鉄扇術(上)
「人之巻」大東流合気柔術の教外別伝に鉄扇術があります。
鉄扇とは、骨を鉄で作った扇(又は畳んだ扇の形を模して鉄製で作ったもの)のことで、武士が護身用に、或いは威容を整えるため携帯していたもの、のことです。
鉄扇は、杖と同じように刃がない得物ですから、自在な掴み方と使い方が可能であり、この点、サイズ感が似ている懐剣術と技法が異なるのです。
鉄扇術といえば、武田惣角が門人を肩に担いでいる有名な写真の技に使っていますし、堀川幸道が使用している写真も残っています。また、竹下ノートにも太刀対鉄扇の技が数本、鉄扇を用いた返技が数本ありますから植芝盛平も少し習っていた(見知っていた)ということでしょう。
鉄扇術も他の教外別伝と同様にこれのみで一流一派を立てられる構成となっています。単独操法から始まり、合気柔術的組形を経て合気之術につながる技法へ展開していきます。すなわち、鉄扇の使用法、鉄扇破り(鉄扇の攻撃に勝つ技)の両面を教え、打たない・突かない合気捌きをマスターするのです。なお、鉄扇術は、そのまま護身術に転用(応用)可能な技法で、折りたたみ傘等を用いて同様の捌きが展開できます。