
残念すぎる日本の名城シリーズ第2回:大阪城〜輝かしい歴史と知られざる現代の姿〜
日本を代表する名城として知られる大阪城。豊臣秀吉が築いた壮大な城として、多くの観光客が訪れる人気スポットです。しかし、その輝かしい名声の裏には、意外と知られていない「残念」な特徴も隠されています。今回は、そんな大阪城の魅力と「残念すぎる」ことについて掘り下げてみましょう。

みなさん、こんにちは!「残念すぎる日本の名城」シリーズ、第2回目は大阪城です。前回の丸岡城に続き、今回も日本が誇る名城の意外な一面をご紹介します。
大阪城といえば、日本を代表する観光名所のひとつ。あの美しい白亜の天守は、日本人なら誰もが知っているといっても過言ではないでしょう。しかし、その歴史と現状について詳しく調べると、意外な事実が見えてきます。
大阪城の魅力的な特徴
1. 豊臣秀吉と徳川家康、二人の天下人が築いた歴史
大阪城は、豊臣秀吉が1583年に築城を始めた歴史的に重要な城です。秀吉はここを拠点に全国統一を成し遂げました。その後、大坂の陣で豊臣家は滅亡しますが、徳川家康が城を再建。日本の歴史を変えた二人の天下人が関わった稀有な城という点で、特別な価値を持っています[1][10]
2. 石垣の壮大さと技術力
大阪城の石垣は、日本城郭建築の最高傑作のひとつです。特に「化粧石垣」と呼ばれる外側の石垣には、巨大な石材が使用されています。
最大の石は「蛸石(たこいし)」と呼ばれる巨石で、高さ約5.5m、幅約11.7m、重さ約108トンです。また、「刻印石」と呼ばれる、各地の大名の家紋や印が刻まれた石も見どころのひとつです[2]。
これらの巨石をどうやって運び、積み上げたのかという点は、現代の私たちにとっても驚くべき技術力を示しています。
3. 広大な城域と四季折々の美しさ
大阪城公園の広さは約106ヘクタール(東京ドーム約23個分)という広大な敷地に、天守閣だけでなく、西の丸庭園や梅林、桜の名所など、季節ごとの自然を楽しめるスポットが点在しています。
特に春の桜と秋の紅葉は絶景で、約3,000本の桜は大阪を代表する花見スポットとなっています[3]。
大阪城の残念すぎる特徴
1. 現在の天守閣は昭和の再建建物
多くの人が知らないことですが、現在の大阪城天守閣は歴史的建造物ではありません。1931年(昭和6年)に、大阪の実業家・藤田謙一氏の寄付金をもとに再建されたコンクリート製の建物です[4]。
外観は江戸時代の姿を模していますが、当時の正確な設計図が残っていなかったため、歴史的な正確性については議論があります。つまり、私たちが「大阪城」として知っている建物は、歴史的に見れば「復元建物」なのです。
2. 内部は近代的な博物館施設
大阪城天守の内部は、エレベーターが設置された近代的な博物館となっています。バリアフリーに配慮された設計は現代の観光施設として優れていますが、歴史的な城の雰囲気を期待して訪れる人にとっては、少々意外に感じるかもしれません[5]。

実際の江戸時代の天守内部がどのようなものだったかを体験することはできず、展示物を通じて歴史を学ぶ場となっています。
3. 豊臣時代の遺構はほとんど残っていない
大阪城は、その歴史の中で何度も破壊と再建を繰り返してきました。豊臣秀吉が建てた当初の大坂城は、大坂冬の陣・夏の陣(1614-1615年)で破壊され、その後徳川家によって再建されました。
しかし、その徳川時代の城も1868年の兵火で焼失。現在、豊臣時代の遺構としては一部の石垣のみが残っており、徳川時代のものも、わずかな櫓(やぐら)や門だけとなっています[6]。
4. 史跡と現代的利用の両立による歴史的雰囲気の希薄化
大阪城公園内には近年、「JO-TERRACE OSAKA」をはじめとする商業施設が増えています。観光客の利便性を高める一方で、史跡としての雰囲気を損なっているという指摘もあります[7]。
また、大阪城ホールなどの近代的施設も城内にあり、純粋な歴史空間というよりは、現代的な都市公園としての性格が強くなっています。
5. 本丸跡の活用方法
かつての本丸があった場所には、現在大阪城ホールが建っています。本丸とは城の中で最も重要な中心部分であり、その歴史的に重要な場所に大規模なコンサートホールが建設されている点は、歴史保存の観点からは議論の余地があります[8]。
大阪城の価値を再考する
ここまで大阪城の「残念」な特徴を挙げてきましたが、それは価値がないということではありません。むしろ、大阪城は日本の近代化の歩みを象徴する貴重な例と言えるでしょう。
明治時代に軍事施設となり、昭和初期に市民の寄付で再建され、戦争を経て現在に至る大阪城の姿は、日本の近現代史そのものです。現在の天守は、築城から90年以上が経過し、それ自体が昭和の文化財としての価値を持ち始めています[9]。
また、石垣や堀といった遺構は実際に歴史的なものが残っており、それらは国の重要文化財に指定されています。
まとめ:歴史を知ることで深まる大阪城の魅力
大阪城の「残念」な特徴を知ることは、かえって日本の城郭や文化財に対する理解を深めるきっかけになります。
現代的な建物であるからこそ、多くの人が快適に見学できる場所になっているという利点もあります。本物の歴史的建造物であれば、保存の観点から制限が多くなるでしょう。
大切なのは、大阪城の本当の姿を知った上で訪れること。「豊臣秀吉の城を見る」という期待ではなく、「日本の歴史とともに変化してきた象徴的な空間を体験する」という視点で訪れれば、より深い発見があるはずです。
次回は、また別の「残念すぎる名城」をご紹介します。お楽しみに!
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参考文献一覧
[1]: 『大阪城の歴史』大阪市立大阪城天守閣、2018年、ISBN:978-4-9908855-1-2
[2]: 『城の石垣と石工』千田嘉博、2012年、ISBN:978-4-642-08025-1
[3]: 大阪観光局公式サイト https://osaka-info.jp/
[4]: 『昭和の大阪城再建』大阪城天守閣、2011年、ISBN:978-4-9903598-4-5
[5]: 大阪城天守閣公式サイト https://www.osakacastle.net/
[6]: 『発掘された大坂城』松尾信裕、2008年、ISBN:978-4-642-06499-3
[7]: 『観光と文化財保存の両立』文化庁文化財部、2019年
[8]: 『都市公園における歴史的遺産の活用』日本造園学会誌、2015年、第78巻
[9]: 『昭和建築の文化的価値』建築学会論文集、2020年、第85巻
[10] :『大阪城(大阪市中央区)の登城の前に知っておきたい歴史・地理・文化ガイド 』
https://note.com/digitaljokers/n/n84c50ef9c077