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「ひるおび!」弁護士のデマ騒動―3

★見出し画像★ Ⓒ2021「総理の夫」製作委員会 
映画「総理の夫」(公開中)で日本初の女性首相を演じた中谷美紀さん(左はW主演で夫役の田中圭さん)は、「政治家を目指す気持ちはないんですか?」という記者の質問に――、
「私が政治家になったら、もう大変ですよ。国防費を削って、芸術振興に予算を全部使っちゃいます。それじゃダメでしょ?」
その談話に対して「いや、これはますます投票したくなってきた」とインタビュー記事を締めたのは、朝日の敬愛する映画記者・石飛徳樹さん。(2021/10/01朝日新聞夕刊)

=前号からのつづき=

日本共産党の「六全協」の決定によって、議会制を通した党勢拡大のための平和政党へと突然舵を切ったため、「党は革命の理想すら放棄した」と青年党員に“幻滅”をいだかせ、脱党・除名の党員が続出するなど、党内は大混乱に陥りました。

■共産党の平和路線は信用できない?■
そうしたリスクを負ったにもかかわらず、“共産党の路線転換は信用できない” “ひそかに「暴力革命」の牙をといでいるのだ”と疑う人たちが未だに多く、長年の刷り込みを消し去ることは、容易ではありません。

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(↑)立花隆著『日本共産党の研究』(講談社文庫・全3巻・1983年刊)

そんなことを考えるのは、先ごろ亡くなった立花隆さんの『日本共産党の研究』(*)の影響によって、“暴力革命堅持論”が世間の常識としてすっかり定着してしまったように思えるからです。

(*)『日本共産党の研究』(単行本の上下巻は1978年刊)は、立花氏と調査スタッフによるベストセラー『田中角栄研究』と同様、圧倒的な取材力で、昭和(戦前期)の政界・軍部・特高による弾圧の暗黒史と、スパイ査問事件などの共産党秘史をコインの裏表のように描き出し、党編纂の『正史』に対抗する「真史」として高い評価を受けた。
しかし、立花氏は「暴力革命」を放棄したとする「宮本路線(*)を百パーセント額面どおりに受けとることはできない」と断定し、共産党は「反共キャンペーン」だとして、同書を猛烈に批判した。

(*)「宮本路線」とは、戦後の日本共産党の路線対立の末に主導権を握った宮本顕治氏(非転向を貫き、1958年から党書記長に就任。妻はプロレタリア作家の宮本百合子氏)が「六全協」以後、“民主的な平和路線”をしいたことを指す。

でも、『日本共産党の研究』を読む前から、共産党に「暴力」に訴える気も「革命」すら起こす気もないと、わたしはふんでいました。
ここでは、1960年代の重要な出来事を記すにとどめておきます。

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(↑)京大生・山崎博昭さんが機動隊に圧殺された羽田闘争の記録と東大全共闘のリーダーだった山本義隆さん(名著『磁力と重力の発見』を著した科学史家)らの証言で構成されたドキュメンタリー映画「きみが死んだあとで」(公開中/代島治彦監督/2021年)の予告編より。

(↑)当時、新左翼の学生たちは“暴徒”と呼ばれ、共産党からは国家権力を利する“跳ね上がり分子”などと非難されたが、画像のように彼らのほとんどは軽装な恰好で立ち向かい、乱闘服姿の機動隊に乱打され、鼓膜が破れるほどの高圧放水に行く手をこばまれ、あるいは装甲車に轢かれ、羽田闘争では死者と多数の重傷者を出した――「香港の民主派弾圧」をオーバーラップさせる――というのが実状だった。

■あの日の「赤旗まつり」■
1967年10月8日、新左翼の学生たちは、当時の佐藤栄作首相の南ベトナム訪問を阻止するため、大森方面から羽田空港にかかる3つの橋で実力行動(第一次羽田闘争)に出た際、重装備の機動隊によって京都大学生の山﨑博昭さん(18歳)が圧殺されました。

この日のほぼ同時刻に、日本共産党や青年組織の民青(民主青年同盟)はいったい何をしていたのか……。
なんと、「反共」の南ベトナム政府をテコ入れするため佐藤首相がベトナムに飛び立とうとしていた羽田とは遥か遠く離れた地(都郊外の多摩湖畔)で、歌って踊っての「赤旗まつり」を開催していたのです。

一事が万事、日本共産党が「闘わない政党」であることは、自民党ですら当時から百も承知だったのです。

■「いま自分さえよければ」という時代に■
八代氏は1964年生まれだそうですから、60年代後半のことなど知る由もないでしょうが、それにしても、自民党の言うことを鵜吞みにして、“反野党共闘キャンペーン”に加担するなんて、政界進出の野望でも抱いておられるのではと勘ぐってしまいます。

かつて、「ひるおび!」の総合司会者である恵俊彰氏は、政治家への誘いを受けたことがあると、同番組の中で率直に話していましたので、よけいにそう思ったのです。

(つづく)

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