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『さくらのこと』10節 刺さる

10節 刺さる

雪虫さんは基本的に週一回来る人だった。
雪虫さんだけがそうではなく、皆そう。
来ないはずの曜日にたまに来てくれる事もあった。

私が雪虫さんの更に好きなところは
私のペースに合わせてくれる事だった。

嫌です。と言ったことは強要は必ずしなかった。
大きな仕事も、些細なことも。
※大きな仕事を断る私の優柔不断さは一旦置いておく。

私の仕事は基本的に制服を着衣するタイプの業務。
でも1つの業務だけは制服を脱ぐ仕事があった。
その日は急いでおり、
イレギュラー的に普段着でいい日だった。

その日に間違えて、制服を来てしまっていた私に
彼は云った。

「ん?わざわざ着てるの?丁寧だね」

言葉とは裏腹にいたずらっぽく笑う。
あの顔が今でも胸に刺さって抜けない。


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