日本人選手も活躍!! 大詰めを迎えたコンチ・カップとFAカップの勝ち上がりをチェック :: WSL Watch #049
2月頭に"WSL Watch #035"でコンチ・カップ、"WSL Watch #036"でFAカップについて書いたけど、どっちもだいぶ大詰めになってきたんでここまでの勝ち上がりと今後の予定をまとめとこうかな、と。
[コンチ・カップ] 決勝はアーセナル対チェルシーの強豪対決に
まずは進行が早いコンチ・カップことウィメンズ・リーグ・カップから。代表ウィーク明けの週末のリーグ戦の直後のミッドウィークっていうタイトな日程だったんだけど、現地時間の3月6日・7日に準決勝の2試合が行われて、アーセナルとチェルシーが見事に決勝進出ってことに。
アーセナルに関しては、終始アストン・ヴィラを圧倒して4-0で勝ったんだけど、特にスウェーデン代表FWのスティナ・ブラクステニウス(Stina Blackstenius)が前半だけでハットトリックを達成する大活躍で。イングランド代表FWのアレッシア・ルッソ(Alessia Russo)の加入もあって今シーズンはどうしてもプレイ時間が限られちゃってるんだけど、やっぱり実力は間違いないってことを改めて強烈に印象付けた感じだったかな。
もう1試合の準決勝はマンチェスター・シティ対チェルシーっていう強豪同士の対戦だったんだけど、ものすごく拮抗した面白い試合で。この2チームは代表ウィーク直前のリーグ戦で優勝争いを左右する大一番をやったばっかりで、"WSL Watch #040"でレビューして通りそのときはマンチェスター・シティが勝ってチェルシーと勝点で並んだんだけど、今回のコンチ・カップの準決勝はそのリーグ戦と内容も結果も逆になったみたいな感じで。スコアはどっちも1-0で、唯一のゴールは自陣でのビルドアップのミスから生まれてて、(先制されたからってことはあるんだろうけど)実は負けたチームのほうが内容的には押してて、でも、勝ったチームのGKが大当たりで、チーム全体で何とか守りきって勝ったって感じで。チェルシーのエマ・ヘイズ(Emma Carol Hayes OBE)監督も試合後にそういう内容の話をしてたけど。
今シーズンの決勝は現地時間の3月31日の15:00キックオフで、ウルヴスことウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズのメンズ・チームのホーム・スタジアムで約32,000人収容のモリニュー・スタジアムで行われる予定。どこが勝ち上がっても決勝戦の場所はあらかじめ決まってたんで、モリニュー・スタジアムはロンドンからちょっと離れたウェスト・ミッドランズにあるけど勝ち上がったのがロンドンの2チームってことになっちゃったらしい。
ただ、3月12日の段階で前売りチケットは15,000枚以上売れてるらしいけど。さすがに強豪同士の注目の対戦ってことなのかな。
[FAカップ] レスターとスパーズがクラブ史上初のベスト4進出
今シーズンのウィメンズFAカップに関しては、"WSL Watch #036"を書いた段階ではまだベスト16の段階だったと思うけど、現段階ではベスト4に絞られてる。先に結果を言っちゃうと、勝ち上がってるのはチェルシーとマンチェスター・ユナイテッドとレスター・シティとトッテナム・ホットスパーで、レスター・シティとトッテナム・ホットスパーはクラブ史上初のベスト4進出なんだとか。
レスター・シティとトッテナム・ホットスパーが勝ち上がってるってことは、いわゆるトップ4の2チーム、具体的にはアーセナルとマンチェスター・シティが負けたってことなんだけど、"WSL Watch #036"でも触れた通り、まずこの2チームがベスト16で当たっちゃってて。2月の代表ウィーク前だったんだけど、ものすごく拮抗した内容で、ある意味では上で触れたチェルシーとマンチェスター・シティの2試合にも似てるんだけど、内容はややアーセナルだったかも? って印象で、でも、マンチェスター・シティがGKのキアラ・キーティング(Khiara Keating)を中心に粘り強く守りながらセット・プレイのワンチャンを活かして勝ち上がった感じで。もっと言うと、10月に行われたリーグ戦の最初の対戦ではキアラ・キーティングのミスからの失点でマンチェスター・シティが負けてるんだけど、そのときの失敗を糧にしたキアラ・キーティングが大活躍って意味でも熱かったし。
で、アーセナルがまさかのベスト16で敗退した後の準々決勝は、リヴァプール対レスター・シティ、ブライトン&ホーヴ・アルビオン対マンチェスター・ユナイテッド、エヴァートン対チェルシー、トッテナム・ホットスパー対マンチェスター・シティの4試合だったんだけど、チェルシーとマンチェスター・シティがかなり苦労したのがちょっと驚きだったかな。
[FAカップ] スパーズがPK戦の末にクラブ史上初のベスト4進出
最大のサプライズはやっぱりトッテナム・ホットスパーがマンチェスター・シティを退けてクラブ史上初となるベスト4進出を決めたことかな。PK戦だったから「スパーズがシティに勝った」とは書かないけど。実はこの2チームの対戦は今シーズン4回目で、ここまではマンチェスター・シティのホームのリーグ戦、トッテナム・ホットスパーのホームのリーグ戦、トッテナム・ホットスパーのホームで行われたコンチ・カップの準々決勝って順番で対戦してて、7-0、2-0、1-0って結果でマンチェスター・シティが3連勝してて。トッテナム・ホットスパーのサポーターのSNSなんかには「7-0→2-0→1-0って順番だから今度はいけるんじゃね?」「直前のコンチ・カップのチェルシー戦でシティが延長まで闘って、精根使い果たした末に勝って、シティはコンチ・カップをプライオリティにする展開が理想的」みたいな意見もあったりしたんだけど、今回は見事にトッテナム・ホットスパーがマンチェスター・シティを乗り越えちゃった。
しかも、結果だけじゃなく内容的にもトッテナム・ホットスパーがマンチェスター・シティをかなり苦しめたのは事実で。4回の対戦では明らかに一番出来が良くて。試合全体を見ればさすがにトッテナム・ホットスパーが上回ってたってことはないけど、保持でも非保持でも勇敢に立ち向かってたし、差は明らかに縮まってた印象で。逆にマンチェスター・シティに関しては辛い結果になっちゃったかな。内容は悪くなかったけどいつもほどチャンスの数は多くなかったし。もちろん、マンチェスター・シティは早い時間に先制できちゃったから急ぐ必要がなくて、トッテナム・ホットスパーも1失点こそしたけど内容が悪かったわけじゃないから、結果としてどっちも無理に試合を動かそうとせずに闘いながら時計が進んで、終盤にトッテナム・ホットスパーが攻撃的な選手交代で勝負に出て、本当にいつ笛が鳴ってもおかしくない後半のアディショナル・タイムにマンチェスター・シティが守備陣の連携ミスから失点して、延長でも決着がつかずにPK戦になって、よりによってキックが上手いアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)とクロエ・ケリー(Chloe Kelly)がトッテナム・ホットスパーのGKのレベッカ・スペンサー(Rebecca Spencer)に止められちゃって。失点につながった最後の連携ミスを悔やむのか、追加点を取れなかったことを悔やむのか、なかなか難しいところだけど、とにかく、マンチェスター・シティは同じ週に2つのタイトルの可能性がなくなったわけで、なかなか厳しいな、と。
あと、結果はものすごく残念だけど、長谷川唯がとにかくすごかったことには触れとかないといけないかな。プレイ内容も安定して高水準をキープしてるんだけど、とにかくスケジュールが異常で。代表ウィーク前のFAカップのアーセナル戦で94分出て、週末のリーグ戦の大一番だったチェルシー戦でフル出場して、その直後に日本に帰国して、サウジ・アラビアに移動して日本代表のアウェイ扱いの北朝鮮戦でフル出場、日本に戻ってホームでの北朝鮮戦でフル出場、すぐにイギリスに戻って週末のリーグ戦のエヴァートン戦とミッドウィークのコンチ・カップ準決勝のチェルシー戦でフル出場して、このFAカップのトッテナム・ホットスパー戦で延長を含めた120分フル出場してPK戦でPKまで成功させてて。たぶん、移動距離とか試合の重要性とかプレイ時間とかを考えると他の日本代表の選手とか他国の代表選手とかと比べてもかなり大変だったはずで、'タフ'なんて安っぽい表現では言い尽くせないくらいのスケジュールと質の高いプレイぶりにはただただ感服しつつ、ちょっと頭が下がる感じすらあったり。
[FAカップ] 宝田と籾木が出場したレスターがリヴァプールに勝利
上に書いた通り、直近1ヶ月くらいの長谷川唯のスケジュールとプレイぶりはちょっと異常なレベルだったんだけど、同じく日本代表に招集されてた長野風花が所属するリヴァプールもFAカップは勝ち残ってて、準々決勝では宝田沙織と籾木結花が所属してるレスター・シティと対戦したんだけど、試合はレスター・シティが2-0で快勝して見事にクラブ史上初のベスト4進出を決めた。
宝田沙織と籾木結花は日本代表には召集されてなかったんでコンディション的にはわりとフレッシュだったと思うけど、宝田沙織はフル出場で籾木結花は68分からの出場。宝田沙織は完全に中盤の要って感じになってるし、籾木結花がこの試合でスタメンから外れた理由はわかんないけど、途中出場でも惜しいシュートがあったりインパクトは残してた。基本的に出た試合ではいつも存在感抜群なんだけど。あと、最近のレスター・シティでは24歳のフィンランド代表FWのユッタ・ランタラ(Jutta Rantala)がすごく好調で、この試合でも2得点決めてて。試合内容としてはけっこう拮抗してたと思うけど、リヴァプールが決定機を決められなかったりして、ちょっとした部分の差が試合結果に現れちゃった感じだったかな。
ちなみに、長野風花はこの試合はケガだったらしくてメンバー外で、残念ながら宝田沙織と籾木結花との対戦は実現しなかったんだけど。長野風花も日本代表に呼ばれてて、代表ウィーク直前は長谷川唯と同じようにFAカップはフル出場でリーグ戦は79分までプレイしたんだけど、たしか長谷川唯より試合日程が遅かった長野風花はウェスト・ハム・ユナイテッドの清水梨沙と林穂之香と植木理子と一緒にロンドンから直接サウジ・アラビアに移動して代表に合流して、アウェイ扱いの北朝鮮戦は70分出場、日本に移動してホームでの北朝鮮戦はフル出場、イギリスに戻った直後のリーグ戦も69分出場してたんだけど、その後、どうもケガしたらしいってニュースが出て。実際にこの日はメンバー外だったんでおそらくケガなんだろうけど。たしか、代表ウィーク直前のブライトン&ホーヴ・アルビオン戦で途中交代したのがちょっと話題になってた。ちゃんと確認したわけじゃないけど去年の1月に加入してから初めての途中交代だったんじゃなかったかな? 長谷川唯よりはちょっとマシだけどそれでも相当ハードなスケジュールで、それでもコンスタントにプレイできててスゴイとしか言いようがないんだけど、さすがにちょっと休まざるを得ない感じっぽい。どの程度のケガなのかはわかんないけど。
[FAカップ] ケガから復帰したマカリオのゴールで辛勝のチェルシー
前回大会の優勝チームのチェルシーはエヴァートン相手にけっこう苦しんだけど、アメリカ代表FWのカタリナ・マカリオ(Catarina Macario)の値千金のゴールを守りきって何とか準決勝進出を決めた。正直なところ、エヴァートンの出来がかなり良くて、チャンスさえ決めてれば...って感じで。ただ、最近はちょっと出番を減らしてたチェルシーのGKのゼチラ・ムショビッチ(Zećira Mušović)の活躍も大きかったかな。ちなみに、浜野まいかも79分から出場してた。
で、大きなトピックになるのは、個人的には最近まで全然把握してなかったんだけど、やっぱりカタリナ・マカリオってことになる。いわゆるACL、前十字靭帯の負傷による長期離脱から代表ウィーク明けのリーグ戦のレスター・シティ戦での途中出場でようやく復帰した選手で、2023年の夏にリヨンから加入してたんだけど、その約1年前の2022年の6月にACLの負傷があったらしくて、当たり前だけどこれまでに一度も観たことがなかったし、全然知らなかった選手で。経歴的には1999年にブラジルで生まれて2011年にアメリカに移住したらしく、アメリカ代表の選手とのこと。ブラジルでは基本的にメンズ・チームでしかプレイしてなかったからのウィメンズ・チームでプレイするようになったのはアメリカに移住してからで、スタンフォード大学のスタンフォード・カージナル時代にかなり活躍したっぽい。プロとしてのキャリアは2021年にリヨンに加入してからで、2022年5月にはUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)の決勝のバルセロナ戦で得点を決めて優勝に貢献したらしい。タイミング的にはその直後にケガをしたってことになると思うんで、復帰までかなり時間がかかっちゃっケースって言えるのかな。
代表ウィーク明けのリーグ戦のレスター・シティ戦で途中交代で出場して、いきなりケガから復帰後初ゴールを決めたことで大きなニュースになって、個人的にはそのときに初めて「こんな選手もチェルシーにいたのか」って知った感じで。その後のミッドウィークのコンチ・カップのマンチェスター・シティとの準決勝には出なかったけど、今回のエヴァートン戦もスコアレスだった63分から出場して、66分にこの試合の決勝点になったゴールを決めちゃったんで、控えめに言ってもけっこう鮮烈な復帰、鮮烈なチェルシーでのデビューだったんじゃないかな、と。まだ、短い時間しかプレイを観れてないんでどんな選手なのかイマイチ把握できてないし、スタメンでバリバリ活躍できる状態になるにはもうちょっと時間がかかるのかもしれないけど、サム・カー(Sam Kerr)とミア・フィシェル(Mia Fishel)を立て続けにACLの負傷で欠くことになっちゃったチェルシーにとっては、シーズン終盤に向けてキー・プレイヤーになるのかも。
[FAカップ] 順当に勝ち上がったユナイテッド
準々決勝の4試合で唯一順当に勝ち上がったって言えそうなのがマンチェスター・ユナイテッドかな。ブライトン&ホーヴ・アルビオン相手に前半で3点奪う盤石の試合運びで、最終的に4点差をつけてクリーンシートで快勝だったんで。
マンチェスター・ユナイテッドに関しては、個人的にはやっぱりまだ今シーズンの最適解が見つかってない印象は拭えないし、リーグ戦でUWCL出場権が得られるトップ3に入るのはかなり難しそうなんで、FAカップにかけるモチベーションはものすごく高そう。
[FAカップ] 準決勝は初の決勝進出チームが生まれる対戦に
で、気になる準決勝の組み合わせだけど、3月12日に行われたドローで決定した対戦は以下の通りで、4月13日と14日に行われる予定。
マンチェスター・ユナイテッド vs チェルシー
トッテナム・ホットスパー vs レスター・シティ
マンチェスター・ユナイテッド対チェルシーは前回大会の決勝の再戦で、そのときはチェルシーが勝ってるんで、マンチェスター・ユナイテッドにとってはリベンジ・マッチってことに。あと、この頃には宮澤ひなたもケガから復帰できてそうかな。
クラブ史上初となるFAカップのベスト4進出を果たしたチーム同士の対戦、トッテナム・ホットスパー対レスター・シティもものすごく面白くなりそう。もちろん、どっちが勝っても初のファイナリストってことになるし、レスター・シティは1月に加入した宝田沙織と籾木結花がすっかり主力として活躍してるし。個人的には、どっちも今シーズンの始めから注目して観てきてたチームだったりするんで、シンプルにすごく楽しみ。
あと、日本人選手が所属するチームが決勝に進出することは確定したってことらしい。決勝のピッチに立てるのかはまた別の話だけど。仮に勝ち上がったとすると、宝田沙織と籾木結花はケガとかがなければ普通に出るだろうし、宮澤ひなたはケガから復帰できてれば十分出場はありえそうだし、浜野まいかも徐々に出場機会は得てるから全くないってことはなさそう。ちなみに、過去には実は元日本代表の大野忍と近賀ゆかりがアーセナル時代に優勝してて、たしか近賀ゆかりは決勝でゴールも決めてるはず。
決勝はリーグ戦の最終節の直前、5月12日にウェンブリー・スタジアムで行われることになってる。
コンチ・カップもFAカップも日本で視聴可能
最後に日本からの視聴環境を。コンチ・カップはThe FA Playerで過去のアーカイブも観れるし、決勝もたぶん観れるはず。
FAカップもThe FA Playerで観れて、DAZNでもラインナップに入ってるんで無料で配信されるはず。