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WSLの世界的な位置付けは? :: WSL Watch #019

代表ウィークなんで、ついつい考えちゃいがちな素朴な疑問についてちょっと考えてみたりして。それは、WSLってリーグの世界的な位置付けに関して。なかなか難しい問題だけど、「WSLは世界最高峰のリーグなのか?」って訊かれると、とりあえずそうとは言えないのが現状っぽい。

ヨーロッパでの位置付け

UEFAが過去のヨーロッパのコンペティションでの結果をベースに算出してるリーグのランキング(正式には'Women's association club coefficients'なんで厳密には'係数'ってことになると思うけど)によると、イングランドはフランス、ドイツ、スペインに次いで4位になってる。

同じようにUEFAのクラブのランキング(正式には'Women's club coefficients')を見ると、トップ10に入ってるのは6位のチェルシー、7位のアーセナル、8位のマンチェスター・シティの3チームなんだけど、トップ100に入ってるのもこの3チームだけだったりして。マンチェスター・ユナイテッドが今のカタチでチームを運営するようになったのは2018年だったりするんで、このランキング的にはまだまだこれからだったりするんだと思うけど。ちなみに、1位のバルセロナがいるスペインはトップ50に5チーム、2位のオランピック・リヨンがいるフランスは4位のパリ・サンジェルマンも含めてトップ50に4チーム、3位のヴォルフスブルクがいるドイツは5位のバイエルン・ミュンヘンも含めてトップ50に4チームに入ってたりするんで、やっぱりイングランドとはちょっと差がある感じ。

もちろん、このUEFAの指標が絶対的なモノではないし、例えば昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(UWCL)で優勝したバルセロナはリーガFもぶっちぎりで優勝したけど、仮にバルセロナとチェルシーが対戦したとして、バルセロナが勝ったとしてもチェルシーが勝ったとしても、その結果がリーガFとWSLのリーグとしての力関係まで示してるとは言えないと思うんで。ただ、それでもこのUEFAの指標は考える上でのそれなりの基準のひとつにはなると思うし、現状ではWSLは5位のイタリアも含めたヨーロッパの5大リーグのひとつとは言えるけど、決して最高峰ではないって位置付けるのが妥当なのかな。

ヨーロッパとその他の地域

さらにこの問題を難しくしてるのは、上で触れたのはあくまでもUEFAの話で、UEFAってことは範囲はヨーロッパなわけだけど、世界的な位置付けを考えるためにはヨーロッパ以外の地域にも目を向ける必要があるわけで。プレミアリーグとかラ・リーガみたいな男性のリーグであれば、少なくとも現状では'ヨーロッパ=世界最高峰'って言ってもほぼほぼ間違いではないと思うけど、女性の場合はそうは言えない事情があったりして。つまり、アメリカにNWSL(National Women's Soccer League)っていう別の世界っていうか、決して無視はできない一大勢力があるってこと。例えば、単純に「NWSLの優勝チームとUWCLの優勝チームってどっちが強い?」みたいなことを考えても全然イメージができないし、実際に試合をすればもちろんその場での結果は出るけど、リーガFとWSLの話がそうだったように、その結果でリーグとしての力関係が測れるほど単純じゃないとも思うし。

ちなみに、本論からちょっとズレるけど、NWSLはNWSLでちょいちょい観てるんだけどなかなか面白かったりする。日本の選手もけっこうプレイしてるし。ここでは詳しくは触れないけど、レギュラー・シーズン+ポスト・シーズンってフォーマットで、昇降格がなくて、サラリー・キャップとかドラフトとかトレードがあって、VARも導入されてて、今シーズンはリーグ終盤の残り4試合くらいの段階まで全チームにプレイオフ出場の可能性があったようなコンペティティヴなリーグで、ある意味、同じ競技なんだけどヨーロッパの価値観とはちょっと違う価値観で運営されてるアメリカン・スポーツならではの面白さがあって。

さらに言えば、ヨーロッパとアメリカだけじゃなく、日本にはWEリーグもあるし、FIFAWWCの開催国として大会を盛り上げたオーストラリアのAリーグ・ウィメンも人気が高まってるみたいだし、南アメリカにもアフリカにもアジアにも、世界中にあるわけで。クラブのレベルで各国の強豪が対戦するような機会って意味では、FIFA主催ではないけどウィメンズ・インターナショナル・チャンピオンズ・カップ(Women's International Champions Cup)って大会が2018年と2019年と2021年と2022年の夏にアメリカで開催されてて、直近の2022大会はフランスのリヨン、イングランドのチェルシー、メキシコのCFモンテレイ、アメリカのポートランド・ソーンズが参加、リヨンが優勝したみたいだけど、この大会の結果がそのままヨーロッパと北アメリカとか4カ国のリーグ間の実力差を反映してるって話になるとは思えないし。もうちょっと大きな規模で開催されてる世界規模の大会っていうとFIFAWWCとオリンピックってことになるんだろうけど、代表チームとクラブ・チームは同じ基準では比べられないっていうか、別のレイヤーにあるモノだと思うんで、WSLの世界的な位置付けを断言する根拠にするのはなかなか難しいな、と。

ただ、ひとつ、ちょっと面白い証言があって。それは元日本代表で、日本、ドイツ、イングランド、オーストラリアでプレイ経験があって、現在はアメリカのNWSLでプレイしてるっていうスゴイキャリアを歩んでる永里優季の分析。自身のYouTubeのアカウント『永里優季のUSAGI CHANNEL』で「世界の中心は欧州【アメリカと欧州を徹底比較】バロンドール取りたいなら欧州へ行け!」って動画を公開してるんだけど、さすが当事者だけあってなかなか生々しいっていうか、これまでの流れ〜現状みたいな部分を鋭く分析しててなかなか興味深い内容だな、と。

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