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同居できる遺伝子
一人暮らしの方の熱中症ニュースを聞いていると、いろいろなことを考えてしまいます。ご存知のように、災害時には複数で住んでいる人の方が助かる率が高くなります。助けを呼びに行ったり、食料を調達したり、一人ではできないことも複数なら可能です。
しかし、同居には同居の技術が必要なのです。
二人の年配女性を例にとってみましょう。
Aさん:80代。息子夫婦や孫と同居。
Bさん:70代後半。一人ぐらし。
話をしてみると、人格のおだやかさが違う。Aさんは「お嫁さんがなんでもしてくれる」と日々感謝です。ファンの人までいて、いろいろなところにいくときは送迎してもらっています。
Bさんは、聞いていないのに嫁の悪口が出ます。
「私のところに来ないで自分の親のところに行く」など。
残念ながら、話していて楽しい人ではありません。
いろいろ世の中で騒ぎが起きるとき、同じように大騒ぎするのはBさんです。情報がTVしかはいらないので、この世の終わりのように思ってしまうようです。
同居についてもう一つ思い出すことがあります。以前お世話になった動物病院で、いろいろなアシスタントさんにお会いしました。その中で一番気が利いて、院長も奥さんも気に入った人は、三世代同居でした。私も一緒に仕事をしましたが、尖ったところがなく、長時間接していても気の休まる方でした。また、あるとき横浜の喫茶店で、隣のお客さんの会話を聞くともなく聞いてしまいました。
70代くらいの管理職と思われる方でしたが、連れの方にこう言っておられました。
「うちはね、どちらを採用するか迷ったら、おじいさんおばあさんと同居してる方を選ぶんだ」
「どうしてですか?」
「それはね、仕事をしていると辞めたくなる時って必ずあるでしょう?同居のおじいさんおばあさんがいるとね、『もうちょっと頑張れ』とか言ってくれる。それで仕事が続く」
なるほど、親以外に相談できる人がいるのは強いですね。
同居遺伝子とは、私が勝手につけた名前ですが、定義するとすれば、「同じ家に住む人への寛容さ」「配慮」「ある程度妥協ができる精神」そんな性格を作りだせる遺伝子でしょうか。
私が大阪府立大学で師事した阪口玄二教授は、お子さんが5名おられ、その上にお母様も同居でした。一度官舎のご自宅に伺いましたが、「ここで8名大変だな」という感想でした。
しかしお子さんはどの方も素晴らしく学業がお出来になったのです。同居では奥様のご配慮や妥協が必要となりますが、次の世代には良い結果を招くことが多いようです。
【画像解説】姫路水族館のペンギンです。この人たちも同居しています。何かと大変なこともあるでしょうが、団体ならではのよさもあるでしょう。