魔獣軍師ジェネラルリオン 第1話

第1話 深夜の顎力/4

翌日俺はペットショップを訪ねた
「映川さんですか、神代探偵社の獅子神といいます。上谷徹さんという方を探していまして…こちらにいらっしゃってるかなと……」
映川は笑顔で「わかりませんねぇ」と言うも、店の奥を見るとこちらを窺う上谷がいた

「おい!いるじゃねぇか!やっぱ俺の鼻は当たってんじゃん!待てや!!」
窓から逃げる上谷を追いかける、すぐに袋小路に追い詰められた
「何してんだよ、カミさんと娘さん、俺んとこにアンタを探してくれって依頼しにきたんだよ」
俺は怪しいと思ったら、動物並に鼻が良くなる、この鼻のおかげで何人も見つけてるわけだ…善し悪しはあるけどよ

震える上谷に近づきながら鼻が僅かに異臭を捉える
「さ、震えてねぇで帰る………ぞ……?」

血走った目、大きく裂けた口…いや体?
「人間…?形が……なんだ……変だぞ?」
鼻にホームレスの血と同じ匂いが……大きく後ろに仰け反るとドンと何かにあたった

「探偵さん、邪魔するなら殺すよ?」

気持ち悪いくらいの笑顔の映川がすぐ後ろに立っていた…
目をカッと見開いたと思ったらこちらはでかい猫に変わった

叫びをあげる間もなく、俺の体に衝撃が走った
手にはべっとり血糊、前を見ると手から血を滴らせた映川

「何をしてるんですか。行きますよ、上谷さん」

薄れる意識
熱い体

あー、死ぬか、これ……

「人間、まだ生きたいか?」

誰だよ、寝かせろよ……

「君はまだ生きたいだろ?」

そらそうだろ、まだやりたいことあるもん

「じゃあ僕の力を使うといい、獅子の戦士」

獅子の戦士?なんだそりゃ…中学生かてめぇ

「ふふふ、人間には昔助けられたからね、恩返しさ。まずは目を開けることからはじめようか」

あ?目を開ける?

ゆっくりと目を開けると、目の前には号泣する皐月の顔が
「泣きすぎだろ……」
「バカぁ…何してるんだァ…もおおお!」
傷口に思い切り抱きついてくる皐月、ポコッと頭を殴ったのはおやっさん、神代さんだった

「あんな商店街で血だらけをぶっ倒れやがって!何してやがんだ!外傷もねぇとか何があったんだよ」
外傷がない?そういえば皐月に抱きつかれても痛くなかった……

ばっと布団をめくり、腹を確認すると……ない、確かにない
あのでかい爪で刺された跡が…

「いや、俺…上谷がワニになって…ペットショップの映川が猫で…爪で刺されて…え?」
訳がわからん…落ち着け…

「それにしてもこの子が見つけてくれなかったら、どうなってたことか…」さすがの佐々木もエセ関西弁の余裕は無くなってるようだ……ん?子供?

「ふふふ…大丈夫かい?獅子の戦士」
小声で夢の中の声が聞こえた……
「お前は……」
「僕はアニマ、と言っておこうか、獅子神宿伍、ま、話はまたあとで」

「ねぇ、僕?お家へどこかな、おばさん送って行くよ?」
皐月が言うも、「大丈夫です」と病室を去っていった
「あ、僕!………え?もういない?」
忽然と姿を消した子供、俺にはアニマって言ってたが…何者だろうか…

2日後、検査が終わり退院した
すると病院前にはまたアニマという少年がいた

「や、獅子神宿伍、じゃあ話の続きをしようか」
そうだ、俺もこいつには山ほど聞きたいことがある
人気のない場所に連れられた俺は「おい」と呼び止めた

「お前、まずは何者か言えよ」
「ふふ…僕はアスモデウス、君が見た怪物の仲間…だった者だ。君は鼻が利くだろう?人間とは違う匂いがするはずさ」
確かにこいつからは何も匂いを感じない…
「僕が君を獅子の戦士と言ったのは、文字通り君には獅子としての力があるんだ。あの怪物たち、ソロモン72柱と戦う戦士としての力がね」

俺は笑った、腹の底から込み上げてきた
そして

「ガキの戯言に付き合ってられる余裕ねぇから、じゃあな」
呆れた、ただのマセたガキの妄想じゃねぇか

「いいんだ、僕が消えたら、君も死んじゃうよ?」
このガキは1発殴ってもいいだろ、そのあと親には謝ればいい…と思っていたら体から何かが流れる感覚があった
血、だ
消えたと思っていた傷口がうっすら開いている

「僕もやつらから逃げ出すのにかなり魔力を使った、その上1回死んだ君を蘇らせた、人間には昔いっぱい世話になったから助けたけど…仕方ないよね」

「てめぇ…何が目的だ!」
くすっと笑ってアスモデウスは答えた

「君には僕の力を回復させる為にあの怪物たちを倒すんだ、ソロモン72柱を倒すんだ…君の潜在能力である、ジェネラルリオンとしてね」

少しずつ流れる血を見ながら、俺は笑いながら語るアスモデウスを睨みつけていた

「もちろん、僕の力がちゃんと回復したら、君を100%の状態に回復してあげる、それまでは運命共同体ということだけどね。どうだい、やってみないかい」

大きくため息をつき、俺は座り込んでしまった
悪魔が相手じゃどうしようもないじゃねぇか…生きたいと願ったら、そもそも悪魔と契約してましたって…笑っちまう

「やるしかねぇってことか、生きるためには」
「そういうことだよ、やっと考えはまとまったみたいだね」
傷が治った感覚があった、血も戻ってきた…

「やってやる、そのジェネラルリオンだかを」
「じゃあ早速、さっきのバアルとサレオスを倒しに行こうか」

よろしければサポートお願いします! がんばります!