ クリスタル・パレス
ローゼンゴードから完全移籍でクリスタル・パレスに加入した33歳のデンマーク代表MFのカトリーヌ・ヴェジェ(Katrine Veje)も経験豊富なベテランの典型例って感じ。デンマーク代表として150近いキャップがあって、過去にアーセナルとエヴァートンでトータルで30試合以上出場って実績があって。昇格チームのクリスタル・パレスが最初に獲得を発表した選手だっていう点も含めて、けっこう重要な役割を担いそうな感じ。

ニキータ・パリス(30)→ ブライトン&ホーヴ・アルビオン
デッドライン・デイの締切時間ギリギリにブライトン&ホーヴ・アルビオンがマンチェスター・ユナイテッドから完全移籍で獲得した30歳の元イングランド代表FWのニキータ・パリス(Nikita Parris)も実績十分でまだまだバリバリ活躍してくれそうなベテラン選手って感じ。実は昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドではチーム内得点王だったりするし。

年齢だけを見ればもちろんピークを超えてきててもおかしくないんだけど、近年は男女ともに年齢を感じさせないようなフィジカル・コンディションを保ち続ける選手も多いし、ベテランの存在はやっぱりサッカーを観る楽しみ、WSLを観る楽しみのひとつだったりする。

WSLにやってきた4人の指揮官

新たにWSLにチャレンジするのはもちろん選手だけじゃなく監督もいるんだけど、新シーズンのWSLの新監督は4人。"WSL Watch #085"で触れてるのはスタッド・ランスから来たレスター・シティのアマンディン・ミケル監督、メルボルン・シティから来たブライトン&ホーヴ・アルビオンのダリオ・ヴィドシッチ(Dario Vidošić)監督、レヴァークーゼンから来たアストン・ヴィラのロバート・デ・パウ監督の3人で、リヨンから来たチェルシーのソニア・ボンパストル(Sonia Bompastor)監督は移籍ウィンドウが開く前の段階で発表されてたから"WSL Watch #081"で紹介済みだったりする。

4人とも前のチームで解任されたわけでもフリーだったわけでもなくて、つまり、前のチームで一定以上の結果を出して、言ってみれば、引き抜かれてWSLに来た監督って言っていいっぽいんで、どんなチームを作るのかやっぱり注目しちゃうかな。あと、「WSLは'引き抜かれる側’じゃなくて'引き抜く側'なんだな」とも思ったり。

夏の移籍マーケットでもっとも積極的に動いたチームは…

この夏の移籍動向を(なるべく漏れがないように)随時まとめてきた"WSL Watch #085"で紹介した選手の人数は(数え間違いがなければ)トータルで86人で、その内の3人が監督だから選手は83人。で、チーム別に内訳を多い順にシンプルなリストにしてみると以下のような感じになる。ちなみに、トータル83人で12チームだと平均は6.91人だから、6〜7人っていうのが'普通'ってことになるのかな。

クリスタル・パレス: 14人
ケイティ・ステンゲル(32)
ポピー・プリチャード(18)
リリー・ウッドハム(24)
ブルック・アスピン(19)
ジョシー・グリーン(31)
ミラ・マイ・マヤサーリ(24)
レクシー・ポッター(18)
ミー・カトー(22)
ジョルジャ・フォックス(20)
ミッレ・ゲイル(24)
アシュレイ・ヴェールデン(25)
インディア・ペイジ・ライリー(22)
シェイ・ヤネズ(27)
カトリーヌ・ヴェジェ(33)

昇格チームらしく? ものすごくアグレッシヴに動いたのが14人獲得したクリスタル・パレス。若手はローンも多いけど中堅もベテランも獲ってて、「とにかくWSLに残留するんだ」っていう強い意志は感じるかな。チャンピオンシップでどんなサッカーをしてたのかは知らないけど、昇格チームってことは昨シーズンは上手くいってたはずで、基本的にはその路線を継続+パワー・アップってことだろうけど、これだけの戦力が加わると昨シーズンの試合の映像とかもあまり参考にならなそうだし、とりあえず、開幕を楽しみにするしかない感じかな。

ブライトン&ホーヴ・アルビオン: 12人+監督
ニキータ・パリス(30)
ミシェル・アジェマン(18)
ブルーナ・ヴィラマラ(22)
イェレナ・チャンコビッチ(29)
アイシャ・マサカ(20)
ハンナ・ポウルター(19)
レイチェル・マクロークラン(27)
ベックス・レイナー(24)
マリット・アウエ(22)
清家貴子(27)
フラン・カービー(31)
マリサ・オリスラガース(23)
ダリオ・ヴィドシッチ監督

デッドライン・デイの締切時間ギリギリにニキータ・パリスを獲得したことも含めて、ブライトン&ホーヴ・アルビオンが'この夏の主役'だったって言っていいじゃないかな。もちろん、エリザベス・ターランドが抜けたっていう点はあるけど、実績十分で計算ができるベテランから、すぐに活躍してほしい中堅、さらにはフレッシュな若手まで、一通りカバーしてる感じで。新監督って部分も含めて、どうなるのかが一番見えないチームだったりする。もちろん、清家貴子がどれくらい活躍するのかにも注目だし。

アストン・ヴィラ: 8人+監督
ガビ・ヌニェス(27)
チャシティ・グラント(23)
ミッシー・ボー・カーンズ(23)
サブリナ・ディアンジェロ(31)
ミリ・テイラー(24)
ケイティ・ロビンソン(21)
パウラ・トマス(22)
ジル・バイジングス(23)
ロバート・デ・パウ監督

実は20代前半の選手が多いことも含めてアストン・ヴィラもなかなか興味深い補強ができた印象で、新監督のチーム作りにも注目だし、シンプルに早く試合が観てみたいチームのひとつかな。

マンチェスター・シティ: 7人
ケイティ・スタートアップ(25)
ナオミ・レイゼル(20)
山下杏也加(28)
イヴ・アネッツ(18)
藤野あおば(20)
清水梨沙(28)
フィフィアネ・ミデマー(27)

いきなり日本人選手を3人も獲ったことに(特に日本では)注目が集まっちゃうマンチェスター・シティだけど、もちろん、大物中の大物も獲ってるわけで、基本的には昨シーズンのベースにプラス・アルファっていう方向性の編成だと思うけど、わりと充実した夏だったんじゃないかな。

ウェスト・ハム・ユナイテッド: 7人
リー・メンウェン(29)
オオナ・シレン(23)
セライナ・ピウベル(24)
マヌエラ・パヴィ(23)
シェリナ・ザドルスキー(31)
カミラ・サエス(29)
キンガ・シェミク(27)

主力がけっこうチームを離れた(しかも、昨シーズンは残留争いをしてた)わりに、そこまで派手には動かなかった印象かな、ウェスト・ハム・ユナイテッドは。1人はローンが完全移籍になった選手だし。アウトの選手とインの選手の収支を考えてプラスになってるのか、少なくとも現段階では微妙な感じがしちゃう。

トッテナム・ホットスパー: 7人
マイテ・オロズ(26)
ケイトリン・タルバート(25)
アナ・チキ(24)
ヘイリー・ラソ(29)
クレア・ハント(25)
エラ・モリス(21)
アマンダ・ニルデン(25)

トッテナム・ホットスパーは年齢を見てもわりと即戦力中心の補強だった感じなのかな。ロバート・ヴィラハム監督の下で昨シーズンから積み上げてきたベースはある程度あるだろうから、足りない部分を足したってことなんだろうけど。ただ、昨シーズンのトッテナム・ホットスパーで大ブレイクしたグレイス・クリントン(Grace Clinton)がローン元のマンチェスター・ユナイテッドに戻っちゃったのは、仕方ないとはいえものすごく痛いと思うけど。あと、セリン・ビゼー・イルドゥソイを引き抜かれたし。その穴がこの補強で埋まったのかがポイントになりそう。

レスター・シティ: 6人+監督
シャナ・ショスノット(19)
ノエミー・ムション(21)
ルビー・メイス(20)
サリ・キーズ(23)
シャンテル・スワビー(25)
アスミタ・エール(22)
アマンディン・ミケル監督

新監督を迎えたレスター・シティは多くもなく少なくもなく、それでいてわりとピンポイントだけど実は若手多めの補強だったって印象かな。若い選手のポテンシャルを上手く引き出せれば面白いチームになりそう。

マンチェスター・ユナイテッド: 6人
セリン・ビゼー・イルドゥソイ(22)
シミ・アウージョ(20)
アナ・サンドバーグ(21)
エリザベス・ターランド(23)
メルヴィン・マラード(24)
ドミニク・ヤンセン(29)

個人的にけっこう評価が難しいと思ってるのがマンチェスター・ユナイテッド。まず、けっこうな主力選手、具体的にはもちろんメアリー・アープス(Mary Earps)だったりケイティ・ゼレム(Katie Zelem)だったりニキータ・パリスのことだけど、昨シーズンまでバリバリ主力だった選手が複数抜けてるわりに、獲得した人数は少ないなって印象で。1人はローンが完全移籍になった選手だし。ただ、このリストには入ってないけどトッテナム・ホットスパーで大ブレイクしたグレイス・クリントンが戻ってきたのは間違いなくものすごく大きいし、その他にも若くて楽しみなタレントを複数獲得してるし、全然悪くない感じも確実にあって。上手くハマればものすごく良くなりそうだし、でも、昨シーズンとはけっこう変わりそうだし、けっこう読めないっていうか、期待と不安と両方あるなのかな。

チェルシー: 5人
メリス・エンポメ(21)
ルーシー・ブロンズ(32)
オリアンヌ・ジャン・フランソワ(22)
サンディ・ボルティモア(24)
ジュリア・バーテル(20)

人数自体は多くないけど、ルーシー・ブロンズっていう大物を獲ったことも含めて、獲得した選手はみんな楽しみな戦力で、いかにも強豪チームっていう余裕を感じさせる動きだったかな。あえてそれほど動いてないっていうか。ただ、"WSL Watch #081"でも触れた通りチェルシーももちろん新監督なるんで、どんな感じになるのか率直にすごく楽しみだけど。

エヴァートン: 5人
インマ・ガバーロ(21)
ヴェアトリキ・サッリ(26)
メリッサ・ロウリー(30)
林穂之香(26)
トニ・ペイン(29)

わりと渋めの動きだった印象なのがエヴァートン。もちろん、林穂乃香の加入も含めて即戦力になりそうな選手が多くて楽しみな部分はありつつも、基本的には昨シーズンから大きく変わる感じじゃないのかな…とも思ったり。

リヴァプール: 3人
ジェマ・エヴァンズ(28)
コルネリア・キャコップス(24)
オリヴィア・スミス(19)

人数こそ少ないけど、リヴァプールの補強はわりと楽しみな感じかな、個人的には。オリヴィア・スミスもコルネリア・キャコップスもけっこう面白そうなんで。

アーセナル: 3人
ローザ・カファジ(21)
ダフネ・ファン・ドムセラール(24)
マリオナ・カルデンテイ(28)

デッドライン・デイまでバルセロナのイングランド代表MFのキーラ・ウォルシュ(Keira Walsh)の獲得に動いてたなんて報道もあったアーセナルだけど、最終的にはピンポイントで、でも、けっこう豪華な補強になったかな。3人ともすごく楽しみなタレントなんで。特にローザ・カファジには個人的かなり期待してる。

リーグ全体の動きに関しては、例年の数字を知ってるわけじゃない、何なら夏の移籍ウィンドウの動向を追いかけたのは今シーズンが初めてだからこの数字が多いのか少ないのかこんなもんなのか、もちろん客観的な判断はつかないんだけど、個人的にはすごく盛況だったって印象かな、やっぱり。毎日ニュースを追いながら「こんなにどんどん決まるのか」とか「いろんな国の選手が来るな」とか普通に思ったんで。一般的なサッカー・チームのスカッドのサイズを考えても、新加入選手の数が2桁になるってけっこう異常な事態だとは思うんで。もちろん個別の事情はそれぞれ違うだろうから良いか悪いかは一般化できないけど、それでも、普通に「前のシーズンとは違うチームになるよな」とは思うし。ブライトン&ホーヴ・アルビオンみたいに監督まで代わってればなおさらそうだし。

ちなみに、「いろんな国の選手が来るな」の部分を確認してみたら、全83人の選手は28ヶ国から来てた。イングランドがもちろん最多で19人なんだけど、それでも19/83って数字はかなり少ない気もするし、「やっぱり、WSLは国際色豊かなリーグだな」って思ったり。2位は8人のオランダ、3位は6人のフランスとスペインで、清家貴子と藤野あおばと山下杏也加が新たにWSLに参戦することになった日本はWSL内の移籍をした清水梨沙と林穂乃香を含めて5人でスウェーデンと並んで5位だったりする。それ以降の順位は、カナダが4人、ウェールズとアメリカが3人、デンマークとノルウェーとフィンランドとオーストラリアが2人、スコットランドとベルギーとスイスとポーランドとハンガリーとセルビアとギリシャとブラジルとコロンビアとチリとジャマイカとナイジェリアとタンザニアとニュー・ジーランドと中国がそれぞれ1人ずつ。ヨーロッパはもちろん、南北アメリカ、アフリカ、アジア、さらにはオセアニアまで、まさに世界中をカバーしてる感じ。

WSLを離れることになったスター選手たち

移籍マーケットだからインがいればアウトもいる、来る選手がいれば去る選手ももちろんいるわけで、この夏にWSLから他国のリーグに移籍した主な選手の情報は"WSL Watch #087"で随時更新してきたけど、最後に改めてまとめとこうかな、と。

メアリー・アープス(31)→ パリ・サン・ジェルマン
今年の夏の移籍マーケットのアウトで最大級のトピックっていえば、やっぱりイングランド代表GKのメアリー・アープスがマンチェスター・ユナイテッドからパリ・サンジェルマンに完全移籍したことになるのかな。"WSL Watch #054"で書いた通り、近年のWSLの顔だった選手の1人だったと思うから、マンチェスター・ユナイテッドにとってはもちろんだけど、WSLってリーグにとっても大きな損失だって言えそう。

ジェス・カーター(26)→ NY/NJゴッサムFC
メアリー・アープスと並んでけっこうビックリした、何なら噂があったメアリー・アープス以上に驚いたのはイングランド代表DFのジェス・カーター(Jess Carter)がチェルシーからNY/NJゴッサムFCに完全移籍したことだったりするかな。文句なしでWSLを代表するDFだったと思うし、わりと唐突な感じ決まったんで。ただ、チェルシーではたくさんタイトルを獲ったし、チェルシーは長年率いてきた監督が変わって変化のタイミングだったっぽいし、新たなチャレンジをしたいって考えたら年齢的にも最適なタイミングだったって言えるのかもしれないけど。

ケイティ・ゼレム(28)→ エンジェル・シティFC
イングランド代表MFのケイティ・ゼレムがマンチェスター・ユナイテッドからエンジェル・シティFCに完全移籍したのも個人的にはけっこうビックリしたかな。移籍先云々ではなく、移籍したって事実に関して。もちろん、マンチェスター・ユナイテッドの生え抜きのイングランド代表選手だし、年齢的にもまさにキャリアのピークって言えるようなタイミングだし。そういう年齢だからこそ、新しいチャレンジをすることにしたのかもそれないけど。

マッケンジー・アーノルド(30)→ ポートランド・ソーンズ
オーストラリア代表GKのマッケンジー・アーノルド(Mackenzie Arnold)も近年のWSLを代表するGKって感じだったから、ウェスト・ハム・ユナイテッドでの契約満了はけっこう驚いたかな。あえて理由を考えるなら、年齢的な部分? って感じだけど。ちなみに、移籍先はポートランド・ソーンズで、チェルシーでプレイしてたジェシー・フレミング(Jessie Fleming)とか日本代表の杉田妃和がいたりするから、それはそれで楽しみなんだけど。

クロエ・ラカス(31)→ ユタ・ロイヤルズ
年齢的なことを考慮した編成的な若返りって意味だと、アーセナルからユタ・ロイヤルズに完全移籍したカナダ代表FWのクロエ・ラカス(Cloé Lacasse)もそうなのかな。実力的には間違いないクオリティだし、実績も十分だけど、アーセナルくらいのクラブになると、ある意味、シビアに編成の年齢バランスを考えなきゃいけないんだろうな、と。

メラニー・ロイポルツ(30)→ レアル・マドリー
ドイツ代表MFのメラニー・ロイポルツ(Melanie Leupolz)がチェルシーからレアル・マドリーに完全移籍したのも、個人的にはけっこう驚いたかな。エリン・カスバート(Erin Cuthbert)とのCMFコンビの安定感の印象がかなり強かったんで。基本的には年齢とプレイ時間ってことなんだろうけど。

ルシア・ガルシア(25)→ CFモンテレイ
スペイン代表FWのルシア・ガルシア(Lucía García)がマンチェスター・ユナイテッドからメキシコのCFモンテレイに完全移籍したのもけっこうインパクトが強かったかな。特に事前に噂とか聞かなかったし、マンチェスター・ユナイテッドでも普通に主力だったし、スペイン代表でもバリバリ活躍してる選手だし、年齢的にもベテランって感じでもないし。移籍先がメキシコのクラブだって点も含めて、ちょっと予想外だった感じ。

フィリパ・アンイエルダール(26)→ レアル・マドリー
「年齢的にもベテランって感じでもない」っていえば、マンチェスター・シティからレアル・マドリーに完全移籍したスウェーデン代表MFのフィリパ・アンイエルダール(Filippa Angeldahl)も当てはまるかな。ただ、フィリパ・アンイエルダールの場合は、"WSL Watch #053"で取り上げたイングランド代表MFのジェス・パーク(Jess Park)とか"WSL Watch #064"で取り上げたオーストラリア代表FWのメアリー・ファウラー(Mary Fowler)の成長に押し出されたみたいなところもあったのか、ちょっと出場機会が減ってたのは事実なんだけど。

アリーシャ・レーマン(25)→ ユヴェントス
選手としてだけじゃなくインフルエンサーとしてもものすごく人気があるって意味も含めて、アストン・ヴィラからユヴェントスに完全移籍したスイス代表MFのアリーシャ・レーマン(Alisha Lehmann)もけっこう大きなニュースだったかな。ただ、アリーシャ・レーマンに関しては、私生活でのパートナーのドウグラス・ルイス(Douglas Luiz)も同じタイミングでアストン・ヴィラからユヴェントスに移籍してて、「カップルで同時に移籍するケースは初めて」なんて記事も見かけたけど、もちろん、当事者である選手2人と当該チームがハッピーなら「こういうケースだって全然あってもおかしくないよな」って思うけど。選手だって私生活があるわけで。

エスメ・モーガン(23)→ ワシントン・スピリット
マンチェスター・シティからワシントン・スピリットに完全移籍したイングランド代表DFのエスメ・モーガン(Esme Morgan)はちょっと珍しいケースなのかな。イングランド代表にも呼ばれてて、まだピークを迎えてないような年齢の選手がアメリカに行くって意味で。ちなみに、ワシントン・スピリットはバルセロナからホナタン・ヒラルデス(Jonatan Giráldez)監督を招聘したチームで、移籍金を支払って獲得して4年契約を結んだらしいんで、かなり熱心に誘われたって感じっぽいけど。

イ・グンミン(30)→ バーミンガム・シティ
ブライトン&ホーヴ・アルビオンからバーミンガム・シティに完全移籍した30歳の韓国代表FWのイ・グンミン(Lee Geum-min / 이금민)も個人的にはちょっと驚いたかな。もちろん、もうベテランって言っていい年齢だし、移籍先もチャンピオンシップのバーミンガム・シティだからイングランドからいなくなるわけじゃないし、昇格して戻ってくるかもしれないけど。でも、もともと2020年にマンチェスター・シティに加入してからずっとWSLでプレイしてる選手で、今ではビックリするくらい日本人選手が増えたけど、近年のWSLでプレイするアジア人(特に東アジア出身選手)の代表格の1人だったと思うんで、やっぱりいなくなるのはちょっと寂しい感じはあるかな。

ここから先は

0字

¥ 200

この記事が参加している募集

サポートしてもらえると今後も続けるモチベーションが上がるし、何よりも純粋に嬉しいです。