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浜野が躍動!! 優勝争いを左右するチェルシー対シティをレビュー :: 24/25MR02 :: WSL Watch #126

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25/25シーズンのWSLも8節まで、つまり、約1/3が終わったってタイミングなんだけど、優勝争いを左右することになりそうな強豪同士の直接対決、チェルシー対マンチェスター・シティが行われて、期待通り見どころだらけの試合だったから気になるシーンをピックアップしつつレビューしとこうかな、と。今シーズンからWSLはYouTubeで観れるようになったから、今回もYouTubeのクリップ機能を使って'24/25MR02'として。先に結論を言っちゃうと、全体としては「やっぱりチェルシーは強いな」って感じだったんだけど、もうちょっと細部を見るととにかく浜野まいかが素晴らしかった、何ならチェルシー加入後のベスト・マッチだったんじゃね? って思っちゃうようなパフォーマンスだったかな。

▶︎ ハイライト

▶︎ フルマッチ

浜野と長谷川と藤野の山下の4人がスタメン出場

チェルシーのスタメンはほぼほぼ予想通りって感じ。ミッドウィークのUEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)のセルティック戦ではだいぶメンバーをローテーションしてたけど、リーグ戦の前節の前節のリヴァプール戦からの変更はCBのカデイシャ・ブキャナン(Kadeisha Buchanan)に代わってナタリー・ビョルン(Nathalie Björn)が入った感じ。ちなみに、カデイシャ・ブキャナンに関しては、ソニア・ボンパストル(Sonia Bompastor)監督が試合後の会見で前十字靭帯の負傷で長期離脱になることが明かされてた。浜野まいかは公式戦6試合連続スタメンで起用されてる。

一方のマンチェスター・シティのスタメンで目を引いいたのはやっぱりローレン・ヘンプ(Lauren Hemp)がメンバー外だったこと。ミッドウィークのUWCLのハンマルビー戦でもメンバー外だったからちょっと心配してたんだけど、膝の負傷らしくて、この試合の出場も直前まで可能性を探るなんてコメントもあったけど、結論としては無理だったってことらしくて、WGには藤野あおばとメアリー・ファウラー(Mary Fowler)が入ることに。同じく負傷のライア・アレクサンドリ(Laia Aleixandri)も欠場。長谷川唯と山下杏也加は順当にスタメンに名を連ねてる。

チェルシーはサム・カー(Sam Kerr)とローレン・ジェイムズ(Lauren James)とニアム・チャールズ(Niamh Charles)が、マンチェスター・シティはローレン・ヘンプとライア・アレクサンドリとフィフィアネ・ミデマー(Vivianne Miedema)がそれぞれ不在ってことになるんだけど、それでも十分な戦力が揃ってて、シンプルにものすごく楽しみな感じ。

▶︎ 00:21- / 01:09- 浜野が担う長谷川を消すタスク

キックオフ直後のマンチェスター・シティの保持局面で早くも浜野まいかに託されたタスクが明らかになった感じで、具体的には長谷川唯を消すことだったように見えた。チェルシーはいつも通り保持時は4-2-3-1から3-4-2-1に可変する感じだけど非保持では4-4-2になるカタチで、2トップのマイラ・ラミレス(Mayra Ramírez)と浜野まいかがマンチェスター・シティのCBの2人とCMFの長谷川唯(とGK)を担当するんだけど、マイラ・ラミレスが主にマンチェスター・シティの左CBのアレックス・グリーンウッド(Alex Greenwood)を見て、浜野まいかが長谷川唯を見つつ右CBのアラナ・ケネディ(Alanna Kennedy)にも出る感じの分担になってたっぽいのがこのキックオフ直後のシーンでわかった。浜野まいかは何度も首を振って長谷川唯の位置を確認してるし、長谷川唯もすぐにそれを察してあえて背中に回ったりあえて近寄ったりしてるように見えるし。もちろん、アラナ・ケネディにも寄せなきゃいけないからベタ付きのマン・マークってわけじゃないんだけど。前にも何度か書いてる通り、マンチェスター・シティ相手に守るチームはアレックス・グリーンウッドと長谷川唯をどう管理するのかをまず考えるし、長谷川唯を消すことから入るチームなんて別に珍しくないし、ポジション的にももちろんオーソドックスなマッチアップなんだけど、浜野まいかがこのタスクを担うっていうのはなかなか興味深い感じだったかな。当然、お互いの特徴は十分以上に理解してるはずだし。実際、この試合を通じて浜野まいかと長谷川唯の駆け引きと攻防だけ観てても面白かった。

▶︎ 03:41- 自陣でのスローインからのチェルシーの最初のチャンス

先に結論を言っちゃうと、この試合のチェルシーはポゼッション率でマンチェスター・シティに対抗するつもりはないっていうか、むしろ非保持で試合をコントロールするアプローチを選んでた印象で、試合前の会見でソニア・ボンパストル監督も「相手がボールを保持する時間が長くなっても策は用意してる」みたいなことを言ってた(実際にマンチェスター・シティの保持が60%を超えてた)んだけど、まさにそういう展開、特に前半に関してはそのチェルシーのアプローチがほぼほぼ狙い通りにできてた印象だったかな。ただ、もちろんチェルシーは保持ができないチームじゃないし、このシーンなんてまさにその典型例みたいな攻撃で。自陣左サイドでのスローインから始まってるんだけど、右CBのナタリー・ビョルンから右ハーフスペースに下りてきたマイラ・ラミレスにボールが入って右WGのヨハンナ・リッティン・カネリード(Johanna Rytting Kaneryd)に展開して、個人で縦に仕掛けてクロスを入れてボックス内に浜野まいかと左WGのグーロ・ライテン(Guro Reiten)が入ってる感じ。速い攻撃だったからマイラ・ラミレスはボックス内には間に合わなかったけど、保持でも速い時間にカタチが作れて、チェルシーとしては上々の立ち上がりって感じ。あと、その直後のCKを蹴るのが浜野まいかだったのもちょっとポイントだったかも。「お、CKも任されてるんだ」って思ったし、実際にミリー・ブライト(Millie Bright)の頭に合って枠内シュートにつながったし。

▶︎ 06:25- チェルシーのプレスからのショート・カウンター

マンチェスター・シティと対戦するチームの非保持は、まずCMFの長谷川唯を消して、左CBのアレックス・グリーンウッドか右CB(この試合だとアラナ・ケネディ)のどちらかにボールを持たせる選択をすることが多いんだけど、この試合のチェルシーは後者を選んでて、長谷川唯を消しながらアラナ・ケネディも見るタスクを浜野まいかが担ってるんだけど、当然、2トップだけでCBの2人とCMF(とGK)を追い続けることはできないから後方からのサポートも必要になって、この場面では浜野まいかがアラナ・ケネディに出たときに機を見てCMFのエリン・カスバート(Erin Cuthbert)に長谷川唯まで出てる。結果的には浜野まいかがアラナ・ケネディのところでボールを奪って、前に出てきてたエリン・カスバートがそのまま浜野まいかを追い越してボックス内に侵入してクロスまではいけてて、クロスはなんとかアラナ・ケネディがブロックしたけど、チェルシーのプレッシングからのショート・カウンターっていう狙いがカタチになった感じ。まだ10分も経ってないけど、チェルシーは用意してきた狙いが出せてたって印象だったかな。

▶︎ 12:22- チェルシーのプレッシングからのショート・カウンター

チェルシーがプレッシングからのショート・カウンターでフィニッシュまでいけたシーン。ポイントはセカンド・ボールの争いで浜野まいかとシェーケ・ニュスケン(Sjoeke Nüsken)の連続スライディングでボールを奪ってるところかな。チェルシーの選手のこういうスライディングもこの試合でけっこう目に付いたんで。フィニッシュに関してはヨハンナ・リッティン・カネリードのキック・ミスだと思うけど、マンチェスター・シティの守備陣は完全に背走しながらの対応を強いられてるし、このシーンもチェルシー的には狙い通りって言ってよさそう。

▶︎ 18:32- チェルシーのプレス回避と浜野まいかのチャンス・シーン

この試合のチェルシーはマンチェスター・シティのハイプレスにはあまりつきあわないっていうか、最終ラインまで圧がかかったらわりと長いボールを蹴ることを厭わない感じで、このシーンもセカンド・ボールを拾われた後のプレスから作ったチャンスで最終的に浜野まいかの惜しいシュートに繋がってる。浜野まいかのシュート自体はそれほど簡単じゃなかったと思うけど、エリン・カスバートが右サイドでボールを奪って右WGのヨハンナ・リッティン・カネリードを裏に走らせてクロスを入れて、クロスに対してニアにCFWのマイラ・ラミレス、ファーに左WGのグーロ・ライテン、マイナスの位置に浜野まいか、さらにもう1人のCMFのシェーケ・ニュスケンまでボックス内に入れてて、ものすごく得点の可能性を感じさせるシーンを作れてる。もちろん、このシーンの最初にあったカディジャ・ショウ(Khadija Shaw)とミリー・ブライトのバトルの迫力も見どころだったんだけど。

▶︎ 19:45- チェルシーのプレッシングと浜野のタスク

全然地味なマンチェスター・シティの保持のシーンなんだけど、チェルシーのプレッシングと浜野まいかのタスクがよくわかる。基本的にチェルシーの非保持はアラナ・ケネディに持たせるところからスタートして、浜野まいかが長谷川唯とエリン・カスバートの位置を確認して、エリン・カスバートが長谷川唯まで出れる距離だってことを確認してからアラナ・ケネディに寄せて、アラナ・ケネディから下りてきたマンチェスター・シティの右インサイドMFのジェス・パーク(Jess Park)にはシェーケ・ニュスケンが寄せて、マンチェスター・シティの右SBのカースティン・カスパライ(Kerstin Yasmijn Casparij)には左WGのグーロ・ライテンが寄せてボールをカットしてスローインになってるんだけど、スローインになったらすぐに浜野まいかが長谷川唯を見つけて捕まえてることも含めて、チェルシーのプレッシングの仕組みがわかりやすく出てるかな、と。

▶︎ 21:01- チェルシーのミスから生まれたシティのチャンス

チェルシーの最終ラインのミスから生まれたカディジャ・ショウの決定機で、基本的にはチェルシーの左SBのサンディ・ボルティモア(Sandy Baltimore)のシンプルなキックのミス、技術のミスなんだけど、実はポイントはいくつかある気がして。右サイドでのチェルシーのスローインから始まって、左サイドに展開してプレスの圧を受けて苦しくなったサンディ・ボルティモアのバックパスがズレてそのままカディジャ・ショウに繋がっちゃって、そのままシュートを打たれたカタチで、カディジャ・ショウならもっと際どいシュートを期待しちゃう、何なら「決めてくれ」って感じだったと思うけどシュートは枠外で、チェルシーとしてはかなりラッキーだった感じ。ただ、実はこの場面までマンチェスター・シティのシュート・シーンはなくて、ボールは保持できてるけどシュートを打てなかっただけじゃなくアタッキング・サードまでクリーンに前進できたシーンも全然なくて。この場面もプレスで相手のミスを誘発したって言い方はできるけど、スムーズに前進して狙って作ったチャンスじゃないんで。20分過ぎまでシュートが打てないっていうのはマンチェスター・シティとしてはかなり珍しいし、上手くいってなかったことを如実に示してる気がして。逆に、最近のチェルシーの唯一の不安要素っていうか、諸刃の剣になりかねない点がサンディ・ボルティモアの左SB起用だと思ってて。もちろんニアム・チャールズがケガで離脱してるからなんだろうけど、最近のチェルシーは左利きで本来はアタッカーのサンディ・ボルティモアを左SBで使って、保持時は高い位置まで押し出して3バックに可変するような運用をしてて、攻撃の面では当然強みが出せるけど守備の面では単純に慣れてもなければ得意でもないって部分はありつつも、力関係が明確に格下の相手であれば守備面には多少目をつぶっても収支はプラスになるってことなんだと思うけど、マンチェスター・シティ相手だともちろんそうはいかないし、守備面の脆さが露呈しかねないって懸念はあって、このシーンはまさにそれが起こっちゃったのかな、と。この試合のチェルシーに初めて出た不安要素っていうか。こういうのが入るか入らないかが拮抗した内容の試合には大きな影響を及ぼすし。もちろん、失点に直結しなかったのはラッキーだったと思うけど。逆に、マンチェスター・シティは右WGの藤野あおばがサンディ・ボルティモアを守備で苦しめるようなシーンをもうちょっと作りたかった感じ。

ただ、直後のシーンでは似たような状況でサンディ・ボルティモアが頑張って、周りのサポートを上手く使ってプレスを回避して、結果的にボックスまでボールを送り込めてたりして、けっこうギリギリの攻防って感じで見ごたえはあったかな。

▶︎ 26:14- シティの保持時の長谷川と浜野の駆け引き

最終的には山下杏也加からカディジャ・ショウへの長いボールで前進してボックスに侵入したマンチェスター・シティのビルドアップのシーンなんだけど、マンチェスター・シティの最終ラインにボールがあるときの長谷川唯と浜野まいかの駆け引きがなかなか面白い。長谷川唯がわざと浜野まいかの前に立ってみたり背中に回った瞬間にスピードを上げたりしてるし、浜野まいかも何度も首を振って状況を確認しながら動いてて。山下杏也加が長いボールを蹴るトリガーになったのは浜野まいかのプレスで、上手く繋がってボックスまで侵入はできてるんだけど、マンチェスター・シティがいつものように低い位置からのパス・ワークで上手くプレスを回避できてない問題はこの時間になってもまだ解決できてない感じもあったりして。

▶︎ 41:35- シティが上手くプレスを回避してシュート

前半の終わりに近づいた時間帯にようやくマンチェスター・シティが上手くプレスを回避してシュートまでいけたシーン。やっぱり浜野まいかがかなり長谷川唯の位置を気にしながらプレスしてるんだけど、時間帯的にさすがにチェルシーのプレスの圧もちょっと弱まってきてて、それでも何度か際どいシーンもあって、ジル・ロード(Jill Roord)が個人で相手の寄せを剥がしたり、藤野あおばのところで引っかかりかけたりしながらもカースティン・カスパライが上手く裏を取ってシュートまでいけた感じで。シュート自体は角度がなかったから難しかったと思うけど、マンチェスター・シティがようやくこういうシーンを作れたって意味ではけっこう目を引いたかな。

▶︎ 43:39- 浜野のボール奪取からのショート・カウンター

浜野まいかの献身的なプレッシングとスライディングでボールを奪ってチェルシーがショート・カウンターを打てたシーン。最終的にはシュートまではいけてないんだけど、アラナ・ケネディへ寄せた浜野まいかが長谷川唯へのパスを戻りながらギリギリ触ってボールを奪ったスライディングみたいなプレイはチェルシーの選手は何度もやってたし、この試合の浜野まいかを象徴するような素晴らしいプレイだったんじゃないかな。

▶︎ 45:55- ウアハビの位置で微調整を加えたシティのビルドアップ

前半はなかなか上手くいってなかったマンチェスター・シティのビルドアップだけど、後半開始早々から左SBのレイラ・ウアハビ(Leila Ouahabi)をCMFの長谷川唯の横に置く微調整を加えたように見えた。前半も流れの中でそういう位置に立ったり、特にハーフウェイラインを超えた後は相手守備陣形のMFとDFのラインの間に入ったりするプレイはちょいちょいあったけど、低い位置でのビルドアップの段階から明確に長谷川唯の左横、わりと同じ高さに立つようにしてたんじゃないかな? マッチアップするチェルシーの右WGのヨハンナ・リッティン・カネリードを内側に引っ張って、マンチェスター・シティの左WGのメアリー・ファウラーへのパス・コースを空ける狙いがあって、実際にこのシーンではマンチェスター・シティの右CBのアラナ・ケネディからちょっと低い位置に下りてきたメアリー・ファウラーへの対角のサイド・チェンジのボールが出たときにメアリー・ファウラーはヨハンナ・リッティン・カネリードからも右SBのルーシー・ブロンズ(Lucy Bronze)からも離れた位置でボールを受けれてるんで。もちろん、レイラ・ウアハビが自分でボールを受けられるポジションに立つことで長谷川唯の負担を軽くしたりビルドアップを安定させる狙いもあったと思うけど。ちなみに、チェルシーの非保持のアプローチは前半から変わってないように見えたかな。もちろん、ある程度上手くいってたから変える必要がなかったんだと思うけど。

▶︎ 49:14- 迫力十分なラミレスの単独カウンター

チェルシーの自陣でのスローインで始まるシーンで、マンチェスター・シティがハイプレスでボールを奪って、ショート・カウンターは打てなかったけど押し込んだ状態で攻撃してボックス内にクロスを入れたんだけど、クリアされたボールがマイラ・ラミレスにつながって、そこから独力でボックス内まで運ばれてる。別に戦術的に云々って話じゃなく、シンプルにラミレスの怖さが存分に発揮されたシーンってことで。むしろ、このシーンでチームとしていいプレイをしたのはマンチェスター・シティだったと思うし、マイラ・ラミレスにつながったボールも狙って蹴ったパスじゃなく単なるクリアだったと思うけど、そのボールを単独で収めて、独力でボックスまで運べちゃうマイラ・ラミレスのパワーと推進力はまさに脅威って感じで。「わかっててもやられちゃう」って感じの規格外な選手は'理不尽'系なんて言われたりするけど、マンチェスター・シティならカディジャ・ショウ、チェルシーならマイラ・ラミレスはまさにそのタイプ。ギリギリでアレックス・グリーンウッドのスライディングが間に合ったから事なきを得たけど、マンチェスター・シティにとってはわかっててもやっぱり怖い存在だったし、ちょうど画面がクローズ・アップになったからわかりやすかったんだけど、長谷川唯と並走してるシーンなんか、観てて「質量っていうか体積っていうか、1.5倍くらいありそうじゃね?」って思っちゃう感じで、規格外な選手がちょいちょいいるWSLならではの迫力満点なシーンだったんじゃないかな、と。

▶︎ 51:50- 改善が見られたシティのビルドアップ

右SBのレイラ・ウアハビのポジショニングを微調整したマンチェスター・シティのビルドアップが上手くいったシーン。山下杏也加がマイラ・ラミレスに寄せられながら長谷川唯にパスして、浜野まいかに寄せられる前にワンタッチでフリーになってるアレックス・グリーンウッドを使うところからスタートしてるんだけど、この段階でレイラ・ウアハビは長谷川唯の横辺りにいてヨハンナ・リッティン・カネリードを絞らせてることがよくわかる。その結果、ちょっとイレギュラーなカタチで浜野まいかがアレックス・グリーンウッドのところまで出て、下りてきたメアリー・ファウラーへのパス・コースには誰もいなくて、ちょっと遅れてエリン・カスバートがメアリー・ファウラーに寄せたタイミングでジル・ロードがエリン・カスバートのマークを離れてルーシー・ブロンズを引きつけるような動きを入れてて。メアリー・ファウラーはジル・ロードを選ばずにカディジャ・ショウにパスを出して弾き返されてるからクリーンに前進できたってわけじゃないんだけど、そのセカンド・ボールをセンター・サークルの横辺りで回収してるのがレイラ・ウアハビだったりのも、ポジショニングの微調整の効果だったりすると思うし。そこから右サイドに展開して最終的にクロスで終わるんだけど、レイラ・ウアハビのポジショニングを微調整することで、前半よりはマンチェスター・シティのビルドアップと保持が安定したんじゃないかな。

▶︎ 58:12- 互いに譲らない集中力が高い攻防

マンチェスター・シティの最終ラインから始まって最終的にはチェルシーがボックスまで踏み込めたんだけど、お互いに守備の意識が高くてギリギリの攻防って感じだったのがよくわかるシーン。マンチェスター・シティの右CBのアラナ・ケネディが浜野まいかに寄せられながら斜めのボールをCFWのカディジャ・ショウに通したところから始まってるんだけど、カディジャ・ショウがジェス・パークに落としたところへのシェーケ・ニュスケンのスライディングとか、チェルシーの保持になったときのエリン・カスバートへのジル・ロードとジェス・パークのプレスの強度とか、ナタリー・ビョルンからエリン・カスバートにパスが通った直後のジル・ロードの戻る守備でのボール奪取とか、ジル・ロードからボールを受けた長谷川唯への浜野まいかの鋭いプレスからのボール奪取とか、お互いにまったく譲らないっていうか、随所にレベルの高い攻守の鬩ぎ合いがあって、すごく見応えがあったな、と。

▶︎ 59:47- 後半になって増えたシティのスムーズなビルドアップ

マンチェスター・シティのゴールキックからの見事なビルドアップのシーン。右CBのアラナ・ケネディが山下杏也加にパスするところから始まって、マイラ・ラミレスを引きつけて開いたアラナ・ケネディに渡して、浜野まいかを引きつけてから出したアラナ・ケネディのパスを下りてきたジェス・パークがワンタッチで前向きの長谷川唯に落として、長谷川唯からのパスをジル・ロードがエリン・カスバートに寄せられながらレイラ・ウアハビに展開して、下りてきたメアリー・ファウラーのところでルーシー・ブロンズに触られるんだけど、レイラ・ウアハビがボールを拾ったタイミングでメアリー・ファウラーに寄せるために上がってたルーシー・ブロンズの背後のスペースにジル・ロードが走ってボールを引き出すっていう見事な前進で。最終的にはよく戻ってたエリン・カスバートが守るんだけど、こういう場面は明らかに後半になって増えた感じで。明確なチャンスまでは至ってないのがもったいないとも言えるし、最後のところではやらせてないチェルシーの守備がさすがだったとも言える気がするけど。

▶︎ 60:09- トランジション局面のギリギリの攻防

上で取り上げたシーンと繋がってる流れなんだけど、左サイドで裏を取ったジル・ロードがカディジャ・ショウとのワンツーでボックスに侵入しようとしたのをエリン・カスバートが戻って守ったところから始まるシーン。エリン・カスバートのパスを受けたマイラ・ラミレスの理不尽を発動しかけたんだけどアレックス・グリーンウッドがギリギリの対応で守って、今度は右サイドから藤野あおばが個人で仕掛けたんだけどサンディ・ボルティモアが力強い守備対応で見事に守ってって攻防で。どっちに転んでてもおかしくない局面の連続って感じで見応え十分な攻防だったな、と。

▶︎ 66:07- シティのビルドアップからの藤野のチャンス

山下杏也加から始まって藤野あおばのチャンスまでつながるマンチェスター・シティのビルドアップのシーン。アラナ・ケネディが浜野まいかに寄せられる前にカディジャ・ショウにパスを差し込んで、落としたボールを長谷川唯が前向きで受けて、ジル・ロードへのパスはエリン・カスバートに引っかかるんだけどヨハンナ・リッティン・カネリードからすぐに上手い返して、ジル・ロードのスルーボールをライン裏で引き出した藤野あおばのクロスをサンディ・ボルティモアがギリギリの対応で防いだんだけど、マンチェスター・シティのビルドアップの上手さだったり両チームの中盤でのトランジションの鋭さだったりが際立ってて、すごく興味深かったかな。あと、前半に致命的になりかねないミスをしたサンディ・ボルティモアがその後は守備局面でもかなり頑張ってたんだけど、その典型例みたいなシーンだったって言えそう。もちろん、藤野あおばは悔しかったと思うけど。

▶︎ 73:44- シンプルなカウンターから生まれたラミレスの先制点

チェルシーのカウンターから生まれたマイラ・ラミレスの先制ゴールのシーンなんだけど、実は後半に入ってからはどっちかっていうとマンチェスター・シティが流れを奪い返してたし、このシーンもマンチェスター・シティの上手いビルドアップからの攻撃の直後のカウンターだったりする。改めて確認してみると、アラナ・ケネディが浜野まいかから上手く離れてボールを受けて、位置がちょっとタッチライン際だったからグーロ・ライテンがかなり勢いよく寄せてきてるんだけど上手くかわして下りてきた藤野あおばに差し込んで、藤野あおばもタッチライン際を走るジェス・パークの前のスペースに絶妙なタッチでフリックして、スピードにのったジェス・パークがボックス近辺まで運んでクロスを入れるところまでいけてて。マンチェスター・シティとしては上手く攻めれてるし、チェルシーとしては戻りながらの難しい守備対応だったシーンだと思うんだけど、クリアを拾ったヨハンナ・リッティン・カネリードとグーロ・ライテンが上手く繋いで前向きに走る浜野まいかに渡して、浜野まいかのスルーボールがマイラ・ラミレスにつながって、そこからはマイラ・ラミレスの個人の能力って感じだったと思うけど、「特に拮抗した試合だと多いけど、こういう攻防でどっちに転ぶかが試合を分けることがよくあるのがサッカーって競技だよな」って思っちゃうようなシーンだったかな。浜野まいかからボールが出た時点ではマイラ・ラミレスはアラナ・ケネディとアレックス・グリーンウッドの2人に対応されてたけど、浜野まいかのパスが絶妙に弱かったせいもあって、ボールに触る前の並走してる段階でアラナ・ケネディに上手く身体をぶつけて突き飛ばして倒して、結果的に上手くアレックス・グリーンウッドとの1v1に持ち込めてて、そこからはマイラ・ラミレスの上手さってことになっちゃうと思うけど、浜野まいかのパスの弱さは狙ったとは思えないことも含めて、本当にちょっとした細かい部分が結果を分けた感じ。もちろん、マンチェスター・シティの守備対応の部分を見ると、アレックス・グリーンウッドがもうちょっと遅らせられればフル・スプリントで戻ってきたジル・ロードが間に合ったかもしれないけど、ボックスに侵入されそうだったしファールをすれば間違いなくDOGSOって場面だし、アレックス・グリーンウッドはすでにイエローカードを出されてたって点も含めて考えると、かなり難しい守備対応だったって言えるかな、やっぱり。流れがちょっと相手に傾きかけてる中でこういうカタチで点が取れちゃうのもすごくチェルシーらしいと思うし。

チェルシーが勝負強さで上回って連勝をキープ

チェルシーの先制点の後に、まずカディジャ・ショウ、その直後にグーロ・ライテン、さらにヨハンナ・リッティン・カネリードのシュートのシーンがあって、そこから生まれたCKからのセカンド・チャンスでグーロ・ライテンの追加点が決まるんだけど、そこまでたった4分くらいで、お互いに点を取りにいった流れの中でチェルシーに先に追加点が生まれたって感じだったし、得点自体はCKからだったってことも含めて、何かマンチェスター・シティに大きなエラーがあったってわけじゃなかったと思うし、グーロ・ライテンのシュート自体は見事としか言えない感じだったけど、この追加点はさすがにものすごく大きかったかな、両チームにとって。

2点差になった直後にマンチェスター・シティはジェス・パークとメアリー・ファウラーに代えてクロエ・ケリー(Chloe Kelly)とローラ・クームス(Laura Coombs)を、チェルシーはグーロ・ライテンとマイラ・ラミレスに代えてアギー・ビーヴァー・ジョーンズ(Aggie Beever-Jones)とアシュリー・ローレンス(Ashley Lawrence)っていう交代策を打って、何とか早く1点返したいマンチェスター・シティとこのまま試合を終わらせたいチェルシーって展開になって、結局のところ、その後はスコアが動かずにフルタイムを迎えた、と。

すごく雑な言い方をしちゃうと、「チェルシー、強っ」って感じだったかな、率直な感想として。スタッツ的にはポゼッション率はマンチェスター・シティが60%を超えてて、でも、シュート数はチェルシーが倍近く打ててて、どっちが狙ってたように試合を進められてたか? って考えると、やっぱり、ややチェルシーって感じだったのかな。マンチェスター・シティの出来がすごく悪かったとは思わないけど。あと、試合前のソニア・ボンパストル監督のポゼッションに関する発言の通り、持てないなら持てないなりの闘いが徹底できる(しかも強い)って意味では、やっぱりチェルシーのほうが柔軟性があるチームだし、その強みを活かしてチェルシーが1枚上手だったって言えるし。もちろん、マンチェスター・シティにとっては前節までいたローレン・ヘンプがこの試合で使えなかったのはものすごく痛かったし、フィフィアネ・ミデマーとライア・アレクサンドリもそうなんだけど、でも、それを言ったらだってチェルシーはサム・カーもローレン・ジェイムズもニアム・チャールズもいなかったわけで、選手層の部分も含めてチェルシーの勝ちは妥当だったって言ってよさそう。

SNSの投票で選ばれるチェルシーのスター・オブ・ザ・マッチに浜野まいかが選ばれてたけど、納得の選出っていうか、この日の浜野まいかは本当に素晴らしかったんじゃないかな。それこそ、チェルシーでのペスト・パフォーマンスって言ってもいいくらい。マンチェスター・シティと対戦するチームはどこでも誰かに似たようなタスクは担わせると思うけど、実際に90分やりきれるか? って言われると簡単じゃないわけで。でも、この日の浜野まいかはフィジカルの面でもインテリジェンスの面でもタフに集中力を切らさずにハードワークを続けてたし、貴重な先制点のアシストまでしたし。もうちょっと大袈裟な言い方をすると、今後、他のチームが参考にできそうなマンチェスター・シティ対策のいいサンプルになるかも? とか思ったりして。もちろん、わかってるからってこの日の浜野まいかのレベルで実行するのは簡単じゃないと思うけど。

チェルシーでもう1人、あえて名前を挙げるなら個人的にはサンディ・ボルティモアになるかな。不慣れなポジションで得意じゃない(と思われる)守備のタスクを任されて、序盤で致命傷になりかねないミスをしながら、その後は守備の面でも奮闘して。他の選手ももちろん素晴らしかったけど、でも、言ってみれば「この選手ならこのくらいはやるよな」って感じっていうか、ものすごくレベルが高い選手が揃ってるわけで、そんな中で不安要素になりかねなかったサンディ・ボルティモアのこの日のプレイは素晴らしかったな、と。

あと、この試合を観てて個人的にちょっと気になったのは、ソニア・ボンパストル監督が浜野まいかとサンディ・ボルティモアを交代させずに最後まで使ったことだったりする。浜野まいかもサンディ・ボルティモアも後半の途中からけっこうバテてるように見えたから、リードが2点になったタイミングで代えるかな? なんてちょっと思ったけど。でも、こういう重要な試合で充実したパフォーマンスを見せてる若手はあえて最後までプレイさせるのがソニア・ボンパストルのマネージメントなのかも? とも思ったり。もちろん、完全に憶測だけど。

純粋に試合としては、戦術的な攻防を観ても局面のバトルを観てもバチバチの攻防で、エリン・カスバートとジル・ロードとかメアリ・ファウラーとルーシー・ブロンズとかカディジャ・ショウとミリー・ブライトとか、個別の選手同士のマッチアップも見応え十分だったし、個人的には今シーズンのここまでのWSLで一番楽しめた、"WSL Watch #109"でレビューした24/25MR01のアーセナル対マンチェスター・シティ以上に楽しめたかな。優劣っていうよりも好みの問題だとは思うけど。

ちなみに、この日のスタンフォード・ブリッジの入場者数は19,499人だったらしくて、20,000人には届かなかったけどものすごいいい雰囲気だったのもけっこう印象的だったかな。ウサイン・ボルト(Usain Bolt)も観にきてたし。

この試合の勝利でチェルシーは開幕7連勝、公式戦10連勝で、まさに盤石の強さって感じ。ちなみに、新監督のリーグ戦開幕7連勝は史上初なんだとか。

まだシーズン前半だけど、これで今シーズンもやっぱりチェルシーが優勝争いをリードする感じになるのかな。2位のマンチェスター・シティから勝点2差の首位だけど、未消化分のマンチェスター・ユナイテッド戦も残っててこの順位なんで。逆に言うと、どこがチェルシーから勝点を削るのかが今後のポイントになりそう。

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