大東流と陰陽道(下)
陰陽五行説は森羅万象を読み解くためのツールであって、中国では単に占術、呪術に用いられただけでなく自然科学、哲学、医学などの諸分野でも主要な理論として活用されてきた。一方、日本ではこれら学問が未発達の古代に持ち込まれたこともあり占術、呪術を中心とする活用が主で、さらに道教的、密教的祭司と結びつき秘教、神秘思想として未だ多くの影響を与えている。
日本の陰陽道の家元に安倍晴明がいる。安部家は古代大和の豪族であったというが、諸説あるようだ。晴明は識神(式神)、すなわち陰陽師の命令に従って変幻自在に不思議な技をなすという精霊(鬼人)を使って数々の奇跡を起こしたという。
以上のように陰陽道と大東流は直接結びつくものではない。惣角が言った陰陽法とは、大東流には表(陽)と陰(裏)があるという、意味であろう。大東流の二大系統から見れば、江戸柳生系合気柔術が裏で、表は大東流柔術(小野派系)である。表の技法は見ること習うことが出来るが、裏の技法は一般には見ることも知ることも出来ないもの、と整理してある。合気陰陽法の名称は西郷頼母からの口伝であったが、陰陽法という言葉だけが一人歩きしてしまったのだ。
冒頭時宗氏が言うように、惣角が易学を知っていたことはまずないであろう。膨大な学問体系でもある易学を字が読めない惣角が学ぶことは出来なかったハズだ。