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島をくちずさむ ~ジュスにまつわる随想~ゲレン大嶋 【第6話】 曲ができ 歌詞が書けたら 次は歌手

「曲ができ 歌詞が書けたら 次は歌手」。章題は五七五ですが、季語がありません。実際に歌手を決めたタイミングは、私のデモを聴いた笹子さんが「使えない曲は一つもないですね」(第5話参照)という控えめな褒め言葉をくれたすぐ後でした。このプロジェクトの揺るぎなき大前提は、笹子さんと私が沖縄への思いを込めたオリジナルの歌曲を作り、それを演奏する、というものですが、二人とも自分で歌う気はさらさらない・・・。となれば、笹子さんと私の楽曲を我々にとって理想的な形で歌ってくれる歌手の存在が必要となる訳です。選択肢は無数にあったのかもしれませんが、私の中では最初から一人に絞られていました。それはかつてチュラマナでも共演した宮良牧子さん(以下マッキー)。石垣島出身のマッキーは島の伝統音楽の真髄を大切に受け継ぎつつも民謡歌手かというとそうではなく、ルーツ・ミュージックのエッセンスを多彩でダイナミックな表現の中で輝かせるという、ユニークなスタイルを持つヴォーカリストです。技術も非常に高い。つまり、沖縄民謡の世界をリスペクトしながらも、ジャンルレスで幅広い音楽性を持つ笹子&ゲレンの楽曲を歌ってもらうのにもってこいの歌手なのです。加えて私は、マッキーがいつか笹子さんのギターで歌ってみたいと夢見ていることを知っていたので、この機会にその思いをかなえてあげられれば、とも考えました。という訳で「宮良牧子はどうでしょう?」と笹子さんに提案すると「いいんじゃないですか」とのこと。マッキーの返事は聞くまでもありません。この笹子さんと私のソングライティング・プロジェクトのシンガーに彼女を起用したのが正解であったことは、アルバムを聴いてもらえればおわかりいただけると思います。

●笹子重治(作曲、アレンジ、ギター)
ギタリスト、作編曲家、プロデューサー。弦楽トリオ、ショーロクラブ(1989年-)のリーダーであり、ソロ・アーティストとしても優れた楽曲を発表。多くの尊敬と信頼を集める彼のサポートを求めるアーティストは後を絶たず、これまでに共演してきた歌手や演奏家は、畠山美由紀、Ann Sally、大島花子、純名里沙など、枚挙にいとまがない。また、古謝美佐子、大島保克、比屋定篤子、桑江知子といった沖縄出身アーティストとの共演も多い。

●ゲレン大嶋(作曲、作詞、三線)
1999年に沖縄系アンビエント・ミュージックのユニット、TINGARAのメンバーとしてデビューしたヤマトンチュ三線プレイヤーの先駆け的存在。その後ハワイアン・スラック・キー・ギターの名手、山内雄喜、宮良牧子、上原まきと組んだチュラマナなどを経て、2010年からは日本を代表するギタリストのひとり、梶原順とのインスト・ユニットcoco←musika(ココムジカ)で作曲と三線を担当し、三線音楽の新たな可能性を広げている。

●宮良牧子(ヴォーカル)
石垣島出身。民謡のDNAを大切に受け継ぎつつ、そのエッセンスを多彩でダイナミックな表現の中で輝かせるという、稀有なスタイルを持つヴォーカリスト。その圧倒的な歌唱力を絶賛するアーティストも多い。これまでにソロや、ゲレン大嶋とも共演したチュラマナなどで多くのアルバムをリリース。また2010年にはNHK連続ドラマ小説「ゲゲゲの女房」サウンドトラックに参加し、2012年の映画『ペンギン夫婦の作りかた』では主題歌の作詞作曲と歌唱を担当し活動の場を広げている。

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