ベスト8が出揃ったコンチ・カップ :: WSL Watch #035
WSLの概要をまとめた"WSL Watch #001"でもちょっと触れたけど、リーグ戦と並行して2つのカップ戦、FAカップとリーグ・カップが行われてるんだけど、'コンチ・カップ'ことリーグ・カップが大詰めを迎えるんで、ちょっとまとめとこうかな、と。現段階ではベスト8まで出揃ってて、現地時間の2月7日(日本時間は2月8日の早朝)、つまり、今週のミッドウィークに準々決勝が行われるんで。
ちなみに、コンチ・カップもリーグ戦と同じようにThe FA Playerで日本からでも視聴可能。
リーグ・カップ=コンチ・カップとは
国内のカップ戦って、男女問わず国によって2つある国と1つしかない国があって、2つある国の場合、サッカー協会主催の大会とリーグ主催の大会って形式、1つしかない国だと前者のみって感じになってるケースが多い。特徴としては、前者はサッカー協会って枠でやるからアマチュアのチームも参加できるけど、後者はリーグに参加してるプロのチームのみで行われてるってことになるのかな。例えば、前者の例はFAカップとか天皇杯、後者の例はカラバオ・カップとかルヴァン・カップで、'カラバオ'とか'ルヴァン'っていうのはどっちも大会スポンサーの名前なんで、基本的にはどちらもリーグ・カップだったりする。
イングランドのウィメンズ・フットボールはFAカップとリーグ・カップがあって、リーグ・カップはタイヤなんかで有名なドイツの自動車部品メイカーのコンチネンタルがスポンサーに付いてるんで、正式名称は'FA Women's League Cup'かスポンサー名を付けて'FA Women's Continental Tyre League Cup'、略してコンチ・カップ(Conti Cup)って呼ばれてる。ちなみに、今大会の決勝は3月31日にウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズのホーム・スタジアムのモリニュー・スタジアムで行われる予定。
全24チームによるグループ・リーグ+決勝トーナメント
今シーズンのコンチ・カップに参加してるのは1部リーグのWSLと2部リーグのチャンピオンシップの全24チームで、基本的には最初にグループ・リーグをやって、勝ち抜いた8チームによる決勝トーナメントになる形式。去年までの日本のルヴァン・カップにちょっと似てるのかな。
もうちょっと詳しく書くと、4〜5チームずつ5グループに分けて、総当たりのリーグ戦をやって各グループの1位は決勝トーナメントに進出、残りは各グループの2位から成績上位が決勝トーナメントに勝ち上がるんだけど、UEFAウィメンズ・チャンピオンズリーグ(UWCL)に出てるチェルシーはグループ・リーグが免除されてて、ベスト8による決勝トーナメントからの参加になる。この辺もちょっと過去のルヴァン・カップに似てるかな。つまり、各グループの首位の5チームと2位の成績上位の2チームにチェルシーを加えた8チームが決勝トーナメント進出ってことになる、と。言い方を変えると、アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドがUWCLの予選リーグで負けたことでコンチ・カップのグループ・リーグに参加することになっちゃったんで、本来はUWCLに出てる3チームと各グループの首位5チームだったはずなのがグループ2位のチームにもチャンスが出てきたし、結果的にマンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドとレスター・シティとリヴァプールが同グループになったグループBがいわゆる死の組になったりして。
もう終わっちゃってるんだけど、実はグループ・リーグのレギュレーションがユニークっていうか、ちょっと特殊で。まず、グループ・リーグの総当たりがホーム&アウェイじゃないってこと。だから、5チームのグループのグループ・リーグは全4試合になって、ホームで対戦した相手とはアウェイではやらないらしい。もうひとつ、観てて驚いたのは、90分で決着が付かなかった場合は延長戦をやらずにPK戦をやって、PK戦で勝ったチームが勝点2、負けたチームが勝点1ってレギュレーションだったこと。例えば、今シーズンのレスター・シティのケースだと、2勝1分1敗だったのに勝点8になってるのは、引き分けたマンチェスター・シティ戦のPK戦で勝ったからだったりして。よくよく考えてみれば、グループ・リーグの試合数が少ないから採用されたレギュレーションな気もするし、これはこれで一定の合理性はある気もするけど、あまり他では使われてない気がするんで、知らないで観ててけっこうビックリしちゃった。
決勝トーナメントの注目試合
実はグループ・リーグでちょっとした珍事があったりしたんだけど、それは後述するとして、とりあえず、グループ・リーグが出揃ってドローも行われて、今週のミッドウィークに準々決勝の4試合が行われる。ちなみに、準々決勝はホーム&アウェイじゃなく一発勝負で、組み合わせは以下の画像の通り。
チャンピオンシップのチームが2チーム、ロンドン・シティ・ライオネセスとサンダーランドが勝ち上がってるのが目を引くかな、やっぱり。それぞれ相手がアーセナルとチェルシーなんでここから勝ち上がるのは難易度がかなり高そうだけど。
個人的に注目は、やっぱりトッテナム・ホットスパー対マンチェスター・シティなのかな。今シーズンのリーグ戦での対戦はもう終わってるんだけどマンチェスター・シティがシーズン・ダブルを達成してるんで、世間的にはマンチェスター・シティ優勢って下馬評で間違いないと思うけど。でも、マンチェスター・シティのホームで行われた最初の対戦では7-0でマンチェスター・シティが圧勝したんだけど、年明けに行われた試合ではトッテナム・ホットスパーがけっこうマンチェスター・シティを苦しめて0-2って結果だったんで、一発勝負ならワンチャンあるかも? ってちょっと思ったりして。
ちなみに、コンチ・カップとは直接関係ないけど、ロンドン・シティ・ライオネセスはアメリカのワシントン・スピリットとフランスのリヨンのオーナーのミシェル・カン(Michele Kang)っていう韓国系アメリカ人の実業家が買収したことが話題になったチームだったりもするんで、すぐにものすごく強くなるとは思わないけど、いわゆるマルチ・オーナーシップ・クラブの強みを上手く活かせれば近々強くなる可能性がありそうだし、メンズ・チームがプレミアリーグにいないチームって意味でもちょっと注目のチームな気もしてる。
グループ・リーグで起こった珍事
後述するって書いた'珍事'ってのは、いわゆる'カップ・タイ'ってヤツなんだけど、1月の移籍マーケットで移籍した選手が前所属チームでコンチ・カップのグループ・リーグに出場してたのに、1月に行われた移籍先のチームでグループ・リーグ最終戦に出ちゃったこと。カップ・タイに関しては、いろんな国のいろいろ大会で実況とかが言ってるのは聞いたことはあったけど、実際にこのレギュレーションに違反したケースはなかなか見ないんで、'珍事'って言っていいのかな、と。
ただ、今回のケースで起こった実際の影響はちょっとややこしくて。事の経緯としては、今回の当事者は1月にアーセナルからアストン・ヴィラに移籍したノエル・マリッツ(Noelle Maritz)で、出場しちゃったのは1月25日のサンダーランド戦だったんだけど、アストン・ヴィラはそこまで3戦全勝でグループ首位、サンダーランドも2勝1分でグループ2位で、実際の試合はアストン・ヴィラが7-0で圧勝した試合で、ノエル・マリッツが出場したのは3点リードしてる状況で後半頭からの途中出場だったんだけど、ノエル・マリッツはアーセナルで既にコンチ・カップのグループ・リーグに出場してたから出場資格がなくて、試合後の裁定でこの試合はサンダーランドの不戦勝扱いになるってことが発表された、と。
ただ、ややこしかったのは、サンダーランドの不戦勝扱いにすると2位抜けで決勝トーナメントに勝ち上がるチームに影響を与えちゃうってこと。具体的に'とばっちり'を受けた被害者はマンチェスター・ユナイテッドで、アストン・ヴィラがそのまま1位抜けしてればマンチェスター・ユナイテッドは2位だけど勝ち上がり濃厚って状況で、マンチェスター・ユナイテッドのグループ最終戦はマンチェスター・シティとのダービーだったんだけど、当たり前だけどマンチェスター・ユナイテッドはそういう状況を前提に勝点とか得失点差を考えながらマンチェスター・シティと闘ってたはずで。でも、裁定の結果、マンチェスター・ユナイテッドはグループ・リーグ敗退になって、しかも、2位抜けするのがよりによって違反をしちゃったアストン・ヴィラだったりしたから現地ではけっこうな議論になって、不戦敗ではなくアストン・ヴィラを失格にすべきでは? なんて意見も出たりして。当然、裁定が出た後にマンチェスター・ユナイテッドは異議申し立てをしたみたいだけど、裁定は変わらずアストン・ヴィラが決勝トーナメント進出ってことになったらしい。
裁定は裁定として、不戦敗が適切なのか失格が適切なのか、なかなか難しいところだと思いつつ、個人的には他グループの勝ち上がりに影響を考えると失格のほうが適切だった気もするけど、それとは別にわりと素朴な疑問として、「誰も気付かなかったのかよ?」とは思っちゃったかな、やっぱり。チームのスタッフとかマッチ・コミッショナーとかもそうだけど、個人的には特にノエル・マリッツ本人が「あれ? 出ていいんだったっけ?」ってなりそうなもんだけど...とか普通に思ったり。
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