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〜リスク管理の戦略〜 バランスと対策

中小企業の経営戦略において、リスクとチャンスは欠かせない要素です。
急変する市場において事業を継続するには、リスクを冷静に評価し、チャンスを見極める力が重要です。最新の事例と具体的な手法を交えつつ、中小企業の戦略的経営について考えます。

企業はリスクを適切に管理し、事業に与える影響を最小限に抑えるべく戦略を練り一定の基準を周知させなければなりません。
過度なリスクテイクは企業に重大な損失を与える可能性を内在しており、事業の方向性を誤ると、それはリスクテイクと言うよりは「ギャンブル」に近いものになってしまいます。企業価値に損失を与える可能性のあるリスクに対して事前に対策を取っておくことの重要性を認識すべきです。
では如何にしてリスク対策を実施していくのか考えていきましょう。
以下に、リスク管理戦略の要点と具体的な実例を紹介します。

中小企業の社長に期待される資質は多岐にわたりますが、特に「人を引き付ける魅力」はリーダーシップの中心的な要素です。以下に、社長に期待されるいくつかの資質を述べます。



■リスクの理解と分析

リスク管理の第一歩は、リスクを理解し、分析することです。事業が今どのようなリスクにさらされているかを明確に把握します。これには、内部および外部の要因を評価することが含まれます。例えば、競合他社の動向、市場の変化、法的規制の変更、技術の進化などが考えられます。

■リスクの優先順位付け

全てのリスクが同じ重要度を持つわけではありません。
リスクを優先順位付けし、影響度と発生確率を評価します。これにより、対処すべきリスクに集中できます。たとえば、市場変動によるリスクは高い影響度を持つ可能性があり、優先的に対策を講じるべきです。

■ リスクの分散

リスクを分散させることは重要です。1つのリスクに依存しないように、事業を多様化させましょう。例えば、異なる市場セグメントや製品ラインを開発し、より幅広く事業を展開することにより、特定のリスクに対する依存度が低下し、影響を最小限に抑えることができます。

■リスク対策の計画立案

リスクに対処するための計画を立てることが不可欠です。具体的なリスクに対する対処法や施策を明確にし、それに従って行動します。
たとえば、為替リスクを軽減するためにヘッジ戦略を採用する、災害リスクに備えて事業継続計画を策定するなどが考えられます。

■リスクモニタリングと調整

リスク管理は一度だけで終わるものではありません。定期的にリスクの状況をモニタリングし、必要に応じて調整を行いましょう。市場や環境の変化に適応するための柔軟性が重要です。たとえば、新たなリスクが浮上した場合には、迅速に対策を講じることが求められます。

■保険の活用

リスクを最小限に抑えるために保険を活用することも考えるべきです。事業に関連するリスクに対する適切な保険ポリシーを検討し、必要に応じて購入します。これにより、予期せぬ損失をカバーし、事業の安定性・継続性を担保することができます。

■リーダーシップと文化の醸成

リスク管理は組織全体の文化とリーダーシップに関連しています。組織内でリスク意識を高め、リーダーがリーダーシップを発揮してリスク管理を推進することが重要です。従業員がリスクを認識し、適切に対処できるよう研修とトレーニングを提供することも不可欠です。
また新たに発生したリスクに対しての対処法として「ホウレンソウ・報告・連絡・相談」を主とした素早い情報の共有(情報の伝達)とリーダーによる初期対応がリスクヘッジのために最も重要なことであると認識せねばなりません。

■新規事業の推進

ある市場での依存度が高い場合、既存事業は先行き長年にわたり収益の柱となり得ると考えたいところですが、そこには大きなリスクが内在しています。
既存事業は「必ず近い将来衰退する」と頭に置き、新しい市場への進出を検討します。新市場での収益が既存市場の減少を補うことができる可能性があります。

既存事業・新規事業の売上推移イメージ

■供給リスク対策

部品供給チェーンのリスクを軽減するため、複数のサプライヤーとの契約締結が必要です。最近は個々の取引先の事情に加え、自然災害やパンデミックによる環境的リスク、他国のテロや世情不安などによる地政学的リスク、経済危機や原料の価格変動による経済的リスクなど様々なリスクがあります。これらのリスクをあらかじめ予見しておくことが重要です。したがって単一のサプライヤーに依存しないようにすることで、供給の安定性を確保しています。

■技術リスク対策

競合他社による技術革新や新製品の開発は、ある日突然当社の事業継続に大きな影響を与えることが有ります。
例えば、技術面のリスク対策として以下を実践します。
(技術研究開発)
継続的な技術研究と開発を行っています。新しい技術や製造プロセスの導入により、リスク低減を図っています。
(品質管理の徹底)
製品の品質管理と検査体制を確立しています。製品の不良率を低く抑えることで、技術リスクを軽減しています。
(社員教育)
従業員に対して、技術スキルの向上と継承を目的とした訓練を定期的に実施しています。技術の変化に対応するには、従業員のスキルを向上させることが再重要だと考えています。
(BCPの策定)
BCP(事業継続計画)を策定し、システムやデータのバックアップを定期的に行い、技術的な障害や災害が発生した場合でも、迅速に復旧できる体制を整えています。

■法的規制リスク対策

法的規制の変更に備えて、以下の対策を講じます。
・ 企業内に法令遵守部門を設け、法律や規制の変更を常に把握し、社内共有を行い、変更に対応する体制を整える。
・ 弁護士や税理士など、専門家の相談窓口を確立、専門的な視点からリスクを把握し、対策を立てる。
・ 法的規制リスクに対する理解を深めるために、社員向けの定期的な教育・研修を行い、リスクへの対応力を高める。

■まとめ

このようにして企業の存続の為、あらゆるリスクに対して的確・迅速な対応が求められています。もう一つ大切なことは、中小企業の社長さんが本気で自社のリスクについて理解し・対応出来ているかということです。
事業の継続において考慮しておくべきリスクは数多くあり、その一つ一つを吟味し優先順位と重要度の把握を継続的に行うべきです。
また、従業員との情報共有を経て、優先順位の低いものには、危険性を把握した上でのリスクテイク(リスクマネジメント)も決断していくべきことであると言えます。
日頃よりリスクに対する予防策を検討・実行して参りましょう。
{参考文献}サプライチェーンリスクと危機からの復旧 (経済産業省)