攻守にダイナミックなプレイが魅力のエミリー・フォックス :: P2W016 :: WSL Watch #063
アーカイブ的な意味合いもあるかも? って思って気まぐれに量産体制に入った'P2W = person to watch(注目したい人)'シリーズの第16弾はアーセナルのアメリカ代表DFのエミリー・フォックス(Emily Fox)を。1月の移籍ウィンドウの動きについてまとめた"WSL Watch 021"と"WSL Watch 034"でも触れてる通り、1月に加入したばかりの選手なんだけど、もうすでにWSL屈指の右SBって言ってもいいくらいの存在感を放ってるんで。
優れたアスリート能力と確かなスキルで攻守に躍動するSB
プロフィール的な部分は後回しにして、とりあえず、エミリー・フォックスのざっくりとした印象を言うなら、「走力と強度に加えてテクニックも兼ね備えてて、攻守の両面でチームに貢献できるスケールの大きな右SB」って感じかな。1月に加入したばかりにも関わらず、選手層が厚いアーセナルでポジションを確保してるだけじゃなく、もう何シーズンもいるみたいにチームに馴染んでる感じだったりするし。
基本的には、わりとオーソドックスなタイプのSBって言っていいのかな? まずはシンプルにアスリート能力の高さが目を引くっていうか、タッチラインに沿って何度も上下動できる走力、速く走れる能力と何度も走れる能力があって、インテンシティの高さもあって。ドリブルで運ぶ部分とか右足のキックの強さと精度もあるし。同じサイドで縦のコンビを組む選手、アーセナルだと"WSL Watch #050"で取り上げたイングランド代表FWでチームの中でも絶対的な存在のベス・ミード(Beth Mead)になることが多いんだけど、自分の前のWGの動きを見ながら後ろに留まってサポートしたり、オーバーラップしたりアンダーラップしたりできる点も魅力かな。あと、蹴るボールが一辺倒じゃないことも特徴かも。もちろん、外のレーンから右足で高いボールでクロスを上げたり、相手の最終ラインとGKの間に低くて速いクロスを入れたりするんだけど、他にも、WGを走らせるボールだったり、相手の最終ラインと中盤のラインの間、いわゆるライン間に平行とか斜めにパスを挿し込むことも上手くて。12節のリヴァプール戦でのフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)のゴールをアシストしたシーンなんかは典型例だと思うけど。けっこう面白い戦術眼とそれを実行できる確かな技術を併せ持ってる感じ。
ポジションがSBだから当然守備局面の振る舞いも重要で、WSLはわりと独力で仕掛けてくるWGに対応することが多いし、アーセナルだとボールを保持して相手を押し込む時間も長いから被カウンター対応も増えるんだけど、持ち前のアスリート能力と戦術眼ですごく上手く対応できてる印象。この辺はさすがアメリカの選手、さすがNWSLでプレイしてた選手ってことなのかもしれないけど。アメリカのNWSLって、けっこうトランジションが多い、言い換えれば、行ったり来たりが多いサッカーをするチームが多くて、強力な個の能力を持ったWGも多いリーグって印象で。攻撃でも守備でもその中で際立ってる選手じゃないとアメリカ代表には選ばれないと思うし。
ポジションがSBだから基本的にはそれほど大きな注目を集めるわけじゃないかもしれないんだけど、もちろん現代サッカーではものすごく重要なポジションで、それこそチームのプレイモデルによって求められるタスクも変わってきてて、すごく多様性に富んでるのがSBってポジションだと思ってて、個人的にはバルセロナでプレイしてるイングランド代表DFのルーシー・ブロンズ(Lucy Bronze)が現状ではナンバー1のSBかな? って思ったりしてるんだけど、ルーシー・ブロンズ並みにスケールの大きなSBになりそうなポテンシャルをエミリー・フォックスには感じてたりする。
アメリカ代表の主力としても活躍する実力派
プロフィール的な部分も押さえとくと、エミリー・フォックスはアメリカ代表のDFでアーセナルでは背番号2を付けてる右SB。1998年7月生まれの25歳で出身はアメリカのヴァージニア州、身長は165cmだからそこまで長身って感じではないかな。アメリカの選手らしくプロ・キャリアの前に大学でのプレイ経験があって、"WSL Watch 021"でもちょっと触れたけど、ノース・カロライナ大学のチームではアレッシア・ルッソ(Alessia Russo)とロッテ・ウッベン・モイ(Lotte Wubben-Moy)とチームメイトだったらしい。2021年にドラフトのファースト・ピックでNWSLのレーシング・ルイビルに加入して2シーズン過ごした後、2023シーズンはノース・カロライナ・カレッジでプレイして、2024年1月の移籍マーケットでアーセナルに移籍してきた感じ。アーセナルに加入してすぐに右SBの1stチョイスになった印象だけど、2月末から3月中旬まで行われてたCONCACAFウィメンズ・ゴールド・カップで優勝したアメリカ代表のためにチームを離れてた期間もあったから、ここまでのリーグ戦出場は実はまだ7試合だったりする。
大学時代からアメリカ代表にも招集されてて、2023年のFIFAウィメンズ・ワールドカップにも全試合スタメン出場、こないだ日本代表と対戦したシービリーブス・カップでももちろん2試合ともスタメン出場して優勝に貢献してて、アメリカ代表キャップももう50近くて、夏にパリで行われるオリンピックでのエマ・ヘイズ(Emma Carol Hayes OBE)監督体制のアメリカ代表での活躍も期待されてる存在って言えるんじゃないかな。
"WSL Watch 021"でもちょっと書いたけど、実は2023年シーズンのノース・カロライナ・カレッジの試合はけっこう観てて、そのときから気になってた選手だったんで、WSLでプレイが観れるのは率直に嬉しいし、アーセナルからアストン・ヴィラに移籍したスイス代表DFのノエル・マリッツ(Noelle Maritz)との入れ替わりのタイミングも含めて注目してたし、世界屈指のSBってところまで見据えつつ今後の活躍がすごく楽しみな感じがしてる。
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