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剣道 切り返しの目的

基本練習の理解とその重要性

「切り返し」「かかり稽古」「素振り」といった基礎技術は、剣道の根本であり、すべての剣士にとって欠かせないものである。しかし、これらの動作は特に初心者にとってはやや複雑であり、間違った形を無意識に身につけるリスクもある。単に形を真似るだけでは、技術の本質的な向上を期待することは難しいと考えている。
ここで、陸上競技と比較して考えてみる。陸上競技では、走る、跳ぶといった単純な動作が中心であり、指導者の指示に従ってこれらの活動を行えば、ある程度の成果が出やすい側面がある。これは、動作自体が比較的直感的で、単純なため、多少は何も考えずに行っても一定の進歩が見込めるからだ。 しかし、剣道の場合は事情が異なる。剣道には、竹刀の扱い方、間合いの取り方、打ち方(刃筋の正しさ)など、習得すべき技術要素が豊富に含まれている。これらの技術は複雑であり、何も考えずに単純に練習を繰り返しているだけでは、本当の意味での技術向上や理解にはつながらない。つまり、剣道では、それぞれの基本練習が持つ深い意味や目的を理解し、意識的に取り組むことが求められるのだ。 そのため、「なぜこの練習をするのか」という目的の明確化が、剣道における技術向上への近道となる。

基本動作の理解と成長への影響

現在、中学校で剣道を指導しているが、ほとんどの生徒が切り返しの基本動作を正確に掌握していないのが現状だ。傍から見ると多くの生徒が、先輩の動作を部分的に模倣している様子が見受けられる。
かく言う私も小学生の時に6年間剣道をしていたが、切り返しの目的を真に理解して行っていなかった。少年剣道(道場)の先生は有段の人が多いためその目的を理解していないことはまずない。小学生の段階で理屈を並べて頭で理解させてから動きに反映させるような指導は私も適切だとは思わない。あえて、細かく指導していないのだと思う。だが、中学生になれば論理的な思考力も高まってくるので切り返しなど、それぞれの稽古の中で目的意識を明確にして竹刀を振る方が成長の幅は大きくなると思う。

切り返しのポイント

1. 立合いの間合では、姿勢、 構え、 竹刀の握り方などを正しくする。
2. 初心の段階では、動作を大きく、正確に行う。
3. 肩の余分な力を抜いて、柔軟に左右均等に打つ。
4. 連続左右面打ちの角度を45度ぐらいにする。
5. 正しい足さばきで行い、特に後退の際の引き足が歩み足にならない。
6. 振りかぶったときに、左こぶしを必ず頭上まであげる。打ちおろしたときには、左こぶしがさがり過ぎたりあがり過ぎない。
7. 左こぶしは常に正中線上にある。
8. 息のつなぎ方は、正面を打ち、相手に接近したところで息を吸い、左右面を打ち終って間合をとり、正面を打ったところで息をつぐ。
9. 相手の竹刀のみを打ったり、空間を打ったりすることなく、 伸び伸びと確実に左右面を打つ。
10. 頭や腰、膝などで調子をとって体の上下動を大きくしない。
11. 正面打ちは、一足一刀の間合から正確に打つ。
12. 習熟するにつれて、旺盛な気力をもって息の続く限り一息で行い、体勢を崩さずに連続左右面を打つようにする。

全日本剣道連盟の剣道学科審査の問題例と回答例より
https://www.kendo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/kendo-gakkashinsa-kaitorei.pdf

このポイントの中で、自身の経験で特に大切なことは、2、6、7、9だ。特に6は小学生の時に常に意識して竹刀を振っていた。左拳を頭上まであげる意識によって、左手で竹刀を握る意識と左手で竹刀を操作する筋力と能力が向上する。おそらく、この6を意識すれば、2の大きく正確にと7の左こぶしは正中線にと9は同時に補完されると考えている。

切り返しの目的

全日本剣道連盟の剣道学科審査の問題例と回答例によると、
切り返しは、剣道の姿勢と構え、 打ちの刃筋や手の内の作用、 足さばき、 間合のとり方、呼吸法、さらに強靭な体力や旺盛な気力を養い、気剣体一致の打突の修得を目的とする。と記載されている。

https://www.kendo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2023/04/kendo-gakkashinsa-kaitorei.pdf

私の経験と指導の経験から切り返しの目的は以下の5つだ。
1. 正しい間合いの感覚的な習得
2. 左手で竹刀を操作する技能の向上
3. 狙った場所(面)を打突する竹刀操作の向上
4. 打突時の手首の返しの意識向上と筋力向上
5. 肩、背中の筋力の向上

おわりに

剣道は、身体機能以上に特有の技能習得がパフォーマンスに強く影響を与える種目だ。(もちろん、最低限の身体機能の向上は必要)何も考えず、ポイントを抑えずに稽古をしていたら2年経っても3年経っても一本を取れる剣道ができるようにはならない。2年経っても、3年経っても対して上達しない種目は多くない。たいていは、それなりの試合ができる状態になる。しかし、剣道は本当に上達しない可能性がある怖い種目だ。
初心者はオリジナルで稽古するのではなく、指導者のアドバイスを聞くか、インターネットなどで調べてポイントを抑えて練習して欲しい。


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