【韓国ドラマのアフォリズム】「おっさんず×(危機)」の<死を受容する5段階>
韓国ドラマには、アフォリズム(箴言、警句)がよく登場します。
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韓国ドラマ「おっさんず×(危機)~崖っぷち男の大逆転」(2022年、全6話)は、大企業の中間管理職が主人公(演者/クォン・サンウ)ですが、彼は、“自分は韓国最高峰のソウル大学卒の超エリート、次はいよいよ部長のポストに昇進すること間違いなし”などと自信過剰な人でした。
ところが、異動内示期になって人事担当の役員に呼ばれたら……なんと!? <君は希望退職の対象だ>と告げられてしまいます。
もしも希望退職を受け入れなければ、倉庫番に異動されるというのですから、これはテイのよい<リストラ>、いつどこにでもある<アルアル話>です。
ただ、運が悪いというかタイミングが悪いというか、彼は、妻(演者/イム・セミ)と子づくりに励んでいる最中で、ソウル一等地の憶ション購入の抽選にようやく当選した矢先のことでした。
結局、彼は希望退職の会社宣告をしぶしぶ呑むのですが、大企業の社員でなくなれば、<高額の住宅ローン>は組んでもらえません。
<大企業の中間管理職>だったとか、<ソウル大卒>という肩書きもかえって仇となり、再就職先もなかなか見つかりません。
とうとう彼は、行く末に絶望し、自殺の名所・漢江(ハンガン)に身投げしようと試みます。
(☛その場面がトップ画像です)
その時、彼の脳裏をかすめたのは、キューブラー・ロスが唱える<死を受容する5段階>でした。
彼は、漢江を目の前にして、こう口走ります。(実際はナレーションですが)
ちなみに、この『死ぬ瞬間 死とその過程について』は名著らしく、中公文庫から刊行されていました。
で、人生、山あり谷あり――などとよく言いますけど、実際に谷底に突き落とされたら、そこから山頂はおろか中腹にだって這い上がるのは容易ではないことを彼は思い知らされます。
でも、ロス博士が唱える“抑うつ”状態でとどまり、最終段階の “受容”にまでは至らなかったのでしょう、彼は自殺未遂に終わりました。
もし、彼が漢江に身投げしてしまったら、ドラマはそこで終わってしまうのですから、死んだりはしないだろうとこちらも見透かしているのですが、数百年前かにタイムスリップし、やがて不死身の体となって現代に舞い戻るなどというのも韓国ドラマのお家芸ですから、さて、どうなることやらとは思っていました。
それにしても、人生をやりなおすには遅すぎる小生は別にして、(全6話という短さですし)人生まっしぐらの世代にも共感できるエピソード満載のドラマではないかと思います。