景品表示法における「表示」とは
前回ご説明した通り、景品表示法は、「不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため」(同法1条)の法律です。
この「不当な表示」がどんなものかについては、同法5条において定めており、これらに該当する表示が同法により禁じられています。
ところで、そもそも「表示」とはいかなるものでしょうか。
景表法上の「表示」とは
景品表示法は、同法2条4項において、「表示」に関する定義をおき、そこでは、以下のように定めています。
顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するもの
要するに内閣総理大臣により指定されているものが「表示」であるとされており、ここでの内閣総理大臣の指定は、具体的には、定義告示(昭和37年公取委告示3号)といわれるものによっています 。
この告示による「表示」の指定は、同告示2項において、以下の通り定められています。
顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、次に掲げるものをいう。
このように、同告示2項各号に「表示」に当たるものが羅列されており、これを読めば、景表法における「表示」に当たるかは判断できます。
口頭の勧誘も表示?
これらのなかには、「見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その 他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)」、「情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)」などおなじみのものもありますが、広告=表示という感覚でいると、一見して、「これがあたるの?」と思うようなものも含まれています。
たとえば、電話や街角などで口頭で勧誘を行うような場合、これも表示に該当します。これは、同告示2項2号が「口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)」を表示として取り扱っているためです。
また、容器における成分表示のようなものも、これが「顧客を誘引するための手段」としてなされているものであれば、「表示」に該当します。
これは、同告示2項1号が、「商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付した物による広告その他の表示」として、広告以外の表示も景表法上の「表示」に含めているためです。
このように、「表示」にあたるものは、一般的に想定されているものよりもかなり広く、自社の商品やサービスを世に出す場合には、その方法が景表法上問題がないか、不当な表示となってはいないかということは常に意識しておく必要があります。
「顧客を誘引するための手段」としての表示
そして、この「表示」に当たるものとは、「顧客を誘引するための手段」としてなされるものです。
顧客を誘引するために有用な表示をいうのであれば、商品の表面やチラシの表面など、勧誘時、購入時に顧客が目にするような表示のみが対象となるように思われるかもしれませんが、これは間違いです。
すなわち、ここでの誘引の対象者たる顧客は、既に取引関係にある者に対し、取引の増大・継続や再度の取引を誘引することも含むとされており、購入後に目に触れ、それをもって、取引を継続させるようなもの、例えば、包装紙、箱の中に入っている商品表面の記載などであっても、ここでいう「顧客を誘引するための手段」であり、「表示」にあたります。
また、ここでの「顧客を誘引する」かどうかは、事業者の主観的意図により判断されるものではなく、表示の受けてに対して客観的に顧客誘引の効果を持つかどうかで判断されるため、顧客を誘引しようと思ってやったことではないという言い訳は通用しません。
これらもまた、景表法の適用において勘違いされやすい部分ですので、注意が必要です。
(吉井和明(福岡県弁護士会所属))