nagi_okazu

大学生、20歳です。 自作の小説を投稿していきます。

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最近の記事

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「アルケミスト」ーあるいは、愛の恣意性について(エッセイ)

あなたにとっての理想の恋愛とは何でしょうか? まだまだ20年しか生きていない私ですが、ここ数年の恋愛観の多様化と、出会いの合理化には目を見張るものがあると感じております。特にマッチングアプリの進化とその受容は、旧来の恋愛の在り方を大きく変えており、アルゴリズムによって計算された出会いは2人の高相性を導きます。 しかし、アルゴリズムによる巡り合わせは、必然的に運命性や恣意性といった不確定要素を排除します。勿論長い人生を共に歩んでいく2人にとって、その相性の良さや恋愛観の合致

    • 【エッセイ】「国民」とは誰か(衆院選を終えて)

       石破政権の発足と衆議院の解散に伴い、2024年10/27投開票日の衆議院選挙が行われた。結果はみなさんご存じの通り、自民の失墜、比して反・自民を叫び続けた立憲民主の飛躍、公明や共産が議席を減らした一方で国民民主、れいわ等の野党が力をつけるなど、与党が過半数に及ばない、まさに群雄割拠の選挙戦となった。来る首班指名選挙に向けて政治への関心が高まる中で、今回の選挙戦を経て私自身が感じたことを少し言葉にしてまとめておきたいと思う。  まず、私はこの記事で現在の政界の勢力図について

      • 【短編小説】大きいということ

         真太の家の近くの丘に、白い大きな円柱形の建物があった。それは煙突のようであったが、誤って天に向かって伸ばしてしまったトンネルと言った方が適切な形容かもしれなかった。          とにかく、真太は幼いころからその巨大な建造物に慣れ親しんでいた。真太が小学生だったころは、学校が終わると毎日その建造物の下に行き、日が暮れるまで傍の原っぱで寝っ転がって上を見上げていた。そして、その天に向かうトンネルがどこまで高く続いているのだろうかと思案するのだった。当時「東京スカイツリー」

        • 続・津軽日記(1)

          太宰治「津軽」巡業(2024/9/25-9/27) 太宰治の小説「津軽」をもとに青森・津軽をめぐった2泊3日の旅。 その旅の軌跡をささやかながら記したいと思います。 9月24日 22:10東京駅発の夜行バスに乗って青森県・弘前市へ。 大学生にとっての1番の悩みの種は、いつの時代もお金。我々一行も当然極貧生活を送っており、いかに交通費を抑えるか検討した結果、深夜発の夜行バスで向かうことに。なかなか眠りにつけなくて、ようやく寝るコツを掴みかけて来た矢先、バスが岩手県のSAに到

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        「アルケミスト」ーあるいは、愛の恣意性について(エッセイ)

          部屋を片付ける(短編小説)

          便利屋に対しては、実に様々な仕事が依頼される。基本的に依頼主は体力的に力仕事が難しい高齢者であることが多いが、どうしても人手が足りないときの助っ人としてあらゆる年代から仕事を申し込まれる。その主な仕事内容は、特に夏場に限っていえば、庭や所有地の草刈りや手入れが多かったが、遺品の整理やごみ屋敷の片づけ、電球の交換などは季節を問わず一年を通して依頼を受けた。稀に「言うことを聞かない息子をビビらしてほしい」、「一時間体を嘗め回したい」といった特殊な依頼を受けることもある(流石に後者

          部屋を片付ける(短編小説)

          秋の訪れ

          9月上旬、夜半が先行して秋めいて来たと思ったら、この頃は日中も秋の風が吹き始めてきました。今日は秋に関してちょっとだけ今の気持ちを綴ろうと思います。 皆さんは秋と言ったら何を思い浮かべますか? 秋の食べ物は?秋のコーデは?秋の音楽は?秋の小説は? 私の場合、秋と言ったら何故か「村上春樹」の名が浮かびます。多分初めて「ノルウェーの森」を読んだのがたまたま秋で、秋の心地良さと、その小説がとても合致していたので印象に残ってるんだと思います。 あるいは、私と同じように「ノルウェ

          ハロウィンと学園祭

          朝、いつものようにお湯を沸かしてコーヒーを作っている間、ぼんやりとテレビのニュース番組を眺めていた。そこでは女性アナウンサーが今年の一押しの仮装グッズを紹介していて、スタジオにいた2,3人のアナウンサーやコメンテーターがそれを着こなしていた。暦の上で、今日はハロウィンだった。キッチンの小窓から見える隣家の庭のテーブルの上にはキャンドルやジャック・オー・ランタンが置かれていて、道路沿いに並べられた紅葉の木は、その日を彩るかのように鮮やかなオレンジ色を呈していた。翻って、それに比

          ハロウィンと学園祭

          バス停にて

          雨の降る日のバス停で自分の乗るべきバスを待っているとき、私はいつもあの頃、そしてあの人を思い出す。その時私は高校二年生で、十七歳だった。その人はある日突然姿を現し、そして、突然姿を消した。彼女を初めて見たのはその年の五月のことで、私はいつものように通学のためにバスを待っていた。その日は早くから雨が降り注いだ、静かな朝だった。彼女はバス停のベンチに腰掛け、一人本を読んでいた。第一印象をはっきりとは覚えていない。というのも、バス停のベンチで本を読むこと自体特別なことではないし、特

          バス停にて

          梅雨

          梅雨というのは不思議な季節だ。雨が続いて憂鬱だと思ったら、急に晴れが来て、鬱憤を晴らすかのように暑くなる。三雨四晴。こんな言葉があってもいいんじゃないかな。でも、基本的に私は梅雨が嫌いだ。単純にじめじめしてじれったいし、洗濯物も干せない。パンやバナナはすぐ腐るし、虫だって湧いてくる。だから、あまり好きではない。毎年この時期になると、来る夏の情景を思い浮かべながら、何とかこの季節を凌いでいる。 しかし、こんな私でも少し梅雨を見直すような、そして、ちょっぴり好きになるような出来事

          夏の音

          私の生家はとある細い川のすぐそばにあり、その川を隔てた向かい側に古びた日本家屋が一軒、ぽつんとあった。地図で見ればそれは隣家と言えるだろうが、その川を渡るための橋は家から300メートル先にあったので、普段からそれほど活発に交流があったわけではなかった。しかし、辺境の田舎の二階の部屋から見える景色というのは、私が幼いころから、ただその家一つであったので、物心ついた時から私はその家にそれなりの親しみを感じていた。 その家には老母が一人住んでいて、他に同居している者はなかった。晴れ

          アメノツカイ

          体長のわりに赤い大きなくちばしを携えた小鳥が、そっと目の前の小さな水たまりの上に舞い降りた。全身が鮮やかなオレンジ色に配されていて、細い二本の脚が水たまりの上に降り立ったとき、わずかな波紋がその水の上に起こった。アカショウビンだ、と反射的に感じた。初夏になると南国からやってきて、夏が過ぎると去っていく鳥。僕は公園のベンチに腰掛けていて、アカショウビンは昨夜の通り雨が残した水たまりの上に佇んでいる。 ふと、一夏昔、この火の鳥を求めて森の中を歩き回った記憶が蘇った。僕の隣には

          アメノツカイ

          三角帽子の魚屋さん

          三角帽子の魚屋さん それは何の前触れも脈絡も前兆もなく、突然起こった出来事だった。妹が突如として押し入れの中に引きこもってしまったのである。それを知っていたのは僕だけだった。両親は、初めのうちは妹の不在に気づいていなかったが、昼過ぎになるとようやく妹がいなくなったことを認識した。母は妹の名前を呼びながら家じゅうを探し回り、返事のないことを悟ると、やがて友達の家庭や学校に電話をかけ始めた。父は翻って冷静だったが、時間の経過とともに焦りが垣間見え、やがてパソコンをひっきりなしに

          三角帽子の魚屋さん

          はじめまして

          この度noteのアカウントを開設することになりました!まだまだ使い方もよく分からないですが、ちょくちょく自分の創作物を共有出来たらなと思います!

          はじめまして