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【ドラマと政治】親族の新年会は、世相の縮図だったかもしれない

謹賀新年2023 本年もよろしくお願いします

新年はTVドラマの話題で花が咲いた

元旦は、毎年恒例の親戚一同が集まっての新年会。
2日は、義妹さんの大家族との新年会。
 
どちらの新年会でもひとしきり近況を報告しあい、酒宴が進むにつれ、盛り上がったのは、TVドラマの話でした。

第1位は「鎌倉殿の13人」

話題のランキング第1位は、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

「鎌倉殿の13人」のムック表紙(NHK出版)

叔母たちは、大河ドラマを「最終回までぜんぶ観たのは初めて」と言い、海外ドラマの翻訳家である甥の夫人は、「放送が終了すると、SNSで検索して、感想やら裏話を集めて、自分なりに分析するのが毎回楽しかった」。
 
さらに、最終回のラストシーンに話題が集中し、大学で歌舞伎研究会に所属していた叔母が「北条義時の最期の場面、あの様式美はすばらしいと思わなかった?」と投げかけると、「義時が哀れだった」と皆で想いにひたり、今年の大河ドラマ「どうする家康」松本潤が最後の最後にサプライズ出演したことに、「あれは驚いたけど、三谷幸喜はうまいね、とにかく脚本が面白かった」との甥の感想に一同ナットク。
 
かくして、まるで “「鎌倉殿」ファン”の集いへと化し、ちなみに、「鎌倉殿」最終回の世帯視聴率は、関東地区で14.8%(個人視聴率8.9%)と、サッカーW杯決勝戦(世帯15.6%、個人8.4%)に迫るランキング第4位と有終の美を飾ったのであります。
(「週間TVランキング」ビデオリサーチ調べ)

第2位は「silent」

第2位は、関西=フジ系の「silent」

「silent」の川口春奈と目黒蓮

このドラマは、独身の姪などが年末の一挙放送を再び観て、「すごく良かった」と言うので、わたしが第1話と最終話だけ“ウルトラ倍速”(笑)で観たと言ったら、「おじちゃん、それはないよ」とヒンシュクを買ってしまいました。
 
それにしても、「鎌倉殿」もそうだけれど、「silent」のキャストも粒ぞろいの豪華な顔ぶれだった。
 
それまで「モニタリング」(TBS系)のドッキリ出演でしか知らなかった川口春奈が存外うまい役者だなと思ったし、目黒蓮の演技を観るのは初めてだったが、世田谷代田駅前で元恋人の川口に遭遇し、やむなく手話で切ない思いを伝えるという涙ボロボロの場面では、難しい役柄をよくこなしているなと思った。
 
……わたしは50歳で転職した会社で、古参社員が起こしたトラブルを処理するにあたって、極度のストレスを受け、突発性難聴になり、1か月入院する羽目になったという経験がありました。

それだけに、第1話だけでも、目黒蓮演じる聴覚障がい者の苦しみがひりひりと伝わってきて、全話を観つづけるのがつらく、ドラマの初めと終わりしか観ることができなかったという事情があったのです。

第3位は「エルピス」


「エルピス」の長澤まさみ(中央)と、眞栄田郷敦(左)、鈴木亮平(右)。

これも第5話から観たので、えらそうなことは言えないのですが、長澤まさみ、眞栄田郷敦、鈴木亮平のみんなの代表作と言ってもいいくらいの“熱量”たっぷりの演技と、TV界の“嘘と虚栄”をグイグイえぐるシナリオ、TBSで叶わなかった社会性のあるドラマを関西テレビで実現したいというプロデューサーの執念、カットを巧みに重ねる演出・撮影・照明・編集の妙技……これはもう2022年の社会派ドラマの傑作、と今さらながら言っておきたいと思います。

でも……、この連続ドラマを観たのは、2日間の新年会に集まった親族のうち、わずか2人だけで、<ネットフリックス>などで韓ドラの旧作・新作を観ている人たちが多く、彼・彼女らとっては、TV界の内幕ドラマなど、とっくの昔に観ているよ、とばかりに「エルピス」はスルーしてしまったのかもしれません。

めでたし、韓ドラ「緑豆の花」もランクイン

意外だったのは、韓ドラ「緑豆の花」が新年会でランクインしたこと。

韓ドラ時代劇「緑豆の花」。おもなキャストは、ユン・シユン(手前)、チョ・ジョンソク(奥)、ハン・イェリ(右)。

80歳代半ばになり、足腰が衰えたというのに記憶力だけは抜群の叔母が、“江戸っ子”沢村貞子さんのようなシャキシャキした口調で、「韓国の『緑豆の花』というドラマはよかったわよ。日本軍が朝鮮に攻め込んで残酷なことをして……」と、唐突に説明し始めました。

わたしもつい嬉しくなって、「朝鮮王朝末期から日本の朝鮮侵略と統治、農民軍による抵抗……と、史実に忠実に描いていたよね」と口をはさむと、叔母は「主役もよかったわよね」と言い、演技がどうなのかなという若いユン・シユンか、それともミュージカル出身の好みの俳優チョ・ジョンソクのどちらだろうと迷いながら、すでに酒がまわっていて特定できませんでした。

<自民党政治>――<自己責任>と<政治責任>

親族のなかには、<箱根駅伝>に出場している大学出身者が多いので、中継のテレビをつけながらレースの進行に一喜一憂する場面が多いわけですが、それよりも白熱したのが、<政治>にまつわることです。

2020年の自民党総裁選で菅総裁(=首相)誕生の瞬間。石破はその後の総裁レースから脱落し、安倍→菅→岸田の自民党タカ派・モヤモヤ派政権が続くことになった。

ここ10年ほど、自民党政治が続いていますから、<政治>と言っても、安倍=菅=岸田政権に対する評価ということになるわけですが、20~30歳代の若い世代は、たとえ人生に何が起ころうとも<自己責任>ととらえる傾向が強く、40歳代からわたしのようなリタイア世代は<政治責任>をことさら問題にする傾向があるように思います。

端的に言えば、<生活保護制度><有償奨学金制度>に対する評価で、意見がはっきりと分かれてしまい、めでたいはずの新年会の空気がちょっと冷え込んでしまう年がありました。
 
それでも、中高年による<政治責任>に対する疑問と不満が、故安倍首相の<モリカケサクラ疑惑>を境にして年々高まり、現在の岸田政権に至っては、「いったい何を考えてるのかしら。原発だの防衛費だの、悪いことばっかりじゃない」という叔母たちの憤懣につながってきています。

なぜ、若い世代は保守化してしまったのか

昔の親族による新年会とは逆転してしまい、<保守と革新>が若い世代と中高年世代との意識変化によって入れ替わってしまったように思います。
 
マスコミの通説によると、若い世代は物心ついたときには安倍政権だったため、ほかに選択肢がなく、なんとなく保守化していったとか、立憲や共産などの野党は政権与党を批判するばかりで、見苦しいとか生理的にキライだとか……。
 
それらの根底には、家庭、地域、学校などの場で、保守的な思想を刷り込まれ、また同調圧力にさらされつづいてきたことの影響があった……等々。
 
でも、そこは親族が年に一回集まっての新年会、新年早々にトゲトゲした空気を避けますから、「戦争だけはごめんだわ」と、空襲被災者の大叔母の一言で<政治>の話は幕を閉じ、誰々一家が中国に今春赴任する予定だとか、誰々の娘さんが今はやりの婚前同居をすることになったとか、ひとしきり“グループLINE”のようなトークが続き、最後は「また来年も元気でお会いしましょう」となって、めでたくお開きとなりました。

追記:今年も「おめでとうございま、せん」!?

昨2022年、元旦の朝のことです。
近所に住む孫が神社にお詣りする途中、<お年玉>のこともあったのでしょう、うちに立ち寄ってくれたので、「おめでとう」とふつうに挨拶しました。

そうしたら、どこで覚えたのか、孫は「おめでとうございま、せん」と返してきたので、ちょっとムッときましたが、すぐに、うまいこと言うなと感心しました。

「おめでとうございま、せん」――たしかに、12月31日から1月1日になったとたん、世の中がいっきに「めでたい年になる」なんて、そんなことはないわけですから。

「おめでとうございま、せん」――今では、この言葉がすっかり気に入っています。

さて、今年はどんな年になるのでしょうか。


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