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NWSLからギルマとケロリン、バルサからウォルシュ、さらに日本から大山が! 2025年の冬のWSLの移籍動向を総括!! :: WSL Watch #145

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1月31日に閉まった1月の移籍マーケットの動向は"WSL Watch #134"で随時更新してたけど、改めて全体の動きとかの総括を。先に結論っていうか、ざっくりとした印象を言っちゃうと、1月の移籍マーケットにしてはかなり動きがあったって言える気がする。


ヨーロッパ制覇を目指して容赦ない補強を続けるチェルシー

24/25シーズンの1月の移籍マーケットでのWSL関連の動きで一番目を引いたのは、やっぱりここまで公式戦無敗のチェルシーの補強って言っていいはず。具体的には、サン・ディエゴ・ウェーヴから獲得した24歳のアメリカ代表DFのナオミ・ギルマ(Naomi Girma)とバルセロナから獲得した27歳のイングランド代表MFのキーラ・ウォルシュ(Keira Walsh)とAZから獲得した20歳のU20オランダ代表GKのフェムケ・リフティング(Femke Liefting)の3人ってことになるんだけど、ナオミ・ギルマとキーラ・ウォルシュっていう世界的なトップ・プレイヤーを2人獲得する傍らで、フェムケ・リフティングっていう将来が嘱望されてる若いタレントも同時に確保してる辺りも含めて。「困ってる部分を補完する」ための選手獲得じゃなくて「今は別に困ってないんだけど、今よりもっともっと強くする」ための選手獲得、文字通りの'補強'、王者の余裕すら感じさせる移籍マーケットでの動きで。去年の1月の移籍マーケットでマイラ・ラミレス(Mayra Ramírez)とナタリー・ビョルン(Nathalie Björn)を、夏の移籍マーケットでルーシー・ブロンズ(Lucy Bronze)を獲ってることも含めて、「リーグ連覇だけじゃなく、UEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)で優勝できるチーム、もっと言っちゃえば、バルセロナに勝てるチームを本気で作ろうとしてる」って思わざるを得ないかな、やっぱり。

ナオミ・ギルマ - チェルシーのSNSより
キーラ・ウォルシュ - チェルシーのSNSより

ちなみに、ナオミ・ギルマの移籍はウィメンズ・フットボール史上最高額の移籍金だって報じられてて、メディアによって金額は多少上下してるんだけど、とりあえず、'1M'って数字、つまり、史上初めてミリオンの大台を超えたケースってことらしくて、でも、実は去年の1月のマイラ・ラミレスの移籍も当時の史上最高額で、その金額は今では5位になってたりして、メンズ・フットボールの世界に比べたらまだまだ少ない(それこそ、まだ100倍くらいは軽く差がある)んだけど、それでも、かなりのスケールで大きくなってるし、その中でチェルシーが放ってる存在感はすごく大きいってことは間違いなさそう。

チェルシーの選手編成に関しては、前から個人的にけっこう強く感じてるのは「インがいればアウトももちろんいるわけで、ポジションの年齢バランスを考えて実はわりとドライに放出する選手は放出してる」ってことだったりする。例えば、去年の夏にジェス・カーター(Jess Carter)とメラニー・ロイポルツ(Melanie Leupolz)とイェレナ・チャンコビッチ(Jelena Cankovic)とフラン・カービー(Fran Kirby)を、今年の1月にもイヴ・ペリセ(Ève Périsset)がチームを離れてて、しかも、全員20代後半より上の年代の選手だったりして。もちろん、実績十分な選手たちだから欲しがるチームはあるってこともあるんだけど、この辺はわりとドライにチームの新陳代謝を促してる感じがするかな。

もうひとつ、若くて有望な選手をたくさん抱えてて、かなりいろんなチームにローンで出してるって点もある。1月の移籍マーケットだけでも、20歳のジュリア・バーテル(Júlia Bartel)がリヴァプールに、パリFCにローン移籍してた20歳のルナ・リバデイラ(Louna Ribadeira)がエヴァートンに、25歳のアニーク・ノウウェン(Aniek Nouwen)がクリスタル・パレスに、23歳のアレハンドラ・ベルナベ(Alejandra Bernabé)がリヴァプールに今シーズン終了までのローンで移籍してたりして。夏の移籍マーケットでも同じような動きはあったし、「チェルシーは何人有望な若手を抱えてるんだ?」って思ったりもしつつ、「同年代でありながらチェルシーに残ってけっこうなプレイ時間を得てる浜野まいかは実はかなりすごいよな」なんて思ったりもして。

早い時期から積極的な動きを見せたエヴァートン

チェルシーの次に1月の移籍マーケットで積極的に動いたのがエヴァートン。ウィンター・ブレイク前までの闘いぶりをまとめた"WSL Watch #137"でも触れてるけど、もともとそれほど多くない人数でチームを作ってたのに複数の長期離脱者が出ちゃって苦しい選手起用を余儀なくされてたんで、ある意味、当然っていえば当然なんだけど。デッドライン・デイに発表されたベテランのマーレン・ミェルデ(Maren Mjelde)をはじめとして、ヘイリー・ラッド(Hayley Ladd)とケリー・ガゴ(Kelly Gago)といった実力派、さらにローンでルナ・リバデイラ(Louna Ribadeira)とエマ・ワトソン(Emma Watson)とマルティナ・フェルナンデス(Martina Fernández)を獲得して計6人を補強。6人っていうのは全チームで最多なんだけど、移籍マーケットが開いてからの動きが早かったのも特徴で、新加入のケリー・ガゴがさっそくFAカップとリーグ戦で3点取ってたり、マルティナ・フェルナンデスとヘイリー・ラッドが年明け以降全試合に出てたりして、けっこうパワー・アップした感じはあるかな。

ケリー・ガゴ(写真左)- エヴァートンのSNSより

大山がシティに加入して日本人選手は13人に

特に日本でけっこう大きなニュースになったのは、やっぱり早稲田大学ア式蹴球部女子部から大山愛笑がマンチェスター・シティに加入したこと。かなり斜め上っていうか、予想外なところからきた感じも含めて。"WSL Watch #134"でも触れたけど、「早稲田大学ア式蹴球部女子部から」って書いてること自体、なかなか新鮮な感じだし。ウィンター・ブレイク明けの最初のリーグ戦の11節のマンチェスター・ユナイテッド戦でさっそくメンバー入りして12節のアストン・ヴィラ戦で84分に交代出場でWSLデビューを果たした。長谷川唯との交代でCMFとしてプレイしたんだけど、今後はリーグ戦に加えてFAカップとリーグ・カップ、さらにUWCLのノックアウト・ラウンドもあって試合数が増えるんで、長谷川唯を休ませるって意味でもそれなりに出場機会はありそうかな。ともあれ、大山愛笑のマンチェスター・シティ加入でWSLでプレイする日本人選手は13人になって、大山愛笑がすでにリーグ戦出場を果たしたってことはケガで引き続き離脱中の清水梨沙以外の12人はリーグ戦に出場済みで、ウィンター・ブレイク前までの日本人選手のデータを確認した"WSL Watch #139"で、国別で見ると人数で7位タイ、出場時間で2位って数字を紹介したけど、この数字はもっと増えることになりそう。

大山愛笑 - マンチェスター・シティのSNSより

ケガ人が続出して難しい状況のマンチェスター・シティ

大山愛笑の加入の流れでマンチェスター・シティの話をしとくと、正直なところ、なかなか評価が難しいって印象だったりする。加入したのは完全移籍でレベッカ・クナーク(Rebecca Knaak)とケロリン(Kerolin)と大山愛笑で、ローンでラウラ・ヴィーンロイター(Laura Wienroither)の計4人だけど、同時に、これまで主力として活躍してた2人の選手、アラナ・ケネディ(Alanna Kennedy)が完全移籍で、クロエ・ケリー(Chloe Kelly)がローンで移籍してて。特にクロエ・ケリーはイングランド代表の人気選手だし、けっこう大きなニュースになった感じ。ただ、冷静に状況を見ると、アラナ・ケネディは年齢的にベテランになってきたし、クロエ・ケリーはちょっと序列を落としてたし、スカッドの年齢バランスを整えつつ比較的余裕があるポジションで序列を下げてた選手を放出して、複数ポジションをこなせてWSLでの経験も十分な選手をローンで獲って手薄なポジションを埋めてるって意味ではある程度納得感はあるんだけど。おそらく、アラナ・ケネディが務めてた右CBに関しては夏に獲得したナオミ・レイゼル(Naomi Layzell)がカバーしつつ、清水梨沙の復帰までの期間はSBとCBでプレイできるラウラ・ヴィーンロイターで穴を埋めて、レベッカ・クナークは今はケガで離脱してるアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)のポジション、大山愛笑は長谷川唯のポジションのバックアップ、クロエ・ケリーが抜けたWGポジションはメアリー・ファウラー(Mary Fowler)と藤野あおばにケロリンを加えて、今はケガで離脱しちゃってるけどもちろんローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)もいるし、若手のリリー・マーフィ(Lily Murphy)も出てきたし、戦力的には十分揃ってはいる感じ。ウィンター・ブレイク前にローレン・ヘンプとカディジャ・ショウとアレックス・グリーンウッドっていう主力中の主力選手3人が同時にケガで離脱しちゃって年末から年明けの時期はかなり難しかったんで、補強としては全然的確だとは思いつつも、マンチェスター・ダービーとアーセナル戦の負けもあったし、なんかちょっと停滞感が漂ってるような感じもしちゃって、その辺りがちょっと評価を難しくしちゃってるのかな。

レベッカ・クナーク - マンチェスター・シティのSNSより

確かな実力を持つ戦力を補強したアーセナル

クロエ・ケリーの流れでアーセナルの話もすると、1月の移籍マーケットで補強したのは2人、ジェナ・ナイスウォンガー(Jenna Nighswonger)を完全移籍で、クロエ・ケリー(Chloe Kelly)でローンで獲得してる。逆にチームを離れた選手を見ると、何人か若手をローンで出した以外はローマに完全移籍したキャサリン・モーラー・キュール(Kathrine Møller Kühl)とマンチェスター・シティにローン移籍したラウラ・ヴィーンロイターの2人ってことになるんで、それほど出入りがあったわけじゃない感じなのかな。ジェナ・ナイスウォンガーはNY/NJゴッサムFCでプレイしてた24歳のアメリカ代表DFで、パリ・オリンピックでは主にサブからだったんだけど、それでも全6試合中の3試合に途中交代で出場して金メダル獲得に貢献した選手。左SBをメインにCBとCMFでもプレイできる守備のユーティリティ・プレイヤーって感じで、ラウラ・ヴィーンロイターをローンで出せたのはジェナ・ナイスウォンガーを獲ったからって感じなんだろうし、アーセナルにはアメリカ代表DFのエミリー・フォックス(Emily Fox)もいるし、すごく理に適った補強って言えそう。ただ、クロエ・ケリーの獲得に関しては、もちろん確かな実力がある人気選手であることは間違いないんだけど、「アーセナルの補強ポイントだったのかな?」って考えるとちょっと微妙な感じもあるかな。WGにはベス・ミード(Beth Mead)とケイトリン・フォード(Caitlin Foord)がいて、マリオナ・カルデンテイ(Mariona Caldentey)もいるし、スティナ・ブラクステニウス(Stina Blackstenius)と同時起用のときはアレッシア・ルッソ(Alessia Russo)が入ったりもするし。クロエ・ケリー的には、UEFAウィメンズ・ユーロ(WEURO)直前のシーズンなのにマンチェスター・シティでの状況が変わらないとメンバー入りも難しくなりそうだから環境を変えたかったってことなんだろうけど、「選手層が厚いアーセナルで希望するようなプレイ時間を得られるのかな?」って考えるとそれほど簡単じゃなさそうだし、アーセナル側のことを考えても、本当に補強ポイントだと思ってたならもっと早く動いてて良さそうなもんだし、なんか「デッドライン・デイ直前になって、急に降って沸いたように獲れるかも? って感じになったから獲った」みたいな感じに見えなくもないかな、正直なところ。クロエ・ケリーは前回のWEUROでのイングランド代表の優勝のアイコンみたいな人気選手だから、もちろんアーセナルで活躍して代表メンバーに入ってWEUROでまた活躍して欲しいって多くのファンが思ってるんだと思うけど。アウトに関しては、個人的にはキャサリン・モーラー・キュールにはけっこう期待してたんで、ローマに完全移籍しちゃったのはちょっと残念だったかな。あと、出産のために長期離脱してたアマンダ・イレステット(Amanda Ilestedt)が約1年ぶりに復帰したのも補強じゃないけどプラス材料って言えるはず。

クロエ・ケリー - アーセナルのSNSより

確実にチームの底上げを図るスパーズ

完全移籍で3人獲得したトッテナム・ホットスパーもけっこう手堅い補強をしたように見えるかな。27歳のスウェーデン代表DFのジョセフィン・ライブリンク(Josefine Rybrink)をBKヘッケンから、23歳のデンマーク代表MFのオリヴィア・ホルト(Olivia Holdt)をローゼンゴードから、26歳のオランダ代表GKのリゼ・コップ(Lize Kop)をレスター・シティから獲ったんだけど、ジョセフィン・ライブリンクとオリヴィア・ホルトの2人はスウェーデン人のロバート・ヴィラハム(Robert Vilahamn)監督がよく知ってるであろう春秋制のスウェーデン・リーグからの獲得で、しかも、BKヘッケンはロバート・ヴィラハムがトッテナム・ホットスパーの前に率いてたチームだったりするし、リゼ・コップはレスター・シティでも十分実力を示してたGKだし。ウィンター・ブレイクまでの雑感をまとめた"WSL Watch #133"でも触れたけど、一定以上のプレイ時間を得てる選手のアウトもないし、ロバート・ヴィラハム監督が就任してから着実に積み上げてきたチームに確かな働きが期待できそうな即戦力を加えたって言ってよさそう。

ジョセフィン・ライブリンク - トッテナム・ホットスパーのSNSより

何とかしてWSL残留を目指すパレス

現状では最下位に沈んでる昇格チームのクリスタル・パレスはWSL残留を目指して1月の移籍マーケットでも積極的に動いた印象。30歳のフィンランド代表MFのリア・アーリン(Ria Öling)をローゼンゴードから、25歳のカナダ代表FWのクラリサ・ラリシー(Clarissa Laris­ey)をBKヘッケンから、28歳のジャマイカ代表DFのアリソン・スワビー(Allyson Swaby)をACミランからそれぞれ完全移籍で、さらに25歳のオランダ代表DFのアニーク・ノウウェン(Aniek Nouwen)をチェルシーからローンで獲得してるんだけど、4人とも決して若手って年齢の選手じゃないんで、確実にチームの底上げをしてくれる即戦力として期待してるんじゃないかな。残留争いは決して楽じゃなさそうだけど、とりあえずできることはやってる感じはする。

クラリサ・ラリシー - クリスタル・パレスのSNSより

ブライトンとリヴァプールとハマーズとレスターはピンポイント補強

ブライトン&ホーヴ・アルビオンとリヴァプールとウェスト・ハム・ユナイテッドとレスター・シティの4チームに関しては、基本的にはピンポイント補強って印象かな。

ブライトン&ホーヴ・アルビオンは、26歳のオランダ人MFのナディン・ノダム(Nadine Noordam)をアヤックスから、29歳のアイルランド代表DFのケイトリン・ヘイズ(Caitlin Hayes)をセルティックから、計2人を完全移籍で獲得してるんだけど、アウトの選手の若手のGKのローンだけで、基本的にはちょっとおとなしめな印象。ただ、ブライトン&ホーヴ・アルビオンは夏にたくさん選手を獲得してて、今シーズン最大のサプライズって言っていい躍進を果たしてるんで、あくまでもそのチームをベースに足りない部分を補強する程度でOKってことなんだろうけど。

ケイトリン・ヘイズ(写真上)とナディン・ノダム(写真下)- ブライトンのSNSより

ちょっとユニークっていうか、すごく現実的な動きを見せたのがリヴァプール。20歳のU20スペイン代表MFのジュリア・バーテル(Júlia Bartel)と23歳のスペイン人DFのアレハンドラ・ベルナベ(Alejandra Bernabé)をチェルシーから、25歳のスコットランド代表MFのサム・カー(Sam Kerr)をバイエルン・ミュンヘンから、それぞれローンで獲得したのみで。将来的な完全移籍も見越したローンなのか、純粋にとりあえず今シーズンの戦力って意味のローンなのか、何とも言えない感じだけど、それぞれの選手はなかなか興味深いタレントだし、リヴァプールでどんなプレイを見せてくれるのか、シンプルにけっこう楽しみだったりするし、その意図も含めてちょっと意味深な感じもする動きだったりして。

サム・カー - リヴァプールのSNSより

昨シーズンよりも勝点を積み上げられてるウェスト・ハム・ユナイテッドは、25歳のフィンランド代表DFのエヴァ・ニストロム(Eva Nyström)をハンマルビーから、31歳のオーストリア代表DFのヴェレーナ・ハンショウ(Verena Hanshaw)をローマからそれぞれ完全移籍で獲得しつつ、夏の移籍マーケットで獲得してすぐにSCフライブルクにローンで移籍してた23歳のU23ドイツ代表FWのシェキエラ・マルティネス(Shekiera Martinez)とトッテナム・ホットスパーにローン移籍してた26歳のアメリカ人GKのケイティ・スタートアップ(Katelin Talbert)が戻ることになったんで、ウィンター・ブレイク前にはいなかった選手って意味では4人増えたってことになる。

エヴァ・ニストロム - ウェスト・ハム・ユナイテッドのSNSより

それほど派手に動いたわけじゃないんだけど、ちょっと注目したいのがレスター・シティ。24歳のアイスランド代表FWのエリン・エリクスドッティル(Hlín Eiríksdóttir)をクリシャンスターズDFFから、23歳のウェールズ代表GKのオリヴィア・クラーク(Olivia Clark)をトゥウェンテから完全移籍で、18歳のコロンビア代表FWのカルラ・トーレス(Karla Torres)をインデペンディエンテ・サンタ・フェからローンで獲得してるんだけど、注目はやっぱり18歳のコロンビア代表FWのカルラ・トーレスかな。とりあえずローンってことなんだろうけど、ちょっと未知のタレントっていうか、早くWSLでのプレイを観てみたい感じ。

カルラ・トーレス - レスター・シティのSNSより

静かな移籍期間を過ごしたユナイテッドとヴィラ

1月の移籍マーケットで大きな動きを見せなかったのがマンチェスター・ユナイテッドとアストン・ヴィラの1チーム。マンチェスター・ユナイテッドは23歳のU23イングランド代表GKのケイラ・レンデル(Kayla Rendell)をサウザンプトンから完全移籍で、アストン・ヴィラは26歳のアメリカ人GKのケイトリン・タルバート(Katelin Talbert)をウェスト・ハム・ユナイテッドからローンで獲得したのみで、どっちも(玉突き的に動くことが多い)GKだって点も含めて、ほとんど動かずに移籍期間を過ごしたって言えそう。

ケイラ・レンデル - マンチェスター・ユナイテッドのSNSより
ケイトリン・タルバート - アストン・ヴィラのSNSより

ただ、マンチェスター・ユナイテッドはマンチェスター・シティのクロエ・ケリー獲得に動いてた、何なら獲得間近だったなんて報道はあったりしたんだけど。ともあれ、マンチェスター・ユナイテッドは好調を維持してて、何と言っても13試合終了時点で5失点っていう圧倒的な失点の少なさを誇ってたりするんで、特に動く必要はなかったってことなのかな。

アストン・ヴィラは選手の獲得以前の動きとして、12月11日に退任したロバート・デ・パウ(Robert de Pauw)前監督の後任として23/24シーズンまでレアル・ソシエダを率いていたスペイン人のナタリア・アローヨ(Natalia Arroyo)監督を招聘したことが一番のトピックってことになるんだろうけど。レアル・ソシエダで結果を残した38歳の監督なんで、13節終了時点で10位っていう不本意な成績のアストン・ヴィラをどう立て直すのか、とりあえず、今後のチーム作りに注目かな。

ナタリア・アローヨ監督 - アストン・ヴィラのSNSより

昨シーズンより激しく動いた今シーズンの冬の移籍マーケット

今シーズンの1月の移籍マーケットでのWSLの動きをまとめると、"WSL Watch #134"でまとめた件数は34件で、完全移籍が23件、ローンが11件って内訳になってる。昨シーズンの移籍マーケットの動向をまとめた"WSL Watch #021"で取り上げてるのが30件だったから微増って感じ。改めて昨シーズンの加入選手を見ると、チェルシーのマイラ・ラミレスだったり、アーセナルのエミリー・フォックスだったり、ウェスト・ハム・ユナイテッドのカトリーナ・ゴリー(Katrina Gorry)だったり、今じゃすっかりリーグを代表するようなスターって印象の選手が昨シーズンの1月に加入してたりして、レスター・シティの宝田沙織と籾木結花なんかもそうだけど、改めて1月の移籍マーケットもけっこう重要だなって思ったりもして。特に春秋制シーズンのアメリカとかスウェーデンからの獲得に関しては。ちなみに、去年の夏の動向をまとめた"WSL Watch #085"で取り上げてるのは83件だったりする。もちろん、夏の移籍マーケットはチーム作り、冬の移籍マーケットはシーズンの前半戦で出てきた課題とか不測の事態に対応することが主な目的だから、あくまでもメインは夏になって当然なんだろうけど。

この冬の補強をチーム別に見ると、6人獲得したエヴァートンが最多で、マンチェスター・シティとクリスタル・パレスが4人、チェルシーとトッテナム・ホットスパーとリヴァプールとレスター・シティが3人、アーセナルとブライトン&ホーヴ・アルビオンとウェスト・ハム・ユナイテッドが2人、マンチェスター・ユナイテッドとアストン・ヴィラが1人って感じ。人数で見るとエヴァートンが目立つけど、獲った選手を見るとやっぱり今年の冬の移籍マーケットの主役はチェルシーだった感じなのかな。

ちなみに、『ザ・ガーディアン』に各チームの冬の補強を10点満点で採点する"Transfer window verdict: how every WSL club fared in January"って記事が掲載されてて、チェルシーが10点でトップ、次いでクリスタル・パレスが8点、エヴァートンが7点、ブライトン&ホーヴ・アルビオンとマンチェスター・シティとトッテナム・ホットスパーが6点、アーセナルとリヴァプールが5点、レスター・シティとウェスト・ハム・ユナイテッドが4点、マンチェスター・ユナイテッドが3点、アストン・ヴィラが2点って感じになってる。

ギルマとナイスウォンガーとケロリンの3人がNWSLからWSLへ

24/25シーズンの1月の移籍マーケットでのWSL関連の動きで、やっぱり挙げとくべきポイントはアメリカのNWSLからの動きなのかな。具体的には、サン・ディエゴ・ウェーヴからチェルシーに加入した24歳のアメリカ代表DFのナオミ・ギルマ、ノース・カロライナ・カレッジからマンチェスター・シティに加入した25歳のブラジル代表FWのケロリン、NY/NJゴッサムFCからアーセナルに加入した24歳のアメリカ代表DFのジェナ・ナイスウォンガーの3人ってことになるんだけど。

ケロリン - マンチェスター・シティのSNSより

ポイントは2つある気がしてて、まずは3人とも近年のNWSLを代表するような選手で、しかも、年齢もまだ20代半ばでこれから選手としてのキャリアのピークを迎える選手だってこと。もうひとつは、ケロリン以外の2人は現役アメリカ代表の主力選手だってこと。これまでは、アメリカ代表の主力選手の多くは基本的にNWSLでプレイしてる、言い換えれば、アメリカ代表はNWSLのオールスターみたいなチームで、今でも全体を見ればまだそうなんだけど、その構図が崩れる(かもしれない?)流れになってる感じがちょっとあって。ちなみに、今年の冬の移籍マーケットでのNWSLからWSLへの移籍は3人だけだから人数が多いわけじゃないし、WSLからNWSLへの移籍ももちろんある。ただ、WSLからNWSLの場合、例えばアストン・ヴィラからサン・ディエゴ・ウェーヴに完全移籍したケンザ・ダリ(Kenza Dali)は33歳だし、マンチェスター・シティからエンジェル・シティに完全移籍したアラナ・ケネディ(Alanna Kennedy)30歳だし、夏の移籍マーケットで移籍したマッケンジー・アーノルド(Mackenzie Arnold)は30歳だし、クロエ・ラカス(Cloé Lacasse)は31歳だし、ケイティ・ゼレム(Katie Zelem)は29歳だし、ちょっとベテランみたいな選手の移籍が目立つ。もちろん、マンチェスター・シティからワシントン・スピリットに移籍したサンディ・マクアイヴァー(Sandy MacIver)は26歳だし、ヨーロッパの他リーグからNWSLへの移籍だとドイツとかフランスから20歳前後の選手が何人かNWSLに移籍してたりするし、必ずしもベテランばっかりってわけじゃないんだけど、やっぱりWSLからNWSLへのある程度のビッグ・ネームの移籍に関してはベテランの選手が多い印象かな。

ジェナ・ナイスウォンガー - アーセナルのSNSより

アメリカ代表がガチのメンバーを組んだ直近の試合はパリ・オリンピックってことになると思うけど、オリンピックの決勝戦のスタメンでNWSL以外のチームに所属してたのはアーセナルのエミリー・フォックスとリヨンのリンジー・ホーラン(Lindsey Horan)とコルビン・アルバート(Korbin Albert)の3人だったけど、この冬の移籍マーケットでナオミ・ギルマがチェルシーに、クリスタル・ダン(Crystal Dunn)がパリ・サン・ジェルマンに移籍してて、ジェナ・ナイスウォンガーはスタメンじゃなかったけどそれでも11人の中の5人がヨーロッパでプレイしてるって状況になってて。リンジー・ホーランは30歳、クリスタル・ダンは32歳、コルビン・アルバートは21歳だから、キャリアの中のタイミングとしてはナオミ・ギルマとかジェナ・ナイスウォンガーとかエミリー・フォックスとは違うけど、アメリカ代表選手がNWSL以外のリーグでプレイする傾向は進んでるって言ってよさそう。

これがメンズ・フットボールのプレミアリーグとかヨーロッパの主要リーグのメガ・クラブであれば、まさにこれから世界的なスターになる(もしくはすでになった)選手が世界中のリーグから集まることには何の疑問も抱かないシンプルな構図だって世界的に認識されてると思うけど、ウィメンズ・フットボールの世界の場合、その辺があまり明確じゃない感じじゃないんで、けっこう微妙で、だからこそ興味深い感じで。これまでにも「WSLの世界的な位置付けは?」みたいな記事はいくつか書いてるけど、そういうコンテクストの中でも考えてみてもちょっと注目すべき傾向なのかな、と。主な移籍先は別にWSLのチームばかりってわけじゃなくて、WSLの上位チームも含めてUWCLの上位まで勝ち上がるような強豪クラブってことなんだど思うけど。個人的には、WSLの世界的な位置付けはすごく興味がある話題だし、この流れは今後も引き続き注目していきたい感じかな。

当然、アメリカのメディアでもこういう流れを問題視っていうか、もっと言っちゃえば、ある種の危機感みたいなモノが感じられるような論調もあって。例えば、CBSがやってる『アタッキング・サード(Attcking Third)』の公式YouTubeに"Why players are leaving the NWSL for the BWSL & should we be concerned?"なんて動画がアップされてて、約20分にわたって喧々諤々議論されてたりして。

一方のイギリスでは、「ますますチェルシーの一強状態が加速しちゃう?」みたいな懸念が語られてて。例えば、元選手で今はメディアでいろいろ活躍してるイアン・ライト(Ian Wright)が昨シーズン限りで引退した元マンチェスター・シティのステフ・ホートン(Steph Houghton)とやってる『クロスウェイズ(Crossways)』ってコンテンツでは、"Worries for the WSL, and Chelsea’s Dominance Continues"なんてタイトルの30分以上のエピソードがあったりして。

ちなみに、『ザ・ガーディアン』にヨーロッパの5大リーグ(イングランドとスペインとフランスとドイツとイタリア)の冬の移籍マーケットの動向をまとめた"Women’s transfer window January 2025: all deals from Europe’s top five leagues"って記事が掲載されてて、この記事によるとトータルで195件の移籍が成立したんだとか。あと、リーグ別とかチーム別に表示できたり移籍金の値段順に並べたりできるんでなかなか便利だったりする。


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