なぜ弁護士は拘束されてまで法廷録音を試みようとするのか(懲戒請求調査にて中道弁護士の口頭弁明)
・一般市民からの懲戒請求により調査へ
大阪弁護士会に所属する中道一政弁護士に対し、「制裁裁判」と「公用文書毀棄(公判中)」を理由に一般の市民から懲戒処分を求める懲戒請求があり、令和6年11月6日、大阪弁護士会館1110号室において、15時~16時の期日で綱紀委員会による調査期日が公開で実施されました
弁護士会館上階の東南角に位置する見晴らしの良い部屋では、半透明のロールスクリーンが下ろされ、前方中央位置に中道弁護士が、2名の綱紀委員会主査委員と向かい合う形で代理人を付けず一人で着席。前方を向いた中道弁護士の背中を見る形で、傍聴者のテーブルと椅子が設けられていました
今回もSNS「X」で以下のように懲戒請求の調査期日を拡散されていたので、弁護士や報道記者、私を含め普段の中道弁護士の法廷を傍聴する数名の方が傍聴に訪れていました
「信用や品位」を害する行為が対象
弁護士の懲戒請求の対象は「弁護士の信用や品位を害する行為など」。弁護士等に会則に違反する行為があったと考える際に、所属弁護士会に懲戒処分を求めることで、弁護士でなくても請求することができます。その制度を利用して、一般の方からの懲戒請求が大阪弁護士会に届き、その審査期日が設けられた、という流れ。中道弁護士は口頭で以下の弁明を行いました。尚、弁護士会館では録音可能なため、録音を元に弁明を書き起こしております。それでは以下、法廷録音申請がもたらした「制裁裁判」に至るまでの中道弁護士の弁明です
ケース1. 最初は精神障害のある被告人の客観証拠として
私がここで申し上げたいのは、「法廷録音の必要性が弁護活動上あった」と考えていたことに加え、「法廷録音を認めない裁判所の対応も不誠実ではないか」ということ。そもそも「法廷録音を許可しない」という結論はおっしゃるが、その理由は一切お答えいただいていません
それともう一つ。「せめてそれなら裁判所の録音を開示することはあり得るのでは」と申し上げて、裁判所の録音を聞かせてもらうと言うことも、法廷内で述べています。それについても裁判所は「裁判所が記録を作るための補助道具にすぎず、それを開示することはない」と私に回答していた
訴訟指揮に不服申立て、その送付中に国選解任
裁判所は本当に客観的に不服申し立てをするというファックス連絡をする前に国選弁護人を解任していたかもしれないが、電話の保留状態が長かったので、「電話を保留しながら実は国選弁護人解任を速やかに進めたのではないかな」と、疑念を持たざる得ないケースだった
ケース2. 不審感から反省踏まえ2回目申請
1回目の法廷録音で不服申立てをすることもなく国選弁護人を解任する流れになってしまった、という反省を踏まえ2回目の法廷録音申請をする
ここで強調したい点は、2回目の法廷録音申請のときに作られている公判調書が「私の発言の全体でなく部分しか拾ってないのではないか」ということ。私はこのとき録音を実施しながら公判を迎えていたので、正確に公判調書記載の正確性に対する異議申立て書を作ったつもり。例えば、裁判所の方が作った記録によると、私は法廷の中で「録音許可しない訴訟指揮に対して不服申立てをします」と申し上げていて、それに関する議論になった
公判調書の発言が切り取られてる!?
しかし、裁判所の公判調書によると、「私が判断に従う可能性がある」という発言は一切記載されず、むしろ私が「判断に従わない」という方向の発言だけが調書に取られていて、私を国選弁護人から解任できる方向の積極事実しか記載していない公判調書になっていた
本当は法廷録音に取り組んだ動機は、精神障害のある方についての診断の客観性の高い資料を得たいところにあったが、法廷録音に取り組むに当たって、(裁判所は)法廷録音を実施しようとする私がけむたいのかわからないが、残されている公判調書からすると、私を国選弁護人から解任したい方向の事実だけで作っている。「不審だな」と思うこともあって、その後も法廷録音にこだわるというところになっている
このようなことがあったので、法廷録音の必要性は否定しがたいと考えながら、12月中に他に2件法廷録音の申立てをし、不許可となり、理由は教えていただけない。裁判所の録音を聞かせて欲しいと言っても、議論に応じていただけない。というケースに巡り会ってきた
私も、「裁判所の訴訟指揮に従わないだけ」と裁判所に思われるのも違うかなと思って、他のケースで次のような対応をしてることも申し上げたい
ケース3. 私の言葉をしっかり拾ってくれた裁判体も
この事件の公判調書は私が申し上げたことを、私を国選弁護人から解任する方向の事実も丁寧に拾ってくださってるが、逆に私がそうではない、「不服申立ての判断に『例え録音を許可しないという内容であっても、判断の内容に納得できるものがあれば、それに従います』」という発言部分もしっかり拾ってくれていた
この裁判体は私の法廷活動に対して、結論としては異なる見解を持っておられるけれど、私の発言をしっかり拾い、法廷録音のそもそもの許容性、法廷録音に変わる裁判所の録音を聞かせてもらえることの妥当性について、今後の人達がしっかりと客観的事実に基づいて判断できる、こういう資料自体を残してくださっていることは、とても素敵なことだと思って、公判調書の内容を確認した後、こちらの録音データは削除して、その削除の報告書を提出している
ケース4. 私選弁護人で挑み、制裁裁判の予兆
こういった法廷録音に関する前提の流れがあって、「制裁裁判」を迎える。いままでは国選弁護人として受任したケース。法廷録音を続行し続けると解任されてしまうという事態があることを経験して分かっていた。なので、解任される手前までの法廷録音の活動に取り組んでいたが、こちらは私選として弁護人に選任していただいたケース。被告人も法廷録音はなされるべきもの、とお考えの方。実際にそのケースの裁判の後半には、ご本人署名での法廷録音許可申請もしている。制裁裁判を受けたのは第二回公判だが、第一回目公判から非常にシビアなやり取りをしていたケース
不許可の理由を述べるかどうかは裁判所の判断!?
この裁判官は、前に申し上げたある一つの国選弁護人で担当した裁判官と同じ裁判官。非常に最初からしっかり構えてくださってたのか、第1回公判調書が詳しく書かれているので、こんなやりとりががあったということを強調させていただく
理由を述べることを法律上禁止されていない、可能なはずなことをしっかりしていただけないことは、納得できないポイントの一つ
ケース5. 制裁裁判、裁判所の録音はされていなかった
裁判官のまずいと思われる発言は記載なし
私はこれは、弁護人なしで刑事裁判を進めるのは、必要的弁護事件でなくても、ほぼほぼ裁判所で行われていないことなのに、このような脅しのような発言をされる方なんだな、とちょっと思う
裁判官ご自身もその発言がまずいとわかっていて、公判調書に記載していないのではないかなと思ったりもする
裁判所にとって不都合なことは記録しないが、私にとって都合の悪いことは記録する。こういう経験をしたと考えていて、やはり裁判所で行われていることは、客観性の高い証拠に基づいて記録化しておく必要性が高いのではないか、このように感じていた
・状況一変、録音を聞かせてもらえる通達発覚
「制裁裁判」受けたケースは、実はその後いろいろなこと試みて、裁判所の録音を聞かせてもらえることになった。ただ、いわゆる手続き部分は対象外。対象は被告人質問や証人尋問の期日の録音データを聞かせてもらえることになった。いろいろな方からご意見をいただいて、「実は裁判所内で録音反訳方式で録音した場合、その録音を弁護人に聞かせることができる」という通達がでていることを教えていただいて、その通達を裁判所に見せて裁判所の態度が変わった、ということを経験した
そのような通達があることを私も知らなかっただけでなく、裁判所も知らなかったと思われる訴訟指揮だった。この裁判体のみならず、他の裁判体でも、「裁判所は自分たちの法廷を録音させることはできないと根拠なく信じていた」と考えざるを得ない。あるいは、根拠無く裁判所の録音を開示できない、と言っていると考えざるを得ない
双方が暴走した結果の制裁裁判!?
私自身がやりすぎた点があるかもしれないが、もし裁判所がもっと早い段階で適切にこういう通達があることを教えてくださっていれば、(法廷録音許可申請を)いくつもの裁判体で実施していますので、どこかで気づけなかったのかな。どこかの裁判所で教えてもらえなかったのかな。という気持ちもないわけではない
私にも、「裁判所で録音できるべき、聞かせるべきである」との考え方が先走り、いろいろなことをしてしまった一面がある、という反省点は有る。ただ裁判所も「録音はさせない」「録音を聞かせない」と、同じように双方が根拠無く活動してしまっていた、双方がそうだったということで招かれた「制裁裁判」だったと自己で振り返って理解している
付け加えて、憲法違反の主張も
そもそも裁判所が持っている録音を私たちに聞かせてくれないこと、あるいは私たちが裁判所の法廷で録音できないことは、憲法が定めている裁判の公開の原則、訴訟当事者としての録音であれば、憲法32条で定める裁判を受ける権利、あるいは「裁判を適正に進めて頂くための意見を言う前提としての証拠を確保する」という意味では、憲法第31条適正手続きの保障、これらの規定に、裁判所の頑なな録音に対する拒否的な運用は、憲法上の規定に違反しているのではないか、という観点もこのたび申し上げたいなと思っている
・【質疑応答】複雑で主査委員もちょっと困惑
「『公用文書毀棄』も懲戒請求の対象にされているが、別件で取り扱ってる記録を引用することで、私としては申し上げることはありません」と、弁明を終えました。そして最後に綱紀委員会主査委員から数点確認
・裁判所みたいなことおっしゃらずに・・・
「それでは本日の審尋は以上で・・・」と終わりかけたところで、綱紀委員会の主査委員に対して「質問してほしいな・・・」と意見を求める中道弁護士。対して主査委員は「客観的資料がたくさんあるから、特に聞くことはない」と素っ気ないお返事。「どんなお考えか聞いてみたいな」と思い切ってストレートに尋ねますが、主査委員は「議決案で書くだけだから」。そこで「裁判所みたいなことをおっしゃらずに・・・」と不安そうな中道弁護士を尻目に、「我々は担当してる主査。決めるのは綱紀委員会」ときっぱり。「いち弁護士がどのような考えか聞いてみたいな」、という再度の哀願にも「差し控えます」と、弁護士同士腹を割っての会話まではできないようでした
弁護人としてどうやって不公正に立ち向かって行くのか
最後に中道弁護士から追加で一言。大阪家裁から懲戒請求されているケースと本件はまぁまぁ質的に違うと申し上げておきたい。大阪家裁のケースは「非公開の少年審判について録音する」という批判的な意見は知っている。ただ今回は公開されている法廷での記録の取り方。裁判所が作っている記録に対して「一弁護人として、どうやってその記録が不公正な時に立ち向かって行くのか」という論点も含んでいるので、その点は考慮していただきたい
・え、懲戒請求された方って来てないの!?
「なんで書面ではないのか」と主査委員さんがポロッと素朴な疑問。対し中道弁護士が、「(懲戒請求された)一般の人がもし来られたらと思って」と、意外な回答。懲戒請求された方が一般であったことを考慮して、小難しい書面でなく、わかりやすい口頭で弁明されたようです。ですが、懲戒請求された当のご本人はいらっしゃってない!? ようで、中道弁護士は「話し合いたいが、来られないのではしょうがないな」とつぶやいてらっしゃいました
時間にして45分ほど中道弁護士お一人で話し、予定時間より早く終了しました。今後綱紀委員会で懲戒処分に値するかどうか、審査されるそうです
・ところでこれって懲戒請求された方に届いてるの?
今回の調査期日は公開された場でしたが、そもそも今回の弁明、懲戒請求した方の耳に届くのでしょうか? ウェブの検索画面に「中道一政」と入力すると、「中道一政やばい」と予測変換され、小学生の私の子どもにも心配される中道弁護士。至極まっとうな意見を持ち、段階を踏んで行動されていることを、世間一般に理解される日は来るんでしょうか?
・中道弁護士おっかけ傍聴人の恩返し
今回の調査期日を傍聴して私は、懲戒請求された方へこの弁明が届くよう、そして法廷録音の経緯をご存じない方に知っていただけるよう、記事にして弁明部分を無償公開することにしました。無償のボランティアで! だからと言って、中道弁護士に都合の良い部分だけを切り取って書いているわけではありません(調書じゃあるまいし!)。ありのままを書き起こしていますのを、ご理解ください。今まで良い法廷を傍聴させてくださった中道弁護士へ、感謝の気持ちを込めて御礼です!!
そしてここまで読んでくださった方へ。多くの方の目にこの記事が触れるよう、「♡ボタン(スキ)」をクリックしていただけたらうれしいです
どうか多くの方に届きますように!
・意外と周りへ配慮していた中道弁護士
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