触感を磨く(上)
合気柔術の稽古では、柔術テクニックの他に皮一枚など触感を磨くことが求められます。力を抜くことで、微細な力を感じとることが出来るようになります。
このことを筆者は次のような例え話で説明しています。最小目盛が1kgの量りがあったとすると、1kg未満の重さは量ることが出来ません。最小目盛が100gの量りなら、精度が上がる。さらに1g単位なら・・・。寿司職人など鍛錬を積んだ方はグラム単位で重さを手で認識できますが、普通のヒトは日常生活の中で、グラム単位の違いを認識する必要はほぼありませんから、このような感覚は眠ったままです。この感覚を目覚めさせるためには、力を抜いて触感を磨く訓練が必要なのです。
さて、武術の中には、力技を旨とする流儀もあるようです。別にこれを否定するということではありません。ただ、その路線には限界がありますし、体格差や加齢には勝てないという現実があります。
大東流では、最初「柔術」を「剛術」のごとく教え、この力技を合気系の抜力技で破ることを学ぶという構成になっています。逆説的ではありますが、力感をともなった、ある意味無駄で非効率的な体の使い方(本能的な使い方でもあります。)を経験しなければ、力を抜く必要性がわからず、学習しない(出来ない)からです。