第3次ウッドショックの原因と影響と対策
今年の4月に入ってから、プレカット会社から「木材、構造材が値上がります。」との情報が入り、GW前には、「構造材が入りません。5月中には柱が一本もなくなります!」と今までに聞いたこと無いようなニュースが飛び込んできました。
そしてこれは「第3次ウッドショック」とのことで、オイルショックは知っているけど、ウッドショックは恥ずかしながら、20年以上も住宅建築に携わてきたにもかかわらず、はじめて聞きました。
今日は木材新聞や製材会社へのヒアリング、林野庁のホームページの資料などを参考に、今回のウッドショック(木材不足)の原因を探りながら、
今後どうなるのか?どのような問題が起こってくるのか?
これから家を建てられる方、すでに契約されている方はどのようになるのか?を考えてみたいと思います。
1.第3次ウッドショックの原因
今回のウッドショックは「新型コロナによるヨーロッパからの木材SPFが入ってこなくなってしまったことによることが大きな要因のようです。
ちなみにSPFとは(スプルース(とうひ)、パイン(松)、ファー(もみ)の3種類の針葉樹の総称です。ホワイトウッドとも言います。
1番目・・・アメリカでの木材の高騰は日本よりはるかに深刻なようです。コロナによる都市から郊外への移住に伴う戸建て新築の急増と巣籠によるDIYが増え、木材は昨年のコロナによるロックダウンの4月に比べてSPFは6倍にもなっていて、そこに投資や投機も加わり、住宅購入というアメリカンドリームは実現できなくなっているそうです。
2、3番目・・・中国!いちはやくコロナから脱出し、急速な経済復興をとげ、住宅着工の急増と、電化製品や自動車などの需要拡大とそれに伴う資材、原材料などの海外からの爆買いを行い、世界の輸送コンテナを独占。コンテナ不足により、日本にコンテナ船が入港しなくなった。
4番目・・・コロナ禍以前からの、建築の木質化への移行、大規模木造建築物の増加。
5番目・・・カナダでは松くい虫による、ダグラスファー ツーバイ材の供給不足
6番目・・・トランプ大統領時代に起こった米中貿易摩擦による、中国の木材輸入先のアメリカから北欧へのシフト
7番目・・・ロシアの輸出税率の断続的な引き上げによる木材高騰。
そのほかスエズ運河での、コンテナ船の座礁事故に伴う船便コストの上昇。
これら様々な負の要因がコロナにより一気に爆発した印象を受けます。
2.ウッドショックの建築と経済への影響
日本の木造住宅の乾燥や精度、強度に対する基準は非常に高く、特に狂いが少なく強度の高い、また価格も手ごろなロシアを含む欧州のSPF系「構造用集成材」EW(エンジニアリング・ウッド)が多用されています。
しかし、上記の原因で欧州からSPF系のEWの輸入が激減しました。
それなら森林大国日本なのだから国産材を使えばいいのではないか?
ところが、そう簡単にはいかないのです。。。
さらにこのまま木材の供給が滞り、価格が高止まりすると、新築需要が激減し景気を左右する日本では経済的なダメージも相当なものになると予想されます。
3.ウッドショックの建築主へ与える影響と対応策
今回のウッドショックにより住宅の建築を予定されている方には下記のような問題が発生することが考えられます。
土地から契約をされる方は、建物の完成遅延によるつなぎ融資負担を減らすためにも土地と建物のローン契約を別々に行う「土地の先行融資」(※)等をお勧めします。
※別の記事で詳しく解説します。
また、ハウスメーカーから「これから価格が上がるので今契約したほうが得ですよ。」など契約を迫られることもあるかと思いますが、そこは焦らずに、情報収集をしながら冷静に進めていただきたいです。
4.今後はどうなるか?
林野庁のHPからのデータによると平成30年での日本の木材自給率は国の施策によって徐々に回復してきているものの未だ40%ほどで、日本の森林資源から考えると供給の余地、余力は十分にあります。
ただ一朝一夕にはいきません。・製材所の不足・林業従事者の人出不足・荒廃した林道整備等課題は山積しています。
今後は、国産材へのシフトが進むと思われますが、間違いなく木材の価格はさらに上昇し高止まりすることが予想されます。
もうすでに国産の集成材柱は昨年の2倍近くになっています。
建物全体に占める構造木材の割合は10%程度でしたが、これが20%近くになり、今後は木材だけでなく、設備機器やその他建築資材も価格の上昇は必至で、来年になると、戸建て木造住宅の価格は2割以上アップすると予想しています。