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WSLの24/25シーズン序盤の気になるポイントをチェック :: 24/25TW01-05 :: WSL Watch #118
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9月に開幕したWSLの24/25シーズンも5節まで消化して 、最初の代表ウィークに入って一区切りって感じなんで昨シーズンと同じようにここまでの順位表の確認、'TW = Table Watch'の第1弾の1節〜5節編を。"WSL Watch #108"で書いた'ざっくりチーム紹介'もベースにしつつ。シーズン最初の振り返りだからけっこう長くなっちゃうと思うけど。
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シーズン序盤を負けなしで駆け抜けたのは3チーム
5節終了時の暫定のテーブルは以下の通り。3節のチェルシー対マンチェスター・ユナイテッドが急遽延期になった(詳細は後述)から、順位表は暫定ってことに。
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5連勝のチームは現段階ではなくて、1試合延期になってるチェルシーは4戦全勝だから5連勝の可能性が残ってる。負けなしはマンチェスターの2チーム、マンチェスター・シティが5戦4勝1分0敗の勝点13で暫定首位で、マンチェスター・ユナイテッドが4戦3勝1分0敗で勝点10。この3チームが明確にいいスタートを切れたチームって言える感じ。それ以外のチームでポジティブな意味で目を引くのはブライトン&ホーヴ・アルビオン、ネガティブな意味で目を引くのはアーセナルかな。昇格チームのクリスタル・パレスも健闘って言えそうだけど。で、逆に明らかにスタート・ダッシュに失敗したのは勝ちなしの3チーム、それぞれ5戦0勝2分3敗で勝点2のアストン・ヴィラとエヴァートンとウェスト・ハム・ユナイテッドってことになるのかな。理由はそれぞれ違うんだろうけど、最大で勝点15稼げるところで2っていうのはかなり厳しい感じ。
ちなみに、現段階での得点ランクは以下の通り。開幕戦でハットトリックを達成した清家貴子に4人の選手が並んだ感じ。
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ベスト・マッチは開幕節で早くも実現した強豪対決
この期間に行われた全29試合の中でベスト・マッチを選ぶなら、やっぱり開幕戦のアーセナル対マンチェスター・シティってことになるのかな。"WSL Watch #109"でマッチ・レビューを書いたからここでは詳しくは振り返らないけど、アーセナルを退団してマンチェスター・シティに加入したフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)の古巣対戦が早くも実現したって意味でエモーショナルだったし、もちろん、優勝争いを左右する一戦だし、フィフィアネ・ミデマーとベス・ミード(Beth Mead)っていう両チームのスターが点を取ったし。"WSL Watch #114"で紹介した通り、9月の月間最優秀ゴールに選ばれたジェス・パーク(Jess Park)のゴラッソも見事だったし。
▶︎ ハイライト
▶︎ エクステンデッド・ハイライト
▶︎ フルマッチ
UWCLも含めて好スタートを切ったチェルシーとシティ
"WSL Watch #108"の'ざっくりチーム紹介'でも上位グループに入れたチェルシーとマンチェスター・シティは期待通りの滑り出しって感じ。特に磐石のスタートを切ったのが王者のチェルシーで、延期されたマンチェスター・ユナイテッド戦以外のリーグ戦とUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグのグループ・ステージの2試合を6戦全勝。しかも、新戦力もけっこう使ってローテーションもしながらだし、アーセナルとの直接対戦も勝ってるし、1試合を除いて複数得点っていう感じで内容もかなり充実してて。苦労したのは開幕戦のアストン・ヴィラ戦(とUWCLのレアル・マドリー戦)だと思うけど、内容的にはそれほど危なかったって感じじゃないし、大きな問題じゃなさそう。新監督のソニア・ボンパストル(Sonia Bompastor)のプレイモデルは昨シーズンと同じように保持型でハイプレス志向で、並びとしては4-2-3-1がベース。本来はWGのサンディ・ボルティモア(Sandy Baltimore)を左SBとして使って保持時は3-4-2-1に可変するような運用だった試合もあるけど、どっちにしても基本的には相手陣内に押し込む時間を長くして適切なポジションに力のある選手を配置して質で殴り続けて勝つ、典型的な'強者のサッカー'って感じ。
Football reacts to the London Derby. 🎉 pic.twitter.com/wq5572OuGy
— Chelsea FC Women (@ChelseaFCW) October 14, 2024
アーセナルとの直接対戦で引き分けた以外は(UWCLのグループ・ステージの2試合も含めて)全勝のマンチェスター・シティも上々の滑り出し。開幕戦のアーセナル戦に関しては"WSL Watch #109"、UWCLのバルセロナ戦に関しては"WSL Watch #116"でマッチ・レビューを書いてるからここでは詳しくは触れないけど、"WSL Watch #008"で書いた通り戦術面で観てて面白い'シティのサッカー'は健在って感じで。詳しくは後述するけど、新加入の山下杏也加と藤野あおばの活躍が今シーズン序盤の特筆すべきトピックって感じなのかな。もちろん、フィフィアネ・ミデマーもだけど。あと、ACLの負傷による長期離脱から復帰したジル・ロード(Jill Roord)の存在感もやっぱり絶大だし。ただ、引き分けたアーセナル戦、逆転勝ちしたリヴァプール戦とアストン・ヴィラ戦がそうだったんだけど実は先制される試合が多くて、リーグ戦4勝の内の3試合が1点差勝ちだったりするのが'上々の滑り出し'だけど'磐石のスタート'とは言えない部分なのかな。それでもしっかり勝ててるのはもちろんポジティブなんだけど。
Welcome back @JillRoordNL 💜#BarclaysWSL @ManCityWomen pic.twitter.com/5zvpQqYwZ8
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) September 29, 2024
Resilience 🫡@ManCityWomen have won the most points from losing positions in the #BarclaysWSL this season (4)! pic.twitter.com/hN2DvRyo1h
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) October 19, 2024
スタート・ダッシュに失敗したアーセナルは監督が退任
"WSL Watch #108"の'ざっくりチーム紹介'で上位グループに入れたチームで唯一つまずいたのはアーセナル。4節が終わったタイミングの10月15日にヨナス・エイデヴァル(Jonas Eidevall)監督の退任っていうニュースがあってけっこうビックリしたかな。
リリースのタイトルは"Jonas Eidevall leaves Arsenal"で、本文の表現も'Jonas Eidevall has resigned from his position'ってなってるから、文面をそのままに読むと'辞任'ってことになるのかな? って感じだけど、現地報道では普通に'sack'なんて単語も使われてるし、最近の状況を考えると'解任'に近いのかも? とも思ったり。ヨナス・エイデヴァルは2021年にアーセナルの監督に就任して、3シーズンでリーグ・カップ2回優勝、22/23シーズンにはUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)でもベスト4って実績を残した監督。ちなみに、リリースでコメントしてるのがメンズ・チームのスポーティング・ダイレクター(SD)のエドゥ・ガスパール(Edu Gaspar)だったりするんで、SDとして男女ともカバーしてるってことらしい。同時にディレクター・オブ・ウィメンズ・フットボールのクレア・ウィートリー(Clare Wheatley)もコメントしてるから実務はクレア・ウィートリーってことなのかも。コメント自体は当たり障りのないことしか言ってない印象だけど。次の監督が決まるまではアシスタント・コーチだったレネー・スレガース(Renée Slegers)が暫定監督になるとのこと。
ちなみに、アニータ・アサンテ(Anita Asante)とかファラ・ウィリアムズ(Fara Williams)みたいな元選手のコメンテイターが候補として名前を挙げてたり、SNSなんかでもけっこう待望論があるっぽいケイシー・ストーニー(Casey Stoney)に関しては、『ザ・ガーディアン』によると候補には入ってないんだとか。ケイシー・ストーニーは元アーセナルの選手でキャップ数130の元イングランドDFで、過去にはマンチェスター・ユナイテッドとチェルシーの監督経験もあって、直近では今年6月までNWSLのサン・ディエゴ・ウェーブの監督だったんだけど、成績不振で解任されたらしく現在はフリーになってる。
さらに、代表ウィークに入ってからはニック・クッシング(Nick Cushing)の名前も次期監督候補として挙がってる。ニック・クッシングは39歳のイングランド人で、今はメジャー・リーグ・サッカー(MLS)のニュー・ヨーク・シティFCの監督なんだけど、実はその前にはマンチェスター・シティのウィメンズ・チームの監督としてWSL優勝とカップ戦優勝を果たしてたりして。基本的にはシティ・フットボール・グループ(CFG)で指導者のキャリアを築いてきたって言えると思うから、ここでCFGを離れる決断をするのか、ちょっと注目かな。ちなみに、MLSのシーズンはこれからポスト・シーズンのプレイオフが始まるところで、勝ち進めば12月初旬まで続くことになるんだけど、アーセナルはそこまで暫定体制でいくことも視野に入れてるんだとか。もちろん、他の候補者も並行して考えてるみたいだけど。
今シーズン序盤のアーセナルはけっこう大変で、リーグ戦開幕前にUWCLの予選ラウンドがあって、しかも、BKヘッケンとのホーム&アウェイの間にマンチェスター・シティとの開幕戦があって、その後に続いたレスター・シティ戦とエヴァートン戦を挟んでミッドウィークにUWCLのグループ・ステージのアウェイでのバイエルン・ミュンヘン戦があって、さらに週末に4節のホームでチェルシーとのロンドン・ダービーがあるってスケジュールで。この期間の日程がタイトになることはわかってたことだけど、この期間にマンチェスター・シティとチェルシーとの直接対決があるのはなかなか厳しい感じ。もちろん、UWCLの予選ラウンドのホーム&アウェイの間に開幕戦があったのはマンチェスター・シティも同じなんだけど。で、BKヘッケンとの予選ラウンドのアウェイでの1stレグで負けて、リーグ開幕戦はホームでマンチェスター・シティと引き分けて、BKヘッケンとの2ndレグはホームで逆転してグループ・ステージ進出は果たして、その直後のレスター・シティにはアウェイで1-0で勝ったけど、その次のリーグ戦はホームでエヴァートンと引き分けちゃって、さらにUWCLのアウェイでのバイエルン・ミュンヘン戦で5-2で大敗して、ホームでライバルのチェルシーに1-2で負けて、この時点でリーグ戦は1勝2分1敗。リーグ戦は4試合だから最大で勝点12だけど勝点5しか取れてなくて、UWCLのグループ・ステージも黒星発進って感じなんで、流れとしてはかなり悪かったって言えるはず。具体的にダメージが大きかったのがバイエルン・ミュンヘン戦の大敗だったのか、チェルシー戦の負けだったのか、エヴァートン戦のドローだったのか、イマイチわかんないけど、ミッドウィークにホームでのヴォレレンガ・フォトバルを控えてて、週末のアウェイでのウェスト・ハム・ユナイテッド戦が終われば代表ウィークってタイミングでの監督退任にはけっこうビックリしたかな。ただ、監督交代後の2試合はしっかり勝ってるんで、最悪の状態は脱したって言えそうだけど。
4戦負けなしでわずか1失点のマンチェスター・ユナイテッド
"WSL Watch #108"の'ざっくりチーム紹介'では中位グループに入れたけど、延期分のチェルシー戦を除く4試合で3勝1分0敗の勝点10っていう素晴らしいスタートを切ったのがマンチェスター・ユナイテッド。開幕3連勝は全てクリーンシートで、好調同士の対戦になった5節のアウェイでのブライトン&ホーヴ・アルビオン戦は初めての失点を喫して1-1でドローだったけど負けなしをキープ。8得点・1失点っていう見事な結果を残してる。
ローンから復帰したグレイス・クリントン(Grace Clinton)が3点取ってたり、補強の目玉って言っていいエリザベス・ターランド(Elisabeth Terland)がトッテナム・ホットスパー戦で2ゴール決めたり、同じく新加入のセリン・ビゼー・イルドゥソイ(Celin Bizet Ildhusøy)が3アシストしてたり、新戦力がしっかり結果を出してるのが大きいのかな、やっぱり。
That passion from Elisabeth Terland! 🤩
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) October 13, 2024
Look at what it means as she bagged her first two goals for @ManUtdWomen 🙌#BarclaysWSL pic.twitter.com/6ilUmQjlia
With her goal against West Ham, Grace Clinton became the third player to score on their #BarclaysWSL debut for @ManUtdWomen after Maya Le Tissier (September 2022) and Melvine Malard (October 2023) 🌟 pic.twitter.com/ZwO8ngHJTF
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) September 26, 2024
あと、今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドの大きな注目ポイントは、絶対的な守護神として君臨してきたメアリー・アープス(Mary Earps)に代わるGKだったんだけど、夏に補強はせずに2023年から在籍してる28歳のアメリカ人GKのファロン・タリス・ジョイス(Phallon Tullis-Joyce)を1stチョイスにすることにしたっぽい。183cmのサイズを活かしたシュート・ストップが魅力の選手らしくて、実際にここまでの試合でもスケールの大きなセービングは目立ってたかな。
Man United are yet to concede goal in the #BarclaysWSL this season! 🧱
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) October 18, 2024
No getting through @phallon91 ⛔️ pic.twitter.com/AQNDGk3crs
チームのプレイモデルとしては、基本的には4-2-3-1がベースっぽいけど保持時には片方のSBを押し出して3-4-2-1に可変する感じっぽい。しかも、リア・ガルトン(Leah Galton)を左SBにして保持時は左WGのエラ・トゥーン(Ella Toone)が内側のレーンに絞らせたり、別の試合ではセリン・ビゼー・イルドゥソイを右SBして保持時は右WGのグレイス・クリントンを内側のレーンに絞らせたりしてて、本来はWGの選手をSBに使う運用はなかなか興味深い感じ。非保持時は4-4-2をベースにハイプレス時は4-2-4みたいになってるから、基本は4バックで保持時は3バックに可変してるって言っていいと思うんだけど。
ただ、実はそれほど上手くいってるようには見えないっていうのが正直な感想だったりして、イマイチ評価が難しい感じもあるかな。相手のミスを見逃さずに点が取れてたり、「それが入る!?」って思っちゃうようなシュートが入ったり、別に試合を優位に進めてるわけじゃないけど単発で生まれたチャンスで点が取れて勝ってる感じっていうか。ウェスト・ハム・ユナイテッドとトッテナム・ホットスパーに3-0で勝ったんだけど、ウェスト・ハム・ユナイテッド戦も3-0って点差ほどの差はなかったし、トッテナム・ホットスパー戦なんかは内容的にはむしろ押されてた? って感じの内容で。むしろ、引き分けたブライトン&ホーヴ・アルビオン戦が内容は一番良かったかも? とか思ったり。ブライトン&ホーヴ・アルビオン戦に関しては、お互いに非保持は4-4-2ベースでハイプレスは4-2-4で保持は3-4-2-1に可変って感じに見えたんだけど、ブライトン&ホーヴ・アルビオンのビルドアップをハイプレスで苦しめたことで主導権を握れたけど、保持局面に関してはちょっと危うい感じはあって。攻守両面である程度以上主導権を握れたっていうか、攻守の両面で取り組んでることを出してある程度以上の時間を優位に進められた試合は実はまだないんじゃね? って気がして。それでも個人の能力を活かしながら結果が出せてて、特に今シーズンから加わった戦力が結果を出してるのはすごくポジティブだからムードはいいだと思うし、この流れの中で選手の起用法が整理されてチームとしての狙いの練度が上がれば全然問題ないと思うけど。
シーズン序盤のグッド・サプライズは保持型に変貌したブライトン
24/25シーズン序盤で一番のグッド・サプライズって言っていいのは、3勝1分1敗で勝点10のブライトン&ホーヴ・アルビオン。今シーズンから37歳でオーストラリア人監督のダリオ・ヴィドシッチ(Dario Vidošić)が指揮を執ることになって、"WSL Watch #104"でもまとめた通り戦力もかなり補強して臨んだシーズンなわけだけど、さっそくポジティブな結果が出てる印象かな。
Some of the best reactions from our followers during the weekend's win! 💙🤍 pic.twitter.com/tmFZabk3dB
— Brighton & Hove Albion Women (@BHAFCWomen) October 8, 2024
開幕戦のエヴァートン戦で新加入の清家貴子がWSL史上初となるデビュー戦でのハットトリックを達成したインパクトが強かったと思うけど、その後もマンチェスター・シティに負けた以外はアストン・ヴィラとクリスタル・パレスに勝ってマンチェスター・ユナイテッドと引き分けてて、しかも、エヴァートン戦とアストン・ヴィラ戦では4点ずつ取ってて、内容的にもかなり充実してる感じで。
G⚽️⚽️⚽️⚽️D MORNING! 😁 pic.twitter.com/ez8rhkbSSX
— Brighton & Hove Albion Women (@BHAFCWomen) September 22, 2024
目を引く部分として、平均ポゼッション率が53.5%でマンチェスター・シティとアーセナルとチェルシーに次ぐリーグ4位って点がある。昨シーズンは44.3%でリーグ10位だったから、明らかに変わった、保持型に変貌したって言えるはず。パス数もリーグ3位だし。戦術的には4-2-3-1をベースにしつつ、保持時は片方のSBを押し出して3-4-2-1に可変、非保持では4-4-2の並びから4-2-4でハイプレスって感じ。正直なところ、低い位置でのビルドアップはけっこう危なっかしかったりするし、ハイプレスもちょいちょいかいくぐられてたりもするし、選手起用の面でもまだ最適解っていうか、1stチョイスが固まってないように見えるけど、それでも選手は迷いなくプレイできてる印象だったりするかな。新加入のフラン・カービー(Fran Kirby)とニキータ・パリス(Nikita Parris)も期待通りの活躍を見せてるし、今後も要注目チームって言っていいん感じ。
意欲的なプレイで健闘してるパレス
初めてのWSL挑戦で5戦1勝1分3敗の勝点4で9位のクリスタル・パレスは健闘してるっていいんじゃないかな。今シーズンのクリスタル・パレスに関しては、もちろん、最大の目標はWSL残留だと思うけど、5試合で勝点4のペースでいければシーズンで勝点16くらい稼げる計算になるんで。ちなみに、過去5シーズンの降格チームで最多勝点は12だから、勝点16稼げれば十分残留できそう。結果だけじゃなくて内容もわりとポジティブで、開幕戦のアウェイでのトッテナム・ホットスパー戦で4失点、2節のホーム開幕戦のチェルシー戦で7失点して'WSLの洗礼'みたいなモノを受けちゃったけど、3節のレスター・シティ戦でクラブの歴史に残るWSL初勝利を飾って、ブライトン&ホーヴ・アルビオン戦では最小失点で惜敗したけど、直近のリヴァプール戦は1-1で引き分けてるし。
What a win! 💪🔥#CPFC pic.twitter.com/LWJUZBkcpR
— Crystal Palace F.C. Women (@cpfc_w) October 6, 2024
個人的には、結果だけじゃなくて内容的にもそれほど悪い印象はなかったりする。基本ベースは4-2-3-1か4-3-3で、保持も非保持も自発的っていうか、低い位置からのビルドアップにもハイプレスにも取り組んでて、いわゆる'受け’のスタンスで試合をしてる感じではなくて。もちろん、選手個人としてもチームとしても質の部分でちょっと危うい感じは否めないんだけど、ともあれ、臆せずにチャレンジできてて好感が持てるっていうか。夏にかなり補強をしてるから、まだまだチーム作り自体も手探り状態っていうか、いろいろ試してる感じなんだろうし。とりあえず、ここまでの闘いぶりを観てる範囲では残留できてもそれほど驚かないかな。
中盤に長期離脱者が続出してエヴァートンは緊急事態に
5戦0勝2分3敗で勝点2しか稼げてないアストン・ヴィラとエヴァートンとウェスト・ハム・ユナイテッドの3チームの中で、シンプルに一番気の毒な状況っていうか、思わぬ逆境に立たされてるのがエヴァートン。開幕戦のブライトン&ホーヴ・アルビオン戦でオーロラ・ガリ(Aurora Galli)が、2節のマンチェスター・ユナイテッド戦でインマ・ガバーロ(Inma Gabarro)がそれぞれ前十字靭帯、いわゆるACLの負傷で長期離脱を余儀なくされることになっちゃったんで。同じチームから同じタイミングで2人ってだけでも気の毒なのに、2人とも主力のMFだってことが一層ダメージを大きくしてる感じ。
Everton can confirm midfielder Aurora Galli sustained an anterior cruciate ligament knee injury against Brighton & Hove Albion on Saturday.
— Everton Women (@EvertonWomen) September 25, 2024
The Italian left the pitch late on during the Women’s Super League 2024/25 season opener at the Broadfield Stadium in Crawley.
A scan this… pic.twitter.com/f5o3eRNCIZ
Everton can confirm forward Inma Gabarro sustained an anterior cruciate ligament knee injury against Manchester United on Sunday.
— Everton Women (@EvertonWomen) October 2, 2024
The Spain international was forced off in the 11th minute during the Blues’ opening home match of the season at Walton Hall Park.
A scan this week… pic.twitter.com/lPpZozIzfV
“It's a big blow. It’s two really good, high-profile players for us. It’s been tough, especially with the small squad we have, but I think the girls have handled it well.”
— Everton Women (@EvertonWomen) October 4, 2024
Brian Sorensen on the long-term injuries to Galli and Gabarro. 🔵 pic.twitter.com/2xXvyEjhbf
今ではすっかり'ACL'って用語が一般化しちゃってるくらいいろんなチームでACLの負傷は多発してて、男女問わず多いんだけど特に女性の選手の頻度が高いことが問題視されることは"WSL Watch :: magazine"でもちょいちょい触れてる通り。4月にFIFPRO(国際プロ・サッカー選手会)とPFA(プロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション)とナイキとリーズ・ベケット大学が共同で特にウィメンズ・フットボールのACL負傷に関するリサーチを3年かけて行うプロジェクトACLなんて活動も始まってたりして、例えば『ザ・ガーディアン』の"Project ACL: WSL clubs to take part in pioneering injuries research project"とかスカイ・スポーツの"What is Project ACL? Geraint Hughes explains plan to prevent number of injuries"なんかで詳しく報じられてて、日本語で検索したら『スポーツブル』ってメディアの「女子サッカー界特有の問題に新プロジェクト発足…男子よりも頻発するヒザの前十字じん帯問題にイングランドで動き」って記事が見つかったけど、とにかく、サッカー界が直面してる大きな問題のひとつって言って間違いないはず。
ともあれ、エヴァートンの明らかな問題点はここまでたった1得点で、しかも、それが引き分けたウェスト・ハム・ユナイテッド戦のオウン・ゴールだってこと。逆に失点は下位チームの中では少ないほうだったりするから、得点を奪う部分の改善が急務って感じなのかな。
ハイプレスが増加? 中位以下は拮抗した争いになりそう?
ここまでの結果を見ると5位のアーセナル以下の7チームは1勝か0勝のチームで、引き分けの数で順位が決まってる感じなんだけど、まだ勝ててないアストン・ヴィラとエヴァートンとウェスト・ハム・ユナイテッドを含めて、わりと拮抗しそうな気がしてるかな。そこまで力の差があるようには見えないっていうか、上では具体的には触れなかったけどリヴァプールもレスター・シティもトッテナム・ホットスパーもアストン・ヴィラもエヴァートンもウェスト・ハム・ユナイテッドも全然悪くない感じがしてるんで。強いて言うなら、開幕前の予想通りウェスト・ハム・ユナイテッドがちょっと厳しい? って気はしてるけど。
あと、リーグ全体として昨シーズンよりもハイプレスに取り組んでるチームが増えた印象があったりして。この点に関しては、実は個人的に前から気になってて、考えがまとまったら別の記事として書いてもいいかな? なんて思ったりもしてるんだけど。ともあれ、昨シーズンまではわりとミドル・サードより後ろで構えてるチームがけっこうあったけど、今シーズンは前からアグレッシブにボールを奪いにいくチームが増えた傾向な気がしてる。保持局面に関しても、低い位置からのビルドアップに取り組んでるチームが増えた感じもあって、もちろん、シーズンを通じて貫けるかはまた別の問題だったりもするんで、ハイプレスと同様に、今後の推移に要注目って感じかな。
早くも存在感を発揮してる新戦力をピックアップ
新監督を迎えたチームはもちろんだけど、今シーズンからWSLでプレイすることになった選手をチェックするのもシーズン開幕直後のこの時期ならではの楽しみだったりする。で、ここまでの試合で目に付いた選手を挙げてみると、以下のような感じになるかな。
今シーズンの夏の補強をまとめた"WSL Watch #104"でも名前を挙げたけど、最初に頭に浮かんだのはリヴァプールのオリヴィア・スミス(Olivia Smith)になるかな。スポルティングCPから加入した20歳のアタッカーで、3-5-2の2トップの1人として起用されてる感じだけど、たぶんWGタイプの選手なのかな? サイドでパワフルに仕掛けることができる選手で、ここまで5試合全てスタメン出場で2得点決めてる。特にマンチェスター・シティ戦でのゴールはけっこう距離があったけど思い切りよく足を振ってパワフルなシュートが飛んできて、山下杏也加もちょっと意表を突かれた感じだったんじゃないかな。リヴァプールがクラブ史上最高額の移籍金で獲得したなんて報道があったけど、期待を裏切らない活躍を見せてくれてる感じ。
Back ⏩ Front
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) October 13, 2024
A brilliant strike from Olivia Smith 🌟#BarclaysWSL @LiverpoolFCW pic.twitter.com/shqbnuuf5U
昨シーズンもクリスタル・パレスでプレイしてたから厳密に言えば新加入選手じゃないんだけど、WSLでのプレイは初めてって意味ではクリスタル・パレスのレクシー・ポッター(Lexi Potter)もグッド・サプライズって感じ。まだ18歳なのに4-2-3-1か4-3-3のCMFを任されてて、主にビルドアップ局面ではけっこう圧がかかってると思うけど全然臆することなく堂々とプレイしてて。実は昨シーズンから引き続きチェルシーからのローンで、「さすがチェルシーの選手だな」って感じなんだけど。
LP17 🪄 #CPFC pic.twitter.com/xhYAftW5GY
— Crystal Palace F.C. Women (@cpfc_w) September 22, 2024
アストン・ヴィラに加入したチャシティ・グラント(Chasity Grant)も早くも存在感を放ってる選手。アヤックスから加入した23歳のオランダ人FWで、5試合全てに出場しててスタメンは4試合。独力で突破ができるアタッカーって印象で、4-2-3-1とか4-3-3ならWG、3-4-2-1なら2列目で起用される感じだと思うけど、スタメンでも途中出場でもインパクトが残せそうなアタッカーって感じ。
Pre-Match // Chasity Grant ⚡️
— Aston Villa Women (@AVWFCOfficial) October 5, 2024
他にも、例えばトッテナム・ホットスパーから加入したマイテ・オロズ(Maite Oroz)なんかも開幕から3試合出場してすごく好印象だったんだけどケガしちゃったみたいだったり、UWCLのバルセロナ戦でスタメンに抜擢されて得点まで決めちゃったマンチェスター・シティのナオミ・レイゼル(Naomi Layzell)なんかも、降格しちゃったブリストル・シティで昨シーズンまでプレイしてたから厳密に言えば初めてWSLでプレイする選手って言えないし、ケガでちょっと離脱しちゃったけど早くも出場機会を得てるし、後述するけど山下杏也加もここに入れてもいいくらいの活躍はしてるかな。
日本人選手の活躍ぶりも要注目
トータルで12人になった今シーズンのWSLの日本人選手だけど、昨シーズンからレギュラー・ポジションを掴んでる選手、チームに欠かせない存在になってる選手を先に挙げちゃうと、マンチェスター・シティの長谷川唯、リヴァプールの長野風花、ウェスト・ハム・ユナイテッドの植木理子の3人ってことになるのかな。基本的には起用法もタスクもそれほど変わってない印象かな。ただ、長野風花に関しては、リヴァプールが昨シーズンよりも低い位置からの安定したビルドアップと高い位置からのプレスに取り組んでるように見えるんで、ちょっとタスクが変わってたり増えてたりする部分はあるかもしれないけど。
A header ripples the back of the net and Ueki scores for @westhamwomen 🫡#BarclaysWSL pic.twitter.com/LSHgHqgDRQ
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) September 29, 2024
新加入の選手で一番出場機会を得てるのはマンチェスター・シティの山下杏也加ってことになるかな。昨シーズンはキアラ・キーティング(Khiara Keating)がフルタイム出場してたから、もっとフェイド・インっぽい感じになるのかと思ってたけど、フタを開けてみたらリーグ戦全試合出場なんで。保持にも積極的に関われるスタイルはマンチェスター・シティにピッタリで、かなり好印象なんじゃないかな。同じくマンチェスター・シティの藤野あおばも、グッド・サプライズっていうか、個人的には思ってた以上に出場機会を得られてるかな。アーセナルとの開幕戦でいきなりスタメンだったのもビックリしたし、スタメンで起用されたUWCLのSKNザンクト・ペルテン戦では加入後初ゴールも決めたし。開幕戦でいきなりハットトリックっていう強烈なWSLデビューを飾ったブライトン&ホーヴ・アルビオンの清家貴子に関しては、スタメン2試合、途中出場2試合、出場なしが1試合って感じなんで、まだ完全に1stチョイスじゃないって感じかな。開幕戦でいきなりスタメンだったのはビックリしたけど、実はそのタイミングではデッドライン・デイに移籍が決まったニキータ・パリスがチームに合流して間もなかったって事情もあったと思うんで。新加入選手が多い新監督のチームだからまだまだ手探りな感じもありそうだし、これからの頑張り次第って感じなのかな。
🔝 display from Yama today! 🤩
— Manchester City Women (@ManCityWomen) September 29, 2024
🤝 @EASPORTSFC pic.twitter.com/lTsbAYQgFQ
Kiko's stunning hat-trick in all its glory! 🤩💫 pic.twitter.com/bzJeE9NhSG
— Brighton & Hove Albion Women (@BHAFCWomen) September 22, 2024
WSLのチーム間で移籍して環境が変わった選手だと、エヴァートンに加入した林穂乃香の役割はかなり重要になりそう。「出場機会が増える」なんて次元じゃなく、「フル回転することが必須」ってレベルで。前述の通り、中盤のキー・プレイヤーが2人長期離脱しちゃったんで。もちろん、新加入選手だからまだチームに完全に馴染めてなかったってこともあっただろうけど、プレ・シーズン・マッチとか開幕戦を観た限り、少なくともその段階では必ずスタメンで使われるって感じじゃなかったように見えてたんだけど、この状況になったら徐々に馴染ませるなんて言ってる余裕はないわけで。基本的には4-3-3のインサイドMFか4-2-3-1のCMFとして起用されてるように見えるんだけど、1-1で引き分けた4節のウェスト・ハム・ユナイテッド戦でもハイプレスからCMFのサポートまで運動量豊富なプレイで躍動してて、走行距離のデータが見たいと思っちゃうくらいのプレイを見せてる。ゴールに絡んだわけでもないのにエヴァートンのファンが選ぶプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれてたけど、わりと納得の選出っていうか。ちなみに、マンチェスター・シティに移籍した清水梨沙はオリンピックでのケガで長期離脱中だからもちろん出場はない。
Here. There. Everywhere.
— Everton Women (@EvertonWomen) October 14, 2024
You voted Honoka Hayashi as your #EVEWHU Player of the Match! pic.twitter.com/Jl6SqLTnde
日本人選手の中で個人的にチーム内での立ち位置が一番微妙に見えてたマンチェスター・ユナイテッドの宮澤ひなたはとりあえず全4試合に出てて、でも、最初の3試合は途中出場で時間も短かったから「やっぱりけっこう難しい?」とか心配してたんだけど、4節のブライトン&ホーヴ・アルビオン戦ではスタメンで73分までプレイしてシュートも4本打ってたりして、けっこう好印象だったんじゃないかな。もちろん、できればチャンスを1本くらいは決めときたかったけど。前述のように基本的には今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドは4-2-3-1ベースで宮澤ひなたは2列目の3人の枠の要員なんだけど、エラ・トゥーンとグレイス・クリントンはほぼほぼ使われる感じだから、この2人と交代で入るか、独力でゴリゴリ突破するタイプのWGとポジションを争いつつ、エラ・トゥーンとグレイス・クリントンのバックアップって感じなのかと思ってたら、スタメンで出たブライトン&ホーヴ・アルビオン戦ではエラ・トゥーンとグレイス・クリントンとの同時起用だったりして。その辺をわりと柔軟にやってく感じなら当初心配してたよりは出場機会は増えそうだから、あとは、出たときにどれだけ数字に残る結果を出せるかっていうシンプルな争いになるのかな? プレイ自体に関しては、オン・ザ・ボールの質も高いし、精力的に動いてボールを引き出したりスペースを作ったりもできるし、プレスの部分も含めて他の選手にはない武器を持ってるように見えるんで。もちろん、絶対的なレギュラー・ポジションを掴んでるってわけじゃないし、1試合1試合が勝負って感じだとは思うけど。
Smart save from Baggaley to deny Miyazawa!#BarclaysWSL @BHAFCWomen pic.twitter.com/0ILvKgmuB5
— Barclays Women's Super League (@BarclaysWSL) October 19, 2024
チェルシーの浜野まいかはなかなかいい感じのスタートを切れた感じなんじゃないかな。ここまでの試合出場はリーグ戦とUWCLでそれぞれ2試合なんだけど、スタメン起用されたUWCLのトゥウェンテ戦と5節のトッテナム・ホットスパー戦でゴールも決めてるし。昨シーズンと変わった点を挙げると、前任のエマ・ヘイズ(Emma Carol Hayes OBE)体制ではWG起用がメインだったけどソニア・ボンパストル監督は4-2-3-1の2列目の真ん中、いわゆる10番のポジションで考えてるみたいで、非保持時には4-4-2の一番前に入ってハイプレスもエネルギッシュにやってるし、保持時もライン間で受けたりボックスに侵入したり、アグレシッブにプレイできてる。今シーズンのチェルシーに関しては、実はローレン・ジェイムズ(Lauren James)がコンディションの問題であまり出場できてなくて、ソニア・ボンパストル監督がローレン・ジェイムズをどのポジションで使おうとしてるのかイマイチわかんなくて、さらに長期離脱してるサム・カー(Sam Kerr)もまだ戻ってないから、攻撃陣の1stチョイスは固まってない感じで、恐ろしい選手層を誇るチェルシーだから選手が揃ったら出場機会を得るだけでもかなり大変だと思うけど、とりあえず、シーズン序盤の使われ方を見てる限りでは、ソニア・ボンパストルにちゃんと評価されてて、主に中の3レーンでのプレイを求められてて、必ずスタメンとは言わないけどリーグ戦にいつでも出せるレベルの戦力って考えられてるようには見えるかな。それだけでもかなりすごいことだと思うけど。
Making a habit of scoring against Spurs!
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Hamano slots home for @ChelseaFCW!#BarclaysWSL pic.twitter.com/6RC400FVhg
個人的に一番評価が難しいと思ってるのがレスター・シティの宝田沙織と籾木結花だったりする。2人の問題ってよりも、チーム自体の問題なんだと思うけど。実際に2人とも5試合全て出場してて、宝田沙織はスタメンが3試合、籾木結花はスタメンが4試合で1得点。アマンディン・ミケル(Amandine Miquel)監督が就任して新たにチーム作りをしてるチームって言い方ができると思うけど、まだかなり手探りって感じっていうか、それこそ、「最初の代表ウィークまでの5試合はテストの期間って割り切ってる?」って思っちゃうくらい、いろいろ試してるように見えて。オーストラリアでのプレ・シーズン・マッチについては"WSL Watch #103"で書いたりもしたけど、そのときに受けた印象ともけっこう変わってるかな。細かく見てくとけっこういろんなポイントがあるんだけど、例えば、4-3-3のCMFはマンチェスター・シティから加入したルビー・メイス(Ruby Mace)か宝田沙織のどちらかで、宝田沙織に関してはインサイドMF起用の可能性もある? とか思ってたんだけど、試合によっては2人とも途中交代でいなくなった時間があった試合があったり、ルビー・メイスをFW起用してるように見える試合があったり。他にも、プレ・シーズン・マッチでけっこう好印象だった新加入のシャンテル・スワビー(Chantelle Swaby)がまだ出場してなかったり、攻撃の中心的な役割を担うと思ってたユッタ・ランタラ(Jutta Rantala)とノエミー・ムション(Noémie Mouchon)も出てない試合があったりして。もちろん、ケガとかコンディションとか細かい事情はわかんないけど。そんな中で、宝田沙織も籾木結花も出場時間は得てるし、出てる試合では存在感は発揮できてる、籾木結花なんかアマンディン・ミケル体制初勝利になったエヴァートン戦で決勝ゴールも決めてるから、主力としての地位っていうか、序列としてはけっこう上なんだと思うけど、とりあえず、チームとしてのカタチがもうちょっと定まらないといろいろ評価が難しい感じはあるかな、正直なところ。
Nutmeg ⏩ Back of the net
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A brilliant finish from @nicole_m09 🤩#BarclaysWSL @LCFC_Women pic.twitter.com/VcwSqraT9o
この期間に生まれた記録もチェック
WSLの歴史に残る記録がこの期間にいくつか生まれたんで、ざっくりと。まずはアストン・ヴィラのジョーダン・ノブス(Jordan Nobbs)が10月5日の3節のブライトン&ホーヴ・アルビオン戦で通算193試合出場を達成してWSLの歴代最多出場記録を更新した。
History maker. Legend.@JordanNobbs8 is the new all-time @BarclaysWSL appearance holder 💜 pic.twitter.com/78zagLio8O
— Aston Villa Women (@AVWFCOfficial) October 5, 2024
31歳になった元イングランド代表MFで、アーセナルで12年プレイした後、昨シーズンからアストン・ヴィラでプレイしてるんだけど、これは普通に偉業って言っていいはず。もちろん、まだまだ伸びそうだし。ちなみに、それまでの記録保持者はチェルシーのソフィー・イングル(Sophie Ingle)で、今はケガで長期離脱中だけどまだまだ現役だからこれから数字を伸ばす可能性はもちろんある。
The new all-time #BarclaysWSL appearance holder! 🙌
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1️⃣9️⃣3️⃣ @JordanNobbs8 pic.twitter.com/s9g4GkXLw9
ちなみに、ジョーダン・ノブスは現行のレギュレーションになってからWSLのリーグ戦に全シーズン試合に出場してて、しかもゴールも毎シーズン決めてる唯一の選手でもあったりして(今シーズンはまだ決めてないけど)。とりあえず、間違いなくWSLの歴史を代表する選手の1人って言っていいはず。
15 seasons and counting 🪄
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Yesterday evening @JordanNobbs8 became the only player to play in every season of the @BarclaysWSL. Stalwart 💜 pic.twitter.com/xJEHqqmEKb
マンチェスター・シティのローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)は10月6日の3節のウェスト・ハム・ユナイテッド戦で決めたゴールでリーグ戦通算50得点を達成したんだけど、24歳60日で通算50得点を達成したのはWSLの歴代最年少記録なんだとか。
Our Hempo! 🤩 pic.twitter.com/UXT4bJxGi0
— Manchester City Women (@ManCityWomen) October 10, 2024
マンチェスター・ユナイテッドのマヤ・ル・ティシエ(Maya Le Tissier)が10月19日の5節のブライトン&ホーヴ・アルビオン戦でリーグ戦100試合出場を達成したんだけど、22歳184日での達成はWSLの歴代最年少記録とのこと。
And still, there’s more to come… ❤️#MUWomen || #WSL pic.twitter.com/gqW3XyoxiF
— Manchester United Women (@ManUtdWomen) October 20, 2024
"WSL Watch #113"でも触れたけど、ブライトン&ホーヴ・アルビオンの清家貴子が9月21日の1節のエヴァートン戦で達成したハットトリックはWSLの歴史でも初めてのデビュー戦でのハットトリックだったとのことで、これはこれでかなりの快挙って言っていいはず。どんな選手にも平等に1回しかチャンスがない記録だし、今後何人そういう選手が出ても1人目っていうのはやっぱりインパクトが大きいし。
History Maker 🌟
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Kiko Seike becomes the first #BarclaysWSL player ever to score a hat-trick on debut! 🤩 pic.twitter.com/Sjkw1h8GXq
日程の問題で揺れたシーズンの序盤
過密日程で選手が疲弊したりケガが増えたりする事態は現在のサッカー界の大きな議論になってて、主に複数のコンペティションをこなすチーム、具体的にはヨーロッパのコンペティションと国内の試合のスケジュールの兼ね合いが問題になるんだけど、WSLもちょっと似たような状況になってて。
現地時間で10月6日(日)の20:00キックオフ予定だった3節のチェルシー対マンチェスター・ユナイテッドが延期になって、その理由はUWCLのMD1のチェルシー対レアル・マドリーが10月9日(水)になったからなんだけど、"WSL Watch #110"でも触れた通りUWCLのグループ・ステージのドローが行われたのは9月27日で、UWCLのグループ・ステージの試合は現地時間で水曜日の夜か木曜日の夜に行われることになってて、日程はグループ分けの後に同じ国のチームの試合の日時とかホームかアウェイかをなるべくズラすように決める必要があるからそうなったんだけど、結果的に直前のリーグ戦を日曜日の夜にやって水曜日の夜にUWCLっていうタイトなスケジュールになっちゃった。で、WSLを運営するWPLLとチェルシーはUEFAに日程の変更、具体的には水曜日じゃなく木曜日にすることを要求したけど拒否されて、仕方なくリーグ戦を延期にした、と。UEFA側の言い分は「MD1が10月9日か10日になることは1年以上前に伝えてあるし、チェルシーとアーセナルの試合が同じ日にならないことがレギュレーションで決まってることも知ってたはずなのに、それでもチェルシーのリーグ戦を日曜日の夜に組んだのはWPLL側の責任だ」って感じ。メンズ・フットボールの世界のUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)もそうだけど、基本的には同じ国のチームがなるべく同じ日に試合をしないこととか、あるチームがホームでやる節は別のチームはアウェイにするとかって日程の組み方は、テレビ局の放送とか現地の警備の都合だったりを考慮して決められてて、それはそれで理に適った話だから、例えば木曜日にUCLの試合があったチームの次のリーグ戦は日曜日とか月曜日の夜にするみたいな配慮をしてる国が多い。実際に、今回のケースでもチェルシーの対戦相手のレアル・マドリーは直前のリーグ戦は金曜日の夜にやってたりするし。ただ、なぜかイングランドは柔軟に対応しない傾向が強くて、それこそ、リヴァプールのメンズ・チームの前監督のユルゲン・クロップ(Jürgen Klopp)もUCLの直後のリーグ戦を土曜日のランチタイム・キックオフに組まれることが多い(プレミアリーグの場合はテレビ局の意向が強くて、人気があるチームほど土曜日のランチタイム・キックオフになることが多いって事情がある)ことにちょいちょい文句を言ってたりしたんだけど。さらに、今回のチェルシーの件で問題だったのは、延期の決定が試合の1週間くらい前ってタイミングだったし、しかもテレビ中継されることになってた試合で、チケットも売り切れてたってこと。プレミアリーグと比べればWSLはテレビ局の影響力はそれほど大きいってわけじゃないだろうけど、いろんな意味で対応が後手に回った感じだったし、もっと上手く対応できたんじゃね? って思わざるを得ない感じだったかな、さすがに。WPLL側は「選手のコンディションを最優先で考えて延期の決定をした」って言ってて、それはもちろんそうなんだろうけど、テレビ局にも迷惑をかけただろうし、決定のタイミングも含めてチケットを買ってたファンは不満だろうし。
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もちろん、問題はチェルシー(とマンチェスター・ユナイテッド)だけじゃなくUWCLに出場してるマンチェスター・シティとアーセナルにも同じことが言えるわけで、結果的に辞めることになっちゃったアーセナルのヨナス・エイデヴァル前監督も10月4日の会見で「UWCLのグループ・ステージに出場してる16チームで直前のリーグ戦を日曜日にやってるチームはいくつある?」「WSLのチームがヨーロッパの大会で成功することを本気で願ってるのか?」みたいなことを言ってて。実際に、アーセナルはUWCLの予選ラウンドの1stレグと2ndレグの間のリーグ開幕戦でいきなりマンチェスター・シティと対戦させられてて、UWCLのグループ・ステージのMD1のアウェイでのバイエルン・ミュンヘン戦の直後の(日曜日じゃなく)土曜日にホームでのチェルシー戦があるとか、客観的に見ても「もうちょっとどうにかしてやれたんじゃね?」って思っちゃうような日程を組まれてたし。
"It's even worse for us."
— Sky Sports WSL (@SkySportsWSL) October 4, 2024
Arsenal head coach Jonas Eidevall criticised the WSL for its 'unacceptable' timetable following the rescheduling of Chelsea vs Manchester United over player welfare concerns 🤕 pic.twitter.com/cKAgcbQeDf
プレミアリーグなんかと比べれば延期分の試合を組む日程に関しては余裕はあるんだろうけど、それでも今回のチェルシーの試合の延期騒動はちょっとファンを興ざめさせたっていうか、WPLL体制の立ち上がりのタイミングでの対応としてはネガティヴな印象を残しちゃったんだじゃないかな。
次の代表ウィークまでの期間の注目の試合
今後の日程にも触れとくと、次の代表ウィークは11月末だからリーグ戦は3試合ってことになる。UWCLのMD3・MD4とリーグ・カップの2戦目もあるけど。今回の代表ウィーク明けの6節にはマンチェスター・ユナイテッド対アーセナル、代表ウィーク前の8節にはエヴァートン対リヴァプールのマージーサイド・ダービー、チェルシー対マンチェスター・シティの直接対決、さらにトッテナム・ホットスパー対アーセナルのノース・ロンドン・ダービーがあったりする。8節は11月16・17・18日なんだけど、これだけビッグ・マッチが並んでるのはメンズ・フットボールの代表ウィークだからなのかな? とにかく、8節は熱いことになりそう。
ちなみに、UWCLのMD3とMD4は8節の前後のミッドウィークに入ってて、このタイミングは同じ相手とのホームとアウェイとの連戦で、チェルシーはセルティック、マンチェスター・シティはハンマルビー、アーセナルはユヴェントスとの対戦。ハンマルビーには天野紗と宮川麻都が所属してるから、この2戦は日本でもけっこう注目されそう。個人的にはアーセナルとユヴェントスとの試合も楽しみだけど。
で、この辺のスケジュールがちょっとイレギュラーなんだけど、8節の翌週末にリーグ・カップの2戦目が入っててリーグ戦はないらしい。
チェルシーとシティとアーセナルのUWCLでの闘いぶりは…
この期間にはチェルシーとマンチェスター・シティとアーセナルが出場してるUWCLのグループ・ステージのMD1・MD2の2試合も行われてたんだけど、いろいろ見どころがあったかな(UWCLについての詳細は"WSL Watch #110"を参照)。
グループ・ステージからストレート・インしたチェルシーは、MD1はホームでレアル・マドリー、MD2はアウェイでトゥウェンテと対戦して2連勝。レアル・マドリーには終盤に1点差にされてちょっと苦しんだけど、トウェンテ戦では主力をかなり休ませながらしっかり勝っちゃったのはさすがだったかな。ちなみに、トゥウェンテ戦では浜野まいかがスタメンでフル出場して見事なロング・シュートを決めてたりする。観てて「あ、そこから狙うの?」って思ったら見事なコースに決まってビックリしたけど、このシュートだけじゃなく、4-2-3-1の2列目の真ん中でプレイして攻守にかなり奮闘してたっていうか、チェルシーに来てからではベスト・パフォーマンスだったんじゃないかな、この試合の浜野まいかは。プレイヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれたみたいだし。
😱 MAIKA HAMANO WITH HER GOLAZO OF THE NIGHT!
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マンチェスター・シティが王者のバルセロナにホームで勝った試合に関しては"WSL Watch #116"でレビューした通りだけど、MD2のアウェイでのSKNザンクト・ペルテン戦ではセット・プレイから2点取られて苦しんだけど、最終的には3-2で勝って見事に2連勝。ちなみに、SKNザンクト・ペルテン戦ではスタメンでフル出場した藤野あおばが貴重な同点ゴールを決めてたりする。シュートを打った位置だけ見るとそれほど難しそうに見えないかもしれないけど、手前で相手DFが触るかもしれないし、実はけっこう難易度が高かった気がするけど、絶妙なバック・ステップで相手DFから離れて上手く決めた見事なボレー・シュートだったんじゃないかな。
⌛ No time wasted and Citeh are back level in Vienna, Aoba Fujino with her first goal for the club!
— DAZN Women's Football (@DAZNWFootball) October 16, 2024
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MD1のアウェイでのバイエルン・ミュンヘン戦での2-5での敗戦もヨナス・エイデヴァル監督の退任の大きな要因のひとつだったと思うけど、監督交代直のMD2のホームでのヴォレレンガ・フォトバル戦では持ち前の攻撃力を発揮して4-1で快勝。正直なところ、力の差はけっこう大きかったし、決して磐石な内容って感じではんなかった気もするけど、とりあえず、それでもしっかり勝てたのは大きかったはず。
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