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ラカと私の馬場日記 ~虚無虚無プリン~  2024.9.24

 ラカが通っている施設の名称を入れて検索すると、「○○区の障害者向けサービス&支援組織」と出てくる。そうだね、あそこは隣の区だ。
 今まで、何と言えばいいのか(特に相手が他人の場合)これと言った呼び方が定まらず、そのつど「リワークセンター」とか「支援施設」「訓練施設」とか適当に言っていた。「就労支援センター」が妥当? センターって言うほどの規模じゃないな。サイトの説明文には「自立」という言葉がよく使われてるけど、「自立支援」って言っちゃうのも大仰か? なんかどれも、しっくりこない。結局、単純に「施設」でいっか。

 ↑ こういうのを「下手の考え休むに似たり」って言うんだよね。
 
 施設で受講する午前と午後のプログラムの間には1時間の休憩しかない。家に帰って昼食を食べる場合は往復の時間をさっぴいて正味40分ほど、受講後に施設の人と話したりすればもっと短くなる。なのに、ラカは、この夏の炎天下においても帰宅することが多かった。
 施設との往復で、ジグロがますますいい色になった。運動しないと眠れないってことでジムに行き始めるとすぐに筋肉質になった。頭のてっぺんは抜毛でアホ毛が目立っているので、ちょっとおバカそうで元気な人にしか見えない。

 今日もラカは施設から帰ってきて、私が用意した(高円寺で買って来た)お昼を一緒に食べた。今日はビックリするほど涼しいからね。

 「アドバンス、もう終わるんだけどさ、キレやすいの治らなかったわ~」
そっか、ちゃんと自覚はあるんだ。うん、同感しかないよ。
「え、もう終わりなの?」
「うん、明日のアサーションで終わり。キレやすいのも含め、ありのままの自分を認めていこう、っていう、まあ鬱から回復するための訓練だしね。イヤなことがあればため込まず、我慢せずに出していこうって。だから、上司に対してすぐ腹が立ってた頃と何も変わってない」
うん、上級コースになれば内容変わってくるのかなと期待してたけど、結局はずっとそういう内容だったよね。これはまずいな~って思ってたよ。

 私は、ラカが言葉にしたこと、それだけを鵜呑みにして腹を立てたり不安になったりしてはいけない。
 自分は何も変わってない。それで良い、とはラカも思ってないのだ。それで良いとは思ってないからこそ、果たして本当に復職できるのか、復職して仕事を続けることができるのか、不安なのだ。
 ラカが言葉にしたのは「自分は変わらなかった」という現状認識。だけど、言葉にしなかった「変わらなかったので今後が心配」という不安の方がメイン。そういうこと理解してあげるのが私の仕事。

 なるほど、だからか。今朝だっけ、言ってたの。
「昨日ずっと漫画を描いてて、やっぱり思った、これで生きていくのがいいって。ありがたいことに、ラカにはアイディアも描くスキルもある。とりあえず復職はすべきだけど、もしダメだったら、これがあるって思えた」

 大丈夫だよ、私もわかってきたから。
占いなんて信じたくないけど、赤ん坊のラカを占った人はこう言った。「親が望むレールを歩かせようとしたり、普通の人と同じような人生を期待してはいけません」って。
 たぶん占いの通りになるんだね。ラカは親が望むようにはならないし、普通の人とは違う生き方をするんだ。
 
 わかってきた、ようやくね。何がどうであれ、ラカが幸せなのがいちばんだと。
 考えてみれば、めちゃくちゃ当たり前のことなんだけど。

 「わざわざ帰ってくるのメンドイやろうに、今日もまた帰ってきて、うちでゴハン食べて可愛いね!」
「ラカは可愛いでしゅ♪ ……昨日はずっとママがいなくて、淋しかった」
「え、そうなん?」
「うん、一人でやることもなく、ここにずっと黙って座ってた…」
「えええ? ずっと漫画描いてたんちゃうの?」
「ここに座って虚無… 虚無虚無プリンになってた(笑) やばいと思って、漫画描き始めた」
「そうやったんか~。……ごめん、もっと早く帰ってくればよかったね」

 施設でやってる課題のワークシート、ラカは自分の部屋の机に広げていることも多い。別段、隠そうという気もない。どんなことをやっているのだろう?と何度か見たことがある。
 「嫌な気持になったこと」として「母がしょっちゅう退屈と言ってくる」、「それに対してどう思ったか」の欄には「自分で何かしろよと思った」と書いてあった。
 私は、もう二度とラカのいるところで「退屈」という言葉を発しないと決めた。自分一人でやることを増やして積極的に動いた。ソフィアとの出会いも、そうした一連の動きの中で自分で「取りに行った」こと。偶然とか幸運とかではない。

 昨日は、数学の世界への旅先案内人であるAさんの「無限の話」で超絶面白い体験をして、そのあと、きのこガールであるYちゃんを誘ってモスバーガー食べながら長話して、すっかり夜になって帰ってきたから、ラカはもう「チョコ雑費」(ジム)に出かけたあとだった。
 「その調子で、これからもどんどん新しい息子、娘を作るといい」って上から目線で言ってたけど、まさか一人で淋しく感じてたなんて。
 
 わかったよ。
ラカが心から本当に「ママの助けは要らない」と思えるまでは、誰が何と言おうと(ラカ自身が何と言おうと)、私はできるだけそばにいて、できることをやるよ、ラカの自立に有効だと思うことは何でも。「ただそばにいるだけ」ってことも。
 もちろん、自分自身の自立についても、しっかり見据えながら。
 「自立」とは「依存しないこと」ではない。依存先を増やすことである。お互いの依存先の一つとして、ラカは「ママ」、ママは「ラカ」ってある方がいい。
 だから、これからもどうぞよろしくね。


 夕食の相談をしていたら、息子からLINE。

    帰国しやした
    一旦帰ろっかな

 息子の要望で回転寿司を食べに行くことになった。つい先日、一昨日だったか、ラカと行ったばかりだけど。
「久しぶりに日本帰ってきてスシ食べたいのめっちゃわかる~~!」
ラカ大喜び。ラカは回転寿司が大好きだ。
 馬場には回転寿司が何店舗もあって、私たちのお気に入りは3店舗。同じ日に2店舗ハシゴしたこともある。これも馬場生活の恩恵。

 その後ずっとラカは、なぜか「英語しか言っちゃいけない縛り」で、一人でずっと休みなく喋ってる。ほんとワケわからん。店でも帰宅後もお風呂でもずっと中学生レベルの英語喋って、お風呂上がった今も、マッパで体に化粧水を塗りながらまだ言ってる。ラカはマッパでいるのが好きだ。
 なぜか「インド人訛りをまねした英語」で、とにかく絶え間なく喋ってるからウザい。息子が「やめろ」とキレたら、「私の弟はすぐキレる」とインド人訛りをまねした英語で言って、また弟にキレられた(笑)。

 息子がお風呂から上がってきた。「あら、早いね」と言ったら、「いや、キミたちがアレやろ、長アレ」
 帰国後すぐで「長風呂」という単語が出てこないのだと思い、「うわ、日本語が出てこなくなってる~」と茶化したら、「いや、いつもの○○(息子の名前)だよ」とラカ。確かに(笑)

 ラカと私の馬場日記、ときどき○○

       まだまだ続く…  続くったら続く。

 
 
 

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