見出し画像

紙と電子の比較でみる読書文化の未来【WACODES学園トレンド科】

12月23日(月)
WACODES学園トレンド科
日直:かずと(10期)


 FMラジオ局J-WAVEの大学生・専門学生コミュニティWACODES(ワコーズ)がお届けするポッドキャスト「WACODES学園トレンド科」。今月は読書をテーマにお届けしています。

 
最終回の今回は、これからの読書文化はどうなるかを考えます。
 
 前回、SNSやインターネット上で物語やエッセイなどの文章を発表していくという近年の動向を確認しました。そうしたテクストのデジタル化は現代においては約束されていたことのように感じますが、それではなぜ、SNS発祥の「タワマン文学」やまさにこのメディアプラットフォームnoteに書かれた文章*が最終的に書籍化されるのでしょうか(*創作大賞2024)。

 ネット発の「読みもの」が今度は紙の本となって読者に受容されていくという現象は、デジタルとアナログを行き来しているようで興味深いものです。こうした書籍化に対して私たちが導き出した考察は2つあります。まず、出版社を通して出版されることで「誰でも書けるもの」が「信頼された作品」という称号とともに、世の中にアーカイブされ、非ネットユーザーを含む大勢の読者へ流通が期待されるという点です。そして、物理的な本への愛着です。

 匂い、重さ、しわ・汚れ、ページをめくる音、装丁の創意工夫 . . .
 紙の本の良さはやはりそれが持つ暖かみでしょうか。所有者が手にした瞬間から共に過ごす時間の経過がそのまま本の姿に影響を与えて「年季の入った」状態になります。
 ここで気が付きます。前回までの配信で触れてきた「本のアクセサリー化」はやはり全く咎められることではないということ。テクストに触れるだけでなく、ただ手元に置いたりただ飾ったりして好きな空間を作ることも、本と人間の間で執り行われる原初的な快楽と言えるかもしれません。

 一方で、オンラインで閲覧できるテクストや電子書籍もまた同様に重宝されます。簡単に膨大な情報にアクセスできること、安価で場所を取らないこと、海外の作品にアクセスしやすい(あなたが海外にいるなら日本の書籍にアクセスしやすい)こと、言葉の読み方や意味を瞬時に検索できたり線を引いた箇所を簡単に見返せたりといった学習効率が高いこと。また、バリアフリーにも長けています。画面上のテクストなら両手を使わずに読むことができます。文章の読み上げ機能やふりがなの搭載に加え、文字の大きさや背景の色を自由に変更して個人の視覚機能に合った画面を整備できる点も特徴です。、電子書籍はより多くの読者にとっての読書を整備しています。
 このように、読書は質的な変化を伴いながら、より多くの読者に向けて進化しています。紙と電子、私たちはどちらも必要とし併用している、というのが現代のスタイルでしょう。

 4回にわたって読書について考えました。最後にこの問いを。

「読書はトレンドになり得るか」

 ブックカフェの増加、カルチャー雑誌の流行、「タワマン文学」の勃興、ネット書店の充実など、読書に関する現象について話し合いました。こうした「トレンド的側面」が浮き彫りとなる現状は、人々がまだまだ読むという行為に対して貪欲であることを裏付けているようです。
 生粋の小説好きがいれば、雑誌を集める人がいて、Twitterで細切れの物語を楽しむ人がいれば、ブックカフェでコーヒーを注文する人がいます。「若者の読書離れ」を示すデータには、書籍を手に取って嗜み学ぶという狭義の読書が想定されていて、そこには内包されない現代特有の読書形態を見落としています。
 小説を生成するAIの登場も話題ですが、テクストを書くこと・読むこと際に感傷的で回顧的でパーソナルな感情を動員できるのは人間だけです(今の所の話)。
 つまり、実は衰退や復興などなく、これまで通り私たちは読書をしてきたのではないでしょうか。そしてこれからも、形を変えながら私たちは読書と共にあるのでしょう。

▼ 4時間目のポッドキャストはこちらから▼


WACODES学園トレンド科
ラジオ好きの現役大学生、J-WAVE WACODESのメンバーが、「今来ている」「明日来るかもしれない」「100年後に流行ってくれればいいな・・・?」な、トレンドを研究するポッドキャストの学び舎です!


いいなと思ったら応援しよう!