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退職者割合が16産業中2位!!福祉の仕事はやりがいだけでは続かなくなる#70

福祉業界の仕事に就く人の動機はさまざまあるものの、身近に障害当事者がいるとか、親の介護でお世話になったことがあるとか、何か人の役に立ちたいとかが結構多い印象です。ただ、昨今の人材不足という状態が続く中では、なかなかそうも言ってられないだろうなということを、厚生労働省の令和5年労働安全衛生調査(実態調査)の結果を見て思いました。

この調査の中では、福祉の仕事は「医療・福祉」のジャンルに入っています。全16種の産業ごとに休業者や退職者の状況が書かれています。この16種の産業の中で、医療・福祉業界のうち休業者がいる割合は7位、退職者は2位という結果になりました。

こちらは、過去3年分の変化を経年で見れるようにした表です。全産業の休職者割合と退職者割合も入れています。

令和2~5年の労働安全衛生調査(実態調査)より筆者作成

〇やりがいだけでは続かない仕事

福祉(とりわけ介護)の仕事には3K(きつい・汚い・危険)という労働条件の厳しさからくる言葉があります。結構有名なので耳にしたことがある人も多いかと思いますが、福祉業界の中にいるとあまりそういった声は耳にしないので、外野からとやかく言ってくる人たちが多いのだろうなと思います。

冒頭にも書いたのですが、福祉の仕事をしている人たちは何かしらのモチベーションがあって働いています。特に多いのは人の役に立ちたい(社会貢献)とか、身近な経験としてこの仕事に触れたことがあるということです。そういうモチベーションを持った人たちも、今までは自分の思いを大切にして働くことができていたものの、今後はその思いだけでは続けていくことは困難だと思います。

まず、圧倒的な人材不足が理由の一つです。リクルートしても人が来ないし、そもそも福祉系学校への入学者が減っています。ただ、福祉事業所には職員の配置基準が法律で定められていて、利用者○○人に対して1人の職員が必要。正規職員で採用が無いなら、パート等の非常勤で穴埋めをします。当然ながら、(全員ではありませんが)専門的知識や経験の無い(または浅い)人を雇うわけなので、人材不足のなかで教育が行き届くわけもなく、適切とは言えない援助をしてしまうこともあります。

で、人手がなければ既存のスタッフに業務が振り分けられ、一人当たりの職員の業務量が増えます。それは利用者への援助にとどまらず、ケース記録や諸々の書類整備などどんどん増える…今までは自分のモチベーションを大切にしながら援助に向き合ってきたものが、業務量の増加により余裕が持てなくなり、毎日残業したり、疲労の蓄積が見られて精神的にも不安定になる場合もあります。人材不足の点からだけでも、その困難さが分かると思います。

〇必要な人材は優しさではなく専門性がある人

専門性のある職員ではなく、今はパートなどで職員配置基準を満たすことができるようになっています。で、今の福祉施設の現場で多く見かけるのは、例えば利用者Aさんの母親とか、地元に住んでいる気の利く方とかです。たしかに、役割としてそういった立ち位置の方がいることも必要なケースがありますが、本来の福祉施設で行う援助に必要な専門的知識が皆無なことが多いため、援助にはあまりなっていません。

事業所経営にとっては人件費が抑えられるという点が言えますが、施設サービス全体の質が低下してしまうと、次第に人が来なくなっていき、結果的には経営が困難になります。

とはいえ、人材不足かつ供給制約社会のなかでは人を選んでいる余裕が福祉施設にはありません。とにかく来てくれる人にはすがる思いで逃さない!ぐらいに思っているところも多いです。現実は厳しいもので…来たとしても80代の方とかで…

こうした現実問題がある中で、とくに歴史ある非営利の団体の多くは理想の福祉像を語ります。今の仕組みが悪いんだ、国の福祉が揺らぐとか言っているわけです。もちろん、私もそれは思いますし、だからこそ運動に参画してあちこち行ったり地元の議員に働きかけたりしています。

ただ、外に目を向けてマクロ課題へのアプローチ以前に、今足元の事業所で働く職員がもたなくなってきているという現実(ミクロ)ともっと危機感をもって向き合っていく必要があります。モチベーションがないとか社会人が言ってんなと思ったりもするのですが…とはいえ、仕事が続かなくなっている人が増えているという現実がある以上、職員の自助努力でどうにかなることではなくなってきているのです。

ここに経営者と現場スタッフとの思いのずれが生じています。新たな活動を作っていきたい層と、日々大変!もっと私たちを見て!という現場スタッフの気持ち。リレーションシップが図られていない状態が悪循環を生み出します。

〇賃金アップと合わせてやるべきこと

特に今年は民間企業の賃上げが行われました。実質賃金はあがっていませんが…しかもあたかも国がやっていますと言わんばかりに、「賃上げ、賃上げ」と言っています。

福祉業界で働く人に対しては月6,000円のベースアップが国として進められました。微々たるものではありますが、賃金も上がっていく?兆しが見られています。

産業別の平均賃金で見事に底辺を打ち出している福祉(特に障害)業界なので、賃上げは必須です。そもそも自分が生きていけなければ他者の援助なんて無理なわけですから…

(福祉業界の賃金形態については以前の記事をご覧ください。)

賃金以上に大事になってくるのは、福祉の仕事をしようと思った職員のモチベーションを維持または向上させられる事業所運営です。先ほども書いたように、事業所内でのリレーションシップはもちろんですし、バリバリの年功序列でなかなか裁量が持てないことや、旧態依然の組織体系でものごとが進まないことが言えます。

また、利用者への援助に時間を掛けるためにはDX化はマスト。事務負担が増えた増えたと言い続けて早何年でしょう…現状を変える努力(デジタルツールを使えるようになること)なしには、自分たちがやりたいこともできないわけです。

勤怠管理から、請求業務から、あらゆる事務を機械化、自動化させて、効率化かつ正確な作業ができるようになるとその分現場スタッフが援助に当たれる時間が増えますし、本来やりたかったことはやっぱり援助です。それが自分のペースでやっていけるというのはモチベーションにもつながります。

やっぱり福祉業界には業務改革が必要です。
受動的に仕組みが変わるのを待つのではなく、現状を好転させるためにすぐできることはやる。短期、中期、長期でどのように変えていく必要があるのか、各施設施設で議論していく必要があるのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
それではまた。ゆうちゃんでした。

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ゆうちゃん
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