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清家の活躍にも注目!! 保持型に変貌したブライトン :: T2W003 :: WSL Watch #129

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気が付いたらものすごく久しぶりになっちゃってたけど、'T2W = team to watch(注目したいチーム)'の第3弾、ブライトン&ホーヴ・アルビオン編を。今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンは、特に日本では清家貴子が加入したことでも注目が集まってると思うけど、そのことを抜きにしても、ここまでの成績を見てもピッチ上でのプレイを観ても、間違いなく今シーズン序盤のWSLで最も注目すべきチームだと思うんで。代表ウィークの間に何試合か改めてチェックしてみたりしつつ。

昨シーズンからイメージが一変したブライトン

まず、大前提として昨シーズンまでのブライトン&ホーヴ・アルビオンについて触れとくと、直近5シーズンの成績は9位→6位→7位→11位→9位で、基本的には中位以下だった(けどWSLには残留できてた)チームだった感じ。昨シーズンはアメリカ人のメリッサ・フィリップス(Melissa Phillips)監督が指揮を執ってたんだけど残留争いに巻き込まれたこともあって2月に解任されて、シーズンの残りは暫定監督で凌いで今シーズンから新監督を招聘したって流れ。

昨シーズンまでのブライトン&ホーヴ・アルビオンのサッカーに関しては、正直なところ、それほど大きな特徴はなかったって感じで、"WSL Watch #059"の'P2W014'でも紹介した23歳のノルウェー代表FWのエリザベス・ターランド(Elisabeth Terland)がリーグ2位タイの13得点って大活躍をしてくれて、良くも悪くも「とりあえず、ターランドである程度得点の計算はできる」って感じのチームだったかな。で、結果的には残留はできたけど新監督を迎えることは決まってて、しかも、エリザベス・ターランドがマンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれちゃったんで、今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンのわかりやすい注目ポイントは「新監督を誰にして、どんなサッカーをするのか」と「ターランドが抜けた穴をどうやって埋めるのか」の2点だったって言っていいはず。

37歳のオーストラリア人監督のダリオ・ヴィドシッチを招聘

新たな指揮官としてブライトン&ホーヴ・アルビオンが選んだのは、37歳のオーストラリア人のダリオ・ヴィドシッチ(Dario Vidošić)監督。夏の移籍マーケットの動向をまとめた"WSL Watch #085"でもちょっと触れたけど、オーストラリアのAリーグ・ウィメンのメルボルン・シティをレギュラー・シーズン首位、グランド・ファイナル準優勝に導いた実績の持ち主で、現役時代はブンデスリーガとかでのプレイ経験があってオーストラリア代表としても活躍してたことでも知られてる。ちなみに、監督としてのキャリアはメルボルン・シティからのスタートだったらしいんだけど。同時に、アシスタント・ヘッド・コーチにはエヴァートンでアシスタント・マネージャーを務めてたクリス・ロバーツ(Chris Roberts)が就任してる。

スカッドの半分を入れ替える積極的な補強

新監督招聘と同時に多くの新戦力を獲得したのも今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンの大きな動きで、若手〜中堅〜ベテランを満遍なく計12人補強してる。ちなみに、12人っていうのは昇格チームのクリスタル・パレスに次ぐ多さだったりして、公式サイトに載ってるスカッドが24人だったりするから、スカッドの総入れ替えとまでは言わないけど普通に半分が新加入選手ってことになる。その中で目を引くのはイングランド代表経験もあってWSLでの実績も十分あるベテランの2人、フラン・カービー(Fran Kirby)とニキータ・パリス(Nikita Parris)ってことになるのかな、やっぱり。さっそく期待通り抜群の存在感を放ってるし。

シーズンの約1/3を終えて3位という好成績

実際にシーズンが始まって以降のブライトン&ホーヴ・アルビオンで特筆すべきは、何と言っても(この記事を書いてる)8節終了時点で5勝1分2敗で3位っていう好成績。アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドよりも上位ってことも含めてただただビックリだし、負けたのがマンチェスター・シティとアーセナルで引き分けたのがマンチェスター・ユナイテッド(でチェルシーとはまだ未対戦)で他の5戦は全勝、つまり、客観的に見て格上って言える3チームには勝てなかったけどそれ以外のチームには全部勝ってるっていうのもすごくわかりやすいし。しかも、勝てなかった格上の3チームとも真っ向勝負を挑んでてて。強豪と対戦するときに柔軟に('現実的に'って言い換えてもいい)闘い方を変える、具体的には守備を固めて慎重に闘うタイプの監督と、自分たちのプレイモデルで真っ向からぶつかってみるタイプの監督がいると思うけど、ダリオ・ヴィドシッチ監督は基本的に後者らしくて。記者会見でもそういう趣旨のことを発言してたし。もちろん、シビアな残留争いの渦中だったりしたら話は違ってくるのかもしれないけど。でも、マンチェスター・シティ戦とアーセナル戦とマンチェスター・ユナイテッド戦を観る限りでは、少なくともシーズン序盤の段階ではそこまでは考えずに勇敢に闘ってたように見えたかな。

8節終了時点でブライトンは3位に

8試合で14得点・11失点、得失点差が+3しかないんで上位のチームとしてはかなり少ないんだけど、細かく見るとアーセナル戦の5失点が響いちゃってる感じ。チーム内の得点ランキングは、開幕戦でハットトリックを達成した清家貴子が4得点でトップ、PKキッカーも務めてるフラン・カービーがニキータ・パリスと並んで3点で複数得点してるのはこの3人だけ。「ターランドが抜けた穴をどうやって埋めるのか」って問題の解決策が明確に見えたって感じではないけど、現状ではニキータ・パリスと清家貴子に期待って感じなのかな。

ボール保持率が大幅に上昇した今シーズンのブライトン

新監督の下で大幅にスカッドを入れ替えて新シーズンに臨んでるブライトン&ホーヴ・アルビオンだけど、サッカーの部分の大きな特徴として目を引くのはやっぱり明確なプレイモデルってことになるのかな。基本的には、自陣の低い位置からクリーンにパスをつないで前進するビルドアップに取り組みつつ、幅と深さを活かして相手陣内でボールを持って攻める時間を長くすることを志向してて、ボールを失ったら即時奪回を目指すし、相手のビルドアップに対してはハイプレスでボールを奪いにいくスタンスを明確に打ち出してて。最近のメンズ・フットボールでもよく見る、特に各国リーグの上位チームに多いタイプのハイプレス志向で保持型のチームって言っていいんじゃないかな。

実際に(FOTMOBで)平均ポゼッション率を確認してみたら54.4%でリーグ4位で、マンチェスター・シティの68.8%、アーセナルの58.8%、チェルシーの56.2%に次ぐ数字だったりする。昨シーズンは44.3%でリーグ10位だったから、明らかに変わった、保持型に変貌したって言えるはず。

8節終了時点での平均ポゼッション率の上位チーム(FOTMOBより)

フォーメーションに関しては、4-2-3-1をベースにしつつ、保持時は片方のSBを押し出して3-4-2-1に可変、非保持では4-4-2の並びから4-2-4でハイプレスって感じなんじゃないかな? 現地実況なんかで3バックって言ってることもあって、たしかに保持時を見ればそうなってるから間違いじゃないんだけど、非保持の時に4-4-2をベースにしてると思うんで。

実はわりと慎重なチーム作りなのかも?

ここまでのリーグ戦8試合の出場時間を(fbrefで)見てみると、8試合 x 90分 = 720分フルタイム出場してるのはGKのソフィー・バガリー(Sophie Baggaley)とDFのグーロ・ベルグスヴァント(Guro Bergsvand)の2人、新加入でMFのフラン・カービーがほぼフルタイムの710分で、700分を超えてるのはこの3人だけ。次いでMFのヴィッキー・ロサーダ(Vicky Losada)が682分で、出場時間上位の4人は8試合出場。DFのジョセリン・カラバリ(Jorelyn Carabalí)は7試合で630分、DFのポッピー・パッティンソン(Poppy Pattinson)は7試合で608分で、600分を超えてるのはこの6人だけど新加入選手は1人だけってことになる。新加入でFWのニキータ・パリスが8試合で591分で7番目い長いんだけど、500分を超えてるのはここまで。その次は新加入のDFのマリサ・オリスラガース(Marisa Olislagers)が8試合で494分、DFのマリア・トリスドッティル(Maria Thorisdottir)が6試合で469分、新加入のFWの清家貴子が7試合で417分、MFのメイジー・サイモンズ(Maisie Symonds)が8試合で392分って続く感じで、720分の半分の360分以上出場してるのはこの11人(フィールド・プレイヤーは10人)なんだけど、新加入選手は実は4人だけで、たくさんの選手を補強した印象が強かったけどわりと既存の戦力を中心にチーム作りをしてる感じだったりする。もちろん、チームが置かれた状況とかが違ってるから単純に比較はできないけど、例えば、ブライトン&ホーヴ・アルビオン以上にたくさん補強したクリスタル・パレスなんかは出場時間の上位はほとんどが新加入選手だったりしてるんで、けっこう違ってる印象かな。

あと、ここまでの試合での起用法と出場時間とプレイの内容をどう評価するのか、なかなか難しいところだと思うけど、出場時間で上位11人にちゃんと入れてて7試合出場・スタメン4試合の清家貴子は、スタメンで使われても比較的途中交代が多いポジションだってことも含めて考えると、わりとコンスタントに出場機会を得られてるって言っていいんじゃないかな。もちろん、開幕戦でのハットトリックの影響も小さくないんだろうけど。

プレイモデルの特徴が出てるシーンをピックアップ

今シーズンからWSLの試合はYouTubeで配信されててアーカイブも残ってるから、今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンのプレイモデルの特徴がわかるようなシーンをクリップ機能を使って切り出してみた。今後もこういう感じでまとめられるのはすごく助かる感じ。

まず前提として、上にも書いた通りフォーメーションは4-2-3-1をベースにしつつ、保持時は片方のSBを押し出して3-4-2-1(幅を取る選手が高い位置まで上がってるときは3-2-4-1とか3-2-5にも見える)に可変、もうちょっと細かく言うと、低い位置でGKも保持に関われるときはわりとオーソドックスに4バックのままに見えることもあるんだけど、ある程度(おそらくミドル・ゾーン辺りまで)前進すると3バックに可変する感じ。どっちのSBを押し出すかは起用されてる選手のキャラクターとか相手チームによって変えてるみたいで、WGがそのまま両サイドともWB化して幅を取って押し出されたSBがインサイドMFになるケースもあるっぽい。非保持に関しては、幅を取ってる選手が両サイドとも最終ラインまで下がってるわけじゃないから基本の並びは4-4-2で、ハイプレス時は4-2-4っぽくなってるように見えるかな。

試合によってけっこうメンバーが変わってるんだけど、キーになってるのはやっぱり8試合のほぼフルタイムの710分出場してるフラン・カービーなのかな。4-2-3-1の並びなら2列目の3の中央、非保持時の4-4-2なら2トップの1人、保持時の3-4-2-1だと2列の1人、主に右インサイドMFになることが多いんだけど、かなり自由度が高いっていうか、かなり広範囲に動いてる(動くことが許容されてる)ように見える。ビルドアップを助けるために幅を取った右WBと最終ラインの右CMの間に顔を出してボールを引き出したりもするし、横幅を取る右WBとレーンを入れ替えてタッチラインを踏んでみたり。それこそ、清家貴子は4-2-3-1の並びなら2列目の3の右WGで使われることが多いんだけど、フラン・カービーの動きを見ながら幅を取ったり中のレーンに立ったりしてるように見えるんで。何度か左サイドで使われてたこともあったけど。ともあれ、特に保持局面でのピッチ上での微調整みたいな役割を担ってるのがフラン・カービーで、だからこそ、なるべく長くピッチに置いておきたいのかな、と。

▶︎ GKを含めた低い位置からのビルドアップ

あえてちょっと苦労したシーンを選んだんだけど、ブライトン&ホーヴ・アルビオンの低い位置からのビルドアップのスタンスがよくわかるシーン。相手のウェスト・ハム・ユナイテッドが4-2-4みたいな並びでかなり高い位置まで人数を多く出して強い圧をかけてるんだけど、GKと3バックとCMFの2人の6人で我慢強く相手の最前線の4人のラインを超えて中盤のCMFの2人の脇まで前進できてる。CBの位置がかなり低いから高い位置で幅を取ってるWBとCBの距離は長くなってるんだけど、その間にインサイドMFが下りてきて顔を出したりしつつ、44:38辺りで中央のレーンで下りてきたCFWにボールが入ったところで相手の前の4人のラインを超えられてて、その後に1回相手に引っかかっちゃったからそのままスピード・アップって感じにはならなかったけど、CFWが相手のCMFの脇でボールを受けて前を向けたタイミングでインサイドMFの1人と幅を取ったWBの2人は相手の最終ラインにアタックできる状態にはなってるし、即時奪回して保持のフェーズには入れてて、最終的にはアタッキング・サードまでは前進できてる。

もうひとつ、同じウェスト・ハム・ユナイテッド戦から、けっこう強めのプレッシャーを受けながら前進できてるシーンを。このシーンでは両サイドともWGがそのままWB化して幅を取ってて、押し出された右SBが右インサイドMFに入ってるんだけど、右WBにボールが渡ったときにけっこう圧縮されて狭くなっちゃったからボールをGKまで戻して、そのまま強めの圧をかけられてるんだけど、我慢強く低い位置でGKとCBの3人とCMFの2人の6人でプレスを回避して、インサイドMF経由で左WBまで展開できてて。このときに左WBに入ってた清家貴子のところからのサイドを変える展開で引っかかっちゃったんだけど、そこまでの前進は狙い通りだったんじゃないかな。

続いてマンチェスター・シティ戦でのビルドアップのシーンで、この試合では基本的にはマンチェスター・シティのハイプレスにかなり苦しめられてたんだけど、このシーンでは上手く左WBまで上手くボールを逃がせてて、逆サイドから斜めに裏を狙った右WBの清家貴子にパスをピッタリ通せれば決定機だったかも思える感じで。この試合がまだ2節だったってことも含めて、今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンが取り組んでることがよく見えたシーンって言えそう。

▶︎ ブライトンの保持の基本陣形

ブライトン&ホーヴ・アルビオンの保持時の基本陣形がよくわかるシーン。非保持時の4-4-2から左SBだけを押し出して3-4-2-1に可変して、最終ラインにDFが3人いて、CMFが2人、左WGがインサイドMF化してインサイドMFが2人、左SBと右WGがWB化して幅を取って、CFWが相手のDFラインと駆け引きするカタチで、幅を取るWBがかなり高い位置まで上がるから3-2-4-1とも言えるような陣形になってる。このシーンのウェスト・ハム・ユナイテッドはハイプレスじゃなくて、ミドル・ゾーンで縦幅も横幅もコンパクトにして構えてるから中のレーンからは前進しにくいんだけど、CBへのプレスはあまりかかってなくて、右サイドで横幅を担当してる清家貴子が上手く裏を取って最終ラインからボールを引き出して、すぐにアンダーラップしたインサイドMFにパスを出してボックスに侵入して、さらに清家貴子が絡んで最終的にCKを獲得してる。短いパスで前進するだけじゃなく、大きな展開と長いボールで前進できるならそれを選ぶって意図が見えたシーンって言えそう。

▶︎ ブライトンのハイプレスからのショート・カウンター

今度はブライトン&ホーヴ・アルビオンの非保持で、マンチェスター・シティ戦でハイプレスからショート・カウンターでフィニッシュまでいけたシーン。マンチェスター・シティのCMFから出た浮き球のパスが入ったところを潰してボールを奪って、ショート・カウンターからシュート、さらにセカンド・ボールから2次攻撃ってカタチを作れてる。相手チームによってプレスのカタチは微調整してるっぽいけど、基本的にはこういうシーンをなるべく多く作りたいはず。

▶︎ ブライトンのハイプレスが回避されてチャンスを作られたシーン

上手くいったシーンだけじゃなくて、上手くいかなかったシーンもいくつか。まずはブライトン&ホーヴ・アルビオンの非保持、具体的には4-2-4のハイプレスがマンチェスター・ユナイテッドに見事に回避されて失点したシーン。相手のGKから始まるタイミングで相手の最終ラインの3人とGKに対して4人で対応するように立ってるんだけど、選手間に上手くパスを通されてすぐに囲みにいくんだけど回避されて、一度最終ラインに戻してから(ブライトン&ホーヴ・アルビオンから見て)右サイドに展開されて、戻りながらの対応になったところでドリブルでカットインされた後にサイドを変えられて、最終ラインとGKの間のスペースに流し込まれたクロスをGKの前で触られて失点してるんだけど、プレスの強さと方向が中途半端になると外されて後ろ向きで対応せざるを得なくなるっていうリスクが出ちゃった感じ。もちろん、このリスクも織り込み済みでハイプレスに出てるんだろうけど。ちなみに、右サイドに展開されたときにWGとレーンを入れ替えてパスを引き出してドリブルでレーンを横断しながらサイド・チェンジの基点になった宮澤ひなたのプレイは絶妙だったし、フィニッシュの場面のセリン・ビゼー・イルドゥソイ(Celin Bizet Ildhusøy)のクロスもグレイス・クリントン(Grace Clinton)のニアに入る動きもシュートも質が高かったんだけど。

同じくマンチェスター・ユナイテッド戦で、ミドル・ゾーンで構えた状態からプレスが中途半端になってシュートを打たれたシーン。自陣の左サイドでの相手のスローインから始まってて、相手が一度最終ラインまでボールを戻して12:37辺りでコンパクトな4-4-2の守備陣形をセットできてる状態になってるんだけど、そこからのプレスが中途半端で、中のレーンで縦にパスを3本連続で通されてフィニッシュまでいかれちゃってる。ゴールが中央にあるっていうサッカーっていう競技自体の特徴からおのずと導き出される守備の原則として、外のレーンよりはまずは中のレーンを優先して守る、中のレーンを使われるくらいなら外のレーンを使われても構わないって考えが一般論としてあると思うんだけど、このシーンではあまり制限もできないまま中→中→中って使われちゃってるんで、ブライトン&ホーヴ・アルビオンの守備対応にかなり問題があったって言っていいと思うし、こういうシーンはできるだけ減らしたいはず。

さらにマンチェスター・シティ戦での失点シーンで、最初は高い位置まで選手を出してプレスに行こうとしてるけど、マンチェスター・シティのスムーズな前進に対して十分な圧がかけられず、帰陣は速かったから撤退して守備の人数を揃えることはできてるけど、それでも失点しちゃってるのはちょっと問題かな? って感じ。もちろん、マンチェスター・シティの保持の質が高いって言っちゃえばそれまでなんだけど。あえてポイントを挙げるなら、マンチェスター・シティの右CBのライア・アレクサンドリ(Laia Aleixandri)にドライブであっさり最前線の守備ラインを超えられちゃってるのがいただけないかな。そのから先の展開でもボールに圧がかかってないし。

▶︎ 相手のハイプレスに苦しめられるブライトンのビルドアップ

続いてブライトン&ホーヴ・アルビオンの保持で、相手のハイプレスを受けて低い位置からのビルドアップでボールを失うシーン。マンチェスター・シティ戦なんだけど、1分足らずのクリップの中で2回連続でボール・ロストしてる。どっちも致命的なピンチにはなってないけど。マンチェスター・シティのハイプレスの特徴はWGの選手が背中でSBへのパス・コースを消しながらCBに出てそのままの勢いでGKまで2度追いもする、いわゆる'外切り'プレスが多いんだけど、GKまで圧をかけられたときにはかなり苦労するシーンが多い印象かな、現状のブライトン&ホーヴ・アルビオンは。

今シーズンのブライトンを観る楽しみ

上で挙げたシーンで今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンの保持局面のビルドアップと非保持局面のハイプレスで上手くいったシーンと上手くいかなかったシーンをそれぞれカバーできてると思うけど、もちろん、実際にはどの試合でも上手くいったシーンも上手くいかなかったシーンもあって。で、当然だけど、上手くいったシーンでどれだけゴールを奪えるか、逆に上手くいかなかったシーンでどれだけ失点せずにしのげるかが試合結果に影響するから、その収支をそれぞれの試合でプラスにできれば勝つ可能性が、マイナスになっちゃえば負ける可能性が上がるって部分がありつつも、でも、実際にはそんなに単純な話じゃないのがサッカーって競技の特性で、不確実な要因で試合結果が決まっちゃうこともけっこうあって。

ただ、それでもチームとしてやるべきことが整理されることで不確実な要因で試合結果が決まっちゃうケースを減らすことはできるし、何より選手が迷いなくプレイできるし、もっと言っちゃえば、サッカーの戦術なんて本来はそのためにあると思うんで、そういう意味では、今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンは選手が迷いなくプレイできてて結果が出てるし、取り組んでるモノがプレイから伝わってくるから、上手くいく部分も上手くいかない部分も含めて観てても面白いって思ってて。もちろん、せっかく上手く前進できたのに最後の局面の質が...とか、ハイプレスを受けたときの細かいつなぎの部分の質が...とか思うこともけっこうあるし、特に上位のチームと比べればどうしても個々の選手の質とか層の厚さとかの差も気になっちゃうんだけど。ただ、それでも、意欲的に取り組んでる部分は観てて伝わってくるし、少なくとも現段階で期待以上の好成績を残せてるのは決して偶然じゃない気はするし、新たな監督の下で意欲的なプレイモデルを落とし込もうとしてるチームの進捗を継続的にフォローするのは(上手くいってもいかなくても)サッカーを観る楽しみのひとつだと思うし、そういう意味では今シーズンのブライトン&ホーヴ・アルビオンはそういう対象にするのにピッタリなチームって気がする。

とりあえず、ブライトン&ホーヴ・アルビオンの年内のスケジュールはアウェイのチェルシー戦、ミッドウィークにホームでリーグ・カップのブリストル・シティ戦を挟んでホームでトッテナム・スパーズ戦があって年内は終了、さらにウィンター・ブレイク明けに(ウィメンズFAカップの4回戦があって)アウェイでリヴァプール戦まで闘うとリーグ戦の1巡目の対戦が終わりって感じ。リーグ・カップ(とFAカップ)は置いておいても、昨シーズンのチャンピオンで今シーズンも首位を走るチェルシーとの対戦はもちろん、昨シーズンから着実に積み上げならチームを作ってるトッテナム・ホットスパーとの対戦もなかなか興味深い試合になりそうだから、とりあえず、年内の2試合でどんなプレイを見せてくれるのか、シンプルにすごく楽しみかな。

清家貴子がブライトンとWSLについて語るインタビュー記事

そういえば、ちょっと前に『REAL SPORTS』ってサイトに清家貴子のインタビューが載ってたんで、備忘も兼ねて最後に貼っとこうかな。ブライトン&ホーヴ・アルビオンのサッカーとかWSLとか現地での生活とか、いろいろ話しててなかなか興味深いし、日本のメディアの現地取材って意味でも貴重なコンテンツだと思うんで。

ちなみに、インタビューをしてるのはウィメンズ・フットボールを長く取材してるスポーツ・ジャーナリストの松原渓で、10月中旬にアメックス・スタジアムでのブライトン&ホーヴ・アルビオン対マンチェスター・ユナイテッドとジョイー・スタジアムでのマンチェスター・シティ対アストン・ヴィラを取材したとのこと。清家貴子のインタビュー記事以外にも今回の取材をベースにした記事が『REAL SPORTS』に載ってて、現地で取材したWSLの話が読める貴重な日本語のコンテンツって言えそう。


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